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逆関数の微分

2025年度 高2解説2026年10月6日7分で読めます塾講師木下微分

ここでは、f(x)f(x)の逆関数f−1(x)f^{-1}(x)の導関数を計算することを考えます。……が、その前に逆関数の復習をしておきましょう。

一般に逆関数とは、

y=f(x)の逆関数:x=f(y)を満たすy=f(x)\text{の逆関数}:x=f(y)\text{を満たす}

ものを言います。関数とは一般に「xxをとったらyyの値がわかる(具体的に一つに定まる)」ものでしたが、逆関数をとれるような関数においてはそれだけでなく、「yyの値がわかれば、xxの値も特定できる」のでした。

以前に逆関数をとれるような関数は、「上への1対1の関数」に限られるということをやっていましたね。深くは取り扱いませんが要確認です1たとえば y=x2y=x^2 は x=1x=1 と x=−1x=-1 で同じ値をとるので、定義域を x≧0x\geqq0 などに制限しないと逆関数をもちません。下の脚注へ。

一般には、x=f(y)x=f(y)をy=(xの式)y=(x\text{の式})に書きなおした形で表します。これが可能であれば逆関数の微分は簡単です。例えば、直線の逆関数の導関数を考えてみましょう。y=3x+1y=3x+1の逆関数はx=3y+1⇔y=13x−13x=3y+1\Leftrightarrow y=\dfrac13x-\dfrac13ですね。逆関数の導関数はつまるところ傾きなので13\dfrac13です。

この例のように、xxとyyを入れかえた後にy=(xの式)y=(x\text{の式})に直せるような場合であれば微分することも容易ですが、それが出来ない関数も数多くあります。例えば「y=sin⁡xy=\sin xの逆関数を微分せよ」という問題が出たらどうでしょうか2y=arcsin⁡xy=\arcsin xですね知ってますよ、というような人には釈迦に説法ではありますが……。下の脚注へ。直線の逆関数の導関数のようにして解くことはできません。そこで、今回学習する以下の手法が威力を発揮します。

逆関数の微分

⑴ y=f(x)y=f(x)のxxとyyを入れ替える

x=f(y)x=f(y)

⑵ 両辺xxで微分する

1=ddxf(y)⇔1=dydx⋅ddyf(y)⇔dydx=1ddyf(y)\begin{aligned}&1=\dfrac{d}{dx}f(y)\\ \Leftrightarrow{}&1=\dfrac{dy}{dx}\cdot\dfrac{d}{dy}f(y)\\ \Leftrightarrow{}&\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{\dfrac{d}{dy}f(y)}\end{aligned}

⑶ この時点ではdydx\dfrac{dy}{dx}はyyの式で表されているので、⑴の式を使ってxxに表し直す

これだけだと何がなんだか、となりそうなので、ここでやっていることを解説しておきます。

この操作の目的意識は、逆関数f−1f^{-1}の式から元の関数ffの式に直し、dydx\dfrac{dy}{dx}の情報を取り出すことにあります。

まず、f−1f^{-1}の式から元の関数ffの式に直しましょう。y=f−1(x)y=f^{-1}(x)とおき、この両辺を関数ffに代入すると、

f(y)=f(f−1(x))⇔f(y)=x\begin{aligned}&{}f(y)=f(f^{-1}(x))\\ \Leftrightarrow{}&f(y)=x\end{aligned}

より、x=f(y)x=f(y)という関数を得ることができます。

x=f(y)x=f(y)という式からdydx\dfrac{dy}{dx}の情報を引き出せばいいのですが、ここは当然陰関数微分です。両辺をxxで微分します。

左辺の微分は簡単で11になります。右辺の微分は合成関数の微分法を使って、

ddxf(y)=dydx⋅ddyf(y)\dfrac{d}{dx}f(y)=\dfrac{dy}{dx}\cdot \dfrac{d}{dy}f(y)

となります。

よって、

1=dydx⋅ddyf(y) ⇔ dydx=1ddyf(y)1=\dfrac{dy}{dx}\cdot \dfrac{d}{dy}f(y)\ \Leftrightarrow \ \dfrac{dy}{dx}=\dfrac1{\dfrac{d}{dy}f(y)}

となり、dydx\dfrac{dy}{dx}が計算できます。ただし、分母のddyf(y)\dfrac{d}{dy}f(y)が00になる所ではこの式は使えません。たとえばy=x3y=x^3の逆関数y=x3y=\sqrt[3]{x}は、x=0x=0(y=0y=0でddyy3=0\dfrac{d}{dy}y^3=0)でグラフの接線が縦になり、微分できません。きちんと言うと、「ffが区間で微分可能で狭義単調、かつf′(y)≠0f'(y)\neq0」のとき、逆関数は微分可能で上の式が成り立ちます(だからこそ両辺をxxで微分してよい)。

