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変位電流と Maxwell 方程式

2026年10月15日24分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第8章 Maxwell 方程式と保存則
目次
  1. Ampère の法則と電荷の保存の食い違い
  2. 変位電流
  3. 真空中の Maxwell 方程式
  4. 方程式の数と、発散の式が保たれること
  5. 物質中の Maxwell 方程式
  6. 確認テスト
  7. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第8章 §8.1 ★★★ Ampère の法則に ε0∂E/∂t\varepsilon_0\partial\bm{E}/\partial t を足すと電荷の保存と矛盾しなくなり、4本の方程式が閉じる

第2章から第7章までで、電場と磁場の法則を1本ずつ集めてきた。

  • 第2章の Gauss の法則:∇⋅E=ρ/ε0\nabla\cdot\bm{E}=\rho/\varepsilon_0。
  • 第5章の2本:∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 と Ampère の法則 ∇×B=μ0J\nabla\times\bm{B}=\mu_0\bm{J}。
  • 第7章の Faraday の法則:∇×E=−∂B/∂t\nabla\times\bm{E}=-\partial\bm{B}/\partial t。

このうち Ampère の法則だけは、定常電流を前提に導いたものだった。

この章では、まずこの前提を外すと Ampère の法則が電荷の保存と食い違うことを示し、Maxwell が足した変位電流の項でその食い違いが解消されることを確かめる。こうしてできる4本の方程式が Maxwell 方程式で、古典的な電磁気の現象はすべてこの4本と Lorentz 力の式から導かれる。

§8.1 で Maxwell 方程式を完成させる。§8.2 では2本の斉次の方程式を解いてスカラーポテンシャル ϕ\phi とベクトルポテンシャル A\bm{A} を導入し、ポテンシャルの選び方の自由度(ゲージ)を整理する。Coulomb ゲージと Lorenz ゲージの2つを扱い、後者ではポテンシャルが波動方程式に従うことを示す。

§8.3 と §8.4 では、場がエネルギーと運動量を運ぶことを示す。電荷に働く力がする仕事と力そのものを場だけで書き直すと、エネルギー密度と Poynting ベクトル、運動量密度と Maxwell 応力テンソルが現れ、それぞれが局所的な保存則を満たす。

前の章から借りる結果は次のとおりである。

  • 第1章:§1.2 の Gauss の発散定理と Stokes の定理、§1.3 の Helmholtz の分解と Poisson 方程式の解

∇2Λ=−s⟹Λ(r)=14π∫s(r′)∣r−r′∣ dV′.\nabla^2\Lambda=-s\quad\Longrightarrow\quad \Lambda(\bm{r})=\frac{1}{4\pi}\int\frac{s(\bm{r}')}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\,\mathrm{d} V' .

  • 第2章 §2.4:静電場のエネルギー密度 ε0E2/2\varepsilon_0E^2/2。
  • 第4章:分極 P\bm{P} と電束密度 D=ε0E+P\bm{D}=\varepsilon_0\bm{E}+\bm{P}。
  • 第5章:§5.1 の連続の式 ∇⋅J+∂ρ/∂t=0\nabla\cdot\bm{J}+\partial\rho/\partial t=0。§5.2 の Lorentz 力 F=q(E+v×B)\bm{F}=q(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B})。§5.4 のベクトルポテンシャル B=∇×A\bm{B}=\nabla\times\bm{A}。
  • 第6章:磁化 M\bm{M} と磁場 H=B/μ0−M\bm{H}=\bm{B}/\mu_0-\bm{M}。
  • 第7章 §7.3:磁場のエネルギー密度 B2/(2μ0)B^2/(2\mu_0)。

この章の結果は、第9章で電磁波の波動方程式とエネルギーの流れに、第10章で Maxwell 方程式の共変形式とエネルギー運動量テンソルに、第11章で遅延ポテンシャルと放射電力の計算に使う。

Ampère の法則と電荷の保存の食い違い

第5章 §5.3 で導いた Ampère の法則

∇×B=μ0J(8.1)\nabla\times\bm{B}=\mu_0\bm{J}\tag{8.1}

の両辺の発散をとる。左辺は第1章 §1.1 の恒等式 ∇⋅(∇×B)=0\nabla\cdot(\nabla\times\bm{B})=0 により恒等的に 0 である。したがって(8.1) が成り立つためには ∇⋅J=0\nabla\cdot\bm{J}=0 でなければならない。一方、電荷の保存を局所的に書いた連続の式は

