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量子ビットと1量子ビットゲート

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第1章 量子計算の基礎
目次
  1. 量子ビット
  2. Pauli行列
  3. 1量子ビットゲートとBloch球上の回転
  4. ZYZ分解(Euler角分解)
  5. よく使う1量子ビットゲート
  6. 物理実装の例
  7. 超伝導量子ビット(トランズモン)
  8. イオントラップ
  9. 光子(線形光学)
  10. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子情報入門 第1章 §1.1

量子ビット

古典ビットが 00 か 11 のいずれかの値を取るのに対し、量子ビット(qubit)は2次元Hilbert空間 C2\mathbb C^2 の単位ベクトル

∣ψ⟩=α∣0⟩+β∣1⟩,∣α∣2+∣β∣2=1\ket{\psi} = \alpha\ket{0} + \beta\ket{1},\qquad |\alpha|^2 + |\beta|^2 = 1

として表される。ここで ∣0⟩,∣1⟩\ket{0}, \ket{1} は計算基底と呼ばれる正規直交基底である。全体位相 eiφ∣ψ⟩e^{i\varphi}\ket{\psi} は物理的に区別できないので、∣ψ⟩\ket{\psi} は本質的には CP1\mathbb{CP}^1 の点、すなわちBloch球面上の1点で表される。

具体的には α=cos⁡(θ/2)\alpha=\cos(\theta/2), β=eiϕsin⁡(θ/2)\beta = e^{i\phi}\sin(\theta/2) とパラメトライズして

∣ψ⟩=cos⁡θ2∣0⟩+eiϕsin⁡θ2∣1⟩\ket{\psi} = \cos\frac{\theta}{2}\ket 0 + e^{i\phi}\sin\frac{\theta}{2}\ket 1

と書けば、(θ,ϕ)(\theta,\phi) はBloch球 S2S^2 上の極座標を与える。∣0⟩\ket 0 は北極、∣1⟩\ket 1 は南極、∣±⟩=(∣0⟩±∣1⟩)/2\ket{\pm}=(\ket0\pm\ket1)/\sqrt2 は赤道上に、∣±i⟩=(∣0⟩±i∣1⟩)/2\ket{\pm i}=(\ket0\pm i\ket1)/\sqrt2 は別の赤道上の点に配置される。

Pauli行列

以降よく使うPauli行列を確認しておく:

I=(1001),X=(0110),Y=(0−ii0),Z=(100−1).I = \begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix},\quad X = \begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix},\quad Y = \begin{pmatrix}0&-i\\i&0\end{pmatrix},\quad Z = \begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}.

これらは X2=Y2=Z2=IX^2=Y^2=Z^2=I, XY=iZXY=iZ(および巡回), {X,Y}={Y,Z}={Z,X}=0\{X,Y\}=\{Y,Z\}=\{Z,X\}=0 を満たす。XX はビット反転、ZZ は位相反転、Y=iXZY=iXZ は両方を同時に行う演算子である。

Bloch球の観点では、X,Y,ZX,Y,Z の期待値がそれぞれBlochベクトルの x,y,zx,y,z 成分を与える:

⟨X⟩=sin⁡θcos⁡ϕ,⟨Y⟩=sin⁡θsin⁡ϕ,⟨Z⟩=cos⁡θ.\langle X\rangle = \sin\theta\cos\phi,\quad \langle Y\rangle=\sin\theta\sin\phi,\quad \langle Z\rangle = \cos\theta.

U(n),SU(n),SO(3)\mathrm U(n),\mathrm{SU}(n),\mathrm{SO}(3)

先によく使う行列群を整理しておく。

  • U(n)\mathrm U(n)(ユニタリ群):U†U=IU^\dagger U = I を満たす n×nn\times n 複素行列の集合。「内積を保つ線形変換」に相当し、量子力学の可逆な時間発展を記述する。det⁡U\det U は絶対値 11 の複素数(任意の位相)。
  • SU(n)\mathrm{SU}(n)(特殊ユニタリ群):U(n)\mathrm U(n) の元のうち det⁡U=1\det U = 1 を満たすもの。U(n)\mathrm U(n) の元は eiφ⋅Ve^{i\varphi}\cdot V(V∈SU(n)V\in\mathrm{SU}(n))と一意に分解でき、全体位相を除けば SU(n)\mathrm{SU}(n)。実パラメータ数は U(2)\mathrm U(2) が 44、SU(2)\mathrm{SU}(2) が 33。
  • SO(3)\mathrm{SO}(3)(特殊直交群):RTR=IR^TR = I かつ det⁡R=1\det R = 1 を満たす 3×33\times 3 実行列。3次元Euclid空間の回転の集合。

