全反射では電磁気学的に何が起きているのか
問いは木下が出したもので、答えは Claude Code と調べて書いたものです。
全反射って電磁気学的になにが起きているんだっけ
答え:境界に沿った波数がそろう条件を満たすと、奥へ進む方向の波数が虚数になる。光は染み出すだけで奥へ進めず、エネルギーは全部戻る
境界面を z = 0 z=0 z = 0 、媒質1(屈折率 n 1 n_1 n 1 )から媒質2(n 2 < n 1 n_2<n_1 n 2 < n 1 )へ入射角 θ \theta θ で光が当たるとし、真空中の波数を k 0 = ω / c k_0=\omega/c k 0 = ω / c とする。
① 境界に沿った波数は保存される。 境界面では電場・磁場の接線成分が、面上のどの点でもどの時刻でもつながっていなければならない。そのためには入射波・反射波・透過波の e i ( k x x − ω t ) e^{i(k_x x-\omega t)} e i ( k x x − ω t ) がそろう必要があり、境界に沿った波数 k x = n 1 k 0 sin θ k_x = n_1k_0\sin\theta k x = n 1 k 0 sin θ が媒質2でも同じ値になる。これを k x = n 2 k 0 sin θ 2 k_x = n_2k_0\sin\theta_2 k x = n 2 k 0 sin θ 2 と書いたものがスネルの法則である。
② 奥へ向かう波数を求める。 媒質2の中では k x 2 + k z 2 = n 2 2 k 0 2 k_x^2+k_z^2 = n_2^2k_0^2 k x 2 + k z 2 = n 2 2 k 0 2 なので
k z 2 = k 0 2 ( n 2 2 − n 1 2 sin 2 θ ) . k_z^2 = k_0^2\left(n_2^2 - n_1^2\sin^2\theta\right). k z 2 = k 0 2 ( n 2 2 − n 1 2 sin 2 θ ) .
n 1 sin θ < n 2 n_1\sin\theta < n_2 n 1 sin θ < n 2 なら k z k_z k z は実数で、光は普通に透過する。n 1 sin θ > n 2 n_1\sin\theta > n_2 n 1 sin θ > n 2 (臨界角 sin θ c = n 2 / n 1 \sin\theta_c = n_2/n_1 sin θ c = n 2 / n 1 を超える)と右辺が負になり、k z = i κ k_z = i\kappa k z = iκ 、κ = k 0 n 1 2 sin 2 θ − n 2 2 \kappa = k_0\sqrt{n_1^2\sin^2\theta - n_2^2} κ = k 0 n 1 2 sin 2 θ − n 2 2 となる。媒質2の電場は
E 2 ∝ e i ( k x x − ω t ) e − κ z E_2 \propto e^{i(k_xx-\omega t)}\,e^{-\kappa z} E 2 ∝ e i ( k x x − ω t ) e − κ z
で、境界に沿っては進むが奥へは指数関数的に減衰する。これをエバネッセント波と呼び、染み込む深さ 1 / κ 1/\kappa 1/ κ は波長程度である。
③ エネルギーは全部戻る。 エバネッセント波では z z z 方向の電場と磁場の位相が 90 ∘ 90^\circ 9 0 ∘ ずれているので、ポインティングベクトルの z z z 成分は1周期で平均するとゼロになる。エネルギーは1周期ごとに染み込んでは戻ってくるだけで、奥へは流れない。フレネル係数で見ても、s 偏光の r = n 1 cos θ − n 2 cos θ 2 n 1 cos θ + n 2 cos θ 2 r = \dfrac{n_1\cos\theta - n_2\cos\theta_2}{n_1\cos\theta + n_2\cos\theta_2} r = n 1 cos θ + n 2 cos θ 2 n 1 cos θ − n 2 cos θ 2 の n 2 cos θ 2 = k z / k 0 n_2\cos\theta_2 = k_z/k_0 n 2 cos θ 2 = k z / k 0 が純虚数になるので r = ( a − i b ) / ( a + i b ) r = (a-ib)/(a+ib) r = ( a − ib ) / ( a + ib ) の形になり、∣ r ∣ = 1 |r| = 1 ∣ r ∣ = 1 である。反射率は100%で、位相だけがずれる。この位相のずれが s 偏光と p 偏光で違うことを使って円偏光を作る素子がフレネルの菱面体である。
④ 電子で見ると。 媒質2の電子もエバネッセント場で揺さぶられているが、その出し直す波が奥へ進む成分を打ち消し、反射方向へだけ足し合わさる。屈折の補足で見た「重ね合わせ」が、全反射では「奥へは打ち消し、手前へは強め合う」形で現れる。
補足:染み出した波は捕まえられる(全反射の阻害)
媒質2の厚さが波長程度しかなく、その先にまた屈折率の高い媒質を置くと、エバネッセント波がそこに届き、光の一部が通り抜ける。これは量子力学のトンネル効果と同じ数学である(指数関数的に減衰する解が、薄い障壁の先で再び伝わる解につながる)。プリズムを2つ近づけたビームスプリッタや、指紋センサー・全反射蛍光顕微鏡(TIRF)がこの性質を使っている。