tecktom.com

平均値の定理のまわり

2025年度 高2発展2026年10月6日32分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. 平均値の定理の証明
  2. 2. 狭義単調な範囲は・・?
  3. 3. テイラーの定理・テイラー展開・マクローリン展開
  4. 4. コーシーの平均値の定理
  5. 5. 積分の平均値の定理

平均値の定理周りの補遺を書いておきます。後半のものについては高校数学の範囲外のため、証明なしに答案で使うのは絶対にやめましょう。1かなり便利なので適用範囲と証明方法を押さえておいていざという時にゴリ押すための手段として手元においておくのはアリかもしれません。下の脚注へ以下でa<ba<bとします。

1. 平均値の定理の証明

平均値の定理の主張をおさらいしておきます。2以下[a,b][a,b]や(a,b)(a,b)といった(高校の教科書には出てこない)記法が出てきますが、それぞれ [a,b]:={x∈R∣a≦x≦b}(a,b):={x∈R∣a<x<b}\begin{aligned}&[a,b]:=\left\{x\in\mathbb{R}|a\leqq x\leqq b\right\}\\ &(a,b):=\left\{x\in\mathbb{R}|a< x<b\right\}\end{aligned} を表します。また、例えば[a,b):={x∈R∣a≦x<b}[a,b):=\left\{x\in\mathbb{R}|a\leqq x<b\right\}のようになります。記述量を減らせるので知っておいて損はない記法です。下の脚注へ

平均値の定理

[a,b][a,b]で連続、(a,b)(a,b)で微分可能な関数f(x)f(x)3「[a,b][a,b]で連続な関数f(x)f(x)」というような表現は普通は「x∈[a,b]x\in [a,b]で連続な関数f(x)f(x)」というような意味合いです。下の脚注へに対して

f′(c)=f(b)−f(a)b−a\begin{aligned}&f'(c)=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{aligned}

を満たすc∈(a,b)c\in (a,b)が存在する4あとで出てくる論理記号をもちいた書き方でこの定理の主張を書くと、
「[a,b][a,b]で連続、(a,b)(a,b)で微分可能な関数f(x)f(x)に対して、
∃c∈(a,b), s.t., f′(c)=f(b)−f(a)b−a\exists c\in (a,b),\ s.t.,\ f'(c)=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}」下の脚注へ

平均値の定理は、これの特殊版である5定理の形を見れば一目瞭然ですが、ロルの定理の主張は平均値の定理の主張においてf(a)=f(b)f(a)=f(b)を代入、つまりf(b)−f(a)=0f(b)-f(a)=0としたものになっています。下の脚注へロルの定理を用いて証明することができます。このロルの定理は、最大値・最小値の定理を用いて証明できます。以下にそれぞれ書きます:

最大値・最小値の定理

[a,b][a,b]で連続な関数f(x)f(x)は、最大値と最小値を持つ

ロルの定理

[a,b][a,b]で連続、(a,b)(a,b)で微分可能で、f(a)=f(b)f(a)=f(b)を満たす関数f(x)f(x)について、f′(c)=0f'(c)=0を満たすc∈(a,b)c\in (a,b)が存在する

最大値・最小値の定理は閉区間上で連続な関数は最大値と最小値をもつというものです。これは直感的にはかなり当たり前なのですが示そうとすると少し大変なのでここではこれの証明は割愛して、6具体的には閉区間で連続な関数に上限・下限があることを背理法で示したのちにこの上限が最大値に、下限が最小値に一致することを点列の収束を使って証明します。大学数学範囲なので気になる人は調べてみましょう。下の脚注へこれを使ってロルの定理と平均値の定理を証明してみましょう。まずはロルの定理から:

ロルの定理の証明

⑴ 全てのx∈[a,b]x\in [a,b]でf(x)=f(a)f(x)=f(a)(定数)のとき

定数関数は各点で導関数が00より題意が成立する。

⑵ f(t)>f(a)=f(b)f(t)>f(a)=f(b)なるt∈(a,b)t\in (a,b)が存在するとき

f(x)f(x)は[a,b][a,b]で連続より、最大値・最小値の定理からf(c)f(c)がf(x)f(x)の値域のなかで最大値となるようなc∈[a,b]c\in [a,b]が存在して、また⑵の仮定よりx=ax=aやx=bx=bでf(x)f(x)は最大値を取らないから、c≠ac\neq aかつc≠bc\neq bなのでc∈(a,b)c\in (a,b)である。このccについて、f(x)f(x)が(a,b)(a,b)で微分可能なためf′(c)f'(c)が存在して、その値は

{f′(c)=lim⁡h→+0f(c+h)−f(c)h⋯①f′(c)=lim⁡h→−0f(c+h)−f(c)h⋯②\begin{aligned}&\begin{cases} &f'(c)=\lim_{h\to +0}\dfrac{f(c+h)-f(c)}{h}\cdots\text{①}\\ &f'(c)=\lim_{h\to -0}\dfrac{f(c+h)-f(c)}{h}\cdots\text{②} \end{cases}\end{aligned}

となる。ここで、f(c)f(c)は最大値なのでf(c+h)−f(c)≦0f(c+h)-f(c)\leqq 0であり、これをh>0h>0で割ると00以下、h<0h<0で割ると00以上になることを用いると、

{①≦0②≧0\begin{aligned}&\begin{cases} &\text{①}\leqq 0\\ &\text{②}\geqq 0 \end{cases}\end{aligned}

となる。ここで微分可能という仮定から①と②の右側・左側極限は一致する。よって①=②\text{①}=\text{②}であるので、f′(c)=0f'(c)=0となるから、最大値をとるc∈(a,b)c\in (a,b)でf′(c)=0f'(c)=0となるので題意が成立する。

