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曲率円と縮閉線

2025年度 高2発展2026年10月6日11分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. 曲率円とは
  2. 2. 中心と半径を求める
  3. 3. 法線の交点の極限は曲率円の中心
  4. 4. 道路のカーブと曲率半径
  5. 5. 縮閉線

授業では、一見別々の次のような2つの問題を扱いました1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ。

問題1

放物線 y=12x2y=\frac12x^2 上の点 (α, 12α2)(\alpha,\ \frac12\alpha^2) を通り、その点での y′y' と y′′y'' の値が放物線と同じになる円の中心と半径を求めよ。

問題2

曲線 y=log⁡xy=\log x 上の点 A(a, log⁡a)\mathrm{A}(a,\ \log a) と、別の点 B でそれぞれ法線を引く。B を A に近づけたとき、2本の法線の交点が近づく点 R の座標を求めよ。

答えは、問題1が中心 (−α3, 32α2+1)\left(-\alpha^3,\ \frac32\alpha^2+1\right)、半径 (α2+1)32(\alpha^2+1)^{\frac32}、問題2が R(2a+1a, log⁡a−a2−1)\mathrm{R}\left(2a+\frac1a,\ \log a-a^2-1\right) です。この補遺の目標は、この2つが同じ円の話であることを示すことです。入試の得点に直結する内容ではないので、読み物として読んでください。

1. 曲率円とは

曲線のある点の近くを、直線でまねたものが接線です。接線は点の位置と傾き、つまり yy と y′y' の2つを曲線に合わせた直線です。直線には曲がりが無いので、曲線がどちら向きにどれだけ曲がっているかは接線からは分かりません。そこで、直線の代わりに円でまねることにし、合わせる量を1つ増やして y′′y'' までそろえます。

曲率円

曲線 y=f(x)y=f(x) 上の点 P を通り、P での y′y' と y′′y'' の値が曲線と一致する円を、点 P における曲率円という。その半径を曲率半径、半径の逆数を曲率という。

円を決めるには中心の座標2つと半径の、合わせて3つの量が要ります。「P を通る」「y′y' が一致」「y′′y'' が一致」という3つの条件は、ちょうどこの3つの量を決める数になっています(f′′f'' が 00 になる点は例外で、後で見るように円が決まりません)。

y′′y'' は傾きの変化の速さなので、曲がりが急な所ほど曲率円は小さく、ゆるやかな所ほど大きくなります(正確には半径は傾き y′y' にもよります。§2 の公式を見てください)。曲率が「曲がり具合」を表す数として使えるのはこのためです。

y=cos x のグラフに曲率円を描いた図。山の頂上 x=0 と谷底 x=π では半径1の円、x=0.5 と x=π−0.5 では半径約1.55の大きな円(破線)が曲線に接している

上の図は y=cos⁡xy=\cos x の曲率円です。山の頂上 x=0x=0 と谷底 x=πx=\pi では半径 11 の円(実線)が、そこから 0.50.5 だけずれた点では半径が約 1.551.55 の円(破線)が曲線に寄り添っています。変曲点 x=π2x=\frac{\pi}2 に近づくほど曲線はまっすぐに近づき、曲率円はいくらでも大きくなります。変曲点そのものでは y′′=0y''=0 なので、曲率円は存在しません。

2. 中心と半径を求める

点 P(t, f(t))\mathrm{P}(t,\ f(t)) での曲率円の中心を (X, Y)(X,\ Y)、半径を RR とします。円の式

(x−X)2+(y−Y)2=R2(x-X)^2+(y-Y)^2=R^2

を xx で微分すると(yy は xx の関数とみる陰関数微分)

(x−X)+(y−Y) y′=0(1)(x-X)+(y-Y)\,y'=0\tag{1}

もう一度微分すると

1+(y′)2+(y−Y) y′′=0(2)1+(y')^2+(y-Y)\,y''=0\tag{2}

となります。曲率円の条件は、P で x=tx=t、y=f(t)y=f(t)、y′=f′(t)y'=f'(t)、y′′=f′′(t)y''=f''(t) を代入した (1)・(2) が成り立つことと同じです。

