(x−a)2 で割った余りは、なぜ微分すると求まるのか
目次
- 1. 余りを決めるのに条件はいくつ要るか
- 2. 代入だけでは条件が1本しか出ない
- 3. 微分すると商の項がもう一度消える
- 4. 2つの x がくっついたと考える
- 5. 余りの直線は、x=a における接線
授業の例題では、整式 f(x) を (x−a)2 で割った余りを、f(a) と f′(a) で表した。x=a を代入するだけでは答えが出ず、両辺を微分してからもう一度 x=a を代入した。この頁では、なぜ代入だけでは足りないのか、なぜ微分すると足りない分が補えるのかを順に説明する。
1. 余りを決めるのに条件はいくつ要るか
2 次式で割ると、余りは 1 次以下の式になるので px+q とおける。決めなければならない数はp と q の 2 個である。このように、まだ決まっておらず自由に動ける数の個数を自由度という。自由度が 2 なら、連立方程式と同じで、p と q を含む式が 2 本そろってはじめてp, q が 1 通りに決まる。
n 次式で割った余りの自由度は n⟹ 条件が n 本要る
(x−1)(x−2) で割るなら、f(x)=(x−1)(x−2)g(x)+px+q に x=1 と x=2 を代入すれば、商 g(x) を含む項がどちらでも 0 になり、
f(1)=p+q,f(2)=2p+q
の 2 本が手に入る。割る式が 0 になる x が 2 つあるので、代入で条件が 2 本出る。
2. 代入だけでは条件が1本しか出ない
(x−a)2 で割ると、余りはやはり px+q で、自由度は 2 のままである。
f(x)=(x−a)2g(x)+px+q
ところが (x−a)2 が 0 になる x は a の 1 つしかない。x=a を代入して得られるのは
f(a)=pa+q
の 1 本だけである。a 以外の値を代入すると商 g(x) の値が残り、g(x) はわからないので条件として使えない。自由度 2 に対して条件が 1 本足りない。
具体例で見ておく。f(x)=x3−3x+1 を (x−2)2 で割ると、実際に割り算をして
x3−3x+1=(x−2)2(x+4)+9x−15
となり、余りは 9x−15 である。x=2 を代入して分かるのは 2p+q=f(2)=3 だけで、これを満たす(p,q) は (9,−15) 以外にも (0,3)、(1,1) など無数にある。
3. 微分すると商の項がもう一度消える
足りない 1 本は、両辺を x で微分すると得られる。積の微分の公式で (x−a)2g(x) を微分すると
{(x−a)2g(x)}′=2(x−a)g(x)+(x−a)2g′(x)
となり、右辺の 2 つの項には、どちらにもまだ (x−a) が 1 つ以上残っている。したがって、微分した式
f′(x)=2(x−a)g(x)+(x−a)2g′(x)+p
に x=a を代入すると、g(x) を含む項がまた消えて
f′(a)=p
が出る。これが 2 本目の条件である。f(a)=pa+q と合わせると q=f(a)−af′(a) も決まり、例題の答えになる。上の具体例なら f′(x)=3x2−3 から p=f′(2)=9、q=3−2⋅9=−15 で、割り算の結果と一致する。2 乗の因数は微分しても 1 乗の因数が残るので、g(x) を消せる機会がもう 1 回生まれる。
(x−a) が1乗だとどうなるか
f(x)=(x−a)g(x)+q を微分すると f′(x)=g(x)+(x−a)g′(x) で、x=a を代入するとf′(a)=g(a) になる。わからない g(a) が残るので、余りについては何も分からない。微分して (x−a) が残るのは、割る式が 2 乗以上のときに限られる。1 次式で割った余りは定数で自由度が 1 なので、そもそも f(a)=q の 1 本で足りている。
4. 2つの x がくっついたと考える
微分が出てくる理由は、微分係数の定義からも説明できる。(x−a)2 を、(x−a)(x−b) のb を a に限りなく近づけたものと考える。(x−a)(x−b) で割った余り px+q には、§1 と同じく
f(a)=pa+q,f(b)=pb+q