例:sin⁡x\sin x の逆関数

y=sin⁡x (−π2<x<π2)y=\sin x\ \left(-\dfrac{\pi}{2}<x<\dfrac{\pi}{2}\right)の逆関数は

x=sin⁡y(−π2<y<π2)x=\sin y\quad \left(-\dfrac{\pi}{2}<y<\dfrac{\pi}{2}\right)

を満たします。両辺をxxで微分すると1=dydx⋅cos⁡y1=\dfrac{dy}{dx}\cdot\cos yなので、dydx=1cos⁡y\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{\cos y}です。ここで−π2<y<π2-\dfrac{\pi}{2}<y<\dfrac{\pi}{2}よりcos⁡y>0\cos y>0なので、cos⁡y=1−sin⁡2y=1−x2\cos y=\sqrt{1-\sin^2y}=\sqrt{1-x^2}となり、

dydx=11−x2\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}

が得られます。逆関数そのものをy=(xの式)y=(x\text{の式})の形で書けなくても、その導関数は求まるのがポイントです。⑶でxxの式に直すときに、yyの範囲から符号(ここではcos⁡y\cos yの正負)を決める所を忘れないようにしましょう。

逆関数の導関数を使う問題

授業で扱った問題3塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へでは、この方法で逆関数の導関数を求め、それを使って逆関数を多項式で下から評価し、さらに具体的な値を代入して π\pi を評価しました。同じ考え方で解ける問題を1つ挙げます。

問題

tan⁡x (−π2<x<π2)\tan x\ \left(-\dfrac{\pi}{2}<x<\dfrac{\pi}{2}\right) の逆関数を f(x)f(x) とする。

⑴ f′(x)f'(x) を xx の式で表せ。

⑵ x>0x>0 のとき、f(x)>x−x33f(x)>x-\dfrac{x^3}{3} を示せ。

⑶ π>3.07\pi>3.07 を示せ。ただし 1.73<3<1.741.73<\sqrt3<1.74 を用いてよい。

⑴ y=f(x)y=f(x) とおくと x=tan⁡y (−π2<y<π2)x=\tan y\ \left(-\dfrac{\pi}{2}<y<\dfrac{\pi}{2}\right) です。両辺を xx で微分すると 1=dydx⋅1cos⁡2y1=\dfrac{dy}{dx}\cdot\dfrac{1}{\cos^2y} なので

f′(x)=dydx=cos⁡2y=11+tan⁡2y=11+x2f'(x)=\frac{dy}{dx}=\cos^2y=\frac{1}{1+\tan^2y}=\frac{1}{1+x^2}

です。sin⁡x\sin x のときと違い、cos⁡2y=11+tan⁡2y\cos^2y=\dfrac{1}{1+\tan^2y} には符号の問題が出てきません。

⑵ g(x)=f(x)−(x−x33)g(x)=f(x)-\left(x-\dfrac{x^3}{3}\right) とおくと、⑴より

g′(x)=11+x2−1+x2=1−(1−x2)(1+x2)1+x2=x41+x2\begin{aligned}g'(x)&=\frac{1}{1+x^2}-1+x^2\\&=\frac{1-(1-x^2)(1+x^2)}{1+x^2}\\&=\frac{x^4}{1+x^2}\end{aligned}

です。x>0x>0 で g′(x)>0g'(x)>0 なので g(x)g(x) は x≧0x\geqq0 で増加し、g(0)=f(0)=0g(0)=f(0)=0 から、x>0x>0 で g(x)>0g(x)>0 です。

⑶ tan⁡π6=13\tan\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{1}{\sqrt3} なので f ⁣(13)=π6f\!\left(\dfrac{1}{\sqrt3}\right)=\dfrac{\pi}{6} です。⑵に x=13x=\dfrac{1}{\sqrt3} を代入すると

π6>13−193=893=8327\frac{\pi}{6}>\frac{1}{\sqrt3}-\frac{1}{9\sqrt3}=\frac{8}{9\sqrt3}=\frac{8\sqrt3}{27}

より π>1639>16×1.739=3.075⋯>3.07\pi>\dfrac{16\sqrt3}{9}>\dfrac{16\times1.73}{9}=3.075\cdots>3.07 です。

⑶では、tan⁡π4=1\tan\dfrac{\pi}{4}=1 を使って x=1x=1 を代入することもできますが、そうすると π4>23\dfrac{\pi}{4}>\dfrac23、つまり π>83\pi>\dfrac83 しか出てきません。00 に近い値を代入するほど評価の精度がよくなります。その理由はマクローリン展開の記事に書きました。

1 たとえば y=x2y=x^2 は x=1x=1 と x=−1x=-1 で同じ値をとるので、定義域を x≧0x\geqq0 などに制限しないと逆関数をもちません。

2 y=arcsin⁡xy=\arcsin xですね知ってますよ、というような人には釈迦に説法ではありますが……。

3 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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