解けない漸化式と平均値の定理の注意点
目次
- 1. 材料にする数列と、答案の骨格
- 2. 絶対値は「等式のうちに」とる
- 3. 係数は「1より小さい定数」で押さえる
- 4. cではなくcnと書く
- 5. an=αの場合はどこで片づけるか
- 遅すぎる場合
- 早すぎる場合
- 6. 平均値の定理を使うときの3つの確認
- 7. 項の範囲を先に絞る
- 8. 解がただ一つあることの示し方と中間値の定理
授業で扱った問題は、方程式x=e−3xの実数解αに向かって、漸化式an+1=e−3anの数列が近づいていくことを示す問題でした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。。anの一般項は式で書けないので、「anとαの差がどれだけ縮むか」を平均値の定理で見積もるのが解き方の柱です。この型の答案は筋道が決まっているぶん、細部の書き方で減点されやすいので、ここでは別の数列を材料にして、どこで何に気をつければよいかを順に確かめます。
1. 材料にする数列と、答案の骨格
この頁では
a1an+1=0,=an+6(n=1,2,3,⋯)
を材料にします。f(x)=x+6とおくとan+1=f(an)で、f(α)=αを解くとα=3です(α2=α+6、α≧0)。グラフの上では、y=f(x)とy=xの間を階段のように行き来しながら交点(3,3)へ近づいていきます。
図1 y=x+6 と y=x の間を行き来しながら、a1, a2, a3, ⋯ が交点 (3,3) に近づいていく先に、減点されない答案の流れを置いておきます。以下の節は、この中のどの一行を崩すとどう困るかの説明です。
答案の骨格(a1=0, an+1=an+6)
(i) すべてのnでan≧0である(a1=0で、an+1は平方根なので0以上)。
(ii) x≧0でf′(x)=2x+61であり、0<f′(x)≦261<41。
(iii) an=3のとき、fはx>−6で微分可能なので、平均値の定理によりf(an)−f(3)=f′(cn)(an−3)をみたすcnがanと3の間に存在する。f(an)=an+1、f(3)=3なのでan+1−3=f′(cn)(an−3)。両辺の絶対値をとり、cn>0と(ii)を使うと∣an+1−3∣=∣f′(cn)∣∣an−3∣≦41∣an−3∣
(iv) an=3のときは両辺とも0なので、この不等式はやはり成り立つ。よってすべてのnで∣an+1−3∣≦41∣an−3∣。
(v) これをくり返し用いて∣an−3∣≦(41)n−1∣a1−3∣=3(41)n−1。右辺はn→∞で0に近づくので、はさみうちの原理によりn→∞liman=3。
2. 絶対値は「等式のうちに」とる
(iii)では、an+1−3=f′(cn)(an−3)という等式の段階で両辺の絶対値をとり、それから不等式に移っています。順序を逆にして、係数についての不等式−r≦f′(cn)≦rにan−3を掛けようとすると困ります。an−3が負なら不等号の向きが反転しますし、正負が項によって入れかわる数列も珍しくありません(授業で扱った問題のe−3xは減少関数なので、an−αの符号は1項ごとに反転します)。
ポイント①
an+1−α=(係数)×(an−α)の形を作ったら、不等式に進む前に、等式のまま両辺の絶対値をとる。こうすればan−αの符号を気にせずに係数だけを評価できる。
絶対値どうしの積なら∣係数∣≦rの両辺に0以上の数∣an−α∣を掛けることになり、向きの心配がありません。
3. 係数は「1より小さい定数」で押さえる
ここが一番大事な点です。(ii)で求めたのは「f′(x)は41以下」というnによらない数での押さえでした。これを「∣f′(cn)∣<1」で済ませた答案は、はさみうちに進めません。
ポイント②
∣f′(cn)∣<1を示すだけでは足りない。0≦r<1をみたす定数rを見つけて∣f′(cn)∣≦rと押さえる。
なぜ足りないのかは、1より小さい数をどんどん掛けても0に近づかない例を見ると分かります。
Pn=(1−221)(1−321)⋯(1−(n+1)21)
の各因数は1より小さい正の数です。ところが1−k21=k⋅k(k−1)(k+1)と分けると隣どうしで約分が進み、
