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公比の取れない漸化式

2025年度 高2発展2026年10月6日13分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. 1 未満の が取れるかどうかは、交点での傾きで決まる
  2. 2. で を動かしてみる
  3. 3. のときの証明
  4. 4. 類題:

an+1=f(an)a_{n+1}=f(a_n) で決まる数列の極限を求めるとき、授業では次の順に進めました。まず α=f(α)\alpha=f(\alpha) を解いて極限の候補 α\alpha を出します。次に、0<r<10<r<1 の定数 rr で

∣an+1−α∣≦r ∣an−α∣|a_{n+1}-\alpha|\leqq r\,|a_n-\alpha|

が成り立つことを示します。これをくり返し使えば ∣an−α∣≦rn−1∣a1−α∣|a_n-\alpha|\leqq r^{n-1}|a_1-\alpha| となり、右辺が 00 に収束するので、はさみうちの原理で an→αa_n\to\alpha が言えます。

この頁で扱うのは、この rr がどうしても見つからない数列です。そういう数列は珍しいものではなく、y=f(x)y=f(x) のグラフが直線 y=xy=x と交わらずに接しているときに必ず現れます。そのときは、等比数列の代わりに自分で選んだ数列を使ってはさみうちをします。

1. 1 未満の rr が取れるかどうかは、交点での傾きで決まる

an≠αa_n\neq\alpha のとき、誤差の比

an+1−αan−α=f(an)−f(α)an−α\frac{a_{n+1}-\alpha}{a_n-\alpha}=\frac{f(a_n)-f(\alpha)}{a_n-\alpha}

は、曲線 y=f(x)y=f(x) の上の2点 (α, f(α))(\alpha,\ f(\alpha)) と (an, f(an))(a_n,\ f(a_n)) を結んだ線分の傾きです。ana_n が α\alpha に近づけば、この傾きは接線の傾き f′(α)f'(\alpha) に近づきます。

∣f′(α)∣<1|f'(\alpha)|<1 であれば、α\alpha の近くでは比の絶対値を ∣f′(α)∣|f'(\alpha)| より少し大きい 11 未満の定数で押さえられるので、授業の方法がそのまま使えます。ところが f′(α)=1f'(\alpha)=1、つまり y=f(x)y=f(x) が点 (α, α)(\alpha,\ \alpha) で y=xy=x に接しているときは、an→αa_n\to\alpha である限り比は 11 にいくらでも近づきます。比を 11 未満の決まった数 rr で押さえ続けることは、どんな rr を選んでも途中でできなくなります。

いちばん単純な例:an+1=an1+ana_{n+1}=\dfrac{a_n}{1+a_n}

a1=1, an+1=an1+ana_1=1,\ a_{n+1}=\dfrac{a_n}{1+a_n} とします。両辺の逆数をとると 1an+1=1an+1\dfrac{1}{a_{n+1}}=\dfrac{1}{a_n}+1 なので、{1an}\left\{\dfrac1{a_n}\right\} は公差 11 の等差数列で、an=1na_n=\dfrac1n と求まります。極限は 00 です。

f(x)=x1+xf(x)=\dfrac{x}{1+x} とおくと f(0)=0f(0)=0、f′(x)=1(1+x)2f'(x)=\dfrac{1}{(1+x)^2} より f′(0)=1f'(0)=1 で、原点で y=xy=x に接しています。誤差の比は an+1an=nn+1\dfrac{a_{n+1}}{a_n}=\dfrac{n}{n+1} で、たしかに 11 に近づきます。

図1図1 y=x1+xy=\frac{x}{1+x} と y=xy=x は原点で接し、a1=1a_1=1 からのジグザグの段は 1, 12, 13, 141,\ \frac12,\ \frac13,\ \frac14 と小さくなる

逆数が等差数列になる数列を調和数列と呼びます。接している場合の誤差は、等比数列のように毎回同じ割合で縮むのでなく、調和数列 1, 12, 13, ⋯1,\ \dfrac12,\ \dfrac13,\ \cdots のように縮み方がだんだん鈍くなりながら 00 へ向かいます。

