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解けない漸化式と平均値の定理の注意点

2025年度 高2解説2026年10月6日13分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. 材料にする数列と、答案の骨格
  2. 2. 絶対値は「等式のうちに」とる
  3. 3. 係数は「より小さい定数」で押さえる
  4. 4. ではなくと書く
  5. 5. の場合はどこで片づけるか
  6. 遅すぎる場合
  7. 早すぎる場合
  8. 6. 平均値の定理を使うときの3つの確認
  9. 7. 項の範囲を先に絞る
  10. 8. 解がただ一つあることの示し方と中間値の定理

授業で扱った問題は、方程式x=e−x3x=e^{-\frac x3}の実数解α\alphaに向かって、漸化式an+1=e−an3a_{n+1}=e^{-\frac{a_n}{3}}の数列が近づいていくことを示す問題でした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ。ana_nの一般項は式で書けないので、「ana_nとα\alphaの差がどれだけ縮むか」を平均値の定理で見積もるのが解き方の柱です。この型の答案は筋道が決まっているぶん、細部の書き方で減点されやすいので、ここでは別の数列を材料にして、どこで何に気をつければよいかを順に確かめます。

1. 材料にする数列と、答案の骨格

この頁では

a1=0,an+1=an+6(n=1,2,3,⋯ )\begin{aligned}a_1&=0,\\a_{n+1}&=\sqrt{a_n+6}\qquad (n=1,2,3,\cdots)\end{aligned}

を材料にします。f(x)=x+6f(x)=\sqrt{x+6}とおくとan+1=f(an)a_{n+1}=f(a_n)で、f(α)=αf(\alpha)=\alphaを解くとα=3\alpha=3です(α2=α+6\alpha^2=\alpha+6、α≧0\alpha\geqq0)。グラフの上では、y=f(x)y=f(x)とy=xy=xの間を階段のように行き来しながら交点(3, 3)(3,\,3)へ近づいていきます。

図1図1 y=x+6y=\sqrt{x+6} と y=xy=x の間を行き来しながら、a1, a2, a3, ⋯a_1,\ a_2,\ a_3,\ \cdots が交点 (3, 3)(3,\,3) に近づいていく

先に、減点されない答案の流れを置いておきます。以下の節は、この中のどの一行を崩すとどう困るかの説明です。

答案の骨格(a1=0, an+1=an+6a_1=0,\ a_{n+1}=\sqrt{a_n+6})

(i) すべてのnnでan≧0a_n\geqq0である(a1=0a_1=0で、an+1a_{n+1}は平方根なので00以上)。

(ii) x≧0x\geqq0でf′(x)=12x+6f'(x)=\dfrac{1}{2\sqrt{x+6}}であり、0<f′(x)≦126<140<f'(x)\leqq\dfrac{1}{2\sqrt6}<\dfrac14。

(iii) an≠3a_n\neq3のとき、ffはx>−6x>-6で微分可能なので、平均値の定理によりf(an)−f(3)=f′(cn)(an−3)f(a_n)-f(3)=f'(c_n)(a_n-3)をみたすcnc_nがana_nと33の間に存在する。f(an)=an+1f(a_n)=a_{n+1}、f(3)=3f(3)=3なのでan+1−3=f′(cn)(an−3)a_{n+1}-3=f'(c_n)(a_n-3)。両辺の絶対値をとり、cn>0c_n>0と(ii)を使うと∣an+1−3∣=∣f′(cn)∣ ∣an−3∣≦14∣an−3∣|a_{n+1}-3|=|f'(c_n)|\,|a_n-3|\leqq\frac14|a_n-3|

(iv) an=3a_n=3のときは両辺とも00なので、この不等式はやはり成り立つ。よってすべてのnnで∣an+1−3∣≦14∣an−3∣|a_{n+1}-3|\leqq\dfrac14|a_n-3|。

(v) これをくり返し用いて∣an−3∣≦(14)n−1∣a1−3∣=3(14)n−1|a_n-3|\leqq\left(\dfrac14\right)^{n-1}|a_1-3|=3\left(\dfrac14\right)^{n-1}。右辺はn→∞n\to\inftyで00に近づくので、はさみうちの原理によりlim⁡n→∞an=3\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=3。

2. 絶対値は「等式のうちに」とる

(iii)では、an+1−3=f′(cn)(an−3)a_{n+1}-3=f'(c_n)(a_n-3)という等式の段階で両辺の絶対値をとり、それから不等式に移っています。順序を逆にして、係数についての不等式−r≦f′(cn)≦r-r\leqq f'(c_n)\leqq rにan−3a_n-3を掛けようとすると困ります。an−3a_n-3が負なら不等号の向きが反転しますし、正負が項によって入れかわる数列も珍しくありません(授業で扱った問題のe−x3e^{-\frac x3}は減少関数なので、an−αa_n-\alphaの符号は1項ごとに反転します)。