量子ビットでは全体位相は物理的意味を持たないから、1量子ビットゲートは実質的に SU(2)\mathrm{SU}(2) の元と思えばよい。さらに、Blochベクトル r⃗=(⟨X⟩,⟨Y⟩,⟨Z⟩)\vec r = (\langle X\rangle,\langle Y\rangle,\langle Z\rangle) の変換 r⃗↦Rr⃗\vec r\mapsto R\vec r を考えれば、SU(2)\mathrm{SU}(2) の元 UU から SO(3)\mathrm{SO}(3) の元 RR が定まる。ただし UU と −U-U は同じ RR を与えるから、対応 SU(2)→SO(3)\mathrm{SU}(2)\to\mathrm{SO}(3) は2対1の被覆写像である。これが後述する「半角の由来」の正体である。

1量子ビットゲートとBloch球上の回転

上記より、1量子ビットゲートは(全体位相を除き)SU(2)\mathrm{SU}(2) の元と見なせる。SU(2)\mathrm{SU}(2) の任意の元は、単位ベクトル n^=(nx,ny,nz)∈S2\hat n=(n_x,n_y,n_z)\in S^2 と角度 θ∈[0,4π)\theta\in[0,4\pi) を用いて

Rn^(θ)≡exp⁡ ⁣(−iθ2 n^⋅σ⃗)=cos⁡θ2 I−isin⁡θ2 (n^⋅σ⃗)(1.1)R_{\hat n}(\theta) \equiv \exp\!\left(-i\frac{\theta}{2}\,\hat n\cdot\vec\sigma\right) = \cos\frac{\theta}{2}\,I - i\sin\frac{\theta}{2}\,(\hat n\cdot\vec\sigma)\tag{1.1}

と書ける。ここで σ⃗=(X,Y,Z)\vec\sigma=(X,Y,Z) で、右辺の展開は (n^⋅σ⃗)2=I(\hat n\cdot\vec\sigma)^2=I という関係(Pauli行列の反交換関係から従う)による指数関数のテイラー展開から得られる。

この作用素はBlochベクトルを軸 n^\hat n 周りに角度 θ\theta だけ回転させる(3次元Euclid空間の意味での回転)。特に軸ごとの回転

Rx(θ)=(cos⁡θ2−isin⁡θ2−isin⁡θ2cos⁡θ2),Ry(θ)=(cos⁡θ2−sin⁡θ2sin⁡θ2cos⁡θ2),Rz(θ)=(e−iθ/200eiθ/2)R_x(\theta) = \begin{pmatrix}\cos\frac\theta2 & -i\sin\frac\theta2\\ -i\sin\frac\theta2 & \cos\frac\theta2\end{pmatrix},\quad R_y(\theta) = \begin{pmatrix}\cos\frac\theta2 & -\sin\frac\theta2\\ \sin\frac\theta2 & \cos\frac\theta2\end{pmatrix},\quad R_z(\theta) = \begin{pmatrix}e^{-i\theta/2} & 0\\ 0 & e^{i\theta/2}\end{pmatrix}

は特によく使う。

要点

半角の由来:SU(2)SU(2) から SO(3)SO(3) への被覆写像は2対1である。すなわち Rn^(θ)R_{\hat n}(\theta) で θ=2π\theta=2\pi とすると −I-I になり、恒等に戻るのは θ=4π\theta=4\pi のときである。しかし全体位相は物理的に区別されないので、Bloch球上の作用としては θ=2π\theta=2\pi で恒等に戻る。式(1.1)に半角 θ/2\theta/2 が現れるのはこのためである。

ZYZ分解(Euler角分解)

任意の1量子ビットユニタリを標準ゲートの積で書き下すために、次の分解定理が基本的である。

定理 1.1(ZYZ分解)

任意の U∈U(2)U\in\mathrm U(2) に対し、実数 α,β,γ,δ\alpha, \beta, \gamma, \delta が存在して

U=eiα Rz(β) Ry(γ) Rz(δ).U = e^{i\alpha}\, R_z(\beta)\, R_y(\gamma)\, R_z(\delta).

証明の要点

UU をユニタリとして書けば、その行列要素は

U=(ab−eiϕbˉeiϕaˉ),∣a∣2+∣b∣2=1, ϕ∈RU = \begin{pmatrix} a & b \\ -e^{i\phi}\bar b & e^{i\phi}\bar a\end{pmatrix},\qquad |a|^2+|b|^2=1,\ \phi\in\mathbb R

という形をしている(2行目は1行目と直交・単位化された行になる)。a=∣a∣eiα1, b=∣b∣eiα2a=|a|e^{i\alpha_1},\ b=|b|e^{i\alpha_2} と極形式で書き、∣a∣=cos⁡(γ/2), ∣b∣=sin⁡(γ/2)|a|=\cos(\gamma/2),\ |b|=\sin(\gamma/2) と置くと、

