スピン磁気モーメントと Zeeman 項
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量子力学入門 第5部 第1章 §5.1.7 ★★ Zeeman分裂・スピン磁気モーメント
ここまで電子の軌道運動だけを扱ってきたが、電子はスピンという内部角運動量をもち、それに伴う磁気モーメントで磁場と直接結合する。大きさ のスピン に対して磁気モーメント演算子は
と書け(:モーメントの大きさ)、磁場との結合は
——Zeeman 項である。電子()では
であり、符号が負(モーメントがスピンと反平行)なのは電荷が負だからである。 ちょうど( 因子2)は Dirac 方程式から出る値で、 のずれは電磁場の量子化(QED の異常磁気モーメント)による補正である。なお中性子は電荷をもたないのに磁気モーメントをもつ——内部のクォークの電荷分布の反映であり、「磁気モーメント=電荷の回転」という古典的描像の限界を示す好例である。
一様磁場中の(2次元)電子のハミルトニアンにこの項を加えると
(複号は 、)。ここで面白い数の一致が起こる。もし ちょうどなら、スピン分裂の幅は
——Landau 準位の間隔にぴったり一致する。したがって「 番目の上向きスピン」と「 番目の下向きスピン」が厳密に縮退し、準位のはしごは2本が完全に重なる。実際には 因子の のずれのぶんだけ縮退がわずかに解け、準位はごく僅かに割れた2本組になる——QED 補正がスペクトルの縮退の解け方として直接目に見える、美しい実例である。
図 1.2:磁場中の2次元電子の準位。スピン のはしご(左)と のはしご(右)。 ちょうどならスピン分裂=Landau 間隔で2本のはしごが厳密に重なり、 因子の QED 補正がその縮退をわずかに解く。
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