ポイント①

an+1−α=(係数)×(an−α)a_{n+1}-\alpha=(\text{係数})\times(a_n-\alpha)の形を作ったら、不等式に進む前に、等式のまま両辺の絶対値をとる。こうすればan−αa_n-\alphaの符号を気にせずに係数だけを評価できる。

絶対値どうしの積なら∣係数∣≦r|\text{係数}|\leqq rの両辺に00以上の数∣an−α∣|a_n-\alpha|を掛けることになり、向きの心配がありません。

3. 係数は「11より小さい定数」で押さえる

ここが一番大事な点です。(ii)で求めたのは「f′(x)f'(x)は14\dfrac14以下」というnnによらない数での押さえでした。これを「∣f′(cn)∣<1|f'(c_n)|<1」で済ませた答案は、はさみうちに進めません。

ポイント②

∣f′(cn)∣<1|f'(c_n)|<1を示すだけでは足りない。0≦r<10\leqq r<1をみたす定数rrを見つけて∣f′(cn)∣≦r|f'(c_n)|\leqq rと押さえる。

なぜ足りないのかは、11より小さい数をどんどん掛けても00に近づかない例を見ると分かります。

Pn=(1−122)(1−132)⋯(1−1(n+1)2)P_n=\left(1-\frac1{2^2}\right)\left(1-\frac1{3^2}\right)\cdots\left(1-\frac1{(n+1)^2}\right)

の各因数は11より小さい正の数です。ところが1−1k2=(k−1)(k+1)k⋅k1-\dfrac1{k^2}=\dfrac{(k-1)(k+1)}{k\cdot k}と分けると隣どうしで約分が進み、

Pn=n+22(n+1) →n→∞ 12P_n=\frac{n+2}{2(n+1)}\ \xrightarrow[n\to\infty]{}\ \frac12

となって、00ではなく12\dfrac12に落ち着きます。因数が11に近づいていくので、掛けても縮み方がだんだん弱まるのです。一方、同じ34\dfrac34から始めても、毎回きっちり34\dfrac34を掛けた(34)n\left(\dfrac34\right)^nは00に向かいます。

図2図2 PnP_n(黒丸)と (34)n\left(\frac34\right)^n(青い白丸)。PnP_n は 12\frac12 の破線より上にとどまり、(34)n\left(\frac34\right)^n は 00 に近づく

答案に戻ると、くり返し用いた結果は∣an−α∣=∣f′(c1)∣ ∣f′(c2)∣⋯∣f′(cn−1)∣ ∣a1−α∣|a_n-\alpha|=|f'(c_1)|\,|f'(c_2)|\cdots|f'(c_{n-1})|\,|a_1-\alpha|で、係数の積は上のPnP_nと同じ形をしています。ckc_kがα\alphaに近づくにつれて∣f′(ck)∣|f'(c_k)|が11に近づくような関数なら、この積は00に向かうとは限りません。「どの因数もrr以下」と言える定数r<1r<1があってはじめて、積をrn−1r^{n-1}で上から押さえられます。

×誤答例×

∣an+1−3∣=∣f′(cn)∣ ∣an−3∣|a_{n+1}-3|=|f'(c_n)|\,|a_n-3|をくり返し用いて∣an−3∣=∣f′(c1)∣ ∣f′(c2)∣⋯∣f′(cn−1)∣⋅3|a_n-3|=|f'(c_1)|\,|f'(c_2)|\cdots|f'(c_{n-1})|\cdot3各kkで0<∣f′(ck)∣<10<|f'(c_k)|<1なので、右辺の積はn→∞n\to\inftyで00に近づく。よってlim⁡n→∞an=3\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=3。

最後の「積は00に近づく」が根拠のない一行で、上のPnP_nがその反例です。この答案は結論の核心を示していないので得点になりません。

4. ccではなくcnc_nと書く

平均値の定理で現れる点は、ana_nとα\alphaの間のどこかにあります。ana_nが変われば区間が変わり、その点も変わります。下の図は、曲がり具合が見やすいように初項だけをa1=−5a_1=-5に取り替えたものです(このときa2=1a_2=1、a3=7a_3=\sqrt7)。a1a_1と33を結ぶ弦、a2a_2と33を結ぶ弦のそれぞれに平行な接線を破線で引くと、接点はc1=−2c_1=-2、c2=37−42 (≒1.97)c_2=\dfrac{3\sqrt7-4}{2}\ (\fallingdotseq1.97)で、まったく別の場所にあります。