⑶ f(t)<f(a)=f(b)f(t)<f(a)=f(b)なるt∈(a,b)t\in (a,b)が存在するとき

⑵と同様にf(x)f(x)が最小値をとるc∈(a,b)c\in (a,b)でf′(c)=0f'(c)=0となるので題意が成立する。□

f(x)f(x)の仮定である端点でのf(x)f(x)の値が一致することからf(x)f(x)の最大値か最小値を必ずx∈(a,b)x\in (a,b)でとる(少なくともかならず端点以外で最大値か最小値はとる)ことと、最大値や最小値を取る点が両側で微分可能なら必ずその微分係数が00になるのがポイントでしたね。続いて平均値の定理の証明ですが、これは少し工夫することでロルの定理に帰着することができます。具体的には、ロルの定理の「端点でf(x)f(x)の値が等しい」という状況を無理やり作り出すんですね。みてみましょう:

平均値の定理の証明

g(x):=f(x)−f(b)−f(a)b−a(x−a)\begin{aligned}&g(x):=f(x)-\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}(x-a)\end{aligned}

とする。この時

{g(a)=f(a)g(b)=f(b)−f(b)−f(a)b−a(b−a)=f(a)\begin{aligned}&\begin{cases} &g(a)=f(a)\\ &g(b)=f(b)-\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}(b-a)=f(a) \end{cases}\end{aligned}

となるのでg(a)=g(b)g(a)=g(b)である。また、f(b)−f(a)b−a(x−a)\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}(x-a)はただの一次関数なのでもちろん連続で微分可能だから、g(x)g(x)はf(x)f(x)と同様[a,b][a,b]で連続、(a,b)(a,b)で微分可能なので、g(x)g(x)に対してロルの定理が使えて、g′(c)=0g'(c)=0を満たすc∈(a,b)c\in (a,b)が存在する。このccについて、g(x)g(x)の定義から

g′(c)=f′(c)−f(b)−f(a)b−a\begin{aligned}&g'(c)=f'(c)-\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{aligned}

が成立し、これが00となるので、このccにおいて

f′(c)=f(b)−f(a)b−a\begin{aligned}&f'(c)=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{aligned}

が成立するから、題意が成立する。□

aaからbbまでのf(x)f(x)の平均変化率がf(b)−f(a)b−a\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}なので、この傾きをもちx=ax=aで00をとる一次関数であるf(b)−f(a)b−a(x−a)\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}(x-a)をf(x)f(x)から引いてやることでロルの定理の前提である「端点で関数の値が同じ」という状態を無理やり作り出す部分がポイントでした。

2. 狭義単調な範囲は・・?

以前、授業で、関数y=tan⁡x (0<x<π4)y=\tan x \ \left(0<x<\dfrac{\pi}{4}\right)の逆関数をy=f(x)y=f(x)として、0<x<10<x<1でx−x33<f(x)x-\dfrac{x^3}{3}<f(x)を示す問題を扱いました7塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ。その模範解答は、f′(x)=11+x2f'(x)=\dfrac{1}{1+x^2}を求めてg(x)=f(x)−(x−x33)g(x)=f(x)-\left(x-\dfrac{x^3}{3}\right)とおき、0<x<10<x<1でg′(x)>0g'(x)>0を示したうえで、「0<x<10<x<1においてg(x)g(x)は狭義単調増加し(♣\clubsuit)、g(x)>g(0)=0g(x)>g(0)=0(★\bigstar)」と結論するものでした。

この解答の★\bigstarはじつはかなり怪しげなことを言っています。まず、f(x)f(x)の定義域は0<x<10<x<1なので、g(x):=f(x)−(x−x33)g(x):=f(x)-\left(x-\dfrac{x^3}{3}\right)の定義域も同様に0<x<10<x<1であるので、g(0)g(0)というのはxxが定義域から外れるため本来定義されないはずです。さらに、g(0):=0g(0):=0と仮に定義したとしても、♣\clubsuitでは0<x<10<x<1での狭義単調増加性しか言っていないのにも関わらず★\bigstarの結果は0≦x<10\leqq x<1での狭義単調増加性から得られる結論であり、手放しに肯定できるものではありません。これはどのように正当化されるのでしょうか。じつは、以下のような主張が成り立ちます:

主張

f(x)f(x)は(a,b)(a,b)で微分可能、[a,b)[a,b)で連続とする。また全てのx∈(a,b)x\in (a,b)でf′(x)>0f'(x)>0とする。このとき、f(x)f(x)はもちろん(a,b)(a,b)で狭義単調増加であるが、[a,b)[a,b)でも狭義単調増加となる

つまり、「(a,b)(a,b)でf′(x)>0f'(x)>0」から、直接言える「(a,b)(a,b)でf(x)f(x)が狭義単調増加」という結論のみならず、もし[a,b)[a,b)でf(x)f(x)が連続ならx=ax=aも含めた「[a,b)[a,b)でf(x)f(x)が狭義単調増加」という結論も言えるということになります。これを平均値の定理で証明してみましょう:

証明

全てのz,y∈[a,b)z,y\in [a,b)に対しz>y⇒f(z)>f(y)z>y\Rightarrow f(z)>f(y)を示せば「[a,b)[a,b)でf(x)f(x)が狭義単調増加」と言えるため、これを示す。