2. an+1=an+ca_{n+1}=\sqrt{a_n+c} で cc を動かしてみる

授業で扱った問題は、a1=1, an+1=an+2a_1=1,\ a_{n+1}=\sqrt{a_n+2} の極限を問う問題でした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ。x=x+2x=\sqrt{x+2} の解 α=2\alpha=2 を使って ∣an+1−2∣≦12∣an−2∣|a_{n+1}-2|\leqq\dfrac{1}{2}|a_n-2| を示し、12<1\dfrac{1}{2}<1 から収束を言いました。ここで 22 を一般の定数 cc に置き換えて、初項は a1=1a_1=1 のままにしたとき、収束するかどうかだけを問うなら、条件はもっと緩められます。

x=x+cx=\sqrt{x+c} は「x≧0x\geqq0 かつ x2−x−c=0x^2-x-c=0」と同じなので、交点の xx 座標は

x=1±1+4c2x=\frac{1\pm\sqrt{1+4c}}{2}

のうち 00 以上のものです。判別式 1+4c1+4c の符号と、2解の積が −c-c であることから、cc の範囲ごとに次の4通りに分かれます。

⑴ c>0c>0:交点は1つ

2解の積 −c-c が負なので、00 以上の解は大きい方の α=1+1+4c2\alpha=\dfrac{1+\sqrt{1+4c}}{2} だけです。図2は c=1c=1、a1=0a_1=0 として描いたもので、ジグザグは α\alpha に吸い込まれていきます。a1=1a_1=1 から始めても同じく α\alpha に収束します。(c=0c=0 では原点も交点になりますが、a1=1a_1=1 から始めれば α=1\alpha=1 に収束する点は変わりません。)

図2図2 c=1c=1 のとき、y=x+1y=\sqrt{x+1} は y=xy=x と1点 α\alpha で交わり、ジグザグは α\alpha に近づく

⑵ −14<c<0-\dfrac14<c<0:交点は2つ

2解の和が 11、積 −c-c が正なので、2解はどちらも正です。小さい方を β\beta、大きい方を α\alpha とすると 0<β<12<α<10<\beta<\dfrac12<\alpha<1 です。f(x)=x+cf(x)=\sqrt{x+c} の交点での傾きは f′(x)=12x+c=12xf'(x)=\dfrac{1}{2\sqrt{x+c}}=\dfrac{1}{2x}(交点では x+c=x\sqrt{x+c}=x なので)だから、α\alpha では 11 より小さく、β\beta では 11 より大きくなります。

この違いが初項による振る舞いの違いになって表れます。初項が β\beta より大きければ数列は α\alpha に収束し、初項がちょうど β\beta なら β\beta のまま動きません。初項が β\beta より少しでも小さいと、数列は減り続けてやがて an+c<0a_n+c<0 となり、次の項が作れなくなります。β\beta は、わずかにずれただけで離れていく交点です。a1=1a_1=1 なら an>αa_n>\alpha が保たれ、係数 1an+c+α\dfrac{1}{\sqrt{a_n+c}+\alpha} は 12α (<1)\dfrac{1}{2\alpha}\ (<1) で押さえられるので、授業の方法で α\alpha への収束が示せます。

図3図3 c=−0.2c=-0.2 のとき交点は β\beta と α\alpha の2つ。β\beta の少し右から始めると α\alpha へ近づき、β\beta の少し左から始めると下がっていき途中で止まる

⑶ c<−14c<-\dfrac14:交点は無い

x2−x−c>0x^2-x-c>0 がすべての xx で成り立つので、定義される範囲では常に x+c<x\sqrt{x+c}<x です。数列は減り続けます。もし an≧−ca_n\geqq -c がずっと保たれるなら、数列はある値 L≧−cL\geqq-c に収束して L=L+cL=\sqrt{L+c} を満たすはずですが、そのような LL はありません。したがって、どこかで an<−ca_n<-c となり、そこで数列が作れなくなります。

図4図4 c=−0.4c=-0.4 のとき y=x−0.4y=\sqrt{x-0.4} は y=xy=x の下にあり、a1=1a_1=1 からのジグザグは下がっていき途中で止まる

⑷ c=−14c=-\dfrac14:接する

2解が重なって α=12\alpha=\dfrac12 になり、傾きは f′ ⁣(12)=12⋅12=1f'\!\left(\dfrac12\right)=\dfrac{1}{2\cdot\frac12}=1 です。曲線は (12, 12)\left(\dfrac12,\ \dfrac12\right) で y=xy=x に接しています。ジグザグを描くと 12\dfrac12 に向かってはいくものの、近づくほど段が細かくなり、なかなか進みません。

図5図5 c=−14c=-\frac14 のとき y=x−14y=\sqrt{x-\frac14} は (12, 12)\left(\frac12,\ \frac12\right) で y=xy=x に接し、a1=1a_1=1 からのジグザグは接点に向かってゆっくり進む