図3図3 初項を a1=−5a_1=-5 にしたときの2本の弦と、それぞれに平行な接線(破線)。接点 c1, c2c_1,\ c_2 の位置が違う

ポイント③

平均値の定理で取り出した点はnnごとに違うので、cnc_nのように番号をつけて書く。

番号を落としてccと書くと、つい次のように進めてしまいます。

×誤答例×

平均値の定理よりan+1−3=f′(c)(an−3)a_{n+1}-3=f'(c)(a_n-3)。絶対値をつけると∣an+1−3∣=∣f′(c)∣ ∣an−3∣|a_{n+1}-3|=|f'(c)|\,|a_n-3|で、番号を1つずつ下げていくと∣an−3∣=∣f′(c)∣n−1∣a1−3∣|a_n-3|=|f'(c)|^{n-1}|a_1-3|

1回ごとに違う係数を同じ数のべき乗にまとめていて、等式として誤りです。cnc_nと書いておけば、この書き違いは起こりません。

5. an=αa_n=\alphaの場合はどこで片づけるか

平均値の定理は、端点の異なる区間(an≠αa_n\neq\alpha)でしか使えません。an=αa_n=\alphaなら「ana_nとα\alphaの間」に点がそもそも無いからです。そこで答案の骨格では(iii)をan≠3a_n\neq3に限り、(iv)でan=3a_n=3の場合を拾っていました。

ポイント④

an=αa_n=\alphaの場合は、cnc_nが式から消えて「∣an+1−α∣≦r∣an−α∣|a_{n+1}-\alpha|\leqq r|a_n-\alpha|」という形になったところで回収し、そのあとでくり返し用いる。

an=αa_n=\alphaならan+1=f(α)=αa_{n+1}=f(\alpha)=\alphaなので、この不等式は0≦00\leqq0として成り立ちます。拾う場所が早すぎても遅すぎても、答案に傷が残ります。

遅すぎる場合

×誤答例×

[1] an≠3a_n\neq3のとき 平均値の定理よりan+1−3=f′(cn)(an−3)a_{n+1}-3=f'(c_n)(a_n-3)となるcnc_nがana_nと33の間にあり、∣an+1−3∣≦14∣an−3∣|a_{n+1}-3|\leqq\dfrac14|a_n-3|。これをくり返し用いて∣an−3∣≦3(14)n−1|a_n-3|\leqq3\left(\dfrac14\right)^{n-1}。

[2] an=3a_n=3のとき ∣an−3∣=0≦3(14)n−1|a_n-3|=0\leqq3\left(\dfrac14\right)^{n-1}。

[1][2]より、すべてのnnで∣an−3∣≦3(14)n−1|a_n-3|\leqq3\left(\dfrac14\right)^{n-1}。

一見もっともらしく見えますが、[1]の「くり返し用いて」の段で、a1, a2, ⋯ , an−1a_1,\,a_2,\,\cdots,\,a_{n-1}のすべてに平均値の定理を当てています。[1]で仮定したのは番号nnの項が33でないことだけなので、それより前の項についての仮定は書かれていません。

数学的には、ここは埋められる穴です。ある番号でak=αa_k=\alphaとなればak+1=f(α)=αa_{k+1}=f(\alpha)=\alphaで、以後の項はずっとα\alphaになります。裏返すと、an≠αa_n\neq\alphaならa1, ⋯ , an−1a_1,\,\cdots,\,a_{n-1}もどれもα\alphaではありません。しかし答案はこの事情に一言も触れておらず、読み手には「1つの番号での仮定を、ほかの番号にも流用している」としか見えません。場合分けのnnと、くり返しで動かす番号が同じ文字なので、なおさら混乱して見えます。同じ形のまま[1]の中で極限まで取ってしまう答案もありますが、欠点は同じです。

骨格の(iv)のように、くり返す前に「an=3a_n=3でも不等式は成り立つ」と1行添えておけば、不等式はすべてのnnで成り立つ1本の式になり、途中の項がα\alphaに当たるかを気にせずに済みます。