の 2 本の条件がある。b を a に近づけると 2 本は同じ式に近づいてしまうが、辺々引いてb−a で割った式
p=b−af(b)−f(a)
は同じ式に潰れずに残る。右辺は x=a から x=b までの平均変化率で、b→a の極限は微分係数f′(a) である。(x−a)2 で割ったときの 2 本目の条件 f′(a)=p は、くっついた 2 点目の条件の名残といえる。
図1 x=a と x=b を通る割線の傾きが p。b を a に近づけると、割線は x=a における接線に近づく5. 余りの直線は、x=a における接線
求めた余りを書き直すと
px+q=f′(a)x+f(a)−af′(a)=f′(a)(x−a)+f(a)
となる。これは、曲線 y=f(x) 上の点 (a,f(a)) を通り傾きが f′(a) の直線、つまり x=a における接線の式である(接線は後の授業で詳しく扱う)。
f(x) を (x−a)2 で割った余り= y=f(x) の x=a における接線
式で見ると、f(x) と余りの差 f(x)−(px+q)=(x−a)2g(x) は、x=a で 0 になり、しかも x がa から少しずれても、(x−a)2 に g(x) を掛けた分しか離れない(ずれの 2 乗に比例する程度の小ささ)。グラフでは、曲線と余りの直線が x=a でただ交わるのでなく、接している(接する点で直線が曲線を横切ることもあるが、それは差 f(x)−(px+q) が (x−a)3 で割り切れる、つまり g(a)=0 のときに限られる)。上の具体例 x3−3x+1 では、x=2 における接線が y=9x−15 である。
図2 y=x3−3x+1 と、(x−2)2 で割った余りの直線 y=9x−15。直線は x=2 で曲線に接するf(a)=f′(a)=0 のときは余りが 0、つまり f(x) は (x−a)2 で割り切れる。これが「割り切れる必要十分条件は f(a)=f′(a)=0」という事実で、グラフでは y=f(x) が x=a で x 軸に接することにあたる。
まとめ
- (x−a)2 で割った余り px+q の自由度は 2。条件が 2 本要る。
- x=a の代入で f(a)=pa+q。
- 微分してから代入で f′(a)=p。(x−a)2 を微分しても (x−a) が残るから。
- 余りは y=f(x) の x=a における接線 y=f′(a)(x−a)+f(a)。
やってみよう① オリジナル
x3 を (x−1)2 で割った余りを、(ア) 実際に割り算をする、(イ) f(1) と f′(1) を使う、の 2 通りで求め、一致することを確かめよ。
やってみよう② オリジナル
n を 2 以上の整数とする。xn を (x−1)2 で割った余りを求めよ。
やってみよう③ オリジナル
x4+kx2+m が (x−1)2 で割り切れるように、定数 k, m を定めよ。
コラム:3乗で割るとき
(x−a)3 で割ると余りは 2 次以下で rx2+sx+t、自由度は 3 になる。f(x)=(x−a)3g(x)+rx2+sx+t を 1 回微分しても (x−a)2 が、もう 1 回微分しても (x−a) が残るので、「代入」「1 回微分して代入」「2 回微分して代入」の 3 回とも g(x) の項が消え、条件が3 本そろう。(x−a)n で割るなら、n−1 回まで微分して代入すれば n 本の条件が得られる。
やってみようの答え
① (ア) x3=(x−1)2(x+2)+3x−2。(イ) f(1)=1、f′(x)=3x2 より f′(1)=3。p=3、q=1−1⋅3=−2。どちらも余りは 3x−2。
② f(1)=1、f′(x)=nxn−1 より f′(1)=n。p=n、q=1−n で、余りは nx−(n−1)。実際に割り算をしなくても n によらず求まる。
③ f(1)=1+k+m=0、f′(x)=4x3+2kx より f′(1)=4+2k=0。よって k=−2、m=1。実際 x4−2x2+1=(x−1)2(x+1)2。
塾の授業で配った補足資料をもとに書き直しました。
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