古代の民族移動を DNA で調べるのは遺骨を解析している?
問いは木下が出したもので、答えは Claude Code と調べて書いたものです。
Q. DNA 解析で古代の民族の移動がわかる、という話がある。あれは遺跡から出た遺骨の DNA を調べているのか?
A. 両方の方法がある。ひとつは遺跡の人骨から DNA を直接取り出す「古代 DNA(ancient DNA, aDNA)」の解析で、ここ15年ほどの主流になった。もうひとつは現代人の DNA を大勢集め、集団どうしの違いから過去を逆算する方法で、こちらのほうが歴史は長い。
古代 DNA は骨や歯から取る。とくに耳の奥にある側頭骨の錐体部(内耳を囲む非常に硬い骨)は DNA がよく残ることがわかり、2015年ごろから成功率が大きく上がった。歯の内側(歯髄腔)もよく使う。ただ死後の DNA は短い断片に切れ、化学的に傷み(C が T に読み違えられる変化が断片の端に溜まる)、土の細菌や掘った人・研究者の DNA が混ざる。そのためクリーンルームで抽出し、次世代シーケンサーで短い断片を大量に読み、その傷み方の型を「本当に古いもの」の判定に使う。寒冷地や乾燥地の遺骨は残りやすく、高温多湿の日本や熱帯は残りにくい。洞窟の土から DNA を取る研究(堆積物 DNA)まである。ネアンデルタール人のゲノム解読(2010年、ペーボ。2022年にノーベル賞)がこの分野の起点になった。
現代人の DNA からも過去はわかる。母から子へそのまま伝わるミトコンドリア DNA と、父から息子へ伝わる Y 染色体は組み換えが起きないので、系統樹を描いて「どの集団からいつ分かれたか」を推定できる。核ゲノム全体を使えば、ある集団が複数の祖先集団のどんな割合の混血か、混血がおよそ何世代前に起きたかまで推定できる(混血の後、世代ごとに組み換えで祖先由来の区間が短く刻まれていくので、その長さが時計になる)。
二つを組み合わせると強い。たとえば、現代のヨーロッパ人がおよそ「狩猟採集民」「アナトリアの初期農耕民」「黒海北岸のステップ牧畜民(ヤムナヤ)」の3系統の混血だとわかったのは、古代の人骨を時代ごとに並べてゲノムを比べたからで、約5000年前にステップから大規模な人の流入があったことは考古学だけでは決めきれなかった。日本でも縄文人の人骨のゲノムが読まれ、現代の本土日本人は縄文系と大陸由来の渡来系の混血で、縄文系の割合は1〜2割ほど(沖縄やアイヌではもっと高い)という像が出ている。最近は渡来が弥生と古墳時代の2回あったとする「三重構造」説も古代 DNA から出てきた。