成功確率と回路の大きさ
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第6部 第3章 §6.3.4 ★★ 1回の実行は定数の確率で成功し、手間は 。古典の最良の方法は の指数で増える
最も近い が出る確率
前の節の手続きが働くのは、測定値が に最も近い整数のときである。その確率は式 (6.3.7) で の値で、 と、 での を使うと
で下から押さえられる。 がどの値でも、最も近い は 以上の確率で出る。、 では、 が整数でない のそれぞれについて最も近い の条件付き確率が で、下界より大きい。6つの山のどれかの最も近い が出る確率は である。
そのうえで なら1回で が読める。 では、近似分数の分母を順に試す手続きで1回の実行から がそのまま読める確率が になる(山の両隣の から読める場合も含む)。読めなかった実行の結果も、式 (6.3.10) の最小公倍数で使える。いずれにせよ、成功の確率が や の大きさに比べて小さくならないことが重要で、数回の実行で失敗の確率は指数的に小さくなる。
回路の大きさ
手間を桁数 で数える。第1のレジスタは 量子ビット、第2のレジスタは 量子ビットである。支配的なのは制御した掛け算 を 回当てる部分で、 ビットの数どうしの掛け算と剰余を筆算の方法で組めば1回 個のゲートなので、全体で になる。逆量子 Fourier 変換は 個のゲートで(第6部第2章)、連分数と最大公約数の古典の後処理も である。量子ビットの数は工夫で減らせて、第1のレジスタを1個の量子ビットの使い回しに置き換えると、全体で 個で組める1S. Beauregard (2003), Quantum Inf. Comput. 3, 175。下の脚注へ。
古典の側で知られている最良の方法は数体ふるい法で、手間の目安(発見的な評価で、補正の を落としたもの)は
である。 の多項式より速く、 より遅く増える。図 6.3.3 が と の桁の比較で、 では に対し である。定数倍を無視した比較なので、実際の時間の比ではない。比べられるのは を増やしたときの増え方である。
図 6.3.3 因数分解の手間の目安。Shor のアルゴリズムのゲートの数の増え方 と、数体ふるい法の式 (6.3.12)( を落とした目安)を、桁数 について比べた。どちらも定数倍を無視している。
RSA の 2048 ビットに要る資源の見積もり
は論理ゲートの数で、実際の量子コンピュータは誤りを含む。誤りを抑える符号化(第3部第9章、表面符号は 第6部第5章)の手間を込めると、物理的な量子ビットの数は論理量子ビットの数の何桁も上になる。Gidney と Ekerå は、物理的なゲートの誤り率を 、表面符号で誤りを抑えると仮定して、2048 ビットの RSA の数を約 2000 万個の物理的な量子ビットで約8時間で因数分解できると見積もった2C. Gidney and M. Ekerå (2021), Quantum 5, 433。下の脚注へ。Gidney はその後、誤り率 、表面符号の1周期 、制御系の反応時間 という同様の仮定のもとで、物理的な量子ビット 100 万個未満・1週間未満という見積もりを出した3C. Gidney (2025), arXiv:2505.15917。下の脚注へ。どちらも実際の装置の性能でなく、仮定した性能のもとでの見積もりである。実験で Shor のアルゴリズムを走らせた最初の例は、核磁気共鳴の7量子ビットで を分解したものである4L. M. K. Vandersypen et al. (2001), Nature 414, 883。下の脚注へ。
例題 6.3.4 1回あたりの成功確率と試行の回数 ★★
オリジナル、、 とする。
- (1) 6つの山の高さを、 と に分けて式 (6.3.8) から求めよ(数値でよい)。
- (2) 最も近い が出て、しかも である確率を求めよ。
- (3) 1回の実行で がそのまま読める確率は である。2回の実行で少なくとも1回読める確率を求めよ。
- (4) のとき、 の目安、筆算の掛け算での 、Beauregard の量子ビット数 を求めよ。
解答
(1) では が整数なので の項が 、他の の項は で が小さい(合わせて 程度)。高さは である。 では最も近い で 、 なので で、 を掛けて である。 も なので同じ高さになる。
(2) は の2つで、 である。
(3) である。最小公倍数を使う手続き(式 (6.3.10))を加えると、さらに上がる。
(4) で、 が 2048 ビットなら か である。、 である。論理ゲートの数は の桁、論理量子ビットは数千個で、本文の物理的な量子ビットの数との差は、誤りを抑える符号化に払う分である。
1 S. Beauregard (2003), Quantum Inf. Comput. 3, 175。
2 C. Gidney and M. Ekerå (2021), Quantum 5, 433。
3 C. Gidney (2025), arXiv:2505.15917。
4 L. M. K. Vandersypen et al. (2001), Nature 414, 883。
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