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指数法則型とコーシーの関数方程式

2025年度 高2発展2026年10月6日12分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. 指数法則型:代入で分かること
  2. 2. 0 での微分係数を与えると全体が決まる
  3. 3. コーシーの関数方程式:有理数での値
  4. 無理数での値は式だけでは決まらない
  5. 4. 連続性を足すと に限られる

授業の例題は、f(x+y)=f(x)f(y)f(x+y)=f(x)f(y) を満たし x=0x=0 で微分可能で f′(0)=2f'(0)=2 である f(x)f(x) を求める問題でした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ。この等式を手がかりに f(0)f(0) の値を出し、微分可能性を示し、(f(x)e−2x)′\left(f(x)e^{-2x}\right)' を調べて f(x)f(x) を決めます。このように「式の形」だけが与えられ、それを満たす関数を探す問題を関数方程式といいます。

この頁では、入試でよく見る2つの型を扱います。

どちらも、まずうまい値を代入して性質を1つずつ取り出すのが出発点です。ただし式だけから分かるのは「xx が有理数のときの値」までで、関数全体を決めるには微分可能性や連続性のような条件がもう1つ要ります。この「どこまでが式だけで言えて、どこから追加の条件が要るのか」の線引きを見ていきます。

以下、x, yx,\,y は実数全体を動き、ff は実数に実数を対応させる関数とします。

1. 指数法則型:代入で分かること

指数法則型の関数方程式

すべての実数 x, yx,\,y について

f(x+y)=f(x)f(y)⋯⋯(A)f(x+y)=f(x)f(y)\quad\cdots\cdots\text{(A)}

が成り立つとき、ff について何が言えるか。

代入する値を選ぶときの手がかりは、「式が簡単になる値」です。具体的には 00 を入れる、同じ値を2つ入れる、符号を逆にした値を組にする、の3つを順に試します。

① y=0y=0 とおく。(A) は f(x)=f(x)f(0)f(x)=f(x)f(0)、つまり

f(x){1−f(0)}=0f(x)\{1-f(0)\}=0

になります。これがすべての xx で成り立つので、f(0)≠1f(0)\neq1 なら f(x)f(x) はどの xx でも 00 です。逆に恒等的に 00 の関数は (A) を満たすので、これは本当に解の1つです。以下ではこの自明な解を除き、f(x)≠0f(x)\neq0 となる xx が少なくとも1つあるとします。すると f(0)=1f(0)=1 が決まります。

② x=y=t2x=y=\dfrac t2 とおく。(A) は

f(t)={f ⁣(t2)}2f(t)=\left\{f\!\left(\frac t2\right)\right\}^2

になります。右辺は実数の2乗なので、どんな tt についても f(t)≧0f(t)\geqq0 です。

③ y=−xy=-x とおく。(A) の左辺は f(0)=1f(0)=1 なので

f(x)f(−x)=1f(x)f(-x)=1

です。積が 11 なので f(x)f(x) は 00 になれません。②とあわせると、f(x)>0f(x)>0 がすべての xx で成り立ちます。

④ 対数をとる。③で ff がつねに正と分かったので、g(x)=log⁡f(x)g(x)=\log f(x) とおけます。(A) の両辺の対数をとると

g(x+y)=g(x)+g(y)g(x+y)=g(x)+g(y)

となり、積の関係が和の関係に変わりました。これは3節で扱う加法型そのものです。3節の結論(有理数 rr について g(r)=g(1) rg(r)=g(1)\,r)を使うと、a=f(1)a=f(1) とおいて

f(r)=eg(1)r=ar(r は有理数)f(r)=e^{g(1)r}=a^{r}\qquad(r\text{ は有理数})

が得られます。たとえば f(1)=3f(1)=3 と分かっていれば、f ⁣(12)=3f\!\left(\dfrac12\right)=\sqrt3、f(−2)=19f(-2)=\dfrac19、f ⁣(23)=93f\!\left(\dfrac23\right)=\sqrt[3]{9} まで代入だけで決まります。一方、f(2)f(\sqrt2) のような無理数での値はこの議論からは出てきません。その理由は3節で見ます。