まず、z>yz>yを満たすz,y∈[a,b)z,y\in [a,b)に対し、(y,z)⊂(a,b)(y,z)\subset (a,b)であり、[y,z]⊂[a,b)[y,z]\subset[a,b)なので、8y,z∈[a,b)y,z\in [a,b)であるので、a≦y<z<ba\leqq y <z<bであるから、(y,z)⊂(a,b)(y,z)\subset (a,b)かつ[y,z]⊂[a,b)[y,z]\subset[a,b)下の脚注へf(x)f(x)が(a,b)(a,b)で微分可能、[a,b)[a,b)で連続であることからf(x)f(x)は(y,z)(y,z)で微分可能かつ[y,z][y,z]で連続である。よって平均値の定理が使えて、

f(z)−f(y)=f′(c)(z−y)\begin{aligned}&f(z)-f(y)=f'(c)(z-y)\end{aligned}

なるc∈(y,z)c\in (y,z)が存在する。ここで、全てのx∈(a,b)x\in (a,b)でf′(x)>0f'(x)>0であり、c∈(y,z)⊂(a,b)c\in (y,z)\subset (a,b)なので、c∈(a,b)c\in (a,b)だからf′(c)>0f'(c)>0である。ここで、仮定よりz>y⇒z−y>0z>y\Rightarrow z-y>0なので、f′(c)(z−y)>0f'(c)(z-y)>0である。よって、

f(z)−f(y)>0⇒f(z)>f(y)\begin{aligned}&f(z)-f(y)>0\Rightarrow f(z)>f(y)\end{aligned}

となる。よって示された。□

ポイントは平均値の定理の端点のzzやyyが(a,b)(a,b)から外れていたとしても、(つまりy=ay=aであったとしても)平均値の定理のccは(a,b)(a,b)に含まれているところでした。この正当化を用いることで、前述の問題の解答は以下のように厳密に書き換えることができます:

解答・改

(g′(x)g'(x)の計算までは同じ)よって、0<x<10<x<1においてg′(x)>0g'(x)>0が常に成立する。⋯♡\cdots\heartsuit

ここで、g(0):=0g(0):=0としてg(x)g(x)の定義域を拡張する。lim⁡x→+0g(x)=0\lim_{x\to +0}g(x)=0よりこのときg(x)g(x)は[0,1)[0,1)で連続、(0,1)(0,1)で微分可能である。よって、y∈(0,1)y\in (0,1)と00に対して、g(x)g(x)は(0,y)(0,y)で微分可能、[0,y][0,y]で連続であるから、平均値の定理を用いて、

g(y)−g(0)=g′(c)(y−0)⇔ g(y)=g′(c)⋅y\begin{aligned}g(y)-g(0)&=g'(c)(y-0)\\\Leftrightarrow\ g(y)&=g'(c)\cdot y\end{aligned}

なるc∈(0,y)c\in (0,y)が存在する。(0,y)⊂(0,1)(0,y)\subset (0,1)より、c∈(0,1)c\in (0,1)なのでg′(c)>0g'(c)>0である(∵♡\because\heartsuit)。これとy∈(0,1)y\in (0,1)よりy>0y>0から、g′(c)⋅y>0g'(c)\cdot y>0となるので、g(y)>0g(y)>0である。よって、全てのy∈(0,1)y\in (0,1)でg(y)>0g(y)>0となるので、全てのx∈(0,1)x\in (0,1)でg(x)>0g(x)>0となる。

したがって

x−x33<f(x) □\begin{aligned}&x-\dfrac{x^3}{3}<f(x) \ \quad\square\end{aligned}

実際の入試や模試の現場で同じような単調性の適応範囲の拡張に遭遇したときにこのような記述を書く必要はないと推察はされますが、この手の記述の不備に気持ち悪さを覚えられるようになると厳密な解答を書きやすくなると思います。

ちなみに、微分可能性を仮定しなくても、というか端点x=ax=aでの連続性を仮定するだけで同様の主張がたぶん9この補遺を書きながら思いついたので間違ってたらごめんなさい下の脚注へ成立します:10途中に微分できない点や、値が跳ぶ(不連続な)点があっても使えるので、これはちょい嬉しいね。下の脚注へ

主張※拡張ver.

f(x)f(x)がx=ax=aで右側連続11「右側」は、aa に右側(x>ax>a の側)から近づいたときに連続という意味です。式で書くと lim⁡x→a+0f(x)=f(a)\displaystyle\lim_{x\to a+0}f(x)=f(a)。aa は区間 [a,b)[a,b) の左の端ですが、f(x)f(x) の様子がわかっているのは aa より右の (a,b)(a,b) だけなので、近づけるのは右からだけです。端の位置でなく、近づく向きで呼びます。下の脚注へ、(a,b)(a,b)で狭義単調増加だとする。このときf(x)f(x)は[a,b)[a,b)でも狭義単調増加である。

証明には連続の定義であるε−δ\varepsilon -\delta論法を用います。12これ以降∀\forallとか∃\existsとか論理記号がいっぱい出てきます。これはそれぞれ、 ∀a:全てのaについて∃a:あるaが存在して、\begin{aligned}&\forall a \quad \text{:全てのaについて}\\ &\exists a \quad \text{:あるaが存在して、}\end{aligned} のような意味です。例えば ∀ε>0,∃δ>0,s.t., y∈(a,b)∧∣y−a∣<δ⇒∣f(y)−f(a)∣<ε\begin{aligned}&\forall \varepsilon >0,\exists \delta>0,\\&\quad s.t.,\ y\in (a,b)\land|y-a|<\delta\Rightarrow |f(y)-f(a)|<\varepsilon\end{aligned} は日本語にすると、「全ての正の数ε\varepsilonに対して、対応するある正の数δ\deltaが存在して、そのδ\deltaについて、以下が成立する: y∈(a,b)∧∣y−a∣<δy\in (a,b)\land|y-a|<\deltaをyyがみたすならば、∣f(y)−f(a)∣<ε|f(y)-f(a)|<\varepsilonとなる」となります。これを日本語で書こうとするとかなり大変です。ここまでとは行かなくても、「全ての〜に対して」とか「ある〜が存在する」みたいな言い回しは数学ではあるあるで、これを一つの記号で略記できるので慣れるまでは大変ですが慣れると記述量を大幅に削減できます。気になる人は調べてみることをお勧めします。下の脚注へ

