Kraft–McMillan の不等式: が確率分布になる理由
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第5章 §1.5.2 ★★★ 符号語の長さに課される制約は ただ1つで、語頭符号に限っても失うものがない
語頭符号の場合(Kraft の不等式)
証明
符号語 に、区間 を対応させる( は2進小数)。この区間は、2進小数展開が で始まる の数全体である。2つの符号語のどちらも他方の語頭でなければ、最初に食い違う桁で2進小数展開が分かれるので、対応する区間は重ならない(図 1.5.1 の右)。重ならない区間の長さの和は の長さ を超えないので (1.5.4) が出る。
逆に、(1.5.4) を満たす長さを小さい順に と並べ、()とおく。 は分母が の分数で なので、 は整数になり、 の2進小数展開は 桁で終わる。その 桁を 番目の符号語にする。 番目の符号語の区間は で、 なので、区間は の中に重ならずに並ぶ。もし の符号語 が符号語 の語頭なら、 は区間 に入るはずだが、 なので入らない。よって語頭符号になる。
この証明の後半から、長さだけ決めれば符号語を機械的に作れることがわかる。符号の設計で本当に決めるべきものは長さの並び だけで、 と の具体的な割り当ては後から付けることができる。
一意に復号できる符号の場合(McMillan の不等式)
一意に復号できる符号は語頭符号より広い。例題 1.5.1 の符号のように、瞬時でない代わりに符号語を短くできるのではないか、という疑問が残る。答えは否定的で、同じ不等式が成り立つ1B. McMillan (1956), IRE Transactions on Information Theory 2, 115–116。語頭符号についての不等式は L. G. Kraft の1949年の MIT 修士論文による。下の脚注へ。
定理 1.5.5(McMillan の不等式 ★★)
一意に復号できる符号の符号語の長さも を満たす。
証明
符号語の長さの最大値を とする。正の整数 について を展開すると
となる。ここで は、つないだ長さがちょうど になる記号列 の個数である。一意に復号できるので、異なる記号列は異なる ・ の列に移る。長さ の ・ の列は 通りしかないので で、したがって である。もし なら左辺は について指数関数的に増え、右辺は の1次でしか増えないので、大きな で矛盾する。よって 。
Kraft と McMillan をあわせると、一意に復号できる符号の長さの並びは必ず語頭符号でも実現することができる。長さだけで平均符号長が決まるので、平均符号長を最小にする問題では、語頭符号に限っても何も失わない。以下、符号といえば語頭符号を指す。さらに、 によって は和が 以下の確率の割り振りになり、定義 1.5.3 の を確率分布と読む根拠が得られた。
完全な符号と木
は、符号の木のどの内部節点からも と の両方の枝が出ていることと同じである(区間の言葉では、区間が を隙間なく覆う)。 の符号では、枝が1本しか出ていない節点があるか、使われていない葉がある。前者なら、その節点の下の符号語から1桁を取り除いても語頭符号のままなので、どの記号も長くせずに少なくとも1つの符号語を短くすることができる。
例題 1.5.2 長さの並びから符号を作る ★★
オリジナル4つまたは5つの記号に、次の長さの符号語を持つ語頭符号を作りたい。
- 長さ :Kraft 和を求め、定理 1.5.4 の証明の手順で符号語を作れ。
- 長さ :作れるか。
- 長さ :Kraft 和を求めて符号語を作り、どの符号語を短くできるか答えよ。
1 B. McMillan (1956), IRE Transactions on Information Theory 2, 115–116。語頭符号についての不等式は L. G. Kraft の1949年の MIT 修士論文による。
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