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Landau ゲージ:並進対称性をあらわに使う解法

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第5部 第1章 電磁場中の荷電粒子
目次
  1. 変数分離の根拠と、 の意味
  2. 縮退度を数える。
  3. 量子ホール効果への一言。
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学入門 第5部 第1章 §5.1.6 ★★ 縮退度の数え方(別解法)

対称ゲージ(前節)は回転対称性を残す取り方だった。同じ一様磁場 B=Be3\bm{B}=B\bm{e}_3 を、今度は並進対称性が見えるゲージ

A=(0, Bx1, 0)\bm{A}=(0,\,Bx_1,\,0)

で表してみよう(Landau ゲージ)。ハミルトニアンは

H^=12m[p^12+(p^2−qBx^1)2]\hat H=\frac{1}{2m}\Bigl[\hat p_1^2+\bigl(\hat p_2-qB\hat x_1\bigr)^2\Bigr]

となり、x^2\hat x_2 がどこにも現れない。ゆえに

[H^, p^2]=0\left[\hat H,\,\hat p_2\right]=0

——x2x_2 方向の並進対称性が保存量 p^2\hat p_2 を与える(対称性 ⇔\Leftrightarrow 保存量の一般定理)。そこで p^2\hat p_2 の固有値 k2k_2(ℏ\hbar 込みの運動量)のセクターに制限すると、p^2→k2\hat p_2\to k_2 と置き換えられて

H^∣k2=p^122m+m2(qBm) ⁣2(x^1−k2qB) ⁣2\hat H\Big|_{k_2}=\frac{\hat p_1^2}{2m}+\frac{m}{2}\Bigl(\frac{qB}{m}\Bigr)^{\!2}\Bigl(\hat x_1-\frac{k_2}{qB}\Bigr)^{\!2}

——中心が x1(0)=k2/qBx_1^{(0)}=k_2/qB にずれた調和振動子(角振動数 ωc=∣qB∣/m\omega_c=|qB|/m)に帰着する。固有値は中心の位置によらず

En=ℏωc(n+12)E_n=\hbar\omega_c\Bigl(n+\frac12\Bigr)

で、Landau 準位が再現された。k2k_2 を変えても EE が変わらない——これが縮退の正体であり、保存量 p^2\hat p_2 が生む縮退として見えている。

変数分離の根拠と、k2k_2 の意味

上で「p^2→k2\hat p_2\to k_2 と置き換えた」操作には根拠がある。また k2k_2 は運動量の名前を持つが、粒子の速度を表してはいない。次の5つで整理する。

  1. 指数関数の形は仮定でなく帰結である。交換子 [H^, p^2]\left[\hat H,\,\hat p_2\right] が0なので、2つの演算子の同時固有状態を取れる。p^2\hat p_2 の固有値方程式を x2x_2 について解くと、指数関数が出る。

−iℏ ∂ψ∂x2=k2ψ⟹ψ(x1,x2)=eik2x2/ℏf(x1).-\mathrm{i}\hbar\,\frac{\partial\psi}{\partial x_2}=k_2\psi\quad\Longrightarrow\quad\psi(x_1,x_2)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_2x_2/\hbar}f(x_1).

ff は積分定数の役をする x1x_1 の関数である。同じ Landau 準位の状態どうしは同じエネルギーを持つので、異なる k2k_2 の重ね合わせも H^\hat H の固有状態で、一般の固有状態はその形をとる。2. k2k_2 は正準運動量の固有値で、mv2mv_2 ではない。速度に比例するのは力学的運動量 π^2=p^2−qBx^1\hat\pi_2=\hat p_2-qB\hat x_1 のほうである。上の状態に作用させると (k2−qBx1)ψ(k_2-qBx_1)\psi になり、係数が位置によるので π^2\hat\pi_2 の値は確定しない。期待値は、振動子の中心 x1(0)=k2/qBx_1^{(0)}=k_2/qB を使って

⟨π^2⟩=k2−qB⟨x^1⟩=k2−qB x1(0)=0\langle \hat\pi_2 \rangle =k_2-qB\langle \hat x_1 \rangle =k_2-qB\,x_1^{(0)}=0

になる。粒子は円軌道を回るので、x2x_2 方向の平均の速度は0である。k2k_2 は速度ではなく、軌道の中心 x1(0)x_1^{(0)} を指すラベルである。