証明

f(x)f(x)がx=ax=aで右側連続とは、以下が真であることである:

∀ε>0,∃δ>0,s.t.,y∈(a,b)∧∣y−a∣<δ⇒∣f(y)−f(a)∣<ε\begin{aligned}&\forall \varepsilon >0,\exists \delta>0,\\ &\quad s.t.,y\in (a,b)\land|y-a|<\delta\Rightarrow |f(y)-f(a)|<\varepsilon\end{aligned}

⋯①\cdots\text{①}

また、f(x)f(x)が(a,b)(a,b)で狭義単調増加とは、以下が真であることである:

∀z,w∈(a,b),z>w⇒f(z)>f(w)\begin{aligned}&\forall z,w\in (a,b),z>w\Rightarrow f(z)>f(w)\end{aligned}

ここから、f(x)f(x)が[a,b)[a,b)で狭義単調増加なことを示す。つまり以下が成り立つことを示す:

∀z,w∈[a,b),z>w⇒f(z)>f(w)\begin{aligned}&\forall z,w\in [a,b),z>w\Rightarrow f(z)>f(w)\end{aligned}

ここで、z,w∈(a,b)z,w\in (a,b)については仮定より言えるので、結局以下を言えば良い:

∀z∈(a,b),f(z)>f(a)\begin{aligned}&\forall z\in (a,b),f(z)>f(a)\end{aligned}

これを示す。まず、任意のz∈(a,b)z\in (a,b)に対し、開区間の性質より

∃u ,s.t., a<u<z\begin{aligned}\exists u \ ,s.t.,\ a<u<z\end{aligned}

であり、このときu,z∈(a,b)u,z\in (a,b)なので、f(x)f(x)が(a,b)(a,b)で狭義単調増加であることにより、

f(u)<f(z)\begin{aligned}&f(u)<f(z)\end{aligned}

となる。よってf(z)−f(u)=:εu,zf(z)-f(u)=:\varepsilon _{u,z}とするとεu,z>0\varepsilon _{u,z}>0である。よって①より、

∃δu,z>0,s.t. ,y∈(a,b)∧∣y−a∣<δu,z⇒∣f(y)−f(a)∣<εu,z\begin{aligned}&\exists \delta _{u,z}>0 ,\\ &\quad \quad s.t.\ ,y\in (a,b)\land|y-a|<\delta_{u,z}\\ &\quad \quad \quad \Rightarrow |f(y)-f(a)|<\varepsilon_{u,z}\end{aligned}

⋯②\cdots\text{②}

よって、0<yu,z−a<min⁡(u−a,δu,z)0<y_{u,z}-a<\min (u-a,\delta_{u,z})を満たすyu,zy_{u,z}をひとつ選べば、これは

a<yu,z<u<b  ∧  ∣yu,z−a∣<δu,z\begin{aligned}&a<y_{u,z}<u<b\ \ \land\ \ |y_{u,z}-a|<\delta_{u,z}\end{aligned}

を満たすので、

{(a,b)での狭義単調性より、 f(yu,z)<f(u)⋯③②より、 ∣f(yu,z)−f(a)∣<εu,z⋯④\begin{aligned}&\begin{cases} (a,b)\text{での狭義単調性より、}\ f(y_{u,z})<f(u)\cdots\text{③}\\ \text{②より、}\ |f(y_{u,z})-f(a)|<\varepsilon_{u,z}\cdots\text{④} \end{cases}\end{aligned}

となる。まず、④より、

−εu,z<f(yu,z)−f(a)<εu,z⇒f(a)<f(yu,z)+εu,z⋯⑤\begin{aligned}&-\varepsilon_{u,z} <f(y_{u,z})-f(a)<\varepsilon_{u,z}\\ &\quad \quad \Rightarrow f(a)<f(y_{u,z})+\varepsilon_{u,z}\cdots\text{⑤}\end{aligned}

である。ただし、下側の不等式のみを用いた変形を行っている。次に、③と⑤より、

f(a)<f(yu,z)+εu,z<f(u)+εu,z\begin{aligned}&f(a)<f(y_{u,z})+\varepsilon_{u,z}<f(u)+\varepsilon_{u,z}\end{aligned}

となる。ここで、f(z)−f(u)=:εu,zf(z)-f(u)=:\varepsilon _{u,z}であるから、

f(u)+εu,z=f(z)f(u)+\varepsilon_{u,z}=f(z)である。よって、

f(a)<f(z)\begin{aligned}&f(a)<f(z)\end{aligned}

である。ここに、zzはz∈(a,b)z\in (a,b)を満たす任意の数なので、

∀z∈(a,b),f(z)>f(a)\begin{aligned}&\forall z\in (a,b),f(z)>f(a)\end{aligned}

が示され、題意が成立する。□

とても楽しかったです。思いつきでやった証明なので間違っている可能性がちょいあります。不備があれば木下まで。

3. テイラーの定理・テイラー展開・マクローリン展開

授業で扱った平均値の定理は、じつはテイラーの定理やテイラー展開に密接に関わっています。13というかテイラーの定理は平均値の定理のある種の拡張です下の脚注へテイラーの定理は以下です:14実はこれの変種の「マクローリンの定理」というのを授業で扱いました。覚えているかな?下の脚注へ150!:=10!:=1と定義します。下の脚注へ

テイラーの定理

a<xa<xとする。[a,x][a,x]でnn回微分可能でf(n)f^{(n)}が[a,x][a,x]で連続(n=0n=0のときはff自身が[a,x][a,x]で連続)、(a,x)(a,x)でn+1n+1回微分可能な関数ffについて、

f(x)=(∑k=0nf(k)(a)k!(x−a)k)+f(n+1)(c)(n+1)!(x−a)n+1\begin{aligned}&f(x)=\left(\sum_{k=0}^{n} \dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k\right)\\ &\quad +\dfrac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}\end{aligned}

