陰関数の微分
目次
- 1. 縦棒と添字のついた記号
- 2. 円の上で dxdy が値をもたない2点
- 3. 陽関数に直すか、式のまま微分するか
- 4. 二次曲線の第2次導関数
授業の例題は、放物線 y=21x2 上の点 P(α,β) を通る円 (x−a)2+(y−b)2=r2 のうち、P における dxdy と dx2d2y の値が放物線のものと等しくなる円を求める問題でした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。。円の式を y について解くと平方根と ± が出てきて計算が重くなるので、解答では円の式を解かずに、そのまま両辺を x で微分しています2この問題の解答の流れ。放物線 y=21x2 では dxdy=x、dx2d2y=1 なので、P での値は α と 1。円については §2 と §4 の結果から −β−bα−a=α、−(β−b)3r2=1(§2 のとおり β=b)。前者から α−a=−α(β−b) で、円が P を通ることから r2=(1+α2)(β−b)2。これを後者に入れると β−b=−(1+α2)。β=21α2 と合わせて a=−α3, b=23α2+1, r=(1+α2)23 が求める円の中心と半径である。。
この頁では、まず解答の中で説明を省いた2つの点(微分係数の記号と、y−b=0 としてよい理由)を補います。そのあとで、陰関数の微分を例題から切り離して整理します。
1. 縦棒と添字のついた記号
解答では、点 P での傾きを dxdyx=α, y=β と書きました。縦棒の左にある dxdy が導関数で、縦棒の右下にあるのが代入する値です。全体で「導関数を x, y の式として求めておき、そこへ x=α, y=β を入れた値」、つまり点 (α,β) における微分係数を表します。
陰関数のまま微分すると、導関数の中に x と y の両方が残ります。そのため代入する値も x と y の2つを書いています。同じことを日本語で「y′ に x=α, y=β を代入した値」と書いても構いませんが、記号なら式の途中に置けるので答案を短くできます。この先の授業でも使う書き方です。
2. 円の上で dxdy が値をもたない2点
円の式の両辺を x で微分すると
2(x−a)+2(y−b)dxdy=0
です。ここから dxdy を取り出すには y−b で割る必要があります。割れないのは y=b のとき、すなわち円の上で中心と同じ高さにある点で、円の式に y=b を入れると x=a±r なので、そのような点は (a−r, b) と (a+r, b) の2つです(図1)。y=b の点では dxdy=−y−bx−a と求まります。
図1 中心 (a,b)・半径 r の円。中心と同じ高さの2点 (a−r,b) と (a+r,b) では接線が縦(y 軸と平行)になる図1の2点で、円の接線は縦の直線(y 軸と平行な直線)です。dxdy を「x を少し動かしたとき、y がその何倍動くか」という比として読むと、事情がつかめます。この2点に近づくほど、x がわずかしか動かないのに y は大きく動くので、比はいくらでも大きくなります。縦の直線に傾きの数値を割り当てられないのと同じで、この2点では dxdy は値をもちません。
例題の条件は「P における dxdy が放物線の傾き α に等しい」なので、P での dxdy は値をもっています。したがって P は上の2点のどちらでもなく、β−b=0 として割り算を進めて構いません。答案では、図1のような図を添えて「y=b の点では dxdy が定まらないので β=b」と一言書いておけば十分です。
3. 陽関数に直すか、式のまま微分するか
y=x2+1 のように「y=(x の式)」の形で曲線を表すことを陽関数表示、x2+y2=1 のように x と y が混ざった等式で表すことを陰関数表示といいます。陰関数表示の曲線の dxdy を求める方法は2つあります。
陰関数表示の曲線の dxdy の求め方
- 等式を y について解き、陽関数表示にしてから微分する。
- 等式のまま両辺を x で微分する。y は x の関数とみなすので、y を含む項は合成関数の微分により dxdg(y)=g′(y)dxdy となる。
2番目の方法(陰関数微分)は、新しい公式を使っているわけではなく、合成関数の微分を各項に当てはめているだけです。
2つの方法は、結果の形が違います。1番目の方法では dxdy が x だけの式になるので、x の範囲全体で符号を調べられます。2番目の方法では計算は軽く済みますが、dxdy に y が残ります。座標の分かった1点での値を求めるなら x, y を代入すれば終わりですが、符号を範囲全体で調べるのには向きません。この違いから、何を求めるかに応じて次のように選びます。
接線を求めるときは、接点での傾きの値だけが要るので、式のまま微分します。たとえば曲線 x2+xy+y2=3 は点 (1,1) を通ります。両辺を x で微分すると
2x+(y+xdxdy)+2ydxdy∴ dxdy=0=−x+2y2x+y
となり、(1,1) では dxdy=−1 です。したがって接線は y=−x+2 です。この曲線を y について解くには2次方程式の解の公式が要り、そこから微分するのは遠回りです。
グラフを描くときは、増減表のために dxdy の符号が範囲全体で要るので、陽関数表示に直します。たとえば曲線 y2=x2(1−x2) を式のまま微分すると 2ydxdy=2x−4x3 から dxdy=yx(1−2x2) となります。同じ x でも y>0 の点と y<0 の点とで符号が逆になるので、この式だけでは増減表が書けません。