2. 0 での微分係数を与えると全体が決まる

1節では、有理数での値しか決まりませんでした。ここに「x=0x=0 で微分可能」という条件を1つ足すと、関数がすべての実数で決まります。

0 での微分係数を足した問題

ff が (A) を満たし、さらに x=0x=0 で微分可能で f′(0)=cf'(0)=c(cc は 00 でない定数)であるとする。f(x)f(x) を求めよ。

f(0)=1f(0)=1 であること。1節の①から、f(0)=1f(0)=1 でなければ ff は恒等的に 00 です。そのとき f′(0)=0f'(0)=0 となって c≠0c\neq0 に反するので、f(0)=1f(0)=1 です。

すべての xx で微分可能であること。微分係数の定義に (A) を入れます。h≠0h\neq0 として

f(x+h)−f(x)h=f(x)f(h)−f(x)h=f(x)⋅f(h)−f(0)h\begin{aligned}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\frac{f(x)f(h)-f(x)}{h}\\&=f(x)\cdot\frac{f(h)-f(0)}{h}\end{aligned}

です(f(0)=1f(0)=1 を使って 11 を f(0)f(0) に書き換えました)。右端の分数は h→0h\to0 で f′(0)=cf'(0)=c に近づくので、左辺も極限をもち

f′(x)=c f(x)f'(x)=c\,f(x)

がすべての xx で成り立ちます。(A) のおかげで、x=0x=0 での情報がそのまま任意の点 xx へ運ばれるのがこの計算の要点です。

ff を決める。f′=cff'=cf から ff を出すには、e−cxe^{-cx} を掛けた関数の導関数を見ます。

(f(x)e−cx)′=f′(x)e−cx−c f(x)e−cx={f′(x)−c f(x)}e−cx=0\begin{aligned}\left(f(x)e^{-cx}\right)'&=f'(x)e^{-cx}-c\,f(x)e^{-cx}\\&=\{f'(x)-c\,f(x)\}e^{-cx}=0\end{aligned}

導関数がつねに 00 なので f(x)e−cxf(x)e^{-cx} は定数で、x=0x=0 を入れるとその定数は f(0)=1f(0)=1 です。よって

f(x)=ecxf(x)=e^{cx}

授業の例題は c=2c=2 の場合で、答えは e2xe^{2x} でした。この道筋は ff で割らないので、f>0f>0 を先に示しておく必要がありません(f′f=c\dfrac{f'}{f}=c と変形して積分する道もありますが、その場合は1節の③で f>0f>0 を確かめてから割ります)。

3. コーシーの関数方程式:有理数での値

コーシーの関数方程式

すべての実数 x, yx,\,y について

f(x+y)=f(x)+f(y)⋯⋯(B)f(x+y)=f(x)+f(y)\quad\cdots\cdots\text{(B)}

が成り立つとき、ff について何が言えるか。

1節と同じく、簡単な値から代入していきます。目標は、xx を何倍かしたときに f(x)f(x) も同じ倍率になること(f(rx)=rf(x)f(rx)=rf(x))を、倍率 rr を自然数・整数・有理数と広げながら示すことです。

㋐ x=y=0x=y=0 とおく。f(0)=2f(0)f(0)=2f(0) なので f(0)=0f(0)=0 です。

㋑ y=−xy=-x とおく。f(0)=f(x)+f(−x)f(0)=f(x)+f(-x) と㋐から、f(−x)=−f(x)f(-x)=-f(x) です(ff は奇関数)。

㋒ 自然数倍。nn を自然数として、f(nx)=nf(x)f(nx)=nf(x) を nn についての数学的帰納法で示します。n=1n=1 は明らかです。f(nx)=nf(x)f(nx)=nf(x) を仮定し、(B) で yy を nxnx にすると

f((n+1)x)=f(x)+f(nx)=f(x)+nf(x)=(n+1)f(x)\begin{aligned}f((n+1)x)&=f(x)+f(nx)\\&=f(x)+nf(x)\\&=(n+1)f(x)\end{aligned}