∇⋅J+∂ρ∂t=0(8.2)\nabla\cdot\bm{J}+\frac{\partial \rho}{\partial t}=0\tag{8.2}

である。定常電流では電荷密度が時間変化しないので ∇⋅J=0\nabla\cdot\bm{J}=0 となり、両者は矛盾しない。しかし、コンデンサーを充電している最中のように電荷密度が時間変化する場合には

∇⋅J=−∂ρ∂t≠0\nabla\cdot\bm{J}=-\frac{\partial \rho}{\partial t}\neq0

となり、(8.1) は成り立ち得ない。

同じ食い違いを積分形で見る。図 8.1 のように、導線で電流 II を流して平行板コンデンサーを充電している。導線を囲む円 CC に、Ampère の法則の積分形を当てはめる。

∮CB⋅dr=μ0Ienc.\oint_C\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{r}=\mu_0I_{\mathrm{enc}} .

右辺の IencI_{\mathrm{enc}} は、円を縁とする曲面を貫く電流である。Stokes の定理によれば、縁が同じなら曲面はどれを選んでもよいはずである。

  • 円に張った平らな円板 S1S_1 を選ぶと、導線が貫くので Ienc=II_{\mathrm{enc}}=I である。
  • 極板の間を通るように膨らませた袋状の曲面 S2S_2 を選ぶと、極板の間には電流が流れていないので Ienc=0I_{\mathrm{enc}}=0 となる。

同じ左辺に対して右辺が2つの値をとるので、(8.1) はこの状況では成り立っていない。

図

図 8.1 充電中の平行板コンデンサー。円 CC を縁とする平らな曲面 S1S_1 は導線に貫かれるが、極板の間を通る袋状の曲面 S2S_2(破線)は電流に貫かれない。S2S_2 を貫くのは時間変化する電場 E\bm{E} である。

変位電流

食い違いを解消するには、(8.1) の右辺に、発散が ∂ρ/∂t\partial\rho/\partial t に等しい項を足せばよい。Gauss の法則 ∇⋅E=ρ/ε0\nabla\cdot\bm{E}=\rho/\varepsilon_0 は時間変化する場でも成り立つと仮定する(電荷のまわりの電場の流束が電荷に比例することは、電荷が動いていても観測と矛盾しない)。この両辺を時間で微分すると

∂ρ∂t=ε0∇⋅∂E∂t\frac{\partial \rho}{\partial t}=\varepsilon_0\nabla\cdot\frac{\partial \bm{E}}{\partial t}

となるので、連続の式 (8.2) は

∇⋅(J+ε0∂E∂t)=0(8.3)\nabla\cdot\Bigl(\bm{J}+\varepsilon_0\frac{\partial \bm{E}}{\partial t}\Bigr)=0\tag{8.3}

と書き直せる。括弧の中の量は時間変化する場でも発散が 0 なので、これを (8.1) の右辺の電流の代わりに置けば、両辺の発散がどちらも 0 になって矛盾は消える。

定義 8.1(変位電流)

真空中で

Jd=ε0∂E∂t(8.4)\bm{J}_{\mathrm d}=\varepsilon_0\frac{\partial \bm{E}}{\partial t}\tag{8.4}

を変位電流密度と呼ぶ。Ampère の法則を

∇×B=μ0J+μ0ε0∂E∂t(8.5)\nabla\times\bm{B}=\mu_0\bm{J}+\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial \bm{E}}{\partial t}\tag{8.5}

と書き換えたものを Ampère–Maxwell の法則と呼ぶ。

変位電流は電荷の流れではない。名前は、Maxwell が真空にも媒質があると考え、その媒質の「変位」の時間変化を電流とみなしたことに由来する。いまでは真空中の変位電流は、電場の時間変化そのものを指す言葉として使われている。

図 8.1 の状況に戻る。極板の電荷を QQ、極板の面積を AA とする。極板の端の効果を無視すると、極板の間の電場はE=Q/(ε0A)E=Q/(\varepsilon_0A) である。袋状の曲面 S2S_2 を貫く変位電流は