このゲージでは案内中心が X^=p^2/qB\hat X=\hat p_2/qB と書け、k2k_2 はその固有値の定数倍にあたる。3次元で磁場の向きの運動まで含めると、A3=0A_3=0 なので π^3=p^3\hat\pi_3=\hat p_3 となり、こちらは速度に比例する。3. k2k_2 がよい量子数になるのはゲージの選び方による。前節の対称ゲージ A=B2(−x2,x1,0)\bm{A}=\frac B2(-x_2,x_1,0) では、ハミルトニアンが座標 x2x_2 を含むので、この方向の正準運動量は保存しない。同じ磁場でも、どの正準運動量が保存するかはゲージで変わる。ゲージによらず保存するのは案内中心(磁気並進、次節の発展)である。4. 演算子の積の順序。ハミルトニアンの2乗を展開するとき、p^⋅A\hat{\bm{p}}\cdot\bm{A} と A⋅p^\bm{A}\cdot\hat{\bm{p}} は一般に異なる。p^⋅A\hat{\bm{p}}\cdot\bm{A} は右のすべてに作用する微分なので、関数 ψ\psi に作用させると積の微分になる。

∇⋅(Aψ)=(div⁡A) ψ+A⋅∇ψ⟹p^⋅A=A⋅p^−iℏ (div⁡A).\nabla\cdot(\bm{A}\psi)=(\operatorname{div}\bm{A})\,\psi+\bm{A}\cdot\nabla\psi \quad\Longrightarrow\quad \hat{\bm{p}}\cdot\bm{A}=\bm{A}\cdot\hat{\bm{p}}-\mathrm{i}\hbar\,(\operatorname{div}\bm{A}).

左辺の ∇⋅\nabla\cdot は右のすべてに作用する演算子で、右辺の div⁡A\operatorname{div}\bm{A} はベクトルポテンシャルの発散(ただの関数)である。Landau ゲージでも対称ゲージでも div⁡A=0\operatorname{div}\bm{A}=0 なので、2つの順序は等しい。5. 中心をずらす変数変換。ξ=x1−x1(0)\xi=x_1-x_1^{(0)} と置くと d/dx1=d/dξ\mathrm{d}/\mathrm{d} x_1=\mathrm{d}/\mathrm{d}\xi で、ハミルトニアンは新しい変数について標準形の振動子になる。固有値は中心によらず、固有関数は平行移動した φn(x1−x1(0))\varphi_n(x_1-x_1^{(0)}) である。平方完成で定数を固有値の側へ移す手順は、分冊『基礎の道具立て』の調和振動子の章で扱った。

例題 1.10(Landau ゲージの k2k_2 と、ゲージによる違い ★)

オリジナル一様磁場 B=Be3\bm{B}=B\bm{e}_3 の中の電荷 qq の粒子を考え、運動は面内に限る。

  • (1) Landau ゲージ A=(0,Bx1,0)\bm{A}=(0,Bx_1,0) で、次の状態の ⟨π^2⟩\langle \hat\pi_2 \rangle を求めよ。関数 φ0\varphi_0 は実の Gauss 関数とする。

ψ=eik2x2/ℏφ0(x1−x1(0))\psi=\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_2x_2/\hbar}\varphi_0\bigl(x_1-x_1^{(0)}\bigr)

  • (2) 対称ゲージ A=B2(−x2,x1,0)\bm{A}=\frac B2(-x_2,x_1,0) で、交換子 [H^, p^2]\left[\hat H,\,\hat p_2\right] を求めよ。
  • (3) A=(x12,0,0)\bm{A}=(x_1^2,0,0) のとき、p^⋅A−A⋅p^\hat{\bm{p}}\cdot\bm{A}-\bm{A}\cdot\hat{\bm{p}} を求めよ。
解答

(1) π^2ψ=(k2−qBx1)ψ\hat\pi_2\psi=(k_2-qBx_1)\psi なので、期待値は k2−qB⟨x1⟩k_2-qB\langle x_1 \rangle である。確率密度 ∣φ0∣2|\varphi_0|^2 は中心 x1(0)=k2/qBx_1^{(0)}=k_2/qB について対称なので、位置の期待値は中心の値に等しい。したがって

⟨π^2⟩=k2−qB⋅k2qB=0.\langle \hat\pi_2 \rangle =k_2-qB\cdot\frac{k_2}{qB}=0 .