そこで陽関数表示に直します。まず右辺は 0 以上でなければならないので、x の範囲は −1≦x≦1 です。また式に x も y も2乗の形でしか入っていないので、x を −x に、y を −y に替えても式は変わりません。よって曲線は y 軸に関しても x 軸に関しても対称で、0≦x≦1, y≧0 の部分を調べれば全体が分かります。この部分では y=x1−x2 と書けて
dxdy=1−x2−1−x2x2=1−x21−2x2(0≦x<1)
です。x=21 までは増加して y=21 に達し、そこから x=1 で y=0 まで減少します。x→1 では dxdy→−∞ なので、点 (1,0) での接線は縦です(§2 の円の2点と同じ状況です)。これを2つの軸で折り返すと図2の曲線になります。
図2 曲線 y2=x2(1−x2)。原点で交差する横長の8の字で、x は −1 から 1、最大の高さは x=±21 で 21面積を求めるときは、∫{(上の曲線)−(下の曲線)}dx の形に組むために、どちらが上にあるかを知る必要があります。そのため陽関数表示に直して考えるのが基本です。図2の曲線が囲む部分の面積なら、対称性から第1象限の部分の4倍として
4∫01x1−x2dx=4[−31(1−x2)23]01=34
と求まります。
陰関数表示の曲線のグラフを描く手順
- y について解き、陽関数表示で増減を調べる。
- 根号の中が 0 以上・分母が 0 でないなどの条件から、x の範囲を先に決める。
- 対称性を探して、調べる範囲を狭める。x が x2 や ∣x∣ の形でしか現れなければ、x を −x に替えても式は変わらないので y 軸対称。y についても同様で、こちらは x 軸対称。
xα+yα=1 の形の曲線
陰関数微分の練習でよく扱われる曲線に、xα+yα=1 (x≧0, y≧0) があります(α>0)。α=1 なら線分、α=2 なら四分円です。α を大きくすると曲線は外へふくらみ、正方形の角 (1,1) に近づいていきます。逆に α を 1 より小さくすると、曲線は原点の側へへこみ、2つの座標軸に近づいていきます(図3)。
図3 xα+yα=1 の第1象限の部分を α=21, 32, 1, 2, 4 について重ねた図。α が大きいほど外へふくらむこのうち2つには名前がついています。α=21 のときは放物線の一部です(両辺を2回2乗して整理すると (x−y)2−2(x+y)+1=0 になり、軸が直線 y=x の放物線を表します)。α=32 のときはアステロイド(星芒形)と呼ばれる曲線です。どちらも接線について、次の性質をもちます。
放物線 x+y=a の上の点を (s2, t2)(s, t>0, s+t=a)とします。陰関数微分で dxdy=−xy=−st なので、この点での接線は tx+sy=st(s+t)、すなわち
sx+ty=a
です。x 軸との交点を P、y 軸との交点を Q とすると OP=sa, OQ=ta で、OP+OQ=(s+t)a=a となり、接点によらず一定です(図4)。
図4 放物線 x+y=1 の接線が x 軸と P、y 軸と Q で交わる図。OP+OQ=1アステロイド x32+y32=a32 の上の点は (acos3θ, asin3θ)(0<θ<2π)と書けます。陰関数微分で dxdy=−(xy)31=−tanθ なので、接線は xsinθ+ycosθ=asinθcosθ、すなわち
cosθx+sinθy=a
です。P、Q を同じように決めると OP=acosθ, OQ=asinθ で、PQ=a が接点によらず一定です(図5)。
図5 アステロイド x32+y32=1 の接線が x 軸と P、y 軸と Q で交わる図。PQ=1この2つの性質は逆向きにも読めます。x 軸上の点 P と y 軸上の点 Q を、OP+OQ が一定になるように動かすと、直線 PQ が通過する範囲の境界(直線 PQ の包絡線)は放物線になります。PQ が一定になるように動かすと、包絡線はアステロイドになります。
4. 二次曲線の第2次導関数
例題では、円の dxdy=−y−bx−a をもう一度 x で微分しました。商の微分をして、途中で出てくる dxdy に上の式を戻すと
dx2d2y=−(y−b)2(y−b)−(x−a)dxdy=−(y−b)3(x−a)2+(y−b)2=−(y−b)3r2
となります。最後の等号では円の式 (x−a)2+(y−b)2=r2 を使いました。分子が定数になるので、dx2d2y の符号は y−b の符号だけで決まり、円の上半分(y>b)では負、下半分では正です。
楕円や双曲線でも、分子に元の曲線の式がそのまま現れて定数に置き換わります。双曲線 x2−4y2=4 で確かめます。両辺を x で微分すると
2x−8ydxdy=0∴ dxdy=4yx
です。これをもう一度 x で微分して
dx2d2y=4y2y−xdxdy=16y34y2−x2=−16y34=−4y31
となります(3つ目の等号で x2−4y2=4 を使いました)。一般の楕円 p2x2+q2y2=1 でも同じ計算で dxdy=−p2yq2x、dx2d2y=−p2y3q4 です。
1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。
2 この問題の解答の流れ。放物線 y=21x2 では dxdy=x、dx2d2y=1 なので、P での値は α と 1。円については §2 と §4 の結果から −β−bα−a=α、−(β−b)3r2=1(§2 のとおり β=b)。前者から α−a=−α(β−b) で、円が P を通ることから r2=(1+α2)(β−b)2。これを後者に入れると β−b=−(1+α2)。β=21α2 と合わせて a=−α3, b=23α2+1, r=(1+α2)23 が求める円の中心と半径である。
塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。
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