∫S2ε0∂E∂t⋅dS=ε0A∂E∂t=∂Q∂t=I\int_{S_2}\varepsilon_0\frac{\partial \bm{E}}{\partial t}\cdot\mathrm{d}\bm{S}=\varepsilon_0A\frac{\partial E}{\partial t}=\frac{\partial Q}{\partial t}=I

となり、平らな曲面 S1S_1 を貫く伝導電流 II と一致する。こうして、どちらの曲面を選んでも右辺は μ0I\mu_0I になる。この一致は偶然ではない。(8.3) と発散定理により、閉曲面 S1∪S2S_1\cup S_2 を貫く J+ε0∂E/∂t\bm{J}+\varepsilon_0\partial\bm{E}/\partial t の流束が0 になることの帰結である。

変位電流がなぜ見落とされていたか

変位電流の項は、伝導電流の項に比べて普通の実験では非常に小さい。例題 8.2 で見るように、銅の中では1 GHz1\,\mathrm{GHz} の交流でも伝導電流が変位電流の 10910^9 倍ある。Ampère の法則の検証は定常電流か低い周波数の電流で行われていたので、この項が無いことは実験で見つからなかった。

この項の必要性は、実験からではなく、電荷の保存との整合という理論の要請から先に分かった。この項を入れると電磁波の存在が導かれ(第9章)、Hertz の実験で電磁波が確かめられたことで変位電流の存在も確かめられた。

真空中の Maxwell 方程式

以上をまとめる。

真空中の Maxwell 方程式

電荷密度 ρ\rho と電流密度 J\bm{J} を源とする。電場 E\bm{E} と磁束密度 B\bm{B} は、次の4本を満たす。

∇⋅E=ρε0,∇⋅B=0,∇×E=−∂B∂t,∇×B=μ0J+1c2∂E∂t,c2=1ε0μ0.\begin{align*}\nabla\cdot\bm{E}&=\frac{\rho}{\varepsilon_0},\tag{8.6}\\\nabla\cdot\bm{B}&=0,\tag{8.7}\\\nabla\times\bm{E}&=-\frac{\partial \bm{B}}{\partial t},\tag{8.8}\\\nabla\times\bm{B}&=\mu_0\bm{J}+\frac{1}{c^2}\frac{\partial \bm{E}}{\partial t},\qquad c^2=\frac{1}{\varepsilon_0\mu_0}.\tag{8.9}\end{align*}

電荷 qq の粒子は Lorentz 力 F=q(E+v×B)\bm{F}=q(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B}) を受ける。

cc は速度の次元を持つ定数である。次の値を入れると、cc は光の速さに一致する。

ε0=8.854×10−12 F/m,μ0=1.2566×10−6 H/m⟹c=2.998×108 m/s.\varepsilon_0=8.854\times10^{-12}\,\mathrm{F/m},\quad \mu_0=1.2566\times10^{-6}\,\mathrm{H/m} \quad\Longrightarrow\quad c=2.998\times10^{8}\,\mathrm{m/s}.この一致の意味は第9章で電磁波の速さとして明らかになる。

それぞれの方程式は、第1章の積分定理で積分形に書き直せる。体積 VV とその表面 ∂V\partial V を考える。また、曲面 SS とその縁 ∂S\partial S を考える(向きは Stokes の定理の右ねじの約束)。これらについて

∮∂VE⋅dS=Qinε0,∮∂VB⋅dS=0,∮∂SE⋅dr=−ddt∫SB⋅dS,∮∂SB⋅dr=μ0IS+1c2ddt∫SE⋅dS\begin{align*}\oint_{\partial V}\bm{E}\cdot\mathrm{d}\bm{S}&=\frac{Q_{\mathrm{in}}}{\varepsilon_0}, & \oint_{\partial V}\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{S}&=0,\tag{8.10}\\\oint_{\partial S}\bm{E}\cdot\mathrm{d}\bm{r}&=-\frac{d }{d t}\int_S\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{S}, & \oint_{\partial S}\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{r}&=\mu_0I_S+\frac{1}{c^2}\frac{d }{d t}\int_S\bm{E}\cdot\mathrm{d}\bm{S}\tag{8.11}\end{align*}

が成り立つ。ここで QinQ_{\mathrm{in}} は体積の中の電荷、ISI_S は曲面を貫く電流である(曲面は時間によらないとする)。第3式は第7章 §7.1 の Faraday の法則、第4式は Ampère–Maxwell の法則の積分形である。