(2) 対称ゲージのハミルトニアンは

H^=12m[(p^1+qB2x^2)2+(p^2−qB2x^1)2]\hat H=\frac{1}{2m}\Bigl[\Bigl(\hat p_1+\frac{qB}2\hat x_2\Bigr)^2+\Bigl(\hat p_2-\frac{qB}2\hat x_1\Bigr)^2\Bigr]

で、p^2\hat p_2 と交換しないのは x^2\hat x_2 を含む第1項だけである。[x^2, p^2]=iℏ\left[\hat x_2,\,\hat p_2\right]=\mathrm{i}\hbar を使うと

[H^, p^2]=12m⋅2(p^1+qB2x^2)⋅qB2 iℏ=iℏqB2m π^1\left[\hat H,\,\hat p_2\right]=\frac{1}{2m}\cdot2\Bigl(\hat p_1+\frac{qB}2\hat x_2\Bigr)\cdot\frac{qB}{2}\,\mathrm{i}\hbar=\frac{\mathrm{i}\hbar qB}{2m}\,\hat\pi_1

で、0 でない(π^1=p^1+qB2x^2\hat\pi_1=\hat p_1+\frac{qB}{2}\hat x_2 は対称ゲージの力学的運動量)。対称ゲージでは p^2\hat p_2 は保存しない。

(3) div⁡A=∂1(x12)=2x1\operatorname{div}\bm{A}=\partial_1(x_1^2)=2x_1 なので、p^⋅A−A⋅p^=−iℏ⋅2x1=−2iℏx1\hat{\bm{p}}\cdot\bm{A}-\bm{A}\cdot\hat{\bm{p}}=-\mathrm{i}\hbar\cdot2x_1=-2\mathrm{i}\hbar x_1 である。この A\bm{A} の回転は0なので磁場はないが、順序を入れ替えると定数でない差が出る。

縮退度を数える。

x2x_2 方向に周期境界条件(長さ L2L_2)を課すと k2k_2 は

k2=2πℏL2 l(l∈Z)k_2=\frac{2\pi\hbar}{L_2}\,l\qquad(l\in\mathbb Z)

に離散化される。一方、振動子の中心 x1(0)=k2/qB=2πℏl/(qBL2)x_1^{(0)}=k_2/qB=2\pi\hbar l/(qBL_2) が試料 0≤x1≤L10\le x_1\le L_1 の中に入っていなければならないから

0 ≤ l ≤ qB L1L22πℏ.0\ \le\ l\ \le\ \frac{qB\,L_1L_2}{2\pi\hbar}.

したがって1つの Landau 準位に入る状態数は

 NB=∣q∣B L1L22πℏ=ΦΦ0 (Φ=BL1L2,  Φ0=2πℏ∣q∣)\boxed{\ N_B=\frac{|q|B\,L_1L_2}{2\pi\hbar}=\frac{\Phi}{\Phi_0}\ }\qquad \Bigl(\Phi=BL_1L_2,\ \ \Phi_0=\frac{2\pi\hbar}{|q|}\Bigr)

——単位面積あたり ∣q∣B/2πℏ|q|B/2\pi\hbar 個、全体で「試料を貫く磁束量子の本数」。これは前節までに案内中心の代数([X^, Y^]=iℓB2\left[\hat X,\,\hat Y\right]=\mathrm{i}\ell_B^2 から1状態あたり面積 2πℓB22\pi\ell_B^2)で得た結果と完全に一致する。同じ答えが「非可換位相空間の最小面積」からも「並進対称性の量子化された保存量の数え上げ」からも出る——縮退度 Φ/Φ0\Phi/\Phi_0 がゲージの取り方によらない物理量であることの、何よりの検証である。

量子ホール効果への一言。

2次元電子系(q=−eq=-e)に電子を NN 個入れると、占有率(filling factor)ν:=N/NB\nu:=N/N_B が定義できる。ν\nu がちょうど整数のとき、Hall 伝導度 σxy\sigma_{xy} は

σxy=ν e22πℏ=ν e2h\sigma_{xy}=\nu\,\frac{e^2}{2\pi\hbar}=\nu\,\frac{e^2}{h}

に量子化されてプラトーを作る(整数量子ホール効果)。この量子化が乱れに対して異常に頑健である理由(位相不変量)は次節「発展」で触れる。

木下の勉強ステータス

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