Rz(β)Ry(γ)Rz(δ)=(e−i(β+δ)/2cos⁡γ2−e−i(β−δ)/2sin⁡γ2ei(β−δ)/2sin⁡γ2ei(β+δ)/2cos⁡γ2)R_z(\beta)R_y(\gamma)R_z(\delta) = \begin{pmatrix} e^{-i(\beta+\delta)/2}\cos\frac\gamma2 & -e^{-i(\beta-\delta)/2}\sin\frac\gamma2 \\ e^{i(\beta-\delta)/2}\sin\frac\gamma2 & e^{i(\beta+\delta)/2}\cos\frac\gamma2\end{pmatrix}

の各要素と UU を比較することで、α,β,γ,δ\alpha, \beta, \gamma, \delta を陽に決められる。詳細は Nielsen & Chuang, Theorem 4.1 を参照。

より一般に、任意の軸ペア (m^,n^)(\hat m, \hat n)(m^∦n^\hat m\not\parallel\hat n)に対して、任意の SU(2)\mathrm{SU}(2) 元は Rn^(α)Rm^(β)Rn^(γ)R_{\hat n}(\alpha)R_{\hat m}(\beta)R_{\hat n}(\gamma) の形に分解できる。XY・XZなど任意のペアで成立する。

よく使う1量子ビットゲート

以下は本書でよく使うゲートである。

H=12(111−1),S=(100i),T=(100eiπ/4).H = \frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix},\quad S = \begin{pmatrix}1&0\\0&i\end{pmatrix},\quad T = \begin{pmatrix}1&0\\0&e^{i\pi/4}\end{pmatrix}.

それぞれHadamardゲート(計算基底とHadamard基底 ∣±⟩\ket\pm を交換する)、位相ゲート S=Rz(π/2)S=R_z(\pi/2) を全体位相除きで表したもの、π/8\pi/8 ゲート T=Rz(π/4)T=R_z(\pi/4) を全体位相除きで表したもの、である。名称の π/8\pi/8 は対角成分 e±iπ/8e^{\pm i\pi/8} に由来する慣習的なもので、実際の回転角は π/4\pi/4 であることに注意。

これらは Pauli 行列と次のような共役関係を満たし、後のスタビライザー形式で重要な役割を果たす:

HXH†=Z,HZH†=X,SXS†=Y,SZS†=Z.HXH^\dagger = Z,\quad HZH^\dagger = X,\quad SXS^\dagger = Y,\quad SZS^\dagger = Z.

物理実装の例

数学的にはユニタリ演算子として定義されるゲートも、実際の量子計算機ではそれぞれ具体的な物理操作として実装される。ここで押さえておくべき重要な点は、Pauli行列 X,Y,ZX,Y,Z そのものを1ステップで作る必要はないということである。実装するのは連続的な回転 Rx(θ),Ry(θ),Rz(θ)R_x(\theta), R_y(\theta), R_z(\theta) であり、X=−iRx(π)X = -iR_x(\pi) など特定の角度で全体位相除きで Pauli 行列になる。

以下に代表的な実装方式を挙げる。

超伝導量子ビット(トランズモン)

量子ビットは超伝導回路内の非線形共振モードで、∣0⟩,∣1⟩\ket 0, \ket 1 は最低2つのエネルギー準位に対応する。

  • X,YX, Y 回転:量子ビットの遷移周波数に共鳴するマイクロ波パルスを照射する。パルス長・振幅・位相で回転軸と角度が決まる(Rabi振動)。
  • ZZ 回転:外部磁束の変化、あるいは回転座標系の基準位相を変えるだけの「仮想的」操作としてほぼコストゼロで実現される。
  • CNOT:2つの量子ビットを共振器などで結合させ、片方の状態に応じて他方の遷移条件が変わる仕組み(クロス共鳴ゲート、CZゲート+単一量子ビットゲートの組み合わせなど)を用いる。

イオントラップ

量子ビットは電磁トラップ中のイオンの2つの内部準位(超微細構造や光学遷移)。

  • 1量子ビット回転:特定周波数のレーザーパルス。
  • CNOTなど2量子ビットゲート:イオン鎖の共通振動モード(フォノン)を媒介として結合させる(Cirac–Zoller、Mølmer–Sørensen ゲート)。

光子(線形光学)

量子ビットは光子の偏光や経路自由度。

  • 1量子ビットゲート:波長板やビームスプリッタ、位相シフタ。
  • CNOT:非線形素子か、測定に基づく確率的な実装(KLMプロトコル)。

いずれの実装でも、まず「1量子ビットの Rx,Ry,RzR_x,R_y,R_z に相当する連続回転」と「2量子ビットのエンタングリングゲート(CNOT 相当)」があれば十分で、他は組み合わせで作れる。ゲートの物理的な誤り(パルス整形の不完全性、デコヒーレンス、クロストークなど)が第2部の量子誤り訂正で対処すべき「雑音」の実体となる。

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