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偶関数・奇関数の積分を式で示す

2024年度 高1解説2026年10月6日5分で読めます塾講師木下積分

偶関数1f(−x)=f(x)f(-x)=f(x) がつねに成り立つ関数が偶関数、g(−x)=−g(x)g(-x)=-g(x) がつねに成り立つ関数が奇関数です。偶関数のグラフは yy 軸について対称で、奇関数のグラフは原点について対称です。下の脚注へや奇関数の対称な積分範囲での積分について授業で次の定理を扱いました:

定理

f(x)f(x)を偶関数、g(x)g(x)を奇関数とする。このとき、定数aaについて、以下が成り立つ:

{∫−aaf(x)dx=2∫0af(x)dx∫−aag(x)dx=0\begin{aligned}\begin{cases} \int_{-a}^a f(x) dx =2\int_{0}^a f(x) dx\\ \int_{-a}^a g(x) dx =0 \end{cases}\end{aligned}

そして、この定理についての説明は偶関数や奇関数のグラフ上の性質を用いてその面積からなされたと思います。この説明はもちろん正しく、みなさんにもそのグラフ的イメージを持っていてもらいたいのですが、しかしこの説明は図に頼っており数学的に厳密であるとは少し言いにくいものです。今回は、上記の定理を置換積分を用いて代数的に証明する方法を紹介したいと思います。
【証明】

  • ∫−aaf(x)dx\int_{-a}^a f(x) dxについて

∫−aaf(x)dx=∫−a0f(x)dx+∫0af(x)dx⋯♢\int_{-a}^a f(x) dx=\int_{-a}^0 f(x) dx+\int_{0}^a f(x) dx\quad\cdots\diamondsuit

である。ここで、∫−a0f(x)dx\int_{-a}^0 f(x) dxについて、
t:=−xt:=-xなる置換を考える。このとき、

{x=−tdx=−dtx:−a→0のときt:a→0\begin{aligned}&\begin{cases} x=-t\\ dx=-dt\\ x:-a\to 0\text{のとき}t:a\to 0 \end{cases}\end{aligned}

である。よって、

∫−a0f(x)dx=∫a0f(−t)(−dt)=−∫a0f(−t)dt=∫0af(−t)dt⋯♡\begin{aligned}&\int_{-a}^0 f(x) dx=\int_{a}^0 f(-t) (-dt)\\ &=-\int_{a}^0 f(-t)dt\\ &=\int_0^a f(-t)dt\quad \cdots\heartsuit\end{aligned}

となる。ここで、f(x)f(x)は偶関数なのでf(−t)=f(t)f(-t)=f(t)だから、

♡=∫0af(t)dt=∫0af(x)dx\begin{aligned}&\heartsuit =\int_0^a f(t)dt=\int_{0}^a f(x) dx\end{aligned}

となる。よって、

♢=∫0af(x)dx+∫0af(x)dx=2∫0af(x)dx\begin{aligned}&\diamondsuit =\int_{0}^a f(x) dx +\int_{0}^a f(x) dx\\ &=2\int_{0}^a f(x) dx\end{aligned}

が得られる。□

  • ∫−aag(x)dx\int_{-a}^a g(x) dxについて:省略。上記と同様に積分区間を[−a,0][-a,0]と[0,a][0,a]にわけ、[−a,0][-a,0]のほうの積分に対してt:=−xt:=-xなる置換を考えてやればいい。各自やってみて。

また、これとはすこし異なりますが、置換積分の面白い例として、以下に挙げる定理があります。(これは俗に“King Property”と呼ばれています。かっこいいですね。)

定理(King Property)

以下が成り立つ:

∫abf(x)dx=∫abf(a+b−x)dx\int_a^b f(x)dx =\int_a^b f(a+b-x)dx

証明はみなさんにお任せします。左辺の積分にt:=a+b−xt:= a+b-xなる置換を施せば簡単に証明できます。この定理を用いて、次のような不定積分を求めるのが難しい定積分の求値をやってみましょう:

問題

以下の定積分の値を求めよ:2塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ

∫0π3log⁡(1+3tan⁡x)dx\int_0^{\dfrac{\pi}{3}} \log (1+\sqrt{3}\tan x) dx

この不定積分はまともな初等関数で表すことはできないのですが、先ほどの“King Property”を用いることで定積分値ならかなり簡単に求めることができます:3この頁の log⁡\log は自然対数です。解答の2行目から3行目では、正接の加法定理から得られる tan⁡(π3−x)=3−tan⁡x1+3tan⁡x\tan\left(\dfrac{\pi}{3}-x\right)=\dfrac{\sqrt3-\tan x}{1+\sqrt3\tan x} を使います。下の脚注へ
【解答】

I:=∫0π3log⁡(1+3tan⁡x)dx=∫0π3log⁡(1+3tan⁡(π3−x))dx=∫0π3log⁡(1+3(3−tan⁡x)1+3tan⁡x)dx=∫0π3log⁡(41+3tan⁡x)dx=∫0π3log⁡4 dx−∫0π3log⁡(1+3tan⁡x)dx=π3log⁡4−I\begin{aligned}&I:=\int_0^{\dfrac{\pi}{3}} \log (1+\sqrt{3}\tan x) dx\\ &=\int_0^{\dfrac{\pi}{3}} \log \left(1+\sqrt{3}\tan \left(\dfrac{\pi}{3}-x\right)\right) dx\\ &=\int_0^{\dfrac{\pi}{3}} \log \left(1+\dfrac{\sqrt{3}(\sqrt{3}-\tan x)}{1+\sqrt{3}\tan x}\right)dx\\ &=\int_0^{\dfrac{\pi}{3}} \log \left(\dfrac{4}{1+\sqrt{3}\tan x}\right)dx\\ &=\int_0^{\dfrac{\pi}{3}} \log 4\,dx-\int_0^{\dfrac{\pi}{3}} \log \left(1+\sqrt{3}\tan x\right)dx\\ &=\dfrac{\pi}{3} \log 4 -I\end{aligned}

となる。つまり、

I=π3log⁡4−I⇔2I=2π3log⁡2⇔I=π3log⁡2⋯(答)\begin{aligned}&I=\dfrac{\pi}{3} \log 4 -I\\ &\Leftrightarrow 2I=\dfrac{2\pi}{3} \log 2\\ &\Leftrightarrow I=\dfrac{\pi}{3} \log 2\quad\cdots\text{(答)}\end{aligned}

定積分でどうしても行き詰まったら“King Property”が行けないか試してみるのも一つの方法として押さえておくと良いかもしれません。

1 f(−x)=f(x)f(-x)=f(x) がつねに成り立つ関数が偶関数、g(−x)=−g(x)g(-x)=-g(x) がつねに成り立つ関数が奇関数です。偶関数のグラフは yy 軸について対称で、奇関数のグラフは原点について対称です。

2 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

3 この頁の log⁡\log は自然対数です。解答の2行目から3行目では、正接の加法定理から得られる tan⁡(π3−x)=3−tan⁡x1+3tan⁡x\tan\left(\dfrac{\pi}{3}-x\right)=\dfrac{\sqrt3-\tan x}{1+\sqrt3\tan x} を使います。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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