方程式の数と、発散の式が保たれること

(8.6)–(8.9) は、スカラーの式2本とベクトルの式2本で、成分にすると8本ある。未知数は電場と磁場の6成分なので、一見すると方程式が多すぎるように見える。実は発散の2本は、時間発展の式(回転の2本)と両立する「初期条件への制約」の役割を持つ。

定理 8.2(発散の式の保存)

源 ρ,J\rho,\bm{J} が連続の式 (8.2) を満たすとする。場 E,B\bm{E},\bm{B} は (8.8)、(8.9) に従って時間発展するとする。ある時刻に (8.6) と (8.7) が成り立っていれば、それらはすべての時刻で成り立つ。

証明

(8.8) の発散をとると、∇⋅(∇×E)=0\nabla\cdot(\nabla\times\bm{E})=0 より

∂∂t(∇⋅B)=−∇⋅(∇×E)=0\frac{\partial }{\partial t}(\nabla\cdot\bm{B})=-\nabla\cdot(\nabla\times\bm{E})=0

となるので、∇⋅B\nabla\cdot\bm{B} は時間によらない。初めに 0 ならずっと 0 である。次に G≔∇⋅E−ρ/ε0G\coloneqq\nabla\cdot\bm{E}-\rho/\varepsilon_0 とおく。(8.9) から

∂E∂t=c2∇×B−Jε0\frac{\partial \bm{E}}{\partial t}=c^2\nabla\times\bm{B}-\frac{\bm{J}}{\varepsilon_0}

なので

∂G∂t=∇⋅∂E∂t−1ε0∂ρ∂t=c2∇⋅(∇×B)−1ε0(∇⋅J+∂ρ∂t)=0−0=0.\frac{\partial G}{\partial t}=\nabla\cdot\frac{\partial \bm{E}}{\partial t}-\frac{1}{\varepsilon_0}\frac{\partial \rho}{\partial t} =c^2\nabla\cdot(\nabla\times\bm{B})-\frac{1}{\varepsilon_0}\Bigl(\nabla\cdot\bm{J}+\frac{\partial \rho}{\partial t}\Bigr)=0-0=0 .

よって GG も時間によらず、初めに 0 ならずっと 0 である。

この定理の逆向きの読み方も重要である。(8.6) と (8.9) がどちらも成り立つなら、(8.9) の発散と(8.6) の時間微分を組み合わせて連続の式 (8.2) が導かれる(確認テスト 8.1-4)。つまり Maxwell 方程式は電荷の保存を含んでいて、電荷が保存しない源を与えると方程式は解を持たない。

物質中の Maxwell 方程式

物質の中では、外から持ち込んだ自由電荷と自由電流(添字 f)のほかに、分極と磁化による電荷と電流がある。第4章 §4.1 の分極電荷 ρb=−∇⋅P\rho_{\mathrm b}=-\nabla\cdot\bm{P} と、第6章 §6.1 の磁化電流 Jb=∇×M\bm{J}_{\mathrm b}=\nabla\times\bm{M} がその例である。これらに加えて、分極が時間変化するときには分極電流が流れる。

分極電流の大きさを求める。物質の中の小さな面 ΔS\Delta S(単位法線 n\bm{n})を考える。第4章 §4.1 の分極電荷の導出と同じ考え方で、分極が P\bm{P} になるまでに、この面を法線の向きに横切った電荷は P⋅n ΔS\bm{P}\cdot\bm{n}\,\Delta S である。

分極が時間変化すれば、横切った電荷も時間変化する。単位時間あたりに横切る電荷は (∂P/∂t)⋅n ΔS(\partial\bm{P}/\partial t)\cdot\bm{n}\,\Delta S となる。これは電流密度

Jp=∂P∂t(8.12)\bm{J}_{\mathrm p}=\frac{\partial \bm{P}}{\partial t}\tag{8.12}

が面を貫く量である。分極電荷と分極電流は連続の式を満たす。実際、

∇⋅Jp=∂∂t(∇⋅P)=−∂ρb∂t\nabla\cdot\bm{J}_{\mathrm p}=\frac{\partial }{\partial t}(\nabla\cdot\bm{P})=-\frac{\partial \rho_{\mathrm b}}{\partial t}

