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スカラー・ベクトルポテンシャルとゲージ

2026年10月15日20分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第8章 Maxwell 方程式と保存則
目次
  1. ポテンシャルの導入
  2. ゲージ変換
  3. ポテンシャルが満たす方程式
  4. Coulomb ゲージ
  5. Lorenz ゲージ
  6. 確認テスト
  7. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第8章 §8.2 ★★★ 斉次の2本を B=∇×A\bm{B}=\nabla\times\bm{A}、E=−∇ϕ−∂A/∂t\bm{E}=-\nabla\phi-\partial\bm{A}/\partial t で解き、残りの2本をポテンシャルの方程式に直す。ゲージを選ぶと式が簡単になる

ポテンシャルの導入

Maxwell 方程式のうち、源を含まない (8.7) と (8.8) の2本は、ポテンシャルを使うと恒等的に満たされる。(8.7) の ∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 から、第1章 §1.3 の Helmholtz の分解(発散の無い場は回転で書ける)により、

B=∇×A(8.15)\bm{B}=\nabla\times\bm{A}\tag{8.15}

となるベクトル場 A\bm{A} がある。これは第5章 §5.4 で静磁場について導入したベクトルポテンシャルと同じ形で、時間変化する場でもそのまま使える。(8.15) を (8.8) に入れると

∇×E=−∂∂t∇×A⟹∇×(E+∂A∂t)=0\nabla\times\bm{E}=-\frac{\partial }{\partial t}\nabla\times\bm{A}\quad\Longrightarrow\quad \nabla\times\Bigl(\bm{E}+\frac{\partial \bm{A}}{\partial t}\Bigr)=\bm{0}

となる。回転が 0 の場は(全空間のような単連結な領域では)勾配で書ける(第1章 §1.3)。そのため、あるスカラー場 ϕ\phi を使ってE+∂A/∂t=−∇ϕ\bm{E}+\partial\bm{A}/\partial t=-\nabla\phi と書ける。まとめると

E=−∇ϕ−∂A∂t,B=∇×A.(8.16)\bm{E}=-\nabla\phi-\frac{\partial \bm{A}}{\partial t},\qquad \bm{B}=\nabla\times\bm{A} .\tag{8.16}

ϕ\phi をスカラーポテンシャル、A\bm{A} をベクトルポテンシャルと呼ぶ。静的な場では ∂A/∂t=0\partial\bm{A}/\partial t=\bm{0} なので、ϕ\phi は第2章の電位に戻る。時間変化する場では、電場は電位の勾配だけでは書けず、−∂A/∂t-\partial\bm{A}/\partial t の部分を持つ。この部分が第7章の誘導起電力の源である。

ゲージ変換

(8.16) を満たすポテンシャルは一通りには決まらない。

命題 8.3(ゲージ変換)

任意の(2回微分可能な)関数 Λ(r,t)\Lambda(\bm{r},t) について

A′=A+∇Λ,ϕ′=ϕ−∂Λ∂t(8.17)\bm{A}'=\bm{A}+\nabla\Lambda,\qquad \phi'=\phi-\frac{\partial \Lambda}{\partial t}\tag{8.17}

とおく。新しい組 (ϕ′,A′)(\phi',\bm{A}') は、もとの組と同じ電場と磁場を表す。逆に、同じ電場と磁場を表す2組のポテンシャルは、(単連結な領域で)ある Λ\Lambda による (8.17) の形で結ばれる。

証明

∇×∇Λ=0\nabla\times\nabla\Lambda=\bm{0} より ∇×A′=∇×A=B\nabla\times\bm{A}'=\nabla\times\bm{A}=\bm{B}。また

−∇ϕ′−∂A′∂t=−∇ϕ+∇∂Λ∂t−∂A∂t−∂∂t∇Λ=−∇ϕ−∂A∂t=E.-\nabla\phi'-\frac{\partial \bm{A}'}{\partial t}=-\nabla\phi+\nabla\frac{\partial \Lambda}{\partial t}-\frac{\partial \bm{A}}{\partial t}-\frac{\partial }{\partial t}\nabla\Lambda=-\nabla\phi-\frac{\partial \bm{A}}{\partial t}=\bm{E} .

