この巻が答える問い
AI 生成・木下が未勉強
近似の数理 第1章 §1.1 ★★★ 出発点の問いと、答えの形
多電子原子の波動関数を原子軌道の線型結合で書く、各電子が他の電子の作る平均の場を感じると考える、流体を連続体と見て Navier–Stokes 方程式を立てる。物理ではこうした近似を、方程式が厳密に解けないので「物理的にもっともらしい」理由を付けて導入することが多い。この巻では、同じ近似を微分方程式と作用素の理論の側から眺め直し、それぞれの近似について次の3つを問う。
- (i) その近似は、元の方程式の解とどういう数学的関係にあるか(部分空間への射影か、ある極限か、それとも根拠のない置き換えか)。
- (ii) 近似解と真の解の差について、どこまで定理として言えるか(上界か、収束か、収束の速さか、何も言えないか)。
- (iii) 物理的直観は、その定理のどの仮定に対応しているか。直観が外れる場面は、定理のどの仮定が破れる場面か。
ここで「解けない微分方程式の解の性質を調べる分野」と呼んでいるものは、一つの分野ではない。常微分方程式の定性的理論(Poincaré に始まり力学系の理論へ続く流れ)、偏微分方程式の適切性と正則性の理論、量子力学の作用素論(スペクトル理論)、漸近解析と特異摂動論、そして有効方程式を厳密に導く理論(平均場極限・流体力学極限・均質化)の集まりである。これらに共通する態度は、解を式で書くことを諦め、代わりに解が存在すること、どれだけ滑らかか、パラメータを動かすとどう変わるかを不等式で押さえることである。近似を正当化するとは、結局のところ「近似解と真の解の距離」を不等式で上から抑えることなので、この態度がそのまま近似の理論になる。
例題 1.1 解を書かずに不等式で押さえる ★★
オリジナル として、方程式 を考える。この方程式の解は初等関数で書けない。
- (1) 実数解がちょうど1つあり、それを とすると が成り立つことを示せ。
- (2) (1) の範囲 を方程式の右辺に戻して、 の範囲を幅 程度まで狭めよ。
- (3) 近似解 は、この章の問い (i) の意味で元の方程式の解とどういう関係にあるか。
解答
(1) とおくと なので は狭義単調増加で、()だから零点はちょうど1つある。その零点では なので、 から が出る。解を式で書かずに、解の存在と一意性と位置を不等式で押さえたことになる。
(2) は で単調増加なので、 から
幅は に縮んだ。同じ操作を繰り返すと区間の幅は毎回およそ 倍になり、数値解 に近づく(検算スクリプト)。1回ごとに幅が一定の比で縮むのは、写像 の傾きが 以下だからで、これは第2章で扱う縮小写像の不動点定理の最も簡単な場合である。
(3) は の極限の問題 の解で、(1) の不等式 がその近似の誤差評価になっている。問い (ii) に対しては「誤差は 以下」という上界が定理として言える。次の節の言葉では B 型(極限)の近似である。
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