を満たすc∈(a,x)c\in (a,x)が存在する

ただし、f(k)(x)=dkdxkf(x)f^{(k)}(x)=\dfrac{d^k}{dx^k}f(x)を表す

これは、f(x)f(x)が∑k=0nf(k)(a)k!(x−a)k\sum_{k=0}^{n} \dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^kでだいたい近似できて、これとの誤差がf(n+1)(c)(n+1)!(x−a)n+1\dfrac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}となるようなc∈(a,x)c\in (a,x)をとってこれることを意味しています。これはなんだか平均値の定理に似ていますね。実際、n=0n=0としてみると、

f(x)=(∑k=00f(k)(a)k!(x−a)k)+f′(c)1!(x−a)⇔f(x)=f(a)+f′(c)(x−a)⇔f′(c)=f(x)−f(a)x−a(ただしx≠aと仮定)\begin{aligned}&f(x)=\left(\sum_{k=0}^{0} \dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k\right)\\ &\quad +\dfrac{f'(c)}{1!}(x-a)\\ &\Leftrightarrow f(x)=f(a)+f'(c)(x-a)\\ &\Leftrightarrow f'(c)=\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}\quad \text{\small{(ただし$x\neq a$と仮定)}}\end{aligned}

となります。3段目の式は平均値の定理そのものとなっています。16実際、このテイラーの定理は平均値の定理と同様ロルの定理を用いて証明することができます。複雑なのでここでは扱いませんが気になる人は調べてみてください。下の脚注へまた、n=1n=1では、

f(x)=(∑k=01f(k)(a)k!(x−a)k)+f′′(c)2!(x−a)2⇔f(x)=f(a)+f′(a)(x−a)+f′′(c)2!(x−a)2\begin{aligned}&f(x)=\left(\sum_{k=0}^{1} \dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k\right)\\ &\quad +\dfrac{f''(c)}{2!}(x-a)^2\\ &\Leftrightarrow f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\dfrac{f''(c)}{2!}(x-a)^2\end{aligned}

のようになります。右辺の第二項までは授業で扱った「一次近似」になっています。じつは一次近似はテイラー展開の一次までで打ち切った項だったわけですね。17このようにテイラー展開を途中で打ち切った近似を「有限テイラー展開」と言います。下の脚注へ一次近似との誤差がf′′(c)2!(x−a)2\dfrac{f''(c)}{2!}(x-a)^2であることもわかります。

ところで、この誤差の項f(n+1)(c)(n+1)!(x−a)n+1\dfrac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}は「ラグランジュの剰余項」18この剰余項の表現の仕方には数種類あり、それぞれ微妙に適用するためのf(x)f(x)の条件も違います。気になる人は調べてみましょう。下の脚注へというんですが、1(n+1)!\dfrac{1}{(n+1)!}がnnが大きくなるにつれとてつもない速さで小さくなっていくため、誤差の項は多くの場合でnnが大きくなるにつれて00に近づいていきます。これを用いるのが「テイラー展開」というものです:

テイラー展開

f(x)f(x)は無限回微分可能であるとする。19こういう関数のことをC∞C^{\infty}級関数と言います。また、「nn回微分可能でnn階導関数が連続である関数」のことをCnC^n級関数と言います。下の脚注へこのとき、x≃ax\simeq aで

f(x)=∑k=0∞f(k)(a)k!(x−a)k\begin{aligned}&f(x)=\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k\end{aligned}

とできるとき、これをf(x)f(x)のx=ax=a周りでのテイラー展開という。またこの無限級数をテイラー級数という。

この展開は通常挙動を掴むのが難しい関数を、そのnn階導関数たちがわかっていればただの多項式で表せる部分が非常に魅力的な定理です。もちろんですが、剰余項がn→∞n\to \inftyで00に収束しなければこの等号は成立しませんから、手放しに使っていいようなものではありません。

テイラー展開において、特にa=0a=0としたものをマクローリン展開と言います:

マクローリン展開

f(x)f(x)は無限回微分可能であるとする。このとき、x≃0x\simeq 0で

f(x)=∑k=0∞f(k)(0)k!xk\begin{aligned}&f(x)=\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k\end{aligned}

とできるとき、これをf(x)f(x)のマクローリン展開という。

シグマ記号だとわかりにくいという人のために書き下すと以下のようになります:

f(x)=f(0)+f′(0)x+f′′(0)2!x2+f′′′(0)3!x3+⋯f(x)=f(0)+f'(0)x+\dfrac{f''(0)}{2!}x^2+\dfrac{f'''(0)}{3!}x^3+\cdots

この式は(先ほどから何度も言っている通り)挙動の掴みにくい一般の関数を挙動の掴みやすい多項式関数として表現できるところに嬉しさがあります。ただ、この式だけをみてもなんでこのような式になるのかわかりにくいかもしれません。そこで、この式の「気持ち」を少し書いておきます。

一般の関数をf(x)=a0+a1x+a2x2+a3x3+⋯f(x)=a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+\cdotsのように級数で表すことを考えます。このとき、x=0x=0でのnn階の微分係数は右辺と左辺で一致するはずです。つまり、

