tecktom.com

(x−a)2(x-a)^2 で割った余りは、なぜ微分すると求まるのか

2026年度 中3解説2026年10月6日8分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. 余りを決めるのに条件はいくつ要るか
  2. 2. 代入だけでは条件が1本しか出ない
  3. 3. 微分すると商の項がもう一度消える
  4. 4. 2つの がくっついたと考える
  5. 5. 余りの直線は、 における接線

授業の例題では、整式 f(x)f(x) を (x−a)2(x-a)^2 で割った余りを、f(a)f(a) と f′(a)f'(a) で表した。x=ax=a を代入するだけでは答えが出ず、両辺を微分してからもう一度 x=ax=a を代入した。この頁では、なぜ代入だけでは足りないのか、なぜ微分すると足りない分が補えるのかを順に説明する。

1. 余りを決めるのに条件はいくつ要るか

22 次式で割ると、余りは 11 次以下の式になるので px+qpx+q とおける。決めなければならない数はpp と qq の 22 個である。このように、まだ決まっておらず自由に動ける数の個数を自由度という。自由度が 22 なら、連立方程式と同じで、pp と qq を含む式が 22 本そろってはじめてpp, qq が 11 通りに決まる。

n 次式で割った余りの自由度は n⟹ 条件が n 本要る\begin{gathered}n\text{ 次式で割った余りの自由度は }n\\ \Longrightarrow\ \text{条件が }n\text{ 本要る}\end{gathered}

(x−1)(x−2)(x-1)(x-2) で割るなら、f(x)=(x−1)(x−2)g(x)+px+qf(x)=(x-1)(x-2)g(x)+px+q に x=1x=1 と x=2x=2 を代入すれば、商 g(x)g(x) を含む項がどちらでも 00 になり、

f(1)=p+q,f(2)=2p+qf(1)=p+q,\qquad f(2)=2p+q

の 22 本が手に入る。割る式が 00 になる xx が 22 つあるので、代入で条件が 22 本出る。

2. 代入だけでは条件が1本しか出ない

(x−a)2(x-a)^2 で割ると、余りはやはり px+qpx+q で、自由度は 22 のままである。

f(x)=(x−a)2g(x)+px+qf(x)=(x-a)^2g(x)+px+q

ところが (x−a)2(x-a)^2 が 00 になる xx は aa の 11 つしかない。x=ax=a を代入して得られるのは

f(a)=pa+qf(a)=pa+q

の 11 本だけである。aa 以外の値を代入すると商 g(x)g(x) の値が残り、g(x)g(x) はわからないので条件として使えない。自由度 22 に対して条件が 11 本足りない。

具体例で見ておく。f(x)=x3−3x+1f(x)=x^3-3x+1 を (x−2)2(x-2)^2 で割ると、実際に割り算をして

x3−3x+1=(x−2)2(x+4)+9x−15x^3-3x+1=(x-2)^2(x+4)+9x-15

となり、余りは 9x−159x-15 である。x=2x=2 を代入して分かるのは 2p+q=f(2)=32p+q=f(2)=3 だけで、これを満たす(p,q)(p,q) は (9,−15)(9,-15) 以外にも (0,3)(0,3)、(1,1)(1,1) など無数にある。

3. 微分すると商の項がもう一度消える

足りない 11 本は、両辺を xx で微分すると得られる。積の微分の公式で (x−a)2g(x)(x-a)^2g(x) を微分すると

{(x−a)2g(x)}′=2(x−a)g(x)+(x−a)2g′(x)\{(x-a)^2g(x)\}'=2(x-a)g(x)+(x-a)^2g'(x)

となり、右辺の 22 つの項には、どちらにもまだ (x−a)(x-a) が 11 つ以上残っている。したがって、微分した式

f′(x)=2(x−a)g(x)+(x−a)2g′(x)+pf'(x)=2(x-a)g(x)+(x-a)^2g'(x)+p

に x=ax=a を代入すると、g(x)g(x) を含む項がまた消えて

f′(a)=p\begin{gathered}f'(a)=p\end{gathered}

が出る。これが 22 本目の条件である。f(a)=pa+qf(a)=pa+q と合わせると q=f(a)−af′(a)q=f(a)-af'(a) も決まり、例題の答えになる。上の具体例なら f′(x)=3x2−3f'(x)=3x^2-3 から p=f′(2)=9p=f'(2)=9、q=3−2⋅9=−15q=3-2\cdot 9=-15 で、割り算の結果と一致する。22 乗の因数は微分しても 11 乗の因数が残るので、g(x)g(x) を消せる機会がもう 11 回生まれる。

(x−a)(x-a) が1乗だとどうなるか

f(x)=(x−a)g(x)+qf(x)=(x-a)g(x)+q を微分すると f′(x)=g(x)+(x−a)g′(x)f'(x)=g(x)+(x-a)g'(x) で、x=ax=a を代入するとf′(a)=g(a)f'(a)=g(a) になる。わからない g(a)g(a) が残るので、余りについては何も分からない。微分して (x−a)(x-a) が残るのは、割る式が 22 乗以上のときに限られる。11 次式で割った余りは定数で自由度が 11 なので、そもそも f(a)=qf(a)=q の 11 本で足りている。

4. 2つの xx がくっついたと考える

微分が出てくる理由は、微分係数の定義からも説明できる。(x−a)2(x-a)^2 を、(x−a)(x−b)(x-a)(x-b) のbb を aa に限りなく近づけたものと考える。(x−a)(x−b)(x-a)(x-b) で割った余り px+qpx+q には、§1 と同じく

f(a)=pa+q,f(b)=pb+qf(a)=pa+q,\qquad f(b)=pb+q

の 22 本の条件がある。bb を aa に近づけると 22 本は同じ式に近づいてしまうが、辺々引いてb−ab-a で割った式

p=f(b)−f(a)b−ap=\frac{f(b)-f(a)}{b-a}

は同じ式に潰れずに残る。右辺は x=ax=a から x=bx=b までの平均変化率で、b→ab\to a の極限は微分係数f′(a)f'(a) である。(x−a)2(x-a)^2 で割ったときの 22 本目の条件 f′(a)=pf'(a)=p は、くっついた 22 点目の条件の名残といえる。