である。磁化電流は ∇⋅(∇×M)=0\nabla\cdot(\nabla\times\bm{M})=0 なので、単独で連続の式を満たす。

真空の Maxwell 方程式の源に、全部の電荷と電流

ρ=ρf−∇⋅P,J=Jf+∂P∂t+∇×M\rho=\rho_{\mathrm f}-\nabla\cdot\bm{P},\qquad \bm{J}=\bm{J}_{\mathrm f}+\frac{\partial \bm{P}}{\partial t}+\nabla\times\bm{M}

を入れる。(8.6) は ∇⋅(ε0E+P)=ρf\nabla\cdot(\varepsilon_0\bm{E}+\bm{P})=\rho_{\mathrm f} となる。(8.9) に 1/μ01/\mu_0 を掛けると

∇×Bμ0=Jf+∂P∂t+∇×M+ε0∂E∂t⟹∇×(Bμ0−M)=Jf+∂∂t(ε0E+P)\nabla\times\frac{\bm{B}}{\mu_0}=\bm{J}_{\mathrm f}+\frac{\partial \bm{P}}{\partial t}+\nabla\times\bm{M}+\varepsilon_0\frac{\partial \bm{E}}{\partial t} \quad\Longrightarrow\quad \nabla\times\Bigl(\frac{\bm{B}}{\mu_0}-\bm{M}\Bigr)=\bm{J}_{\mathrm f}+\frac{\partial }{\partial t}(\varepsilon_0\bm{E}+\bm{P})

となる。D=ε0E+P\bm{D}=\varepsilon_0\bm{E}+\bm{P}、H=B/μ0−M\bm{H}=\bm{B}/\mu_0-\bm{M} を使って書くと、次の形にまとまる。

物質中の Maxwell 方程式

∇⋅D=ρf,∇⋅B=0,∇×E=−∂B∂t,∇×H=Jf+∂D∂t.(8.13)\nabla\cdot\bm{D}=\rho_{\mathrm f},\qquad \nabla\cdot\bm{B}=0,\qquad \nabla\times\bm{E}=-\frac{\partial \bm{B}}{\partial t},\qquad \nabla\times\bm{H}=\bm{J}_{\mathrm f}+\frac{\partial \bm{D}}{\partial t}.\tag{8.13}

線形で等方な物質では、次の関係を加えて閉じる(3つ目は導体での Ohm の法則)。

D=εE,B=μH,Jf=σcE.\bm{D}=\varepsilon\bm{E},\qquad \bm{B}=\mu\bm{H},\qquad \bm{J}_{\mathrm f}=\sigma_{\mathrm c}\bm{E} .

ここで σc\sigma_{\mathrm c} は電気伝導率である(表面電荷密度 σ\sigma と区別するため添字 c を付ける)。境界条件は、静的な場合(第4章 §4.3、第6章 §6.2)と同じ形のまま時間変化する場でも成り立つ。境界をまたぐ薄い円筒や細い長方形に積分形を当てはめて、厚みを 0 にする極限を考える。このとき時間微分の項 ∂B/∂t\partial\bm{B}/\partial t や ∂D/∂t\partial\bm{D}/\partial t の面積分は、有限の場の値に面積を掛けたものになり、面積とともに 0 になるからである。

境界が表面電荷 σf\sigma_{\mathrm f} と表面電流 Kf\bm{K}_{\mathrm f} を持つとする。法線 n\bm{n} を媒質1から2の向きにとると

n⋅(D2−D1)=σf,n⋅(B2−B1)=0,n×(E2−E1)=0,n×(H2−H1)=Kf(8.14)\bm{n}\cdot(\bm{D}_2-\bm{D}_1)=\sigma_{\mathrm f},\quad \bm{n}\cdot(\bm{B}_2-\bm{B}_1)=0,\quad \bm{n}\times(\bm{E}_2-\bm{E}_1)=\bm{0},\quad \bm{n}\times(\bm{H}_2-\bm{H}_1)=\bm{K}_{\mathrm f}\tag{8.14}

となる。第9章では、この境界条件から反射と屈折の法則を導く。

例題 8.1 充電中のコンデンサーの極板の間の磁場 ★★

オリジナル半径 aa の円形の極板2枚を狭い間隔で向かい合わせた平行板コンデンサーを、一定の電流 II で充電する。極板の端の効果は無視し、極板の間の電場は一様で極板に垂直とする。