{f(0)=a0+a1⋅0+a2⋅02+⋯=a0f′(0)=ddx(a0+a1x+a2x2+a3x3+⋯ )∣x=0=(a1+2a2x+3a3x2+⋯ )∣x=0=a1f′′(0)=d2dx2(a0+a1x+a2x2+a3x3+⋯ )∣x=0=(2a2+3⋅2a3x+4⋅3a4x2+⋯ )∣x=0=2a2\begin{aligned}&\begin{cases} &f(0)=a_0+a_1\cdot 0+a_2\cdot 0^2+\cdots =a_0\\ &f'(0)=\dfrac{d}{dx}(a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+\cdots )|_{x=0}\\ &\quad =(a_1+2a_2x+3a_3x^2+\cdots )|_{x=0}\\ &\quad =a_1\\ &f''(0)=\dfrac{d^2}{dx^2}(a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+\cdots )|_{x=0}\\ &\quad =(2a_2+3\cdot 2a_3x+4\cdot 3a_4x^2+\cdots )|_{x=0}\\ &\quad =2a_2 \end{cases}\end{aligned}

のようになります。同様にして繰り返し計算することで、f(n)(0)=n!anf^{(n)}(0)=n!a_nであることがわかるので、an=f(n)(0)n!a_n=\dfrac{f^{(n)}(0)}{n!}となることがわかるわけですね。これにより、マクローリン展開の式が得られます。

さて、このマクローリン展開ですが、これ自体は大学数学の範囲なものの、多項式で近似できる有用性から高校数学でも数多く顔を出してきます。例えば授業では「x≧0x\geqq 0において、不等式x−x36≦sin⁡xx-\dfrac{x^3}{6}\leqq \sin xが成立することを示せ」という問題を扱いました。この問題は「引いて微分」だったわけですが、20みなさん解けますよね…?下の脚注へそれはともかくこの式の左辺はsin⁡x\sin xの有限マクローリン展開となっています。これを確かめてみましょう。

sin⁡x\sin xのマクローリン展開を求める

f(x):=sin⁡xf(x):=\sin xとする。f′(x)=cos⁡xf'(x)=\cos x、f′′(x)=−sin⁡xf''(x)=-\sin x、f′′′(x)=−cos⁡xf'''(x)=-\cos x、f′′′′(x)=sin⁡xf''''(x)=\sin x、f(5)(x)=cos⁡xf^{(5)}(x)=\cos x、⋯\cdotsより、

{f(0)=0f′(0)=1f′′(0)=0f′′′(0)=−1f′′′′(0)=0f(5)(0)=1⋯\begin{aligned}&\begin{cases} &f(0)=0\\ &f'(0)=1\\ &f''(0)=0\\ &f'''(0)=-1\\ &f''''(0)=0\\ &f^{(5)}(0)=1\\ &\cdots \end{cases}\end{aligned}

となる。よって、

sin⁡x=0+11!x+02!x2+−13!x3+04!x4+15!x5+⋯=x−x36+15!x5+⋯\begin{aligned}&\sin x=0+\dfrac{1}{1!}x+\dfrac{0}{2!}x^2+\dfrac{-1}{3!}x^3+\dfrac{0}{4!}x^4+\dfrac{1}{5!}x^5+\cdots\\ &\quad =x-\dfrac{x^3}{6}+\dfrac{1}{5!}x^5+\cdots\end{aligned}

このようになります。確かにこの式の33次までをみるとx−x36x-\dfrac{x^3}{6}が登場していますね。このようなマクローリン展開は自分で作り出せるようになっておくと自分で多項式近似式を作ることができるので21答案に書くときには初めから天下り的に多項式を書いて、それが近似を与える(都合の良い不等式を満たす)ことを引いて微分で示してやります。下の脚注へ強いです。

4. コーシーの平均値の定理

テイラーの定理は平均値の定理を近似式とみて、その次数を上げるという方向での平均値の定理の拡張でしたが、もう一つ、「関数の差から別の関数の差を引っ張り出す」という方向性の拡張のやり方も実はあり、こちらは「コーシーの平均値の定理」と呼ばれています。22このコーシーの平均値の定理を使ってテイラーの定理を証明することもできます。下の脚注へ23詳細はここでは述べませんがこれも媒介変数表示された点(f(x),g(x))(f(x),g(x))の軌跡の曲線の接線のかたむきとしてみるとラグランジュの平均値の定理と同様の図形的な解釈ができます。気になる人は調べてみましょう。下の脚注へ(これと対比する形で授業で扱ったほうの平均値の定理を「ラグランジュの平均値の定理」と言います。)みてみましょう:

コーシーの平均値の定理

[a,b][a,b]で連続、(a,b)(a,b)で微分可能な関数f(x), g(x)f(x),\ g(x)について、すべてのx∈(a,b)x\in (a,b)でg′(x)≠0g'(x)\neq 0を満たすならば、

f(b)−f(a)g(b)−g(a)=f′(c)g′(c)\begin{aligned}&\dfrac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}=\dfrac{f'(c)}{g'(c)}\end{aligned}

を満たすc∈(a,b)c\in (a,b)が存在する

ここでg(x)=xg(x)=xとすればg(b)−g(a)=b−ag(b)-g(a)=b-aで、g′(c)=1g'(c)=1よりラグランジュの平均値の定理が得られます。

この定理をみて、以下のような証明方法を思いついたひともいるかもしれません:

【コーシーの平均値の定理の証明??】

ラグランジュの平均値の定理よりあるc∈(a,b)c\in (a,b)が存在して、

{f′(c)=f(b)−f(a)b−ag′(c)=g(b)−g(a)b−a\begin{aligned}&\begin{cases} &f'(c)=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}\\ &g'(c)=\dfrac{g(b)-g(a)}{b-a} \end{cases}\end{aligned}

となるから、このccをもちいて

f′(c)g′(c)=f(b)−f(a)b−a⋅b−ag(b)−g(a)=f(b)−f(a)g(b)−g(a)\begin{aligned}&\dfrac{f'(c)}{g'(c)}=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}\cdot\dfrac{b-a}{g(b)-g(a)}\\ &\quad =\dfrac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}\end{aligned}

