信号処理論入門 第13章 §13.3 ★★ 合わせ技・差分方程式・全域通過の演習
例題 13.1(演習13.1(時間シフトと変調の合わせ技)★★)
オリジナルx(t)=e−α(t−t0)u(t−t0)cos(ω0(t−t0))(α>0)のFourier 変換を求めよ。
解答
まず g(t)=e−αtu(t)↔G(ω)=α+jω1。余弦の変調(周波数シフト)で
g(t)cos(ω0t) ↔ 21[G(ω−ω0)+G(ω+ω0)]=21[α+j(ω−ω0)1+α+j(ω+ω0)1].
最後に全体の時間シフト t→t−t0 は位相 e−jωt0 を掛けるだけだから、
X(ω)=2e−jωt0[α+j(ω−ω0)1+α+j(ω+ω0)1].
シフトは振幅(絶対値)を変えず位相だけを回すので、∣X(ω)∣ は t0 に依らない。三つの性質(基本対・変調・シフト)を積み上げる典型問題である。
例題 13.2(演習13.2(畳み込みのスペクトル)★★)
オリジナルh(t)=e−αtu(t) をインパルス応答にもつ LTI システムに、x(t)=e−βtu(t)(α=β、ともに正)を入力した。出力 y=x∗h のスペクトル Y(ω) と、y(t) を求めよ。
解答
畳み込み定理より Y(ω)=X(ω)H(ω)=(β+jω)(α+jω)1。jω=s とみて部分分数分解すると
Y=(β+s)(α+s)1=α−β1(β+s1−α+s1).
各項を逆変換して
y(t)=α−β1(e−βt−e−αt)u(t).
これは例題1.1で時間領域の畳み込み積分から求めた結果と一致する。時間領域の畳み込み積分と、周波数領域での積+部分分数が同じ答えを与えることを確認できる好例で、どちらの道具でも解けるようにしておきたい。
例題 13.3(演習13.3(DFT の分解能)★★)
オリジナルサンプリング周波数 fs=64 Hz で 1 秒間(N=64 点)観測した信号を DFT する。(1)周波数ビンの間隔 Δf はいくらか。(2)4 Hz と 4.5 Hz の二成分は分離できるか。(3)零詰めで N=256 点にすると分離できるようになるか。
解答
(1)DFT の周波数間隔は Δf=fs/N=64/64=1 Hz。(2)真の周波数分解能は観測長 T=N/fs=1 s で決まり、∼1/T=1 Hz 程度。4 と 4.5 Hz の差 0.5 Hz はこれより小さく、しかも 4.5 Hz は区間に整数周期入らずリーケージで広がるため、明瞭には分離できない。(3)零詰めは Δf を見かけ上 0.25 Hz に細かくするが、真の分解能は観測長 1 s のままで向上しない。したがって分離能力は本質的に改善しない。分離したければ観測長そのものを延ばす(例:2 s 観測して分解能 0.5 Hz)必要がある。これは「零詰め=補間であって情報増加ではない」という第6章の要点の確認である。
例題 13.4(演習13.4(差分方程式の総合問題)★★★)
オリジナル入出力関係が
y[n]−65y[n−1]+61y[n−2]=x[n]
で与えられる因果的システムの伝達関数・極・ROC を求めて BIBO 安定性を判定し、インパルス応答を求めよ。
解答
z 変換して
H(z)=1−65z−1+61z−21=(1−21z−1)(1−31z−1)1.
極は z=1/2,1/3(零点は z=0 の二重)、因果的だから ROC は ∣z∣>1/2。全極が単位円内なのでBIBO 安定。部分分数分解は被覆法で
A=1−31z−11z−1=2=1−321=3,B=1−21z−11z−1=3=1−231=−2
より H(z)=1−21z−13−1−31z−12、したがって
h[n]=[3(21)n−2(31)n]u[n].
検算:h[0]=3−2=1(差分方程式で y[0]=x[0]=1 と一致)、h[1]=23−32=65(y[1]=65y[0]=65 と一致)。この h[n] が差分方程式を満たすことは数値的にも確認済み(検算スクリプト [E1])。
例題 13.5(演習13.5(全域通過システムの位相遅延)★★)
オリジナルH(z)=1−αz−1z−1−α(0<α<1)が全域通過であることを示し、その群遅延が τ(Ω)=1+α2−2αcosΩ1−α2(常に正)となることを確かめよ。
解答
単位円上で分子はe−jΩ−α=e−jΩ(1−αejΩ) だから
H(ejΩ)=∣1−αe−jΩ∣1−αejΩ=1
(分母は分子の複素共役の絶対値)。よって全域通過である。位相は
argH=−Ω+arg(1−αejΩ)−arg(1−αe−jΩ)=−Ω+2arg(1−αejΩ)
で、arg(1−αejΩ)=−arctan1−αcosΩαsinΩを微分して整理すると(分母 =1+α2−2αcosΩ=1−αejΩ2に注意)
τ(Ω)=−dΩdargH=1−2⋅1+α2−2αcosΩαcosΩ−α2=1+α2−2αcosΩ1−α2>0.
分子は 0<α<1 で正、分母は 1−αejΩ2>0。つまり全域通過システムはどの周波数でも必ず位相を遅らせる(数値検証済み:検算スクリプト [E2])。Ω=0 で最大1−α1+α、Ω=π で最小 1+α1−α の遅延になる。
例題 13.6(演習13.6(線形位相 FIR の設計と読み取り)★★★)
オリジナルインパルス応答 h=(1,2,1)(n=0,1,2)のフィルタについて、(1)線形位相であることを示し、(2)振幅応答を求めて何のフィルタか述べ、(3)(−1)nh[n] としたときの特性の変化を述べよ。
解答
(1)係数が中心 n=1 に対して偶対称(相反多項式)だから線形位相である。実際 H(ejΩ)=e−jΩ(2+2cosΩ) と書け、位相は −Ω(2+2cosΩ>0 の範囲、すなわち Ω<3π/4)。
(2)∣H∣=2+2cosΩ。Ω=0 で最大 2+2、Ω=3π/4 で 0(H(z)=1+2z−1+z−2 の単位円上の零点 e±j3π/4)。低域を通し高域を落とすローパスフィルタである。
(3)(−1)n 倍は H(z)→H(−z)、すなわち周波数応答の π シフトだから、振幅応答は 2−2cosΩ となり、零点は e±jπ/4 に移ってハイパスフィルタになる。係数の対称性は保たれる((1,−2,1) も偶対称)ので線形位相のままである。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com