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ルジャンドル変換の数学

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第1章 ルジャンドル変換と統計力学の基礎
目次
  1. 動機:導関数で関数を符号化する
  2. なぜ「ただ代入する」ではいけないのか
  3. 接線の切片による定義
  4. 幾何学的意味:接線族の包絡線
  5. 基本的性質
  6. 性質1の証明()
  7. 凸性と二階微分の関係
  8. 多変数の場合と部分ルジャンドル変換
  9. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

統計熱力学入門 第1章 §1.1 ★★★ 統計・熱力学を貫く数学的背骨。共役変数の付け替えという発想が熱力学と統計力学のあらゆる場面で使える。

動機:導関数で関数を符号化する

★★ 傾き p=f′(x)p=f'(x) で関数を符号化する動機。S↔TS\leftrightarrow T 付け替えの原型。

ある凸関数 f(x)f(x) を考える。これを「点ごとの値 (x,f(x))(x,f(x)) の集まり」として記述する代わりに、「各点での接線の集まり」として記述したい、というのがルジャンドル変換の根本動機である。接線の傾きを p=f′(x)p=f'(x) とすると、ff が(狭義)凸なら pp と xx は一対一に対応する。したがって xx の代わりに pp を独立変数に選び替えても情報は失われない。

なぜこんな付け替えが嬉しいのか。物理では、しばしば「自然な独立変数」と「制御しやすい独立変数」が一致しない。たとえばエネルギー U(S,… )U(S,\dots) はエントロピー SS の関数として書くのが自然だが、実験では SS より温度 T=∂U/∂ST=\partial U/\partial S の方が制御しやすい。S↔TS\leftrightarrow T の付け替えこそが、まさにこの傾きと独立変数の交換であり、ルジャンドル変換が熱力学の言語そのものになる理由である。

なぜ「ただ代入する」ではいけないのか

独立変数を xx から pp に替えたいだけなら、p=f′(x)p=f'(x) を xx について解いて x=x(p)x=x(p) を ff に代入し、f~(p)≡f(x(p))\tilde f(p)\equiv f(x(p)) とすればよさそうに見える。ルジャンドル変換がわざわざ pxpx を引くのは何のためか、という疑問はここで必ず生じる。答えは「素朴な代入では情報が落ちるから」であり、例を1つ計算すれば即座に分かる。

f(x)=x2f(x)=x^2 と、それを aa だけ平行移動した g(x)=(x−a)2g(x)=(x-a)^2 を比べる。前者は p=2xp=2x より x=p/2x=p/2、後者は p=2(x−a)p=2(x-a) より x=a+p/2x=a+p/2 である。素朴な代入では

f~(p)=p24,g~(p)=p24\tilde f(p) = \frac{p^2}{4},\qquad \tilde g(p) = \frac{p^2}{4}

となり、両者は完全に一致してしまう。f~\tilde f だけを渡されても、元の放物線がどこにあったか(aa が何だったか)はもはや復元できない。傾きの情報だけでは、グラフを xx 方向に平行移動する自由度が失われるのである。一方ルジャンドル変換では

f∗(p)=p24,g∗(p)=ap+p24f^\ast(p) = \frac{p^2}{4},\qquad g^\ast(p) = a p + \frac{p^2}{4}

となって aa がちゃんと残る。pxpx を引くという一手は、装飾でも形式的な約束でもなく、変数の付け替えで情報を落とさないための最小限の補正である。ここがルジャンドル変換の存在理由であり、f∗∗=ff^{\ast\ast}=f(2回変換すると元に戻る)が成り立つのも、情報が落ちていないことの言い換えにほかならない。

接線の切片による定義

★★★ f∗(p)=sup⁡x[px−f(x)]f^\ast(p)=\sup_x[px-f(x)] の定義。ルジャンドル変換の核。

傾き pp の接線が yy 軸を切る切片を考える。点 xx における接線は

y=f(x)+p (x′−x),p=f′(x)y = f(x) + p\,(x'-x), \qquad p=f'(x)

であり(x′x' が直線の変数)、x′=0x'=0 とおくと切片は f(x)−px=−(px−f(x))f(x)-p x = -(px-f(x)) である。そこで

g(p)≡px−f(x)∣x=x(p),p=f′(x)g(p) \equiv p x - f(x)\Big|_{x=x(p)}, \qquad p=f'(x)

と定義する(切片の符号を反転したもの)。これがルジャンドル変換f∗=gf^\ast=g である。

定義 (title=★★★ 定義:ルジャンドル変換(凸関数の場合))

微分可能な凸関数 f:R→Rf:\mathbb{R}\to\mathbb{R} に対し、そのルジャンドル変換 f∗f^\ast を

 f∗(p)  =  sup⁡x  [ p x−f(x) ] \boxed{\,f^\ast(p) \;=\; \sup_{x}\;\bigl[\,p\,x - f(x)\,\bigr]\,}

で定義する。上限を与える x=x(p)x=x(p) は停留条件

∂∂x[px−f(x)]=0  ⟺  p=f′(x)\frac{\partial }{\partial x}\bigl[px-f(x)\bigr]=0 \;\Longleftrightarrow\; p=f'(x)

