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1の∞乗の極限とマクローリン展開

2024年度 高1発展2026年10月6日7分で読めます塾講師木下極限

テスト、楽しんでいただけましたでしょうか。おまけ問題の最後まで辿り着かなかった人もいるかと思いますが、けっこう良問を作ったつもりなのでじっくり解いてみてください。おまけ問題に関連して、少し書きたい話題があったので補遺という形でみなさんに紹介します。

おまけ問題(1)

lim⁡x→0{x−sin⁡xx3}=16\lim_{x \to 0} \left\{\dfrac{x-\sin x}{x^3}\right\} =\dfrac{1}{6}が成立することが知られている。これを用いて、以下の極限を求めよ1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ:

lim⁡x→0{(sin⁡2x2x)1x2}\lim_{x \to 0} \left\{\left(\dfrac{\sin 2x}{2x}\right)^{\frac{1}{x^2}}\right\}

解答は省略して、この問題を同僚の先生に見せたときに教えてもらって、いい一般化だなあと思ったものを紹介しますね。

おまけ問題(1)を拡張した定理

lim⁡x→af(x)=1\lim_{x \to a}f(x)=1、lim⁡x→ag(x)=+∞\lim_{x \to a}g(x)=+\infty、
lim⁡x→ag(x){f(x)−1}=b\lim_{x \to a}g(x)\left\{f(x)-1\right\}=bの時、

lim⁡x→a{f(x)}g(x)=eb\lim_{x \to a}\left\{f(x)\right\}^{g(x)}=e^b

が成り立つ。

証明はみなさんに任せます。ほとんど今回の問題の解答の通りで、底をf(x)=1+{f(x)−1}f(x)=1+\left\{f(x)-1\right\}と変形して指数を揃えにいくのが肝です。ただしこの変形では指数に1f(x)−1\dfrac{1}{f(x)-1}を作る(f(x)−1f(x)-1で割る)ので、b=0b=0でf(x)−1f(x)-1がx=ax=aの近くで00をとりまくるような時は、そのままでは使えません。それでも定理はb=0b=0を含めて成り立ちます。h(u)=log⁡(1+u)uh(u)=\dfrac{\log(1+u)}{u}2ここでの log⁡\log は自然対数、つまり底が ee の対数です。下の脚注へ(ただしh(0)=1h(0)=1と決める)とおくと、u→0u\to 0でh(u)→1h(u)\to 1なのでhhはu=0u=0でもつながっていて、log⁡(1+u)=u h(u)\log(1+u)=u\,h(u)がu=0u=0も含めて成り立ちます。これを使うとg(x)log⁡f(x)=g(x){f(x)−1}⋅h(f(x)−1)→b⋅1=bg(x)\log f(x)=g(x)\left\{f(x)-1\right\}\cdot h\left(f(x)-1\right)\to b\cdot 1=bとなり、割り算をしないのでf(x)=1f(x)=1となる点があっても困りません。あとはeeの肩に乗せればebe^bが出ます。
今回ではf(x)=sin⁡2x2xf(x)=\dfrac{\sin 2x}{2x}、g(x)=1x2g(x)=\dfrac{1}{x^2}、a=0a=0で、θ=2x\theta=2xとおくと

g(x){f(x)−1}=sin⁡2x−2x2x⋅x2=−4⋅θ−sin⁡θθ3→−4⋅16=−23\begin{aligned}g(x)\left\{f(x)-1\right\}&=\dfrac{\sin 2x-2x}{2x\cdot x^2}\\&=-4\cdot\dfrac{\theta-\sin\theta}{\theta^3}\to -4\cdot\dfrac{1}{6}=-\dfrac{2}{3}\end{aligned}

なのでb=−23b=-\dfrac{2}{3}となっていますね。答えはe−23e^{-\frac{2}{3}}です。

あと、冒頭の見たことない極限に「!?」となった人も多かったのではないでしょうか。この極限を近似として考えると、x≃0x\simeq 0で、

x−sin⁡xx3≃16⇒x−sin⁡x≃x36⇒sin⁡x≃x−x36\begin{aligned}&\dfrac{x-\sin x}{x^3}\simeq \dfrac{1}{6}\Rightarrow x-\sin x\simeq \dfrac{x^3}{6}\\ &\Rightarrow \sin x\simeq x-\dfrac{x^3}{6}\end{aligned}