まず (1) は「(X,Y)(X,Y) が P における法線 (x−t)+f′(t)(y−f(t))=0(x-t)+f'(t)\bigl(y-f(t)\bigr)=0 の上にある」と読めます。曲率円の中心は法線の上にあるわけです。次に (2) を YY について解くと、f′′(t)≠0f''(t)\neq0 のとき

Y=f(t)+1+{f′(t)}2f′′(t)Y=f(t)+\dfrac{1+\{f'(t)\}^2}{f''(t)}

で、これを (1) に戻して

X=t−f′(t)⋅1+{f′(t)}2f′′(t)X=t-f'(t)\cdot\dfrac{1+\{f'(t)\}^2}{f''(t)}

を得ます。半径は P と中心の距離です。X−t=−f′(t) (Y−f(t))X-t=-f'(t)\,(Y-f(t)) なので

R2=(X−t)2+(Y−f(t))2=(1+{f′(t)}2) (Y−f(t))2\begin{aligned}R^2&=(X-t)^2+(Y-f(t))^2\\&=\bigl(1+\{f'(t)\}^2\bigr)\,(Y-f(t))^2\end{aligned}

となり、ここに Y−f(t)Y-f(t) を入れると次の公式になります。

曲率円の中心と半径

曲線 y=f(x)y=f(x) の点 (t, f(t))(t,\ f(t)) における曲率円は、f′′(t)≠0f''(t)\neq0 のとき

中心の x 座標  t−f′(t)(1+{f′(t)}2)f′′(t)中心の y 座標  f(t)+1+{f′(t)}2f′′(t)半径 R=(1+{f′(t)}2)32∣f′′(t)∣\begin{aligned}&\text{中心の }x\text{ 座標}\ \ t-\dfrac{f'(t)\bigl(1+\{f'(t)\}^2\bigr)}{f''(t)}\\[4pt]&\text{中心の }y\text{ 座標}\ \ f(t)+\dfrac{1+\{f'(t)\}^2}{f''(t)}\\[4pt]&\text{半径}\ R=\dfrac{\bigl(1+\{f'(t)\}^2\bigr)^{\frac32}}{|f''(t)|}\end{aligned}

f′′(t)>0f''(t)>0(下に凸)なら中心は P より上に、f′′(t)<0f''(t)<0(上に凸)なら下にあります。曲線が曲がっていく側に円の中心がある、ということです。

問題1の放物線で確かめてみます。f(x)=12x2f(x)=\frac12x^2 なら f′(α)=αf'(\alpha)=\alpha、f′′(α)=1f''(\alpha)=1 なので、1+{f′(α)}2=1+α21+\{f'(\alpha)\}^2=1+\alpha^2 です。中心の yy 座標は α22+(1+α2)=32α2+1\frac{\alpha^2}2+(1+\alpha^2)=\frac32\alpha^2+1、xx 座標は α−α(1+α2)=−α3\alpha-\alpha(1+\alpha^2)=-\alpha^3、半径は (1+α2)32(1+\alpha^2)^{\frac32} となり、問題1の答えと一致します。

3. 法線の交点の極限は曲率円の中心

問題2は、法線どうしの交点の極限でした。§2 で「曲率円の中心は法線の上にある」と分かったので、近くの2本の法線の交点が中心に近づくことは自然に思えます。これを一般の形で示します。

法線の交点の極限

曲線 y=f(x)y=f(x) の2点 A(α, f(α))\mathrm{A}(\alpha,\ f(\alpha))、B(β, f(β))\mathrm{B}(\beta,\ f(\beta)) で法線を引き、その交点を P とする。f′′f'' が連続で f′′(α)≠0f''(\alpha)\neq0 のとき、B を A に近づける(β→α\beta\to\alpha)と、P は A における曲率円の中心に近づく。

y=cos x 上の点A(x=0.5)の法線(朱)と、点B1(x=1.2)、B2(x=0.85)の法線。交点P1、P2はBをAに近づけるほどAの曲率円の中心Cに近づく