逆を示す。2組の差を次のようにおく。

a=A′−A,φ=ϕ′−ϕ.\bm{a}=\bm{A}'-\bm{A},\qquad \varphi=\phi'-\phi .

  1. ベクトルポテンシャルの差は勾配である。磁場が等しいので ∇×a=0\nabla\times\bm{a}=\bm{0} である。そのため、a=∇Λ\bm{a}=\nabla\Lambda となる関数がある(各時刻で勾配の形に書く。Λ\Lambda は時間に依存してよい)。
  2. スカラーポテンシャルの差は時間だけの関数を除いて決まる。電場が等しいことから

−∇φ−∂a∂t=0,つまり∇(φ+∂Λ∂t)=0-\nabla\varphi-\frac{\partial \bm{a}}{\partial t}=\bm{0},\qquad\text{つまり}\quad \nabla\Bigl(\varphi+\frac{\partial \Lambda}{\partial t}\Bigr)=\bm{0}

となる。よって φ+∂Λ/∂t\varphi+\partial\Lambda/\partial t は、空間によらない時間の関数 f(t)f(t) である。3. その関数は Λ\Lambda に吸収できる。Λ\Lambda を Λ−∫tf(t′) dt′\Lambda-\int^tf(t')\,\mathrm{d} t' に取り替えても、その勾配は変わらない。この取り替えのあとでは φ=−∂Λ/∂t\varphi=-\partial\Lambda/\partial t となる。

Λ\Lambda をゲージ関数、(8.17) をゲージ変換と呼ぶ。観測にかかる量は Lorentz 力を通じて E\bm{E} と B\bm{B} だけなので、ゲージ変換で移り合うポテンシャルは物理的に同じ状態を表す。ゲージの自由度は、問題に合わせてポテンシャルに条件を1つ課して、式を簡単にするために使う。

ポテンシャルは便宜のための量か

  • 古典電磁気学では、E\bm{E} と B\bm{B} が決まれば運動は決まるので、ポテンシャルは計算を楽にするための補助の量とみなしてよい。
  • 量子力学では、荷電粒子の Schrödinger 方程式にポテンシャルが直接入り、ゲージ変換は波動関数の位相の変換 ψ→eiqΛ/ℏψ\psi\to\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar}\psi と組になる。磁場が無い所を通る電子の干渉が A\bm{A} の線積分に依存する現象(Aharonov–Bohm 効果)があり、ポテンシャルの役割は古典論より大きい。

ポテンシャルが満たす方程式

残りの2本、(8.6) と (8.9) をポテンシャルで書く。(8.16) を (8.6) に入れると

∇2ϕ+∂∂t(∇⋅A)=−ρε0.(8.18)\nabla^2\phi+\frac{\partial }{\partial t}(\nabla\cdot\bm{A})=-\frac{\rho}{\varepsilon_0}.\tag{8.18}

(8.9) に入れ、第1章 §1.1 の恒等式 ∇×(∇×A)=∇(∇⋅A)−∇2A\nabla\times(\nabla\times\bm{A})=\nabla(\nabla\cdot\bm{A})-\nabla^2\bm{A} を使うと

∇(∇⋅A)−∇2A=μ0J+1c2∂∂t(−∇ϕ−∂A∂t)\nabla(\nabla\cdot\bm{A})-\nabla^2\bm{A}=\mu_0\bm{J}+\frac{1}{c^2}\frac{\partial }{\partial t}\Bigl(-\nabla\phi-\frac{\partial \bm{A}}{\partial t}\Bigr)

となる。整理して

∇2A−1c2∂2A∂t2−∇(∇⋅A+1c2∂ϕ∂t)=−μ0J.(8.19)\nabla^2\bm{A}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial ^2\bm{A}}{\partial t^2}-\nabla\Bigl(\nabla\cdot\bm{A}+\frac{1}{c^2}\frac{\partial \phi}{\partial t}\Bigr)=-\mu_0\bm{J} .\tag{8.19}

(8.18) と (8.19) は ϕ\phi と A\bm{A} が絡み合った形をしている。ゲージの自由度を使って、∇⋅A\nabla\cdot\bm{A} を決める条件を課すと、絡み合いがほどける。