Pn=2(n+1)n+2 n→∞ 21
となって、0ではなく21に落ち着きます。因数が1に近づいていくので、掛けても縮み方がだんだん弱まるのです。一方、同じ43から始めても、毎回きっちり43を掛けた(43)nは0に向かいます。
図2 Pn(黒丸)と (43)n(青い白丸)。Pn は 21 の破線より上にとどまり、(43)n は 0 に近づく答案に戻ると、くり返し用いた結果は∣an−α∣=∣f′(c1)∣∣f′(c2)∣⋯∣f′(cn−1)∣∣a1−α∣で、係数の積は上のPnと同じ形をしています。ckがαに近づくにつれて∣f′(ck)∣が1に近づくような関数なら、この積は0に向かうとは限りません。「どの因数もr以下」と言える定数r<1があってはじめて、積をrn−1で上から押さえられます。
×誤答例×
∣an+1−3∣=∣f′(cn)∣∣an−3∣をくり返し用いて∣an−3∣=∣f′(c1)∣∣f′(c2)∣⋯∣f′(cn−1)∣⋅3各kで0<∣f′(ck)∣<1なので、右辺の積はn→∞で0に近づく。よってn→∞liman=3。
最後の「積は0に近づく」が根拠のない一行で、上のPnがその反例です。この答案は結論の核心を示していないので得点になりません。
4. cではなくcnと書く
平均値の定理で現れる点は、anとαの間のどこかにあります。anが変われば区間が変わり、その点も変わります。下の図は、曲がり具合が見やすいように初項だけをa1=−5に取り替えたものです(このときa2=1、a3=7)。a1と3を結ぶ弦、a2と3を結ぶ弦のそれぞれに平行な接線を破線で引くと、接点はc1=−2、c2=237−4 (≒1.97)で、まったく別の場所にあります。
図3 初項を a1=−5 にしたときの2本の弦と、それぞれに平行な接線(破線)。接点 c1, c2 の位置が違うポイント③
平均値の定理で取り出した点はnごとに違うので、cnのように番号をつけて書く。
番号を落としてcと書くと、つい次のように進めてしまいます。
×誤答例×
平均値の定理よりan+1−3=f′(c)(an−3)。絶対値をつけると∣an+1−3∣=∣f′(c)∣∣an−3∣で、番号を1つずつ下げていくと∣an−3∣=∣f′(c)∣n−1∣a1−3∣
1回ごとに違う係数を同じ数のべき乗にまとめていて、等式として誤りです。cnと書いておけば、この書き違いは起こりません。
5. an=αの場合はどこで片づけるか
平均値の定理は、端点の異なる区間(an=α)でしか使えません。an=αなら「anとαの間」に点がそもそも無いからです。そこで答案の骨格では(iii)をan=3に限り、(iv)でan=3の場合を拾っていました。
ポイント④
an=αの場合は、cnが式から消えて「∣an+1−α∣≦r∣an−α∣」という形になったところで回収し、そのあとでくり返し用いる。
an=αならan+1=f(α)=αなので、この不等式は0≦0として成り立ちます。拾う場所が早すぎても遅すぎても、答案に傷が残ります。
遅すぎる場合
×誤答例×
[1] an=3のとき 平均値の定理よりan+1−3=f′(cn)(an−3)となるcnがanと3の間にあり、∣an+1−3∣≦41∣an−3∣。これをくり返し用いて∣an−3∣≦3(41)n−1。
[2] an=3のとき ∣an−3∣=0≦3(41)n−1。
[1][2]より、すべてのnで∣an−3∣≦3(41)n−1。
一見もっともらしく見えますが、[1]の「くり返し用いて」の段で、a1,a2,⋯,an−1のすべてに平均値の定理を当てています。[1]で仮定したのは番号nの項が3でないことだけなので、それより前の項についての仮定は書かれていません。
数学的には、ここは埋められる穴です。ある番号でak=αとなればak+1=f(α)=αで、以後の項はずっとαになります。裏返すと、an=αならa1,⋯,an−1もどれもαではありません。しかし答案はこの事情に一言も触れておらず、読み手には「1つの番号での仮定を、ほかの番号にも流用している」としか見えません。場合分けのnと、くり返しで動かす番号が同じ文字なので、なおさら混乱して見えます。同じ形のまま[1]の中で極限まで取ってしまう答案もありますが、欠点は同じです。
