逆関数の微分
ここでは、f(x)の逆関数f−1(x)の導関数を計算することを考えます。……が、その前に逆関数の復習をしておきましょう。
一般に逆関数とは、
y=f(x)の逆関数:x=f(y)を満たす
ものを言います。関数とは一般に「xをとったらyの値がわかる(具体的に一つに定まる)」ものでしたが、逆関数をとれるような関数においてはそれだけでなく、「yの値がわかれば、xの値も特定できる」のでした。
以前に逆関数をとれるような関数は、「上への1対1の関数」に限られるということをやっていましたね。深くは取り扱いませんが要確認です1たとえば y=x2 は x=1 と x=−1 で同じ値をとるので、定義域を x≧0 などに制限しないと逆関数をもちません。。
一般には、x=f(y)をy=(xの式)に書きなおした形で表します。これが可能であれば逆関数の微分は簡単です。例えば、直線の逆関数の導関数を考えてみましょう。y=3x+1の逆関数はx=3y+1⇔y=31x−31ですね。逆関数の導関数はつまるところ傾きなので31です。
この例のように、xとyを入れかえた後にy=(xの式)に直せるような場合であれば微分することも容易ですが、それが出来ない関数も数多くあります。例えば「y=sinxの逆関数を微分せよ」という問題が出たらどうでしょうか2y=arcsinxですね知ってますよ、というような人には釈迦に説法ではありますが……。。直線の逆関数の導関数のようにして解くことはできません。そこで、今回学習する以下の手法が威力を発揮します。
逆関数の微分
⑴ y=f(x)のxとyを入れ替える
x=f(y)
⑵ 両辺xで微分する
⇔⇔1=dxdf(y)1=dxdy⋅dydf(y)dxdy=dydf(y)1
⑶ この時点ではdxdyはyの式で表されているので、⑴の式を使ってxに表し直す
これだけだと何がなんだか、となりそうなので、ここでやっていることを解説しておきます。
この操作の目的意識は、逆関数f−1の式から元の関数fの式に直し、dxdyの情報を取り出すことにあります。
まず、f−1の式から元の関数fの式に直しましょう。y=f−1(x)とおき、この両辺を関数fに代入すると、
⇔f(y)=f(f−1(x))f(y)=x
より、x=f(y)という関数を得ることができます。
x=f(y)という式からdxdyの情報を引き出せばいいのですが、ここは当然陰関数微分です。両辺をxで微分します。
左辺の微分は簡単で1になります。右辺の微分は合成関数の微分法を使って、
dxdf(y)=dxdy⋅dydf(y)
となります。
よって、
1=dxdy⋅dydf(y) ⇔ dxdy=dydf(y)1
となり、dxdyが計算できます。ただし、分母のdydf(y)が0になる所ではこの式は使えません。たとえばy=x3の逆関数y=3xは、x=0(y=0でdydy3=0)でグラフの接線が縦になり、微分できません。きちんと言うと、「fが区間で微分可能で狭義単調、かつf′(y)=0」のとき、逆関数は微分可能で上の式が成り立ちます(だからこそ両辺をxで微分してよい)。
例:sinx の逆関数
y=sinx (−2π<x<2π)の逆関数は
x=siny(−2π<y<2π)
を満たします。両辺をxで微分すると1=dxdy⋅cosyなので、dxdy=cosy1です。ここで−2π<y<2πよりcosy>0なので、cosy=1−sin2y=1−x2となり、
dxdy=1−x21
が得られます。逆関数そのものをy=(xの式)の形で書けなくても、その導関数は求まるのがポイントです。⑶でxの式に直すときに、yの範囲から符号(ここではcosyの正負)を決める所を忘れないようにしましょう。
逆関数の導関数を使う問題
授業で扱った問題3塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。では、この方法で逆関数の導関数を求め、それを使って逆関数を多項式で下から評価し、さらに具体的な値を代入して π を評価しました。同じ考え方で解ける問題を1つ挙げます。
問題
tanx (−2π<x<2π) の逆関数を f(x) とする。
⑴ f′(x) を x の式で表せ。
⑵ x>0 のとき、f(x)>x−3x3 を示せ。
⑶ π>3.07 を示せ。ただし 1.73<3<1.74 を用いてよい。
⑴ y=f(x) とおくと x=tany (−2π<y<2π) です。両辺を x で微分すると 1=dxdy⋅cos2y1 なので
f′(x)=dxdy=cos2y=1+tan2y1=1+x21
です。sinx のときと違い、cos2y=1+tan2y1 には符号の問題が出てきません。
⑵ g(x)=f(x)−(x−3x3) とおくと、⑴より
g′(x)=1+x21−1+x2=1+x21−(1−x2)(1+x2)=1+x2x4
です。x>0 で g′(x)>0 なので g(x) は x≧0 で増加し、g(0)=f(0)=0 から、x>0 で g(x)>0 です。
⑶ tan6π=31 なので f(31)=6π です。⑵に x=31 を代入すると
6π>31−931=938=2783
より π>9163>916×1.73=3.075⋯>3.07 です。
⑶では、tan4π=1 を使って x=1 を代入することもできますが、そうすると 4π>32、つまり π>38 しか出てきません。0 に近い値を代入するほど評価の精度がよくなります。その理由はマクローリン展開の記事に書きました。
1 たとえば y=x2 は x=1 と x=−1 で同じ値をとるので、定義域を x≧0 などに制限しないと逆関数をもちません。
2 y=arcsinxですね知ってますよ、というような人には釈迦に説法ではありますが……。
3 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。
塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。
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