Coulomb ゲージ

定義 8.4(Coulomb ゲージ)

条件 ∇⋅A=0\nabla\cdot\bm{A}=0 を満たすポテンシャルの選び方を Coulomb ゲージと呼ぶ。

任意のポテンシャル (ϕ,A)(\phi,\bm{A}) から Coulomb ゲージに移れることを確かめる。(8.17) の変換で

∇⋅A′=∇⋅A+∇2Λ\nabla\cdot\bm{A}'=\nabla\cdot\bm{A}+\nabla^2\Lambda

となるので、Λ\Lambda を Poisson 方程式 ∇2Λ=−∇⋅A\nabla^2\Lambda=-\nabla\cdot\bm{A} の解に選べばよい。この解は第1章 §1.3 の公式で

Λ(r,t)=14π∫∇′⋅A(r′,t)∣r−r′∣ dV′\Lambda(\bm{r},t)=\frac{1}{4\pi}\int\frac{\nabla'\cdot\bm{A}(\bm{r}',t)}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\,\mathrm{d} V'

と書ける(∇⋅A\nabla\cdot\bm{A} が遠方で十分速く減る場合)。

Coulomb ゲージでは (8.18) の第2項が消え、

∇2ϕ=−ρε0⟹ϕ(r,t)=14πε0∫ρ(r′,t)∣r−r′∣ dV′(8.20)\nabla^2\phi=-\frac{\rho}{\varepsilon_0}\quad\Longrightarrow\quad \phi(\bm{r},t)=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\int\frac{\rho(\bm{r}',t)}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\,\mathrm{d} V'\tag{8.20}

となる。スカラーポテンシャルは、同じ時刻の電荷分布がつくる Coulomb の電位そのものである。ゲージの名前はここに由来する。(8.19) は

∇2A−1c2∂2A∂t2=−μ0J+1c2∇∂ϕ∂t(8.21)\nabla^2\bm{A}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial ^2\bm{A}}{\partial t^2}=-\mu_0\bm{J}+\frac{1}{c^2}\nabla\frac{\partial \phi}{\partial t}\tag{8.21}

となる。右辺の発散をとると、(8.20) と連続の式から

∇⋅(−μ0J+1c2∇∂ϕ∂t)=−μ0∇⋅J+1c2∂∂t(−ρε0)=−μ0(∇⋅J+∂ρ∂t)=0\nabla\cdot\Bigl(-\mu_0\bm{J}+\frac{1}{c^2}\nabla\frac{\partial \phi}{\partial t}\Bigr)=-\mu_0\nabla\cdot\bm{J}+\frac{1}{c^2}\frac{\partial }{\partial t}\Bigl(-\frac{\rho}{\varepsilon_0}\Bigr) =-\mu_0\Bigl(\nabla\cdot\bm{J}+\frac{\partial \rho}{\partial t}\Bigr)=0

となる(1/(c2ε0)=μ01/(c^2\varepsilon_0)=\mu_0 を使った)。右辺は発散の無い部分(横成分)だけを持ち、左辺の ∇⋅A=0\nabla\cdot\bm{A}=0 と両立している。

Helmholtz の分解で、J\bm{J} を回転の無い縦の部分と発散の無い横の部分に分ける。右辺第2項 ∇∂tϕ/c2\nabla\partial_t\phi/c^2 は、ちょうど縦の部分 μ0J∥\mu_0\bm{J}_{\parallel} を打ち消す。そのため、(8.21) の右辺は横の部分 −μ0J⊥-\mu_0\bm{J}_{\perp} だけになる。

Coulomb ゲージの ϕ\phi は瞬時に伝わるか

  • (8.20) によれば、電荷が動いた瞬間に遠くの ϕ\phi も変わる。これは信号が光速より速く伝わることを意味しない。
  • 観測にかかる電場は E=−∇ϕ−∂A/∂t\bm{E}=-\nabla\phi-\partial\bm{A}/\partial t で、A\bm{A} の側にも瞬時の部分が含まれ、両者の瞬時の部分は電場の中で打ち消し合う。結果として E\bm{E} と B\bm{B} は光速で伝わる(第11章 §11.1 の遅延ポテンシャルで確かめる)。
  • ポテンシャルはゲージによって変わる量なので、ポテンシャルの伝わり方から因果律を論じることはできない。