上の図は y=cos⁡xy=\cos x で α=0.5\alpha=0.5 とした例です。B を B1\mathrm{B}_1 から B2\mathrm{B}_2 へと A に近づけると、交点は P1\mathrm{P}_1 から P2\mathrm{P}_2 へ動き、A の曲率円の中心 C に寄っていきます。

【証明】

点 (X, Y)(X,\ Y) を1つ固定し、tt の関数

φ(t)=(X−t)+f′(t)(Y−f(t))\varphi(t)=(X-t)+f'(t)\bigl(Y-f(t)\bigr)

を考えます。φ(t)=0\varphi(t)=0 は「(X,Y)(X,Y) が点 (t, f(t))(t,\ f(t)) における法線の上にある」という意味です。

f′′f'' が連続で f′′(α)≠0f''(\alpha)\neq0 なので、α\alpha の近くでは f′′f'' の符号が一定で f′f' は単調です。よって β\beta が α\alpha に十分近ければ f′(β)≠f′(α)f'(\beta)\neq f'(\alpha) で、2本の法線は平行でなく交点 P が1つ決まります。P の座標を (X,Y)(X,Y) に選ぶと、P は A と B の法線の両方の上にあるので φ(α)=φ(β)=0\varphi(\alpha)=\varphi(\beta)=0 です。φ\varphi は微分可能なので、平均値の定理(ロルの定理)により、α\alpha と β\beta の間に φ′(ξ)=0\varphi'(\xi)=0 となる ξ\xi があります。

φ′(t)=−1+f′′(t)(Y−f(t))−{f′(t)}2\varphi'(t)=-1+f''(t)\bigl(Y-f(t)\bigr)-\{f'(t)\}^2

なので、f′′(ξ)≠0f''(\xi)\neq0 ならば

Y=f(ξ)+1+{f′(ξ)}2f′′(ξ)Y=f(\xi)+\dfrac{1+\{f'(\xi)\}^2}{f''(\xi)}

です(ξ\xi も α\alpha の近くにあるので f′′(ξ)≠0f''(\xi)\neq0 です)。β→α\beta\to\alpha のとき ξ→α\xi\to\alpha で、f, f′, f′′f,\ f',\ f'' はどれも連続なので

Y→f(α)+1+{f′(α)}2f′′(α)Y\to f(\alpha)+\dfrac{1+\{f'(\alpha)\}^2}{f''(\alpha)}

となります。さらに P は A の法線の上にあり、X=α−f′(α)(Y−f(α))X=\alpha-f'(\alpha)\bigl(Y-f(\alpha)\bigr) と YY で表せるので、XX も対応する値に近づきます。行き着く先は §2 の中心の公式そのものです。

証明の中で、P の満たす条件 φ(α)=0, φ′(ξ)=0\varphi(\alpha)=0,\ \varphi'(\xi)=0 が、極限では §2 の (1)・(2) と同じ式になっていることに注目してください。「2本の法線の交点」と「y′′y'' まで合わせた円の中心」は、同じ2つの方程式で決まる点だったわけです。

問題2に当てはめます。f(x)=log⁡xf(x)=\log x なら f′(a)=1af'(a)=\frac1a、f′′(a)=−1a2f''(a)=-\frac1{a^2} なので、1+{f′(a)}2=1+1a21+\{f'(a)\}^2=1+\frac1{a^2} を使って

中心の x 座標  a−1a⋅(1+1a2)⋅(−a2)=2a+1a中心の y 座標  log⁡a+(1+1a2)⋅(−a2)=log⁡a−a2−1\begin{aligned}&\text{中心の }x\text{ 座標}\ \ a-\frac1a\cdot\left(1+\frac1{a^2}\right)\cdot(-a^2)=2a+\frac1a\\[4pt]&\text{中心の }y\text{ 座標}\ \ \log a+\left(1+\frac1{a^2}\right)\cdot(-a^2)=\log a-a^2-1\end{aligned}