  1. 極板の間で、中心軸から距離 ss の点の磁場の大きさ B(s)B(s) を求めよ。ss が極板の半径より小さい場合と大きい場合の両方を考えよ。
  2. a=5.0 cma=5.0\,\mathrm{cm}、I=0.50 AI=0.50\,\mathrm A とする。極板の間の電場の時間変化率と、極板の縁での磁場の大きさを求めよ。
解答
  1. 極板の電荷を Q(t)Q(t) とすると、極板の間の電場と、その時間変化率は

E=Qε0πa2,∂E∂t=Iε0πa2E=\frac{Q}{\varepsilon_0\pi a^2},\qquad \frac{\partial E}{\partial t}=\frac{I}{\varepsilon_0\pi a^2}

である。極板の間には伝導電流が無い。系は中心軸のまわりの回転について対称なので、磁場は軸を中心とする円の接線の向きを向き、大きさは ss だけの関数である(磁場に軸方向や動径方向の成分が無いことは、∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 と、軸を含む面での鏡映についての対称性から分かる)。

極板に平行な面内で、軸を中心とする半径 ss の円と、それを縁とする円板を考える。これに (8.11) の第2式を当てはめる。s<as<a では、円板を貫く電場の流束は πs2E\pi s^2E なので

2πsB=1c2ddt(πs2E)=μ0ε0πs2Iε0πa2=μ0Is2a2⟹B(s)=μ0Is2πa2.2\pi sB=\frac{1}{c^2}\frac{d }{d t}(\pi s^2E)=\mu_0\varepsilon_0\pi s^2\frac{I}{\varepsilon_0\pi a^2}=\mu_0I\frac{s^2}{a^2} \quad\Longrightarrow\quad B(s)=\frac{\mu_0Is}{2\pi a^2}.

s>as>a では、電場があるのは極板の半径の内側だけなので、流束は πa2E\pi a^2E で

2πsB=μ0ε0πa2Iε0πa2=μ0I⟹B(s)=μ0I2πs.2\pi sB=\mu_0\varepsilon_0\pi a^2\frac{I}{\varepsilon_0\pi a^2}=\mu_0I \quad\Longrightarrow\quad B(s)=\frac{\mu_0I}{2\pi s}.

s>as>a の結果は、導線のまわりの磁場(第5章 §5.3)と同じ形である。極板の間の外側から見ると、変位電流は導線の伝導電流がそのまま続いているように見える。2. 極板の面積は πa2=7.854×10−3 m2\pi a^2=7.854\times10^{-3}\,\mathrm{m^2} なので

∂E∂t=Iε0πa2=0.50(8.854×10−12)(7.854×10−3) V/(m⋅s)=7.19×1012 V/(m⋅s).\frac{\partial E}{\partial t}=\frac{I}{\varepsilon_0\pi a^2}=\frac{0.50}{(8.854\times10^{-12})(7.854\times10^{-3})}\,\mathrm{V/(m\cdot s)}=7.19\times10^{12}\,\mathrm{V/(m\cdot s)} .

縁での磁場は

B(a)=μ0I2πa=(2.0×10−7 T⋅m/A)(0.50 A)0.050 m=2.0×10−6 T.B(a)=\frac{\mu_0I}{2\pi a}=\frac{(2.0\times10^{-7}\,\mathrm{T\cdot m/A})(0.50\,\mathrm A)}{0.050\,\mathrm m}=2.0\times10^{-6}\,\mathrm T .

地磁気(約 5×10−5 T5\times10^{-5}\,\mathrm T)の数十分の一で、直接測るには工夫が要る大きさである。

例題 8.2 伝導電流と変位電流の比 ★★

オリジナル物質の電気伝導率を σc\sigma_{\mathrm c}、誘電率を ε\varepsilon とする。その中に、振動する電場 E=E0cos⁡ωt\bm{E}=\bm{E}_0\cos\omega t がある。

  1. 伝導電流 σcE\sigma_{\mathrm c}\bm{E} と変位電流 ∂D/∂t\partial\bm{D}/\partial t の振幅の比を求めよ。
  2. 銅について、周波数 f=ω/2π=1.0 GHzf=\omega/2\pi=1.0\,\mathrm{GHz} での比を求めよ。銅の値は次のとおりである。

σc=5.96×107 S/m,ε≃ε0.\sigma_{\mathrm c}=5.96\times10^{7}\,\mathrm{S/m},\qquad \varepsilon\simeq\varepsilon_0 . 3. 海水で、2つの電流の振幅が等しくなる周波数を求めよ。海水の値は次のとおりである。

σc=4.0 S/m,ε=81ε0.\sigma_{\mathrm c}=4.0\,\mathrm{S/m},\qquad \varepsilon=81\varepsilon_0 .