という近似が成り立つということがわかります。この近似は「マクローリン展開」というものを利用しています。具体的には、

マクローリン展開

多くのいい感じの関数f(x)f(x)について、xxが00に近いところでは、

f(x)=∑n=0∞f(n)(0)n!xnf(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{f^{(n)} (0)}{n!}x^n

が成り立つ。

和はxxでなくnnについてとっていることに注意してください。また、f(n)(0)f^{(n)}(0)はf(x)f(x)のx=0x=0でのnn次微分係数です。この「いい感じの」というところや「xxが00に近いところでは」というところの厳密な話はちょい長くなるのでここではしないのと、だからこそこれを無条件でつかっては欲しくないですが、これを用いてsin⁡x\sin xを展開してみると、

sin⁡x=x−x33!+x55!−⋯\sin x =x-\dfrac{x^3}{3!}+\dfrac{x^5}{5!}-\cdots

のようになります。xxが00に近いところではnnがデカくなるにつれてxnx^nはチリカスみたいに小さくなるので、例えば上の式で3次までで打ち切って近似式を作ると、xxが00に近いところでは

sin⁡x≃x−x33!=x−x36\sin x\simeq x-\dfrac{x^3}{3!}=x-\dfrac{x^3}{6}

となることがわかります。このマクローリン展開、あるいはテイラー展開やテイラーの定理などは大学数学の範囲ではあるものの、高校数学の知識で十分理解できるうえ大学入試でこれが背景の問題がめちゃ出るので気になる人は調べてみると良いと思います。

おまけ問題(2)

関数y=13x+5y=\dfrac{1}{3x+5}のnn階導関数dnydxn\dfrac{d^n y}{dx^n}をnnで表せ。

答えは下の証明の中に出てきます。解答には帰納法による証明も入れていたのですが、スペースの関係で載りませんでした。ただ、(パソコン下手の俺が)結構頑張って打ったので供養したいのと、教育的価値もそこそこあるので、ここに載せておきます。

【帰納法を用いた証明】

dnydxn=3n×(−1)n×n!×(3x+5)−(n+1)\begin{aligned}&\dfrac{d^n y}{dx^n}=3^n \times (-1)^n \times n! \times (3x+5)^{-(n+1)}\end{aligned}

と予想し、これを数学的帰納法で示す。n=1n=1では成立。n=kn=kで成立する時、t=3x+5t=3x+5とおくと、

dk+1ydxk+1=ddxdkydxk=ddx{3k×(−1)k×k!×(3x+5)−(k+1)}=ddx{3k×(−1)k×k!×t−(k+1)}=dtdxddt{3k×(−1)k×k!×t−(k+1)}=3×3k×(−1)k×k!×ddt{t−(k+1)}=3×3k×(−1)k×k!×{−(k+1)}×t−(k+2)=3k+1×(−1)k+1×(k+1)!×(3x+5)−(k+1+1)\begin{aligned}\dfrac{d^{k+1}y}{dx^{k+1}}&=\dfrac{d}{dx}\dfrac{d^k y}{dx^k}\\&=\dfrac{d}{dx}\left\{3^k \times (-1)^k \times k! \times (3x+5)^{-(k+1)}\right\}\\&=\dfrac{d}{dx}\left\{3^k \times (-1)^k \times k! \times t^{-(k+1)}\right\}\\&=\dfrac{dt}{dx}\dfrac{d}{dt}\left\{3^k \times (-1)^k \times k! \times t^{-(k+1)}\right\}\\&=3\times 3^k \times (-1)^k \times k! \times \dfrac{d}{dt}\left\{t^{-(k+1)}\right\}\\&=3\times 3^k \times (-1)^k \times k! \times \left\{-(k+1)\right\}\times t^{-(k+2)}\\&=3^{k+1} \times (-1)^{k+1} \times (k+1)! \times (3x+5)^{-(k+1+1)}\end{aligned}

よりn=k+1n=k+1でも成立。よって数学的帰納法により、

dnydxn=3n×(−1)n×n!×(3x+5)−(n+1)\begin{aligned}&\dfrac{d^n y}{dx^n}=3^n \times (-1)^n \times n! \times (3x+5)^{-(n+1)}\end{aligned}

が示された!!□

このように、何かの操作をくりかえしてできた式の規則性を示すときには帰納法が非常に相性がいいです。(これは当たり前で、「帰納法」という発想自体が一つ前までの操作でできた規則性を前提としてもう一度操作をしてどう変化するのかを見るものだからです。)これは記憶するに値すると思います。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

2 ここでの log⁡\log は自然対数、つまり底が ee の対数です。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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