となって、n+1n+1 でも成り立ちます。

㋓ 整数倍。mm が負の整数なら −m-m は自然数なので、㋒と㋑から

f(mx)=f((−m)(−x))=(−m)f(−x)=(−m)(−f(x))=mf(x)\begin{aligned}f(mx)&=f\bigl((-m)(-x)\bigr)\\&=(-m)f(-x)\\&=(-m)\bigl(-f(x)\bigr)=mf(x)\end{aligned}

です。m=0m=0 は㋐の f(0)=0f(0)=0 そのものなので、f(mx)=mf(x)f(mx)=mf(x) はすべての整数 mm で成り立ちます。

㋔ 有理数倍。自然数 nn について、㋒の xx を xn\dfrac xn に置き換えると f(x)=nf ⁣(xn)f(x)=nf\!\left(\dfrac xn\right)、つまり f ⁣(xn)=1nf(x)f\!\left(\dfrac xn\right)=\dfrac1nf(x) です。これと㋓を組み合わせると、整数 mm と自然数 nn について

f ⁣(mn x)=1n f(mx)=mn f(x)f\!\left(\frac mn\,x\right)=\frac1n\,f(mx)=\frac mn\,f(x)

となります。どの有理数も mn\dfrac mn の形に書けるので、有理数 rr と実数 xx について f(rx)=rf(x)f(rx)=rf(x) です。

㋕ まとめ。㋔で x=1x=1 とおき、k=f(1)k=f(1) と書くと

f(r)=kr(r は有理数)f(r)=kr\qquad(r\text{ は有理数})

が得られます。有理数の上では、ff のグラフは直線 y=kxy=kx に乗っています。

無理数での値は式だけでは決まらない

㋔の議論は「xx を有理数倍する」ことしか使っていません。2\sqrt2 は 11 の有理数倍ではないので、f(2)f(\sqrt2) は f(1)f(1) から決まりません。決まるのは f(2)f(\sqrt2) を基準にした値(f(32)=3f(2)f(3\sqrt2)=3f(\sqrt2) など)と、和の形の値(f(1+2)=f(1)+f(2)f(1+\sqrt2)=f(1)+f(\sqrt2) など)だけです。

具体的に見てみます。p, qp,\,q を有理数として、p+q2p+q\sqrt2 の形の数だけを考え、そこで

f(p+q2)=p+3qf(p+q\sqrt2)=p+3q

と決めます(p+q2p+q\sqrt2 の形の書き方は1通りなので、これで値が1つに決まります)。2つの数を足すと pp 同士、qq 同士が足されるので、この ff は (B) を満たします。有理数(q=0q=0)では f(r)=rf(r)=r で直線 y=xy=x に乗りますが、f(2)=3f(\sqrt2)=3 は 1⋅21\cdot\sqrt2 とは違います。

図1図1 f(p+q2)=p+3qf(p+q\sqrt2)=p+3q のグラフの点。有理数での点(黒丸)は直線 y=xy=x に、2\sqrt2 の有理数倍での点(黒丸)は直線 y=32xy=\frac3{\sqrt2}x に乗り、1+21+\sqrt2 のような和の形の点(白抜きの丸)はどちらの直線にも乗らない

図1で黒丸は2本の直線に分かれて並び、1+21+\sqrt2 のような和の形の点(白抜きの丸)はどちらの直線にも乗りません。この ff は p+q2p+q\sqrt2 の形の数でしか定義していませんが、大学で学ぶ道具(ハメル基底)を使うと、同じ発想で実数全体に定義された (B) の解で、kxkx の形でないものが作れることが知られています2ハメル基底による構成には選択公理(「空でない集合の族から1つずつ要素を選べる」という公理)が要ります。高校の範囲では、「(B) だけでは kxkx と決まらない」ことを3節の p+q2p+q\sqrt2 の例で納得できれば十分です。下の脚注へ。

4. 連続性を足すと kxkx に限られる

(この節は発展的な内容です。)

