公比の取れない漸化式
目次
- 1. 1 未満の r が取れるかどうかは、交点での傾きで決まる
- 2. an+1=an+c で c を動かしてみる
- 3. c=−41 のときの証明
- 4. 類題:a1=1, an+1=ane−an
an+1=f(an) で決まる数列の極限を求めるとき、授業では次の順に進めました。まず α=f(α) を解いて極限の候補 α を出します。次に、0<r<1 の定数 r で
∣an+1−α∣≦r∣an−α∣
が成り立つことを示します。これをくり返し使えば ∣an−α∣≦rn−1∣a1−α∣ となり、右辺が 0 に収束するので、はさみうちの原理で an→α が言えます。
この頁で扱うのは、この r がどうしても見つからない数列です。そういう数列は珍しいものではなく、y=f(x) のグラフが直線 y=x と交わらずに接しているときに必ず現れます。そのときは、等比数列の代わりに自分で選んだ数列を使ってはさみうちをします。
1. 1 未満の r が取れるかどうかは、交点での傾きで決まる
an=α のとき、誤差の比
an−αan+1−α=an−αf(an)−f(α)
は、曲線 y=f(x) の上の2点 (α, f(α)) と (an, f(an)) を結んだ線分の傾きです。an が α に近づけば、この傾きは接線の傾き f′(α) に近づきます。
∣f′(α)∣<1 であれば、α の近くでは比の絶対値を ∣f′(α)∣ より少し大きい 1 未満の定数で押さえられるので、授業の方法がそのまま使えます。ところが f′(α)=1、つまり y=f(x) が点 (α, α) で y=x に接しているときは、an→α である限り比は 1 にいくらでも近づきます。比を 1 未満の決まった数 r で押さえ続けることは、どんな r を選んでも途中でできなくなります。
いちばん単純な例:an+1=1+anan
a1=1, an+1=1+anan とします。両辺の逆数をとると an+11=an1+1 なので、{an1} は公差 1 の等差数列で、an=n1 と求まります。極限は 0 です。
f(x)=1+xx とおくと f(0)=0、f′(x)=(1+x)21 より f′(0)=1 で、原点で y=x に接しています。誤差の比は anan+1=n+1n で、たしかに 1 に近づきます。
図1 y=1+xx と y=x は原点で接し、a1=1 からのジグザグの段は 1, 21, 31, 41 と小さくなる逆数が等差数列になる数列を調和数列と呼びます。接している場合の誤差は、等比数列のように毎回同じ割合で縮むのでなく、調和数列 1, 21, 31, ⋯ のように縮み方がだんだん鈍くなりながら 0 へ向かいます。
2. an+1=an+c で c を動かしてみる
授業で扱った問題は、a1=1, an+1=an+2 の極限を問う問題でした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。。x=x+2 の解 α=2 を使って ∣an+1−2∣≦21∣an−2∣ を示し、21<1 から収束を言いました。ここで 2 を一般の定数 c に置き換えて、初項は a1=1 のままにしたとき、収束するかどうかだけを問うなら、条件はもっと緩められます。
x=x+c は「x≧0 かつ x2−x−c=0」と同じなので、交点の x 座標は
x=21±1+4c
のうち 0 以上のものです。判別式 1+4c の符号と、2解の積が −c であることから、c の範囲ごとに次の4通りに分かれます。
⑴ c>0:交点は1つ
2解の積 −c が負なので、0 以上の解は大きい方の α=21+1+4c だけです。図2は c=1、a1=0 として描いたもので、ジグザグは α に吸い込まれていきます。a1=1 から始めても同じく α に収束します。(c=0 では原点も交点になりますが、a1=1 から始めれば α=1 に収束する点は変わりません。)
図2 c=1 のとき、y=x+1 は y=x と1点 α で交わり、ジグザグは α に近づく⑵ −41<c<0:交点は2つ
2解の和が 1、積 −c が正なので、2解はどちらも正です。小さい方を β、大きい方を α とすると 0<β<21<α<1 です。f(x)=x+c の交点での傾きは f′(x)=2x+c1=2x1(交点では x+c=x なので)だから、α では 1 より小さく、β では 1 より大きくなります。
この違いが初項による振る舞いの違いになって表れます。初項が β より大きければ数列は α に収束し、初項がちょうど β なら β のまま動きません。初項が β より少しでも小さいと、数列は減り続けてやがて an+c<0 となり、次の項が作れなくなります。β は、わずかにずれただけで離れていく交点です。a1=1 なら an>α が保たれ、係数 an+c+α1 は 2α1 (<1) で押さえられるので、授業の方法で α への収束が示せます。
図3 c=−0.2 のとき交点は β と α の2つ。β の少し右から始めると α へ近づき、β の少し左から始めると下がっていき途中で止まる⑶ c<−41:交点は無い
x2−x−c>0 がすべての x で成り立つので、定義される範囲では常に x+c<x です。数列は減り続けます。もし an≧−c がずっと保たれるなら、数列はある値 L≧−c に収束して L=L+c を満たすはずですが、そのような L はありません。したがって、どこかで an<−c となり、そこで数列が作れなくなります。
図4 c=−0.4 のとき y=x−0.4 は y=x の下にあり、a1=1 からのジグザグは下がっていき途中で止まる⑷ c=−41:接する