となり、問題2の R と一致します。A から R までの長さも公式の半径

(1+1a2)321a2=(a2+1)32a\dfrac{\left(1+\frac1{a^2}\right)^{\frac32}}{\frac1{a^2}}=\dfrac{(a^2+1)^{\frac32}}{a}

と等しくなります。直接計算するなら、A と R はどちらも傾き −a-a の法線の上にあり、xx 座標の差が a+1a=a2+1aa+\frac1a=\frac{a^2+1}{a} なので、長さは 1+a2⋅a2+1a\sqrt{1+a^2}\cdot\frac{a^2+1}{a} で、上の式と同じです(傾き mm の直線上で xx 座標が dd だけ離れた2点の距離は 1+m2 ∣d∣\sqrt{1+m^2}\,|d| です)。

4. 道路のカーブと曲率半径

高速道路を走っていると、カーブの手前に「R=300」のような標識が立っていることがあります。R の後ろの数は、そのカーブの曲率半径をメートル単位で示しています。半径ですから、数が小さいカーブほど急です。国内の高速道路の本線では R=200R=200 が最小とされ、その場所として岡山県内の中国自動車道、北房(ほくぼう)IC〜新見(にいみ)IC 間にある呰部(あざえ)トンネルのあたりがよく挙げられます。

道路の設計では、直線から円弧へ直接つなぐことはしません。直線の曲率は 00、円弧の曲率は 1R\frac1R なので、そのままつなぐと継ぎ目で曲率が急に変わり、ハンドルを一瞬で切る運転を強いることになるからです。そこで両者の間に、進むにつれて曲率が少しずつ増えていく緩和曲線を挟みます。

5. 縮閉線

曲線 CC 上で点 P を動かすと、P の曲率円の中心も動きます。その中心が描く軌跡を、CC の縮閉線といいます22020年の東京大学の入試(理系 第6問)では、楕円 x22+y2=1\frac{x^2}{2}+y^2=1 に法線が4本以上引ける点の範囲を求める問題が出題されました。答えの範囲の境界が、この楕円の縮閉線です。下の脚注へ。

問題1の放物線 y=12x2y=\frac12x^2 の場合、中心の式 (−α3, 32α2+1)\left(-\alpha^3,\ \frac32\alpha^2+1\right) がそのまま縮閉線の媒介変数表示です。α2=23(y−1)\alpha^2=\frac23(y-1) を使って α\alpha を消すと x2=α6=827(y−1)3x^2=\alpha^6=\frac{8}{27}(y-1)^3 が得られます。この縮閉線ともとの放物線は2点 (±22, 4)(\pm2\sqrt2,\ 4) で交わります。

楕円 x=2cos t, y=sin t(太線)と、その縮閉線(4つのとがった点をもつ星形の曲線)。楕円上の点Pの曲率円(破線)の中心Cが縮閉線の上にある

上の図は、楕円 x=2cos⁡t, y=sin⁡tx=2\cos t,\ y=\sin t と、その縮閉線 x=32cos⁡3t, y=−3sin⁡3tx=\frac32\cos^3t,\ y=-3\sin^3t です。楕円上の点 P を1つ選ぶと、その曲率円(破線)の中心 C は縮閉線の上にあります。縮閉線のとがった4点は、楕円の長軸と短軸の端での曲率円の中心にあたります。

よく知られた曲線の縮閉線が、またよく知られた曲線になる例も多くあります(矢印の左がもとの曲線、右がその縮閉線)。

点が動くにつれて曲率円が形を変えていく様子は、動画で見ると分かりやすいです。Wikipedia の縮閉線の記事(https://ja.wikipedia.org/wiki/縮閉線)にアニメーションが載っています。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

2 2020年の東京大学の入試(理系 第6問)では、楕円 x22+y2=1\frac{x^2}{2}+y^2=1 に法線が4本以上引ける点の範囲を求める問題が出題されました。答えの範囲の境界が、この楕円の縮閉線です。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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