3節で見たとおり、(B) だけでは f(x)=kxf(x)=kx と言い切れません。ところが「ff は連続」という条件を足すと、無理数での値も決まります。

連続な解は kxkx だけ

ff が (B) を満たし、すべての実数で連続ならば、f(x)=f(1) xf(x)=f(1)\,x である。

理由は、どの実数も有理数で好きなだけ近づけるからです。実数 xx に収束する有理数の数列 r1, r2, …r_1,\,r_2,\,\dots をとります(xx の小数展開を第 nn 位で打ち切った数を rnr_n にすればよい)。連続性から f(rn)→f(x)f(r_n)\to f(x) で、3節より f(rn)=krn→kxf(r_n)=kr_n\to kx です。極限は1つなので f(x)=kxf(x)=kx となります。

実は、連続性は1点だけで足ります。ff が x=ax=a で連続だとして、任意の点 xx とそこへ近づく数列 xnx_n をとると、(B) から

f(xn)=f((xn−x+a)+(x−a))=f(xn−x+a)+f(x−a)\begin{aligned}f(x_n)&=f\bigl((x_n-x+a)+(x-a)\bigr)\\&=f(x_n-x+a)+f(x-a)\end{aligned}

です。xn−x+a→ax_n-x+a\to a なので aa での連続性から f(xn−x+a)→f(a)f(x_n-x+a)\to f(a) となり、右辺は f(a)+f(x−a)=f(x)f(a)+f(x-a)=f(x) に近づきます。つまり ff は xx でも連続です。1点での情報が全体へ運ばれるのは、2節の微分可能性と同じ仕組みです。

連続性のほかにも、次のどれか1つが成り立てば (B) の解は kxkx に限られることが知られています。

裏返すと、kxkx でない解は、どの点でも片側連続ですらなく、どの区間でも単調でも有界でもなく、どの区間でも積分できない関数です。このように直感に反する性質をもつ関数を、数学では「病的な」関数と呼びます。その極端さをよく表すのが次の定理です。

定理

ff が (B) を満たし、kxkx の形でないとする。このとき y=f(x)y=f(x) のグラフは xyxy 平面で稠密ちゅうみつである。つまり、平面上のどんなに小さな円をとっても、その中にグラフの点がある。

証明の考え方(押すと開く)

k=f(1)k=f(1) とします。ff が kxkx の形でないので、f(b)≠kbf(b)\neq kb となる実数 bb があります。有理数 p, qp,\,q について、(B) と3節から

f(p+qb)=f(p)+f(qb)=kp+q f(b)f(p+qb)=f(p)+f(qb)=kp+q\,f(b)

なので、グラフ上の点 (p+qb, f(p+qb))\bigl(p+qb,\ f(p+qb)\bigr) は

p u⃗+q v⃗,u⃗=(1, k),v⃗=(b, f(b))\begin{aligned}&p\,\vec u+q\,\vec v,\\\vec u&=(1,\ k),\\\vec v&=\bigl(b,\ f(b)\bigr)\end{aligned}

と書けます。u⃗\vec u と v⃗\vec v が平行になるのは f(b)=kbf(b)=kb のときだけなので、この2つは平行ではありません。平行でない2つのベクトルを使うと、平面のどの点も su⃗+tv⃗s\vec u+t\vec v(s, ts,\,t は実数)と表せます。s, ts,\,t をそれぞれ有理数 p, qp,\,q で近似すれば、pu⃗+qv⃗p\vec u+q\vec v はその点にいくらでも近づきます。図2は、p, qp,\,q を細かい刻みにするほど点の網目が細かくなり、平面を埋めていく様子です。

図2図2 平行でない2つのベクトル u⃗, v⃗\vec u,\ \vec v と、pu⃗+qv⃗p\vec u+q\vec v の点。p, qp,\,q が整数のときを黒丸、12\frac12 刻みのときを小さな点で打った

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

2 ハメル基底による構成には選択公理(「空でない集合の族から1つずつ要素を選べる」という公理)が要ります。高校の範囲では、「(B) だけでは kxkx と決まらない」ことを3節の p+q2p+q\sqrt2 の例で納得できれば十分です。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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