以上から、a1=1a_1=1 のとき数列が収束するのは c≧−14c\geqq-\dfrac14 のときです。そのうち授業の方法が使えないのは c=−14c=-\dfrac14 の1つだけで、これが §1 で見た「接する」場合にあたります。

3. c=−14c=-\dfrac14 のときの証明

α=12\alpha=\dfrac12 との差を作り、分子を有理化すると

an+1−12=an−14−12=an−12an−14+12⋯⋯(A)\begin{aligned}a_{n+1}-\frac12&=\sqrt{a_n-\frac14}-\frac12\\ &=\frac{a_n-\frac12}{\sqrt{a_n-\frac14}+\frac12}\quad\cdots\cdots\text{(A)}\end{aligned}

となります。a1−12>0a_1-\dfrac12>0 で、(A) の右辺の分母は正なので、帰納的にすべての nn で an>12a_n>\dfrac12 です。

授業と同じく (A) の係数 1an−14+12\dfrac{1}{\sqrt{a_n-\frac14}+\frac12} を定数で押さえようとすると、うまくいきません。an−14≧0\sqrt{a_n-\frac14}\geqq0 だけを使うと上から 22 でしか押さえられず、an>12a_n>\dfrac12 を使っても「11 より小さい」としか言えません。ana_n が 12\dfrac12 に近づくと係数は 11 に近づくので、11 未満の定数で押さえることは §1 の理由で不可能です。

そこで、12\dfrac12 に収束する数列 {bn}\{b_n\} で 12<an≦bn\dfrac12<a_n\leqq b_n となるものを自分で探します。どんな bnb_n を選ぶかは、誤差 dn=an−12d_n=a_n-\dfrac12 がどのくらいの速さで小さくなるかを見積もって決めます。(A) は

dn+1=dn14+dn+12d_{n+1}=\frac{d_n}{\sqrt{\frac14+d_n}+\frac12}

と書けて、dnd_n が小さいとき 14+dn\sqrt{\frac14+d_n} はおよそ 12+dn\dfrac12+d_n なので

dn+1≒dn1+dnd_{n+1}\fallingdotseq\frac{d_n}{1+d_n}

です。これは §1 の例と同じ漸化式なので、dnd_n はおよそ 1n\dfrac1n の大きさだと見当がつきます。

ただし bn=12+1nb_n=\dfrac12+\dfrac1n と置くと、帰納法の次の一歩が成り立ちません(ak=12+1ka_k=\dfrac12+\dfrac1k のとき ak+1>12+1k+1a_{k+1}>\dfrac12+\dfrac1{k+1} になってしまう)。見積もりがちょうどすぎて余裕が無いからです。分子を 11 より大きくし、n=1n=1 で a1=1a_1=1 とつじつまが合うように分母をずらして、次の形を予想します。

12<an≦12+2n+3\dfrac12<a_n\leqq\dfrac12+\dfrac{2}{n+3} を数学的帰納法で示す

証明

左側の不等式は上で示したので、右側を示します。

[1] n=1n=1 のとき a1=1=12+24a_1=1=\dfrac12+\dfrac24 なので成り立ちます。

[2] n=kn=k で成り立つと仮定する x\sqrt{x} は増加関数なので、仮定 ak−14≦14+2k+3a_k-\dfrac14\leqq\dfrac14+\dfrac{2}{k+3} から

ak+1=ak−14≦14+2k+3a_{k+1}=\sqrt{a_k-\frac14}\leqq\sqrt{\frac14+\frac{2}{k+3}}

です。右辺と 12+2k+4\dfrac12+\dfrac{2}{k+4} を2乗どうしで比べると

(12+2k+4)2−(14+2k+3)=2k+4+4(k+4)2−2k+3=4(k+4)2−2(k+3)(k+4)=2(k+2)(k+3)(k+4)2>0\begin{aligned}&\left(\frac12+\frac{2}{k+4}\right)^2-\left(\frac14+\frac{2}{k+3}\right)\\ ={}&\frac{2}{k+4}+\frac{4}{(k+4)^2}-\frac{2}{k+3}\\ ={}&\frac{4}{(k+4)^2}-\frac{2}{(k+3)(k+4)}\\ ={}&\frac{2(k+2)}{(k+3)(k+4)^2}>0\end{aligned}

