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成功確率と回路の大きさ

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第3章 Shor のアルゴリズム
目次
  1. 最も近い が出る確率
  2. 回路の大きさ
  3. RSA の 2048 ビットに要る資源の見積もり
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第6部 第3章 §6.3.4 ★★ 1回の実行は定数の確率で成功し、手間は O(n3)\mathcal{O}(n^3)。古典の最良の方法は n1/3n^{1/3} の指数で増える

最も近い mm が出る確率

前の節の手続きが働くのは、測定値が 2ts/r2^ts/r に最も近い整数のときである。その確率は式 (6.3.7) で ∣δ∣≤1/2t+1\lvert \delta\rvert \le1/2^{t+1} の値で、sin⁡(πδ)≤πδ\sin(\pi\delta)\le\pi\delta と、0≤y≤π/20\le y\le\pi/2 での sin⁡y≥2y/π\sin y\ge2y/\pi を使うと

Ft(δ) ≥ sin⁡2(π2tδ)(π2tδ)2 ≥ (2π)2=4π2≈0.405(6.3.11)F_t(\delta)\ \ge\ \frac{\sin^2(\pi2^t\delta)}{(\pi2^t\delta)^2}\ \ge\ \Bigl(\frac{2}{\pi}\Bigr)^2=\frac4{\pi^2}\approx0.405\tag{6.3.11}

で下から押さえられる。ss がどの値でも、最も近い mm は 0.4050.405 以上の確率で出る。N=21N=21、t=9t=9 では、2ts/r2^ts/r が整数でない s=1,2,4,5s=1,2,4,5 のそれぞれについて最も近い mm の条件付き確率が 0.6840.684 で、下界より大きい。6つの山のどれかの最も近い mm が出る確率は 0.7890.789 である。

そのうえで gcd⁡(s,r)=1\gcd(s,r)=1 なら1回で rr が読める。N=21N=21 では、近似分数の分母を順に試す手続きで1回の実行から r=6r=6 がそのまま読める確率が 0.3280.328 になる(山の両隣の mm から読める場合も含む)。読めなかった実行の結果も、式 (6.3.10) の最小公倍数で使える。いずれにせよ、成功の確率が rr や NN の大きさに比べて小さくならないことが重要で、数回の実行で失敗の確率は指数的に小さくなる。

回路の大きさ

手間を桁数 nn で数える。第1のレジスタは t≈2nt\approx2n 量子ビット、第2のレジスタは nn 量子ビットである。支配的なのは制御した掛け算 Ua2jU_{a^{2^j}} を tt 回当てる部分で、nn ビットの数どうしの掛け算と剰余を筆算の方法で組めば1回 O(n2)\mathcal{O}(n^2) 個のゲートなので、全体で O(n3)\mathcal{O}(n^3) になる。逆量子 Fourier 変換は O(t2)=O(n2)\mathcal{O}(t^2)=\mathcal{O}(n^2) 個のゲートで(第6部第2章)、連分数と最大公約数の古典の後処理も O(n3)\mathcal{O}(n^3) である。量子ビットの数は工夫で減らせて、第1のレジスタを1個の量子ビットの使い回しに置き換えると、全体で 2n+32n+3 個で組める1S. Beauregard (2003), Quantum Inf. Comput. 3, 175。下の脚注へ。

古典の側で知られている最良の方法は数体ふるい法で、手間の目安(発見的な評価で、補正の o(1)o(1) を落としたもの)は

LN=exp⁡[(649)1/3(ln⁡N)1/3(ln⁡ln⁡N)2/3](6.3.12)L_N=\exp\Bigl[\Bigl(\frac{64}{9}\Bigr)^{1/3}(\ln N)^{1/3}(\ln\ln N)^{2/3}\Bigr]\tag{6.3.12}

である。nn の多項式より速く、2n2^n より遅く増える。図 6.3.3 が n3n^3 と LNL_N の桁の比較で、n=2048n=2048 では n3≈8.6×109n^3\approx8.6\times10^9 に対し LN≈1035L_N\approx10^{35} である。定数倍を無視した比較なので、実際の時間の比ではない。比べられるのは nn を増やしたときの増え方である。

図

図 6.3.3 因数分解の手間の目安。Shor のアルゴリズムのゲートの数の増え方 n3n^3 と、数体ふるい法の式 (6.3.12)(o(1)o(1) を落とした目安)を、桁数 nn について比べた。どちらも定数倍を無視している。

