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黒体放射はなぜ光るのか

2026年10月2日科学と数学

問いは木下が出したもので、答えは Claude Code と調べて書いたものです。

黒体放射って結局なんで光るんだっけ

答え:温度があれば物質中の荷電粒子が熱で揺れ、揺れる電荷は電磁波を出す。その出し方と吸い方が釣り合った結果、スペクトルが温度だけで決まる

① 光る理由そのもの。 温度 TT の物質では、電子やイオンが熱運動でランダムに揺さぶられ、衝突のたびに加速度を受ける。加速度をもつ電荷は電磁波を放射する(ラーモアの式で放射パワーは加速度の2乗に比例する)。量子の言葉で言えば、熱で励起された状態が下の状態へ落ちるときに光子を出す。固体や濃いプラズマでは準位が実質連続にびっしり並び、衝突で常に混ぜ合わされているので、原子の線スペクトルではなく連続スペクトルになる。つまり「温度があるものはすべて光っている」のであり、黒体は特別な光り方をするのでなく、その光り方の上限である。

② なぜ「黒い」物体なのか。 熱平衡では、どの波長でも物体が吸う光と出す光が釣り合っていなければならない(詳細つり合い)。そのため放射率は吸収率に等しい(キルヒホッフの法則 ελ=αλ\varepsilon_\lambda = \alpha_\lambda)。全部吸う物体(α=1\alpha=1)は、同じ温度の物体の中でいちばん強く光る。しかも吸収が完全なら物質の個性(どの波長を吸いやすいか)が消えるので、スペクトルが温度だけの普遍関数になる。空洞に小さな穴をあけたものがその実物である。

③ なぜあの形(プランク分布)になるのか。 空洞内の電磁場を固有モードに分けると、各モードは振動数 ν\nu の調和振動子で、エネルギーは hνh\nu 単位でしか出し入れできない。1モードあたりの平均光子数はボース分布 nˉ=1/(ehν/kBT−1)\bar n = 1/(e^{h\nu/k_BT}-1)、単位体積・単位振動数あたりのモード数は 8πν2/c38\pi\nu^2/c^3 なので

u(ν,T)=8πhν3c3 1ehν/kBT−1.u(\nu,T) = \frac{8\pi h\nu^3}{c^3}\,\frac{1}{e^{h\nu/k_BT}-1}.

低振動数ではモード数 ν2\nu^2 が効いて増え、高振動数では hν≫kBTh\nu \gg k_BT のモードを熱で励起できず指数関数的に落ちる。古典論はこの「励起できない」を持たないので紫外で発散した(紫外破綻)。

④ 目に見えるかどうか。 ピーク波長はウィーンの変位則 λmax⁡T≈2.9 mm⋅K\lambda_{\max} T \approx 2.9\ \mathrm{mm\cdot K} で決まる。室温(300 K)では約 10 μm の赤外で、人の体もこの波長で光っている(サーモグラフィが写すもの)。約 800 K を超えると分布の裾が可視の赤に届いて赤熱し、太陽(約 5800 K)ではピークが約 500 nm の可視域に来る。

補足:加速度をもつ電荷はなぜ放射するのか

加速度をもつ電荷が放射するっていうのはどういうこと?加速度のある電荷はそのエネルギーの一部を光に変換するの?

① 電気力線の「折れ目」が光である。 静止した電荷のまわりには放射状のクーロン場がある。電荷を一瞬揺さぶっても、遠くの場は電荷が動いたことをすぐには知らない。情報は光速 cc でしか伝わらないので、時間 tt 後には半径 ctct の球の内側だけが新しい位置に合わせた場になり、外側は古い位置のままである。その境目で電気力線は横向きに折れ曲がる。この折れ目が半径 ctct で外へ広がっていくものが電磁波である。等速運動では、相対性原理により電荷が静止して見える座標系をとれるので折れ目はできず、放射しない。放射を生むのは速度の「変化」だけである。

② なぜ加速度だけが遠くまで届くのか。 電荷の場は2つの部分に分かれる。クーロン場は 1/r21/r^2 で弱まり、加速度に比例する横向きの場(放射場)は

Erad∼q asin⁡θ4πε0c2rE_{\rm rad} \sim \frac{q\,a\sin\theta}{4\pi\varepsilon_0 c^2 r}

のように 1/r1/r でしか弱まらない(θ\theta は加速度の向きからの角度)。エネルギーの流れ(ポインティングベクトル)は場の2乗に比例する。クーロン場では 1/r41/r^4 で、半径 rr の球面(面積 ∝r2\propto r^2)全体を通る量は r→∞r\to\infty でゼロになる。放射場では 1/r21/r^2 なので、球面を通る量が rr によらず一定になる。つまりエネルギーが無限遠まで逃げていく。それを全方向で合計したものがラーモアの式

P=q2a26πε0c3P = \frac{q^2 a^2}{6\pi\varepsilon_0 c^3}

である。

③ エネルギーはどこから来るのか。 理解はそれで正しい。放射されたエネルギーは、電荷を加速している側から出ている。電荷は放射するぶん、進行を妨げる向きの力(放射反作用、アブラハム・ローレンツ力)を受ける。外力がない場合は電荷の運動エネルギーが減り、外力で加速している場合は外力が余分に仕事をする。電荷だけを見ると「運動エネルギーの一部を光に変えた」ことになる。

④ 身近な例。 アンテナでは、交流で電子を往復させる(加速度をもたせる)ことで電波を出す。この場合、エネルギーは電源から来ている。X線管では、高速の電子が標的の原子核のそばで急に曲げられ・止められて、制動放射(ブレムシュトラールング)でX線を出す。シンクロトロン放射は、円運動の向心加速度で出る放射である。黒体の熱放射も、熱運動する電子が衝突で加速度を受け、運動エネルギーの一部を光にしているものである。熱平衡では、同時に周りの光を吸って運動エネルギーへ戻す逆向きの過程も起きており、両者が釣り合っている。ちなみに古典論でこれを原子に当てはめると、原子核のまわりを回る電子は放射しながら約 10−1110^{-11} 秒で原子核に落ちてしまう。これが量子力学を必要とした理由の1つである。