早すぎる場合

×誤答例×

an≠3a_n\neq3のとき、平均値の定理よりan+1−3=f′(cn)(an−3)a_{n+1}-3=f'(c_n)(a_n-3)となるcnc_nがana_nと33の間に存在する。この等式はan=3a_n=3のときも成り立つ。

an=3a_n=3のときはcnc_nが取れないので、「この等式が成り立つ」と言おうにも、式の中のcnc_nが何を指すのかが決まっていません(両辺が00になるので、cnc_nに何を入れても形式上は成り立ちますが、それは定理が与えたcnc_nではありません)。cnc_nを定数rrで置きかえて式から消してから回収すれば、このあいまいさは生じません。

6. 平均値の定理を使うときの3つの確認

平均値の定理を答案で使うときは、毎回次の3点を確かめます。

平均値の定理の確認事項

  1. 端点が等しい場合(a=ba=b)は定理が使えないので、別に扱う。
  2. ffが区間で連続かつ微分可能であることを確かめて書く(「x>−6x>-6で微分可能」のように、定義域ごと言えば足りることが多い)。
  3. aaとbbの大小が分からないときは、「ccがaaとbbの間に存在する」と書く。「a<c<ba<c<bをみたすcc」とは書かない。

答案の骨格の(iii)では、ana_nは33より小さいことも大きいこともありうる形で書いているので、3番目に従って「ana_nと33の間」と書いています。

7. 項の範囲を先に絞る

骨格の(i)はなぜ必要だったのでしょうか。f′(x)=12x+6f'(x)=\dfrac{1}{2\sqrt{x+6}}は、xxが−6-6に近づくといくらでも大きくなります。たとえば−6<x≦−234-6<x\leqq-\dfrac{23}4ではf′(x)≧1f'(x)\geqq1です。つまり定義域全体では∣f′∣|f'|を11より小さい定数で押さえられません。

∣f′∣|f'|を11より小さい定数で押さえるために、数列の項がどの範囲を動くかを先に調べておく

この数列では「an≧0a_n\geqq0」が分かれば、cnc_nはana_nと33の間、すなわち00以上の範囲にあるので、(ii)の評価∣f′(cn)∣<14|f'(c_n)|<\dfrac14が使えます。範囲の絞り込みは多くの場合、数学的帰納法で示します。範囲をどこまで狭めれば定数r<1r<1が取れるかを、f′f'の式を見て先に決めておくと、帰納法で示す内容もはっきりします。

なお、この数列は平均値の定理を使わずに、有理化で差を作る方法でも処理できます。

an+1−3=an+6−3=an−3an+6+3a_{n+1}-3=\sqrt{a_n+6}-3=\frac{a_n-3}{\sqrt{a_n+6}+3}

で、an≧0a_n\geqq0なら分母は6+3>5\sqrt6+3>5なので∣an+1−3∣<15∣an−3∣|a_{n+1}-3|<\dfrac15|a_n-3|です。この方法でも、係数を定数で押さえるためにan≧0a_n\geqq0を先に示している点は同じです。

8. 解がただ一つあることの示し方と中間値の定理

この型の問題は、たいてい「方程式x=f(x)x=f(x)がただ一つの実数解をもつことを示せ」という小問から始まります。解があることを中間値の定理で言い、解が2つ以上ないことを関数の単調性で言う、という二段構えが定番です。例として方程式2x=cos⁡x2x=\cos xを考えます。g(x)=2x−cos⁡xg(x)=2x-\cos xとおくとggは連続で、g(0)=−1<0g(0)=-1<0、g(π2)=π>0g\left(\dfrac\pi2\right)=\pi>0なので、0<x<π20<x<\dfrac\pi2にg(x)=0g(x)=0の解があります。さらにg′(x)=2+sin⁡x>0g'(x)=2+\sin x>0なのでggは単調増加で、00になる点は1つしかありません。

中間値の定理

関数f(x)f(x)が閉区間[a, b][a,\,b]で連続で、f(a)f(b)<0f(a)f(b)<0ならば、方程式f(x)=0f(x)=0は開区間(a, b)(a,\,b)に少なくとも1つの解をもつ。

中間値の定理と平均値の定理は名前が似ていますが、要る仮定が違います。中間値の定理で欠かせないのは連続性で、平均値の定理ではそれに加えて微分可能性が要ります。上の定理は、次の形で覚えておくこともできます。

中間値の定理(値の形)

a<ba<bとする。関数f(x)f(x)が閉区間[a, b][a,\,b]で連続ならば、f(a)f(a)とf(b)f(b)の間にあるどの値kkに対しても、f(c)=kf(c)=kとなるccがa≦c≦ba\leqq c\leqq bの範囲にある。

両端の値の「中間」にある値はすべて取る、というのが名前の意味です。k=0k=0とし、f(a)f(a)とf(b)f(b)の符号が違う場合に当てはめると、最初の形になります。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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