で決まる(ff が凸ゆえ停留点は最大点)。このとき

f∗(p)=p x(p)−f(x(p)).f^\ast(p) = p\,x(p) - f\bigl(x(p)\bigr).

sup⁡\sup を用いた定義の利点は、ff が微分可能でなくても、凸でありさえすれば(折れ点や直線部分があっても)意味を持つことである。この形は大偏差理論・統計力学で本質的になる。

幾何学的意味:接線族の包絡線

★ 点と直線の双対性・包絡線像。理解の補強。

ルジャンドル変換は「点と直線の双対性」と理解するのが最も見通しがよい。凸関数 ff のグラフは、それを下から支える接線たちの包絡線(envelope)として完全に再現できる。各傾き pp に対し、対応する接線の切片が −f∗(p)-f^\ast(p) で与えられる。つまり ff の情報は「点集合 {(x,f(x))}\{(x,f(x))\}」と「接線集合 {(p,−f∗(p))}\{(p,-f^\ast(p))\}」のどちらでも等価に表現でき、両者は互いの双対である。

図

基本的性質

★★ 共役対応・対合性・凸性保存・(f∗)′′=1/f′′(f^\ast)''=1/f''。応答関数の関係に直結。

title=★★ ルジャンドル変換の主要な性質

  1. 共役変数の対応:p=f′(x)p=f'(x) かつ x=(f∗)′(p)x=(f^\ast)'(p)。すなわち変換は独立変数 xx とその共役量 pp(傾き)を入れ替える。
  2. 対合性(involution):ff が凸ならば (f∗)∗=f(f^\ast)^\ast=f。二回変換すると元に戻る。
  3. 凸性の保存:f∗f^\ast もまた(下半連続な)凸関数である。
  4. Young の不等式:任意の x,px,p に対し f(x)+f∗(p)≥pxf(x)+f^\ast(p)\ge px。等号は p=f′(x)p=f'(x) のとき。
  5. スケーリング・平行移動:g(x)=f(x)+cg(x)=f(x)+c なら g∗(p)=f∗(p)−cg^\ast(p)=f^\ast(p)-c;g(x)=f(x−a)g(x)=f(x-a) なら g∗(p)=f∗(p)+pag^\ast(p)=f^\ast(p)+pa。

性質1の証明(x=(f∗)′(p)x=(f^\ast)'(p))

f∗(p)=p x(p)−f(x(p))f^\ast(p)=p\,x(p)-f(x(p)) を pp で微分すると、連鎖律で

df∗dp=x(p)+p dxdp−f′(x) dxdp=x(p)+(p−f′(x))⏟=0dxdp=x(p).\frac{\mathrm{d} f^\ast}{\mathrm{d} p} = x(p) + p\,\frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} p} - f'(x)\,\frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} p} = x(p) + \underbrace{\bigl(p-f'(x)\bigr)}_{=0}\frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} p} = x(p).

括弧内は停留条件 p=f′(x)p=f'(x) により消える(これは「包絡線定理」の最も簡単な例である)。したがって ff の傾きが f∗f^\ast の独立変数に、f∗f^\ast の傾きが ff の独立変数になる、という美しい双対性が成り立つ。□\square

凸性と二階微分の関係

p=f′(x)p=f'(x) より dp/dx=f′′(x)\mathrm{d} p/\mathrm{d} x=f''(x)、かつ x=(f∗)′(p)x=(f^\ast)'(p) より dx/dp=(f∗)′′(p)\mathrm{d} x/\mathrm{d} p=(f^\ast)''(p)。両者は逆数の関係にあるから

(f∗)′′(p)=1f′′(x).(f^\ast)''(p) = \frac{1}{f''(x)}.

ff が狭義凸(f′′>0f''>0)なら f∗f^\ast も狭義凸((f∗)′′>0(f^\ast)''>0)である。この「曲率の逆数」関係は、後で熱容量や圧縮率といった応答関数(二階微分量)どうしの関係に直結する。

多変数の場合と部分ルジャンドル変換

★★ 一部の変数だけ付け替える部分変換。熱力学ポテンシャル体系の直接の道具。

多変数 f(x1,…,xn)f(x_1,\dots,x_n) では、変数の一部だけを変換する「部分ルジャンドル変換」が重要になる。たとえば x1x_1 のみを共役変数 p1=∂f/∂x1p_1=\partial f/\partial x_1 に付け替えるとき、

g(p1,x2,…,xn)=sup⁡x1[ p1x1−f(x1,x2,…,xn) ]g(p_1,x_2,\dots,x_n) = \sup_{x_1}\bigl[\,p_1 x_1 - f(x_1,x_2,\dots,x_n)\,\bigr]

とする。変換しなかった変数 x2,…x_2,\dots はそのまま残る。このとき微分の規則は

dg=x1 dp1−∑k≥2∂f∂xk dxk\mathrm{d} g = x_1\,\mathrm{d} p_1 - \sum_{k\ge 2}\frac{\partial f}{\partial x_k}\,\mathrm{d} x_k

となり、x1x_1 と p1p_1 の役割が入れ替わる一方、他の変数の共役量は符号付きで引き継がれる。熱力学ポテンシャルの体系は、まさにこの部分ルジャンドル変換を S,V,NS,V,N の各方向に対して選択的に適用したものに他ならない。

木下の勉強ステータス

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