RSA の 2048 ビットに要る資源の見積もり

O(n3)\mathcal{O}(n^3) は論理ゲートの数で、実際の量子コンピュータは誤りを含む。誤りを抑える符号化(第3部第9章、表面符号は 第6部第5章)の手間を込めると、物理的な量子ビットの数は論理量子ビットの数の何桁も上になる。Gidney と Ekerå は、物理的なゲートの誤り率を 10−310^{-3}、表面符号で誤りを抑えると仮定して、2048 ビットの RSA の数を約 2000 万個の物理的な量子ビットで約8時間で因数分解できると見積もった2C. Gidney and M. Ekerå (2021), Quantum 5, 433。下の脚注へ。Gidney はその後、誤り率 0.1%0.1\%、表面符号の1周期 1 μs1\,\mu\mathrm s、制御系の反応時間 10 μs10\,\mu\mathrm s という同様の仮定のもとで、物理的な量子ビット 100 万個未満・1週間未満という見積もりを出した3C. Gidney (2025), arXiv:2505.15917。下の脚注へ。どちらも実際の装置の性能でなく、仮定した性能のもとでの見積もりである。実験で Shor のアルゴリズムを走らせた最初の例は、核磁気共鳴の7量子ビットで 15=3×515=3\times5 を分解したものである4L. M. K. Vandersypen et al. (2001), Nature 414, 883。下の脚注へ。

例題 6.3.4 1回あたりの成功確率と試行の回数 ★★

オリジナルN=21N=21、a=2a=2、t=9t=9 とする。

  1. (1) 6つの山の高さを、s=0,3s=0,3 と s=1,2,4,5s=1,2,4,5 に分けて式 (6.3.8) から求めよ(数値でよい)。
  2. (2) 最も近い mm が出て、しかも gcd⁡(s,6)=1\gcd(s,6)=1 である確率を求めよ。
  3. (3) 1回の実行で r=6r=6 がそのまま読める確率は 0.3280.328 である。2回の実行で少なくとも1回読める確率を求めよ。
  4. (4) n=2048n=2048 のとき、tt の目安、筆算の掛け算での n3n^3、Beauregard の量子ビット数 2n+32n+3 を求めよ。
解答

(1) s=0,3s=0,3 では 512s/6=0,256512s/6=0,256 が整数なので δ=0\delta=0 の項が F9(0)=1F_9(0)=1、他の s′s' の項は δ=(s′−s)/6\delta=(s'-s)/6 で F9F_9 が小さい(合わせて 10−510^{-5} 程度)。高さは 16(1+⋯ )=0.1667\frac16(1+\cdots)=0.1667 である。s=1s=1 では最も近い m=85m=85 で δ=1/6−85/512=1/1536\delta=1/6-85/512=1/1536、29δ=1/32^9\delta=1/3 なのでF9=sin⁡2(π/3)/(5122sin⁡2(π/1536))=0.684F_9=\sin^2(\pi/3)/(512^2\sin^2(\pi/1536))=0.684 で、1/61/6 を掛けて 0.11400.1140 である。s=2,4,5s=2,4,5 も 29δ=±1/32^9\delta=\pm1/3 なので同じ高さになる。

(2) gcd⁡(s,6)=1\gcd(s,6)=1 は s=1,5s=1,5 の2つで、2×0.1140=0.2282\times0.1140=0.228 である。

(3) 1−(1−0.328)2=0.5491-(1-0.328)^2=0.549 である。最小公倍数を使う手続き(式 (6.3.10))を加えると、さらに上がる。

(4) t=⌈2log⁡2N⌉t=\lceil2\log_2N\rceil で、NN が 2048 ビットなら t=4095t=4095 か 40964096 である。n3=20483=8.59×109n^3=2048^3=8.59\times10^9、2n+3=40992n+3=4099 である。論理ゲートの数は 101010^{10} の桁、論理量子ビットは数千個で、本文の物理的な量子ビットの数との差は、誤りを抑える符号化に払う分である。

1 S. Beauregard (2003), Quantum Inf. Comput. 3, 175。

2 C. Gidney and M. Ekerå (2021), Quantum 5, 433。

3 C. Gidney (2025), arXiv:2505.15917。

4 L. M. K. Vandersypen et al. (2001), Nature 414, 883。

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