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光の三原色を混ぜてもスペクトルは動かないのに、なぜ別の色に見えるのか

2026年10月19日科学と数学

問いは木下が出したもので、答えは Claude Code と調べて書いたものです。

Q. 光の三原色を混ぜても、それぞれのスペクトル自体は動かない。混ぜた光のスペクトルは赤・緑・青の山が並んでいるだけなのに、人間はどういう知覚をしているのか?

A. その通りで、混色は物理的には何も変えていない。赤と緑の光を混ぜた光には、黄色(580 nm 付近)の成分はまったく含まれていない。それでも黄色に見えるのは、目がスペクトルを読んでいるのではなく、スペクトルを3つの数に潰してから脳へ送っているからである。

① 目は3つの数しか測らない:網膜で色を受け持つ錐体細胞は3種類しかない。長波長に強い L 錐体、中波長の M 錐体、短波長の S 錐体である。それぞれの感度曲線は幅が広く、L と M は大きく重なっている。光のスペクトルを I(λ)I(\lambda)、各錐体の感度を lˉ(λ)\bar l(\lambda) などと書くと、目が受け取るのはL=∫I(λ) lˉ(λ) dλ,M=∫I(λ) mˉ(λ) dλ,S=∫I(λ) sˉ(λ) dλL=\int I(\lambda)\,\bar l(\lambda)\,d\lambda,\quad M=\int I(\lambda)\,\bar m(\lambda)\,d\lambda,\quad S=\int I(\lambda)\,\bar s(\lambda)\,d\lambdaの3つの積分値だけである。無限次元のスペクトルが3次元へ射影され、その時点で情報の大部分は捨てられる。

② 同じ3つの数になれば区別できない:580 nm の単色光は L をやや強く、M をそれより少し弱く刺激する。赤の光と緑の光を適当な強さで混ぜても、L と M の比をこれと同じにできる。錐体の出力が一致すれば、脳にはどちらの光か知る手段がない。スペクトルは違うのに同じ色に見える組をメタメリズム(条件等色)と呼ぶ。ディスプレイが3色の画素だけであらゆる色を出せるのはこの原理による。「スペクトルの平均が動く」のではなく、「3つの積分値を合わせている」が正しい描像。

③ 色はその後の比較で作られる:錐体の出力はそのまま色になるのではなく、網膜と脳で「L+M(明るさ)」「L−M(赤↔緑)」「S−(L+M)(青↔黄)」という差の信号(反対色)に組み替えられる。赤みがかった緑や青みがかった黄色を想像できないのはこのためである。

補足(スペクトルに無い色):マゼンタ(赤紫)は虹のどこにも無い。L と S が刺激されて、その間にある M が刺激されないという、単色光では起こり得ない組み合わせを脳が色として解釈したものである。逆に、三原色の混色では虹の純色(単色光)を完全には再現できない。3原色が作る三角形の内側しか届かず、CIE 1931 の等色実験では一部の波長を合わせるのに「負の量の赤」(比べる側の光に赤を足す)が必要になった。

補足(3つという数は生物による):3という数は光の性質ではなく人間の都合である。多くの哺乳類は錐体が2種類(2色覚)で、鳥は紫外まで含む4種類を持つ。鳥から見ると、人間のディスプレイの黄色と本物の黄色の花は別の色に見えている可能性が高い。