図1図1 x=ax=a と x=bx=b を通る割線の傾きが pp。bb を aa に近づけると、割線は x=ax=a における接線に近づく

5. 余りの直線は、x=ax=a における接線

求めた余りを書き直すと

px+q=f′(a)x+f(a)−af′(a)=f′(a)(x−a)+f(a)\begin{aligned}px+q&=f'(a)x+f(a)-af'(a)\\&=f'(a)(x-a)+f(a)\end{aligned}

となる。これは、曲線 y=f(x)y=f(x) 上の点 (a,f(a))(a,f(a)) を通り傾きが f′(a)f'(a) の直線、つまり x=ax=a における接線の式である(接線は後の授業で詳しく扱う)。

f(x) を (x−a)2 で割った余り= y=f(x) の x=a における接線\begin{gathered}f(x)\text{ を }(x-a)^2\text{ で割った余り}\\ =\ y=f(x)\text{ の }x=a\text{ における接線}\end{gathered}

式で見ると、f(x)f(x) と余りの差 f(x)−(px+q)=(x−a)2g(x)f(x)-(px+q)=(x-a)^2g(x) は、x=ax=a で 00 になり、しかも xx がaa から少しずれても、(x−a)2(x-a)^2 に g(x)g(x) を掛けた分しか離れない(ずれの 22 乗に比例する程度の小ささ)。グラフでは、曲線と余りの直線が x=ax=a でただ交わるのでなく、接している(接する点で直線が曲線を横切ることもあるが、それは差 f(x)−(px+q)f(x)-(px+q) が (x−a)3(x-a)^3 で割り切れる、つまり g(a)=0g(a)=0 のときに限られる)。上の具体例 x3−3x+1x^3-3x+1 では、x=2x=2 における接線が y=9x−15y=9x-15 である。

図2図2 y=x3−3x+1y=x^3-3x+1 と、(x−2)2(x-2)^2 で割った余りの直線 y=9x−15y=9x-15。直線は x=2x=2 で曲線に接する

f(a)=f′(a)=0f(a)=f'(a)=0 のときは余りが 00、つまり f(x)f(x) は (x−a)2(x-a)^2 で割り切れる。これが「割り切れる必要十分条件は f(a)=f′(a)=0f(a)=f'(a)=0」という事実で、グラフでは y=f(x)y=f(x) が x=ax=a で xx 軸に接することにあたる。

まとめ

  • (x−a)2(x-a)^2 で割った余り px+qpx+q の自由度は 22。条件が 22 本要る。
  • x=ax=a の代入で f(a)=pa+qf(a)=pa+q。
  • 微分してから代入で f′(a)=pf'(a)=p。(x−a)2(x-a)^2 を微分しても (x−a)(x-a) が残るから。
  • 余りは y=f(x)y=f(x) の x=ax=a における接線 y=f′(a)(x−a)+f(a)y=f'(a)(x-a)+f(a)。

やってみよう① オリジナル

x3x^3 を (x−1)2(x-1)^2 で割った余りを、(ア) 実際に割り算をする、(イ) f(1)f(1) と f′(1)f'(1) を使う、の 22 通りで求め、一致することを確かめよ。

やってみよう② オリジナル

nn を 22 以上の整数とする。xnx^n を (x−1)2(x-1)^2 で割った余りを求めよ。

やってみよう③ オリジナル

x4+kx2+mx^4+kx^2+m が (x−1)2(x-1)^2 で割り切れるように、定数 kk, mm を定めよ。

コラム:3乗で割るとき

(x−a)3(x-a)^3 で割ると余りは 22 次以下で rx2+sx+trx^2+sx+t、自由度は 33 になる。f(x)=(x−a)3g(x)+rx2+sx+tf(x)=(x-a)^3g(x) +rx^2+sx+t を 11 回微分しても (x−a)2(x-a)^2 が、もう 11 回微分しても (x−a)(x-a) が残るので、「代入」「11 回微分して代入」「22 回微分して代入」の 33 回とも g(x)g(x) の項が消え、条件が33 本そろう。(x−a)n(x-a)^n で割るなら、n−1n-1 回まで微分して代入すれば nn 本の条件が得られる。

やってみようの答え

① (ア) x3=(x−1)2(x+2)+3x−2x^3=(x-1)^2(x+2)+3x-2。(イ) f(1)=1f(1)=1、f′(x)=3x2f'(x)=3x^2 より f′(1)=3f'(1)=3。p=3p=3、q=1−1⋅3=−2q=1-1\cdot 3=-2。どちらも余りは 3x−23x-2。

② f(1)=1f(1)=1、f′(x)=nxn−1f'(x)=nx^{n-1} より f′(1)=nf'(1)=n。p=np=n、q=1−nq=1-n で、余りは nx−(n−1)nx-(n-1)。実際に割り算をしなくても nn によらず求まる。

③ f(1)=1+k+m=0f(1)=1+k+m=0、f′(x)=4x3+2kxf'(x)=4x^3+2kx より f′(1)=4+2k=0f'(1)=4+2k=0。よって k=−2k=-2、m=1m=1。実際 x4−2x2+1=(x−1)2(x+1)2x^4-2x^2+1=(x-1)^2(x+1)^2。

塾の授業で配った補足資料をもとに書き直しました。

← 塾講師木下の記事一覧へ