2解が重なって α=21 になり、傾きは f′(21)=2⋅211=1 です。曲線は (21, 21) で y=x に接しています。ジグザグを描くと 21 に向かってはいくものの、近づくほど段が細かくなり、なかなか進みません。
図5 c=−41 のとき y=x−41 は (21, 21) で y=x に接し、a1=1 からのジグザグは接点に向かってゆっくり進む以上から、a1=1 のとき数列が収束するのは c≧−41 のときです。そのうち授業の方法が使えないのは c=−41 の1つだけで、これが §1 で見た「接する」場合にあたります。
3. c=−41 のときの証明
α=21 との差を作り、分子を有理化すると
an+1−21=an−41−21=an−41+21an−21⋯⋯(A)
となります。a1−21>0 で、(A) の右辺の分母は正なので、帰納的にすべての n で an>21 です。
授業と同じく (A) の係数 an−41+211 を定数で押さえようとすると、うまくいきません。an−41≧0 だけを使うと上から 2 でしか押さえられず、an>21 を使っても「1 より小さい」としか言えません。an が 21 に近づくと係数は 1 に近づくので、1 未満の定数で押さえることは §1 の理由で不可能です。
そこで、21 に収束する数列 {bn} で 21<an≦bn となるものを自分で探します。どんな bn を選ぶかは、誤差 dn=an−21 がどのくらいの速さで小さくなるかを見積もって決めます。(A) は
dn+1=41+dn+21dn
と書けて、dn が小さいとき 41+dn はおよそ 21+dn なので
dn+1≒1+dndn
です。これは §1 の例と同じ漸化式なので、dn はおよそ n1 の大きさだと見当がつきます。
ただし bn=21+n1 と置くと、帰納法の次の一歩が成り立ちません(ak=21+k1 のとき ak+1>21+k+11 になってしまう)。見積もりがちょうどすぎて余裕が無いからです。分子を 1 より大きくし、n=1 で a1=1 とつじつまが合うように分母をずらして、次の形を予想します。
21<an≦21+n+32 を数学的帰納法で示す
証明
左側の不等式は上で示したので、右側を示します。
[1] n=1 のとき a1=1=21+42 なので成り立ちます。
[2] n=k で成り立つと仮定する x は増加関数なので、仮定 ak−41≦41+k+32 から
ak+1=ak−41≦41+k+32
です。右辺と 21+k+42 を2乗どうしで比べると
===(21+k+42)2−(41+k+32)k+42+(k+4)24−k+32(k+4)24−(k+3)(k+4)2(k+3)(k+4)22(k+2)>0
なので、ak+1≦21+k+42 となり、n=k+1 でも成り立ちます。
[1]、[2] から、すべての自然数 n で 21<an≦21+n+32 です。右端の 21+n+32 は n→∞ のとき 21 へ近づくから、はさみうちにより
n→∞liman=21
です。□
実際に計算すると n(an−21) は 1 に近づいていき、dn がおよそ n1 だという見積もりと合います。
4. 類題:a1=1, an+1=ane−an
f(x)=xe−x とおくと、f(x)=x は x(e−x−1)=0 より x=0 だけが解です。f′(x)=(1−x)e−x より f′(0)=1 なので、ここでも曲線は原点で y=x に接しています。
図6 y=xe−x は原点で y=x に接し、a1=1 からのジグザグは原点へゆっくり近づく帰納的に an>0 で、誤差の比 anan+1=e−an は 1 より小さいものの an→0 なら 1 に近づくので、授業の方法は使えません。e−an はおよそ 1−an なので an+1≒an−an2≒1+anan となり、ここでもおよそ n1 の速さだと見当がつきます。今度は 0<an≦n1 を予想してみます。
[1] a1=1 なので n=1 で成り立ちます。
[2] 0<ak≦k1 と仮定します。0≦x≦1 で f′(x)≧0 なので f はこの範囲で増加し、
ak+1=f(ak)≦f(k1)=k1e−k1
です。t≧0 で et≧1+t(et−1−t の増減を調べれば分かります)なので ek1≧1+k1=kk+1、すなわち k1e−k1≦k+11 です。よって 0<ak+1≦k+11 が成り立ちます。
はさみうちの原理から n→∞liman=0 です。
§3 では n1 の形のままでは帰納法が回らず、分子を 2 に増やしました。この類題では n1 のままで回ります。どちらになるかは見積もりの次の細かい項で決まるので、前もっては分かりません。見積もりから形を決め、帰納法を試して回らなければ余裕を持たせる、という順で進めるのが確実です。
y=f(x) が y=x に接するときの進め方
⑴ f(α)=α かつ f′(α)=1 なら、∣an+1−α∣≦r∣an−α∣ となる 1 未満の定数 r は無いと判断する
⑵ 誤差 dn=an−α の漸化式を α の近くで近似し、dn がおよそ nC の大きさだと見積もる
⑶ α<an≦α+n+mC′ の形を予想して帰納法で示す。f が増加関数なら、ak を予想の上限に置き換えて比べるだけで済む。回らなければ C′ を大きくする
⑷ はさみうちの原理で極限を出す
1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。
塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。
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