Lorenz ゲージ

定義 8.5(Lorenz ゲージ)

条件

∇⋅A+1c2∂ϕ∂t=0(8.22)\nabla\cdot\bm{A}+\frac{1}{c^2}\frac{\partial \phi}{\partial t}=0\tag{8.22}

を満たすポテンシャルの選び方を Lorenz ゲージと呼ぶ。名前は L. V. Lorenz に由来する(Lorentz 変換の H. A. Lorentz とは別人)。

Lorenz ゲージでは、(8.19) の第3項が消える。(8.18) の ∇⋅A\nabla\cdot\bm{A} を −c−2∂ϕ/∂t-c^{-2}\partial\phi/\partial t に置き換えると、2本の式は同じ形になる。ダランベルシアン

□≔1c2∂2∂t2−∇2(8.23)\Box\coloneqq\frac{1}{c^2}\frac{\partial ^2}{\partial t^2}-\nabla^2\tag{8.23}

を使うと

□ϕ=ρε0,□A=μ0J(8.24)\Box\phi=\frac{\rho}{\varepsilon_0},\qquad \Box\bm{A}=\mu_0\bm{J}\tag{8.24}

となる。ϕ\phi と A\bm{A} の各成分が、源のある波動方程式に別々に従う。源の無い所では右辺が 0 になり、ポテンシャルは速さ cc の波として伝わる。

符号の約束 (8.23) は、計量 ημν=diag(+1,−1,−1,−1)\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1) での ∂μ∂μ\partial_\mu\partial^\mu と一致する。第10章では、ポテンシャルと源を次のように4成分にまとめる。

Aμ=(ϕc,A),Jμ=(cρ,J).A^\mu=\Bigl(\frac{\phi}{c},\bm{A}\Bigr),\qquad J^\mu=(c\rho,\bm{J}).

すると (8.22) は ∂μAμ=0\partial_\mu A^\mu=0 に、(8.24) は □Aμ=μ0Jμ\Box A^\mu=\mu_0J^\mu になり、どちらも Lorentz 変換で形を変えない式になる。

定理 8.6(Lorenz ゲージへ移れることと、残る自由度)

任意のポテンシャル (ϕ,A)(\phi,\bm{A}) に対して、Lorenz 条件 (8.22) を満たすポテンシャルにゲージ変換で移れる。Lorenz 条件を満たすポテンシャルの間のゲージ変換は、□Λ=0\Box\Lambda=0 を満たす Λ\Lambda によるものに限られる。

証明

L≔∇⋅A+c−2∂ϕ/∂tL\coloneqq\nabla\cdot\bm{A}+c^{-2}\partial\phi/\partial t とおく。(8.17) の変換で

L′=∇⋅A+∇2Λ+1c2∂ϕ∂t−1c2∂2Λ∂t2=L−□ΛL'=\nabla\cdot\bm{A}+\nabla^2\Lambda+\frac{1}{c^2}\frac{\partial \phi}{\partial t}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial ^2\Lambda}{\partial t^2}=L-\Box\Lambda

となる。したがって、ゲージ関数を源のある波動方程式 □Λ=L\Box\Lambda=L の解に選べば、変換後の L′L' は 0 になる。この方程式の解は、(8.24) の解と同じ方法(第11章 §11.1 の遅延ポテンシャルの公式)で具体的に書ける。後半は、変換の前後でともに LL が 0 である条件が □Λ=0\Box\Lambda=0 であることから直ちに従う。

残った自由度 □Λ=0\Box\Lambda=0 は、源の無い所でさらに条件を課すのに使う。第9章では、真空中の平面波について ϕ=0\phi=0 と ∇⋅A=0\nabla\cdot\bm{A}=0 を同時に満たす選び方(Coulomb ゲージでもあり Lorenz ゲージでもある)を使う。