骨格の(iv)のように、くり返す前に「an=3でも不等式は成り立つ」と1行添えておけば、不等式はすべてのnで成り立つ1本の式になり、途中の項がαに当たるかを気にせずに済みます。
早すぎる場合
×誤答例×
an=3のとき、平均値の定理よりan+1−3=f′(cn)(an−3)となるcnがanと3の間に存在する。この等式はan=3のときも成り立つ。
an=3のときはcnが取れないので、「この等式が成り立つ」と言おうにも、式の中のcnが何を指すのかが決まっていません(両辺が0になるので、cnに何を入れても形式上は成り立ちますが、それは定理が与えたcnではありません)。cnを定数rで置きかえて式から消してから回収すれば、このあいまいさは生じません。
6. 平均値の定理を使うときの3つの確認
平均値の定理を答案で使うときは、毎回次の3点を確かめます。
平均値の定理の確認事項
- 端点が等しい場合(a=b)は定理が使えないので、別に扱う。
- fが区間で連続かつ微分可能であることを確かめて書く(「x>−6で微分可能」のように、定義域ごと言えば足りることが多い)。
- aとbの大小が分からないときは、「cがaとbの間に存在する」と書く。「a<c<bをみたすc」とは書かない。
答案の骨格の(iii)では、anは3より小さいことも大きいこともありうる形で書いているので、3番目に従って「anと3の間」と書いています。
7. 項の範囲を先に絞る
骨格の(i)はなぜ必要だったのでしょうか。f′(x)=2x+61は、xが−6に近づくといくらでも大きくなります。たとえば−6<x≦−423ではf′(x)≧1です。つまり定義域全体では∣f′∣を1より小さい定数で押さえられません。
∣f′∣を1より小さい定数で押さえるために、数列の項がどの範囲を動くかを先に調べておく
この数列では「an≧0」が分かれば、cnはanと3の間、すなわち0以上の範囲にあるので、(ii)の評価∣f′(cn)∣<41が使えます。範囲の絞り込みは多くの場合、数学的帰納法で示します。範囲をどこまで狭めれば定数r<1が取れるかを、f′の式を見て先に決めておくと、帰納法で示す内容もはっきりします。
なお、この数列は平均値の定理を使わずに、有理化で差を作る方法でも処理できます。
an+1−3=an+6−3=an+6+3an−3
で、an≧0なら分母は6+3>5なので∣an+1−3∣<51∣an−3∣です。この方法でも、係数を定数で押さえるためにan≧0を先に示している点は同じです。
8. 解がただ一つあることの示し方と中間値の定理
この型の問題は、たいてい「方程式x=f(x)がただ一つの実数解をもつことを示せ」という小問から始まります。解があることを中間値の定理で言い、解が2つ以上ないことを関数の単調性で言う、という二段構えが定番です。例として方程式2x=cosxを考えます。g(x)=2x−cosxとおくとgは連続で、g(0)=−1<0、g(2π)=π>0なので、0<x<2πにg(x)=0の解があります。さらにg′(x)=2+sinx>0なのでgは単調増加で、0になる点は1つしかありません。
中間値の定理
関数f(x)が閉区間[a,b]で連続で、f(a)f(b)<0ならば、方程式f(x)=0は開区間(a,b)に少なくとも1つの解をもつ。
中間値の定理と平均値の定理は名前が似ていますが、要る仮定が違います。中間値の定理で欠かせないのは連続性で、平均値の定理ではそれに加えて微分可能性が要ります。上の定理は、次の形で覚えておくこともできます。
中間値の定理(値の形)
a<bとする。関数f(x)が閉区間[a,b]で連続ならば、f(a)とf(b)の間にあるどの値kに対しても、f(c)=kとなるcがa≦c≦bの範囲にある。
両端の値の「中間」にある値はすべて取る、というのが名前の意味です。k=0とし、f(a)とf(b)の符号が違う場合に当てはめると、最初の形になります。
1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。
塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。
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