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近似の3つの型

2026年10月9日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1章 序章:近似を数学の言葉で見る

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第1章 §1.2 ★★★ 巻の骨格となる分類

元の問題の解を uu とし、近似解を u~\tilde u とする。物理で使われる近似の多くは、u~\tilde u の作り方によって次の3つの型に分かれる。

定義 1.1(近似の3つの型)

  • A型 (射影)uu は関数の空間 VV の元である。VV の中の扱いやすい部分集合 VnV_n を選び、VnV_n の中で元の方程式(またはそれと同値な変分問題)を「できるだけ満たす」元として u~=un\tilde u = u_n を決める。VnV_n を大きくしていく列 V1⊂V2⊂⋯V_1\subset V_2\subset\cdots を考えることができる。
  • B型 (極限)元の問題がパラメータ ε\varepsilon を含む族 PεP_{\varepsilon } の一員であり、ε→0\varepsilon \to 0 で PεP_{\varepsilon } の解 uεu_{\varepsilon } がある別の問題 P0P_0 の解 u0u_0 に近づく。P0P_0 の解を近似 u~=u0\tilde u = u_0 として使う。
  • C型 (閉じる)元の問題を、ある未知の量 XX が分かれば閉じる形に書き直し、XX を既知の量の関数 X≈F(⋯ )X\approx F(\cdots) で置き換える。置き換えの正しさを保証する小さいパラメータも部分空間の列も無い。

3つの型は、正当化の形が違う。

A 型では、近似の誤差は「VnV_n が uu をどれだけうまく近似できるか」で抑えられる。VnV_n が線型空間で問題が線型なら、Céa の補題(第4章)が

∥u−un∥≤Cinf⁡v∈Vn∥u−v∥\lVert u-u_n\rVert \le C\inf_{v\in V_n}\lVert u-v\rVert

を与え、固有値問題なら min-max 原理(第3章)が近似固有値が真の固有値の上界になることを保証する。右辺の inf⁡v∈Vn∥u−v∥\inf_{v\in V_n}\lVert u-v\rVert がどれだけ速く 0 に近づくかは、uu の滑らかさ(正則性)で決まる。したがって A 型の近似の良し悪しは、解の正則性の理論に帰着する。

B 型では、誤差は「ε\varepsilon がどれだけ小さいか」で抑えられる。数学が与えるのは、極限 uε→u0u_{\varepsilon }\to u_0 が存在するという定理、それがどういう意味の収束か(エネルギーだけが収束するのか、関数として各点で収束するのか、平均としてしか収束しないのか)、そして収束の速さ ∥uε−u0∥=O(εα)\lVert u_{\varepsilon }-u_0\rVert =\mathcal{O}(\varepsilon ^\alpha) である。現実の物理系では ε\varepsilon は 0 でなく固定された値(電子と核の質量比、Knudsen 数、微細構造の周期と系の大きさの比)なので、B 型の近似を使うことは「この系はその極限に十分近い」と判断することにあたる。

C 型には、近似の内部に誤差を抑える仕組みが無い。正しさは、厳密に解ける場合との一致、満たすべき厳密な条件、実験や数値計算との比較で外から評価するしかない。

物理的直観は何をしているか

A 型で物理的直観が担うのは、良い部分空間を選ぶことである。原子軌道の線型結合という選択は「分子の中の電子も、核の近くでは孤立原子の軌道に似ているはずだ」という直観の表現で、数学はこの選択が良いかどうかを教えない。数学が教えるのは「選んだ部分空間の中で最良の近似から定数倍しか悪くならない」ことと「固有値は上から近づく」ことまでである。

B 型で物理的直観が担うのは、小さいパラメータを見つけることである。「核は重いので止まって見える」「分子の平均自由行程は流れの長さに比べて短い」という直観は、それぞれ質量比 m/Mm/M と Knudsen 数 Kn\mathrm{Kn} という無次元量を見つけ、それを 0 に送った極限を考えることにあたる。

同じ名前の近似が、見方によって別の型に入ることがある。いちばん重要な例は平均場近似である。Hartree–Fock 法は、多体波動関数を Slater 行列式という特別な形に制限した変分法(A 型)だと見ることもできるし、粒子数 N→∞N\to\infty で相互作用を 1/N1/N に弱めた極限で厳密になる理論(B 型)だと見ることもできる。前者からは「エネルギーの上界」しか得られないが、後者からは「その極限では平均場が正しい」という定理が得られる。第5章と第6章はこの2つの顔をそれぞれ扱う。

例題 1.2 2行2列の行列で A 型と B 型を比べる ★★

オリジナルg>0g>0 として、行列 H=(1gg3)H=\begin{pmatrix}1&g\\ g&3\end{pmatrix} の最小固有値 EE を考える。

  • (1) EE を厳密に求めよ。
  • (2) A 型の近似として、試行ベクトルを e1=(1,0)Te_1=(1,0)^{\mathsf T} の張る1次元部分空間に制限した値 E~A=⟨e1, He1⟩\tilde E_{\mathrm A}=\langle e_1,\,He_1\rangle を求め、E~A≥E\tilde E_{\mathrm A}\ge E を示せ。
  • (3) B 型の近似として、gg についての展開の2次までの値 E~B\tilde E_{\mathrm B} を求めよ。g=0.5g=0.5 で (1)〜(3) の値を比べ、誤差の符号について何が言えるかを述べよ。
解答

(1) 固有方程式 (1−E)(3−E)−g2=0(1-E)(3-E)-g^2=0 を解くと E=2−1+g2E=2-\sqrt{1+g^2}。

(2) E~A=1\tilde E_{\mathrm A}=1。1+g2≥1\sqrt{1+g^2}\ge 1 なので E=2−1+g2≤1=E~AE=2-\sqrt{1+g^2}\le 1=\tilde E_{\mathrm A}。実対称行列の最小固有値は ⟨v, Hv⟩/⟨v, v⟩\langle v,\,Hv\rangle /\langle v,\,v\rangle の最小値なので、どの試行ベクトルでもこの不等式が成り立つ。これが第3章の min-max 原理の最も簡単な形である。

(3) 1+g2=1+12g2−18g4+O(g6)\sqrt{1+g^2}=1+\tfrac12 g^2-\tfrac18 g^4+\mathcal{O}(g^6) より E~B=1−12g2\tilde E_{\mathrm B}=1-\tfrac12 g^2。g=0.5g=0.5 では

E=0.881966⋯ ,E~A=1,E~B=0.875.E=0.881966\cdots,\qquad \tilde E_{\mathrm A}=1,\qquad \tilde E_{\mathrm B}=0.875 .

E~A\tilde E_{\mathrm A} の誤差 +0.118+0.118 は常に正で、これは gg の大きさに依らない定理である。E~B\tilde E_{\mathrm B} の誤差 −0.0070-0.0070 は小さいが負で、次の4次の項 +18g4+\tfrac18 g^4 を足すと 0.88281250.8828125(誤差 +0.00085+0.00085)と符号が変わる。B 型が保証するのは「誤差が O(g4)\mathcal{O}(g^4)」という大きさの評価だけで、どちら側から近づくかは保証しない。A 型の上界と B 型の誤差の次数は、別の種類の情報である。

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