2つのゲージの使い分け

  • Coulomb ゲージ:ϕ\phi が静電場と同じ形になり、電磁波を表す自由度は A\bm{A} の横成分だけになる。物質中の放射場や、量子力学で光を扱う場面で使う。
  • Lorenz ゲージ:4つのポテンシャルが同じ波動方程式に従い、式が Lorentz 変換で形を変えない。放射の計算(第11章)と相対論(第10章)で使う。

例題 8.3 一様な電場の2通りのポテンシャル ★★

オリジナル一様で時間変化しない電場 E=E0x^\bm{E}=E_0\hat{\bm{x}} と、B=0\bm{B}=\bm{0} を考える。

  1. 次の2組のポテンシャルが、どちらもこの場を表すことを示せ。

(ϕ1,A1)=(−E0x,0),(ϕ2,A2)=(0,−E0t x^).(\phi_1,\bm{A}_1)=(-E_0x,\bm{0}),\qquad (\phi_2,\bm{A}_2)=(0,-E_0t\,\hat{\bm{x}}). 2. 1組目を2組目に移すゲージ関数 Λ\Lambda を求めよ。3. 2つの組はそれぞれ Coulomb ゲージ、Lorenz ゲージの条件を満たすか。

解答
  1. 1組目と2組目の場は、それぞれ次のとおりである。

1組目:E=−∇(−E0x)−0=E0x^,B=∇×0=0,2組目:E=−∇0−∂∂t(−E0t x^)=E0x^,B=∇×A2=0.\begin{aligned}&\text{1組目:} & \bm{E}&=-\nabla(-E_0x)-\bm{0}=E_0\hat{\bm{x}}, & \bm{B}&=\nabla\times\bm{0}=\bm{0},\\ &\text{2組目:} & \bm{E}&=-\nabla0-\frac{\partial }{\partial t}(-E_0t\,\hat{\bm{x}})=E_0\hat{\bm{x}}, & \bm{B}&=\nabla\times\bm{A}_2=\bm{0} .\end{aligned}

2組目の A2\bm{A}_2 は空間によらないので回転は 0 である。どちらも同じ場を表す。2. ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャルの順に条件を使う。

A2=A1+∇Λ⟹∇Λ=−E0t x^,Λ=−E0tx+f(t),ϕ2=ϕ1−∂Λ∂t⟹0=−E0x+E0x−f′(t),f′(t)=0.\begin{aligned}\bm{A}_2&=\bm{A}_1+\nabla\Lambda &&\Longrightarrow\quad \nabla\Lambda=-E_0t\,\hat{\bm{x}},\quad \Lambda=-E_0tx+f(t),\\ \phi_2&=\phi_1-\frac{\partial \Lambda}{\partial t} &&\Longrightarrow\quad 0=-E_0x+E_0x-f'(t),\quad f'(t)=0 .\end{aligned}

ff は定数で、0 としてよい。答えは Λ=−E0xt\Lambda=-E_0xt である。3. どちらも A\bm{A} の発散は 0 なので Coulomb ゲージである。2つのスカラーポテンシャルはどちらも時間によらないので、Lorenz 条件も満たす。 この例は、2つのゲージ条件を両方満たしてもポテンシャルが一通りに決まらないことを示している。実際、Λ=−E0xt\Lambda=-E_0xt は空間について2回微分しても時間について2回微分しても 0 になる。これは定理 8.6 の残った自由度 □Λ=0\Box\Lambda=0 に当たる。

例題 8.4 一様な磁場の対称ゲージと Landau ゲージ ★★

オリジナル一様な磁場 B=B0z^\bm{B}=B_0\hat{\bm{z}} に対し、次の2つのベクトルポテンシャルを考える。

As=12B×r,AL=B0x y^.\bm{A}_{\mathrm s}=\frac12\bm{B}\times\bm{r},\qquad \bm{A}_{\mathrm L}=B_0x\,\hat{\bm{y}}.