解答
  1. D=εE\bm{D}=\varepsilon\bm{E} なので ∂D/∂t=−εωE0sin⁡ωt\partial\bm{D}/\partial t=-\varepsilon\omega\bm{E}_0\sin\omega t である。2つの振幅は σcE0\sigma_{\mathrm c}E_0 と εωE0\varepsilon\omega E_0 なので、比は

∣Jf∣max⁡∣∂D/∂t∣max⁡=σcεω.\frac{\left\vert \bm{J}_{\mathrm f}\right\vert _{\max}}{\left\vert \partial\bm{D}/\partial t\right\vert _{\max}}=\frac{\sigma_{\mathrm c}}{\varepsilon\omega}.

2つの電流は位相が 90∘90^\circ ずれている。2. 分母の値は

ε0ω=(8.854×10−12)(2π×1.0×109) S/m=5.563×10−2 S/m\varepsilon_0\omega=(8.854\times10^{-12})(2\pi\times1.0\times10^{9})\,\mathrm{S/m}=5.563\times10^{-2}\,\mathrm{S/m}

なので

σcε0ω=5.96×1075.563×10−2=1.07×109.\frac{\sigma_{\mathrm c}}{\varepsilon_0\omega}=\frac{5.96\times10^{7}}{5.563\times10^{-2}}=1.07\times10^{9}.

銅の中では、マイクロ波の周波数でも変位電流は伝導電流の 10−910^{-9} 倍しかない。3. σc=εω\sigma_{\mathrm c}=\varepsilon\omega のとき、つまり f=σc/(2πε)f=\sigma_{\mathrm c}/(2\pi\varepsilon) で等しくなる。

f=4.02π×81×8.854×10−12 Hz=4.04.506×10−9 Hz=8.9×108 Hz.f=\frac{4.0}{2\pi\times81\times8.854\times10^{-12}}\,\mathrm{Hz}=\frac{4.0}{4.506\times10^{-9}}\,\mathrm{Hz}=8.9\times10^{8}\,\mathrm{Hz}.

海水は、約 0.9 GHz0.9\,\mathrm{GHz} より低い周波数では導体のように、高い周波数では誘電体のように振る舞う。導体の中の電磁波の減衰(第9章 §9.2)を論じるときは、この比が1より大きいか小さいかで近似を使い分ける。

確認テスト

オリジナル

  1. 8.1-1 変位電流密度 ε0∂E/∂t\varepsilon_0\partial\bm{E}/\partial t の単位が、電流密度の単位 A/m2\mathrm{A/m^2} と同じであることを確かめよ。

  2. 8.1-2 同心の導体球の間を、一様な物質で満たす。内球の半径は aa、外球の内半径は bb である。物質の電気伝導率は σc\sigma_{\mathrm c}、誘電率は ε\varepsilon である。時刻 0 に内球に電荷 Q0Q_0、外球に −Q0-Q_0 を与えると、電荷は物質を通って漏れる。

    1. (a) 内球の電荷 Q(t)Q(t) を求めよ。
    2. (b) 極板の間のどこでも Jf+∂D/∂t=0\bm{J}_{\mathrm f}+\partial\bm{D}/\partial t=\bm{0} となることを示せ。
    3. (c) このとき磁場が 0 であることを、対称性から説明せよ。
  3. 8.1-3 湿った土で、伝導電流と変位電流の振幅が等しくなる周波数を求めよ。湿った土の値は次のとおりである。

σc=1.0×10−2 S/m,ε=10ε0.\sigma_{\mathrm c}=1.0\times10^{-2}\,\mathrm{S/m},\qquad \varepsilon=10\varepsilon_0 . 4. 8.1-4 物質中の Maxwell 方程式 (8.13) の第1式と第4式から、自由電荷の連続の式 ∇⋅Jf+∂ρf/∂t=0\nabla\cdot\bm{J}_{\mathrm f}+\partial\rho_{\mathrm f}/\partial t=0 を導け。

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