狭義単調増加と平均値の定理
授業で扱った例題の解答で、すこし怪しいなとみなさんが思うかもしれない部分についての補足をします。
問題は、x>0 において ex>1+x+2x2 を示すものでした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。。解答では f(x)=ex−1−x−2x2 とおき、x>0 で f′′(x)=ex−1>0 だから f′(x) は単調に増加し、f′(x)>f′(0)=0、よって f(x) も単調に増加して f(x)>f(0)=0、という流れで示しました。
この解答の中盤で、f′(x)の狭義単調増加性はx>0でしか示されていないのに、x>0でf′(x)>f′(0)という不等式は、x≧0でのf′(x)の狭義単調増加性を仮定していないか??と思った人がいるかもしれません。(あるいは、f(x)の狭義単調増加性の範囲とf(x)>f(0)という不等式についても同様の疑問を持った人がいるかもしれません。)実際、狭義単調増加性の定義は次:
定義(狭義単調増加)
区間Iに含まれる任意のx1<x2について、f(x1)<f(x2)が成立するとき、f(x)は区間Iで狭義単調増加という。
であり、ここでいうIは今回はx>0の範囲なので、この区間に含まれないx=0を使った不等式f′(x)>f′(0)は言えないんじゃないかというのはもっともです。(僕も一時期これが本当に言えるのか悩んでいた時期がありました。)これを正当化するには、厳密には以下の定理を示す必要があります:
定理A
a≦x≦bにおいて連続な関数f(x)が、a<x<bで微分可能であり、かつa<x<bでf′(x)>0が常に成り立つならば、f(x)はa≦x≦bで狭義単調増加となる。
f′(x)>0の範囲と、f(x)が狭義単調増加な範囲が異なっている(後者は領域端点を含む)ことに注意しましょう。この証明は、「平均値の定理」を用います。
定理(平均値の定理)
a≦x≦bにおいて連続な関数f(x)が、a<x<bで微分可能ならば、
f(b)−f(a)=f′(c)(b−a)
を満たすあるa<c<bが存在する。
これを用いて定理Aを証明することができます。具体的には、a≦x1<x2≦bを満たす任意のx1とx2について、(f(x)はx1≦x≦x2でも連続で、x1<x<x2でも微分可能なので)区間x1≦x≦x2に平均値の定理を用いると、あるx1<c<x2が存在して、f(x2)−f(x1)=f′(c)(x2−x1)となります。ここで、x1<c<x2より、もしx1やx2が端点であるaやbと等しかったとしても、cはa<c<bを満たします。よって、a<x<bでf′(x)>0が常に成り立つならばf′(c)>0となります。x1<x2ですから(x2−x1)>0で、よってf(x2)−f(x1)=f′(c)(x2−x1)>0となるため、f(x2)−f(x1)>0⇔f(x2)>f(x1)となります。これは狭義単調増加の定義そのものですし、何よりa≦x1<x2≦bを満たす任意のx1とx2についてこれが言えますから、定理Aが示されるわけです。
最後に問題へ戻ります。x>0を満たすxを1つ固定し、区間0≦t≦xで関数f′(t)=et−1−tを考えます。f′(t)はこの区間で(t=0も含めて)連続で、0<t<xで微分可能、しかも0<t<xではf′′(t)=et−1>0です。よって定理Aから、f′(t)は端点を含めた0≦t≦xで狭義単調増加なので、f′(x)>f′(0)が言えます。x>0は何でもよかったので、x>0でf′(x)>f′(0)=0が成り立ちます。f(x)>f(0)も、同じ考え方でf(t)に定理Aを使えば言えます。
1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。
塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。
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