じつはこれは正しくありません。f′(c)=f(b)−f(a)b−af'(c)=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}となるccと、g′(c)=g(b)−g(a)b−ag'(c)=\dfrac{g(b)-g(a)}{b-a}となるccが同じとは限らないためです。ただしくは以下のようにやります。ラグランジュの平均値の定理の時とほぼ同様に無理やりロルの定理を使える形にします:

【コーシーの平均値の定理の証明】

まず、g(b)−g(a)≠0g(b)-g(a)\neq 0を示す。24これを言わないと結果の式でg(b)−g(a)g(b)-g(a)が分母にくるのでまずいです。下の脚注へ仮定からg(x)g(x)はラグランジュの平均値の定理の適用範囲内のため、

g′(d)=g(b)−g(a)b−a⇔g(b)−g(a)=g′(d)(b−a)\begin{aligned}&g'(d)=\dfrac{g(b)-g(a)}{b-a}\\ &\Leftrightarrow g(b)-g(a)=g'(d)(b-a)\end{aligned}

を満たすd∈(a,b)d\in (a,b)が存在する。ここで、仮定よりすべてのx∈(a,b)x\in (a,b)でg′(x)≠0g'(x)\neq 0のためg′(d)≠0g'(d)\neq 0であり、またa<ba<bより、g′(d)(b−a)≠0g'(d)(b-a)\neq 0なので、g(b)−g(a)≠0g(b)-g(a)\neq 0となる。

ここで、g(b)−g(a)≠0g(b)-g(a)\neq 0より

h(x):=f(x)−f(b)−f(a)g(b)−g(a)(g(x)−g(a))\begin{aligned}&h(x):=f(x)-\dfrac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}(g(x)-g(a))\end{aligned}

と定義すると、25なんか既視感がありますね。お分かりかと思いますがラグランジュの平均値の定理の証明で用いたキメラみたいな関数とほぼ同じ作り方で作ります。下の脚注へh(a)=h(b)=f(a)h(a)=h(b)=f(a)となる。またこのh(x)h(x)はf(x)f(x)やg(x)g(x)の条件から[a,b][a,b]で連続、(a,b)(a,b)で微分可能である。よってロルの定理から、h′(c)=0h'(c)=0となるc∈(a,b)c\in (a,b)が存在する。ここで、

h′(c)=f′(c)−f(b)−f(a)g(b)−g(a)g′(c)\begin{aligned}&h'(c)=f'(c)-\dfrac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}g'(c)\end{aligned}

となるため、このccについて、

f′(c)−f(b)−f(a)g(b)−g(a)g′(c)=0⇔f(b)−f(a)g(b)−g(a)=f′(c)g′(c)\begin{aligned}&f'(c)-\dfrac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}g'(c)=0\\ &\Leftrightarrow \dfrac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}=\dfrac{f'(c)}{g'(c)}\end{aligned}

となる。ただし同値変形にはg(x)g(x)の条件からg′(c)≠0g'(c)\neq 0であることを用いた。よって題意が成立する。□

5. 積分の平均値の定理

さらに、平均値の定理のさらなる別種として「積分の平均値の定理」というのもあります。これもみてみましょう。

積分の平均値の定理

[a,b][a,b]で連続な関数f(x)f(x)について、

∫abf(x) dx=(b−a)f(c)\begin{aligned}&\int_a^b f(x) \ dx=(b-a)f(c)\end{aligned}

を満たすc∈(a,b)c\in (a,b)が存在する

aaからbbまでのf(x)f(x)の積分、つまりxx軸と囲む面積が、aaからbbが底辺、f(c)f(c)が高さとなるようなccが存在することを言っています。まさにf(x)f(x)の「平均的な高さ」というイメージで、正直僕はこっちのほうが「平均値の定理」という名前としっくりくる感じがします。26まあラグランジュのほうは「平均変化率」と「その点での傾き」が一致するという意味での「平均値の定理」という感じでしょうか。下の脚注へ証明はラグランジュの平均値の定理を認めれば非常に簡単です。

【積分の平均値の定理の証明】

F(x):=∫axf(t) dtF(x):=\int_a^x f(t)\ dtとしておく。F(x)F(x)はf(x)f(x)の原始関数の一つである。このとき、f(x)f(x)が[a,b][a,b]で連続なので、

{・F′(x)=f(x)より(a,b)でF(x)は微分可能・f(x)は[a,b]で連続より面積は連続に変化するからF(x)も[a,b]で連続\begin{aligned}&\begin{cases} &\text{・}F'(x)=f(x)\text{より}(a,b)\text{で}F(x)\text{は微分可能}\\ &\text{・}f(x)\text{は}[a,b]\text{で連続より面積は連続に}\\ &\text{\quad 変化するから}F(x)\text{も}[a,b]\text{で連続} \end{cases}\end{aligned}

となるので、平均値の定理が使えて、

F(b)−F(a)b−a=F′(c)\begin{aligned}&\dfrac{F(b)-F(a)}{b-a}=F'(c)\end{aligned}

となるc∈(a,b)c\in (a,b)が存在する。ここでこのccについて、

{F(b)−F(a)=∫abf(x) dxF′(c)=f(c)\begin{aligned}&\begin{cases} &F(b)-F(a)=\int_a^b f(x)\,dx\\ &F'(c)=f(c) \end{cases}\end{aligned}

より

∫abf(x) dxb−a=f(c)⇔∫abf(x) dx=(b−a)f(c)\begin{aligned}&\dfrac{\int_a^b f(x)\,dx}{b-a}=f(c)\\ &\Leftrightarrow \int_a^b f(x) \ dx=(b-a)f(c)\end{aligned}