なので、ak+1≦12+2k+4a_{k+1}\leqq\dfrac12+\dfrac{2}{k+4} となり、n=k+1n=k+1 でも成り立ちます。

[1]、[2] から、すべての自然数 nn で 12<an≦12+2n+3\dfrac12<a_n\leqq\dfrac12+\dfrac{2}{n+3} です。右端の 12+2n+3\dfrac12+\dfrac{2}{n+3} は n→∞n\to\infty のとき 12\dfrac12 へ近づくから、はさみうちにより

lim⁡n→∞an=12\lim_{n\to\infty}a_n=\frac12

です。□

実際に計算すると n(an−12)n\left(a_n-\dfrac12\right) は 11 に近づいていき、dnd_n がおよそ 1n\dfrac1n だという見積もりと合います。

4. 類題:a1=1, an+1=ane−ana_1=1,\ a_{n+1}=a_ne^{-a_n}

f(x)=xe−xf(x)=xe^{-x} とおくと、f(x)=xf(x)=x は x(e−x−1)=0x\left(e^{-x}-1\right)=0 より x=0x=0 だけが解です。f′(x)=(1−x)e−xf'(x)=(1-x)e^{-x} より f′(0)=1f'(0)=1 なので、ここでも曲線は原点で y=xy=x に接しています。

図6図6 y=xe−xy=xe^{-x} は原点で y=xy=x に接し、a1=1a_1=1 からのジグザグは原点へゆっくり近づく

帰納的に an>0a_n>0 で、誤差の比 an+1an=e−an\dfrac{a_{n+1}}{a_n}=e^{-a_n} は 11 より小さいものの an→0a_n\to0 なら 11 に近づくので、授業の方法は使えません。e−ane^{-a_n} はおよそ 1−an1-a_n なので an+1≒an−an2≒an1+ana_{n+1}\fallingdotseq a_n-{a_n}^2\fallingdotseq\dfrac{a_n}{1+a_n} となり、ここでもおよそ 1n\dfrac1n の速さだと見当がつきます。今度は 0<an≦1n0<a_n\leqq\dfrac1n を予想してみます。

[1] a1=1a_1=1 なので n=1n=1 で成り立ちます。

[2] 0<ak≦1k0<a_k\leqq\dfrac1k と仮定します。0≦x≦10\leqq x\leqq1 で f′(x)≧0f'(x)\geqq0 なので ff はこの範囲で増加し、

ak+1=f(ak)≦f ⁣(1k)=1k e−1ka_{k+1}=f(a_k)\leqq f\!\left(\frac1k\right)=\frac1k\,e^{-\frac1k}

です。t≧0t\geqq0 で et≧1+te^t\geqq1+t(et−1−te^t-1-t の増減を調べれば分かります)なので e1k≧1+1k=k+1ke^{\frac1k}\geqq1+\dfrac1k=\dfrac{k+1}{k}、すなわち 1k e−1k≦1k+1\dfrac1k\,e^{-\frac1k}\leqq\dfrac{1}{k+1} です。よって 0<ak+1≦1k+10<a_{k+1}\leqq\dfrac{1}{k+1} が成り立ちます。

はさみうちの原理から lim⁡n→∞an=0\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=0 です。

§3 では 1n\dfrac1n の形のままでは帰納法が回らず、分子を 22 に増やしました。この類題では 1n\dfrac1n のままで回ります。どちらになるかは見積もりの次の細かい項で決まるので、前もっては分かりません。見積もりから形を決め、帰納法を試して回らなければ余裕を持たせる、という順で進めるのが確実です。

y=f(x)y=f(x) が y=xy=x に接するときの進め方

⑴ f(α)=αf(\alpha)=\alpha かつ f′(α)=1f'(\alpha)=1 なら、∣an+1−α∣≦r∣an−α∣|a_{n+1}-\alpha|\leqq r|a_n-\alpha| となる 11 未満の定数 rr は無いと判断する

⑵ 誤差 dn=an−αd_n=a_n-\alpha の漸化式を α\alpha の近くで近似し、dnd_n がおよそ Cn\dfrac{C}{n} の大きさだと見積もる

⑶ α<an≦α+C′n+m\alpha<a_n\leqq\alpha+\dfrac{C'}{n+m} の形を予想して帰納法で示す。ff が増加関数なら、aka_k を予想の上限に置き換えて比べるだけで済む。回らなければ C′C' を大きくする

⑷ はさみうちの原理で極限を出す

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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