  1. どちらも ∇×A=B\nabla\times\bm{A}=\bm{B} と ∇⋅A=0\nabla\cdot\bm{A}=0 を満たすことを示せ。
  2. AL=As+∇Λ\bm{A}_{\mathrm L}=\bm{A}_{\mathrm s}+\nabla\Lambda となるゲージ関数を求め、それが調和関数であることを確かめよ。
解答
  1. 対称ゲージの成分は

As=12B0z^×(x,y,z)=B02(−y,x,0)\bm{A}_{\mathrm s}=\frac12B_0\hat{\bm{z}}\times(x,y,z)=\frac{B_0}{2}(-y,x,0)

である。回転と発散は次のとおりである。

(∇×As)z=∂xAy−∂yAx=B02+B02=B0,∇⋅As=∂x(−B0y/2)+∂y(B0x/2)=0.\begin{aligned}(\nabla\times\bm{A}_{\mathrm s})_z&=\partial_xA_y-\partial_yA_x=\frac{B_0}{2}+\frac{B_0}{2}=B_0,\\ \nabla\cdot\bm{A}_{\mathrm s}&=\partial_x(-B_0y/2)+\partial_y(B_0x/2)=0 .\end{aligned}

回転の x,yx,y 成分は 0 である。どの成分も zz によらず、しかも Az=0A_z=0 だからである。

Landau ゲージ AL=(0,B0x,0)\bm{A}_{\mathrm L}=(0,B_0x,0) を考える。∂x(B0x)=B0\partial_x(B_0x)=B_0 なので、回転は B0z^B_0\hat{\bm{z}} になる。発散は ∂y(B0x)=0\partial_y(B_0x)=0 である。2. 差は

AL−As=(B0y2,B0x2,0)=∇(B0xy2)\bm{A}_{\mathrm L}-\bm{A}_{\mathrm s}=\Bigl(\frac{B_0y}{2},\frac{B_0x}{2},0\Bigr)=\nabla\Bigl(\frac{B_0xy}{2}\Bigr)

なので、定数の差を除いて Λ=B0xy/2\Lambda=B_0xy/2 である。

∇2Λ=∂x2(B0xy2)+∂y2(B0xy2)=0\nabla^2\Lambda=\partial_x^2\Bigl(\frac{B_0xy}{2}\Bigr)+\partial_y^2\Bigl(\frac{B_0xy}{2}\Bigr)=0

で、Coulomb ゲージどうしを結ぶゲージ関数は調和関数になっている。

  • 対称ゲージは軸のまわりの回転について対称なので、角運動量を扱う問題に向いている。
  • Landau ゲージは yy によらないので、yy 方向の運動量が保存する問題に向いている。

確認テスト

オリジナル

  1. 8.2-1 時間変化する磁場がある所では、電場をスカラーポテンシャルの勾配 −∇ϕ-\nabla\phi だけで書くことができない。その理由を Maxwell 方程式の1本を使って1行で述べよ。
  2. 8.2-2 次のポテンシャルを考える(A0,k,ωA_0,k,\omega は正の定数)。

ϕ=0,A=A0sin⁡(kx−ωt) y^.\phi=0,\qquad \bm{A}=A_0\sin(kx-\omega t)\,\hat{\bm{y}}.

  1. (a) 電場と磁場を求め、このポテンシャルが Coulomb ゲージと Lorenz ゲージの条件をともに満たすことを示せ。
  2. (b) 源の無い真空でこれが Maxwell 方程式の解になるための、ω\omega と kk の関係を求めよ。
  3. (c) そのときの ∣E∣/∣B∣\left\vert \bm{E}\right\vert /\left\vert \bm{B}\right\vert を求めよ。
  4. 8.2-3 次のポテンシャルを考える(β\beta は定数)。

ϕ=0,A=βtx x^.\phi=0,\qquad \bm{A}=\beta tx\,\hat{\bm{x}}.

  1. (a) 電場と磁場を求め、それをつくる電荷密度と電流密度を求めよ。
  2. (b) このポテンシャルが Lorenz 条件を満たさないことを確かめよ。Coulomb ゲージへ移すゲージ関数 Λ\Lambda と、移したあとのポテンシャル (ϕ′,A′)(\phi',\bm{A}') を求めよ。
  3. 8.2-4 Coulomb ゲージを満たす2組のポテンシャルが、無限遠で A→0\bm{A}\to\bm{0} となる条件のもとでは一致することを、ゲージ関数が満たす方程式と第1章 §1.3 の一意性から示せ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

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