となるから、このc∈(a,b)c\in (a,b)で題意が成立する。□

1 かなり便利なので適用範囲と証明方法を押さえておいていざという時にゴリ押すための手段として手元においておくのはアリかもしれません。

2 以下[a,b][a,b]や(a,b)(a,b)といった(高校の教科書には出てこない)記法が出てきますが、それぞれ [a,b]:={x∈R∣a≦x≦b}(a,b):={x∈R∣a<x<b}\begin{aligned}&[a,b]:=\left\{x\in\mathbb{R}|a\leqq x\leqq b\right\}\\ &(a,b):=\left\{x\in\mathbb{R}|a< x<b\right\}\end{aligned} を表します。また、例えば[a,b):={x∈R∣a≦x<b}[a,b):=\left\{x\in\mathbb{R}|a\leqq x<b\right\}のようになります。記述量を減らせるので知っておいて損はない記法です。

3 「[a,b][a,b]で連続な関数f(x)f(x)」というような表現は普通は「x∈[a,b]x\in [a,b]で連続な関数f(x)f(x)」というような意味合いです。

4 あとで出てくる論理記号をもちいた書き方でこの定理の主張を書くと、
「[a,b][a,b]で連続、(a,b)(a,b)で微分可能な関数f(x)f(x)に対して、
∃c∈(a,b), s.t., f′(c)=f(b)−f(a)b−a\exists c\in (a,b),\ s.t.,\ f'(c)=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}」

5 定理の形を見れば一目瞭然ですが、ロルの定理の主張は平均値の定理の主張においてf(a)=f(b)f(a)=f(b)を代入、つまりf(b)−f(a)=0f(b)-f(a)=0としたものになっています。

6 具体的には閉区間で連続な関数に上限・下限があることを背理法で示したのちにこの上限が最大値に、下限が最小値に一致することを点列の収束を使って証明します。大学数学範囲なので気になる人は調べてみましょう。

7 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

8 y,z∈[a,b)y,z\in [a,b)であるので、a≦y<z<ba\leqq y <z<bであるから、(y,z)⊂(a,b)(y,z)\subset (a,b)かつ[y,z]⊂[a,b)[y,z]\subset[a,b)

9 この補遺を書きながら思いついたので間違ってたらごめんなさい

10 途中に微分できない点や、値が跳ぶ(不連続な)点があっても使えるので、これはちょい嬉しいね。

11 「右側」は、aa に右側(x>ax>a の側)から近づいたときに連続という意味です。式で書くと lim⁡x→a+0f(x)=f(a)\displaystyle\lim_{x\to a+0}f(x)=f(a)。aa は区間 [a,b)[a,b) の左の端ですが、f(x)f(x) の様子がわかっているのは aa より右の (a,b)(a,b) だけなので、近づけるのは右からだけです。端の位置でなく、近づく向きで呼びます。

12 これ以降∀\forallとか∃\existsとか論理記号がいっぱい出てきます。これはそれぞれ、 ∀a:全てのaについて∃a:あるaが存在して、\begin{aligned}&\forall a \quad \text{:全てのaについて}\\ &\exists a \quad \text{:あるaが存在して、}\end{aligned} のような意味です。例えば ∀ε>0,∃δ>0,s.t., y∈(a,b)∧∣y−a∣<δ⇒∣f(y)−f(a)∣<ε\begin{aligned}&\forall \varepsilon >0,\exists \delta>0,\\&\quad s.t.,\ y\in (a,b)\land|y-a|<\delta\Rightarrow |f(y)-f(a)|<\varepsilon\end{aligned} は日本語にすると、「全ての正の数ε\varepsilonに対して、対応するある正の数δ\deltaが存在して、そのδ\deltaについて、以下が成立する: y∈(a,b)∧∣y−a∣<δy\in (a,b)\land|y-a|<\deltaをyyがみたすならば、∣f(y)−f(a)∣<ε|f(y)-f(a)|<\varepsilonとなる」となります。これを日本語で書こうとするとかなり大変です。ここまでとは行かなくても、「全ての〜に対して」とか「ある〜が存在する」みたいな言い回しは数学ではあるあるで、これを一つの記号で略記できるので慣れるまでは大変ですが慣れると記述量を大幅に削減できます。気になる人は調べてみることをお勧めします。

13 というかテイラーの定理は平均値の定理のある種の拡張です

14 実はこれの変種の「マクローリンの定理」というのを授業で扱いました。覚えているかな?

15 0!:=10!:=1と定義します。

16 実際、このテイラーの定理は平均値の定理と同様ロルの定理を用いて証明することができます。複雑なのでここでは扱いませんが気になる人は調べてみてください。

17 このようにテイラー展開を途中で打ち切った近似を「有限テイラー展開」と言います。

18 この剰余項の表現の仕方には数種類あり、それぞれ微妙に適用するためのf(x)f(x)の条件も違います。気になる人は調べてみましょう。

19 こういう関数のことをC∞C^{\infty}級関数と言います。また、「nn回微分可能でnn階導関数が連続である関数」のことをCnC^n級関数と言います。

20 みなさん解けますよね…?

21 答案に書くときには初めから天下り的に多項式を書いて、それが近似を与える(都合の良い不等式を満たす)ことを引いて微分で示してやります。

22 このコーシーの平均値の定理を使ってテイラーの定理を証明することもできます。

23 詳細はここでは述べませんがこれも媒介変数表示された点(f(x),g(x))(f(x),g(x))の軌跡の曲線の接線のかたむきとしてみるとラグランジュの平均値の定理と同様の図形的な解釈ができます。気になる人は調べてみましょう。

24 これを言わないと結果の式でg(b)−g(a)g(b)-g(a)が分母にくるのでまずいです。

25 なんか既視感がありますね。お分かりかと思いますがラグランジュの平均値の定理の証明で用いたキメラみたいな関数とほぼ同じ作り方で作ります。

26 まあラグランジュのほうは「平均変化率」と「その点での傾き」が一致するという意味での「平均値の定理」という感じでしょうか。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

← 塾講師木下の記事一覧へ