極値をもつための十分条件
目次
- 1. 符号が変われば極値をとる
- 2. 逆は成り立たない
授業の例題(f(x)=ax+e−xcosx (0<x<2π) が極値をちょうど 2 個もつような定数 a の範囲を求める問題)1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。では、極値の個数を「f′(x) の符号が変わる点の個数」に置き換えて数えました。この置き換えの根拠になっている事実を、この頁では二つの向きから確かめます。§1 で「符号が変われば極値」を平均値の定理から証明し、§2 で「極値なら符号が変わる」は一般には成り立たないことを例で示します。
1. 符号が変われば極値をとる
まず言葉を決めておきます。ある正の数 δ があって、0<∣x−a∣<δ を満たすすべての x で f(x)<f(a) となるとき、f(x) は x=a で極大になるといい、f(a) を極大値と呼びます。不等号の向きを逆にしたものが極小・極小値です。a のすぐ近くだけを見て、その中で f(a) がいちばん大きければ極大、ということです。
極値をもつための十分条件
f(x) が微分可能で、x=a の前後で f′(x) の符号が + から − に変わるならば、f(x) は x=a で極大になる。− から + に変わるならば、x=a で極小になる。
「前後で符号が + から − に変わる」とは、ある正の数 δ があって、a−δ<x<a では f′(x)>0、a<x<a+δ では f′(x)<0 となることです。
グラフを思い浮かべれば当たり前に見えますが、「f′(x)>0 の区間で f(x) は増加する」という授業で使ってきた事実も、もとをたどれば平均値の定理から出てくるものです。下の証明は、平均値の定理2平均値の定理は「f(x) が区間 [p, q] で微分可能なら、q−pf(q)−f(p)=f′(c) を満たす c が p<c<q の範囲にある」という定理で、2点を結ぶ弦と平行な接線が、その間のどこかで引けることを言っています。を a の左と右で一度ずつ使って、a の近くのどの点よりも f(a) が大きいことを確かめています。
図1 極大点 a の左の点 p と右の点 q からそれぞれ a へ弦を引くと、左の弦と平行な接線は p と a の間の点 c で、右の弦と平行な接線は a と q の間の点 d で引ける証明 f′(x) が + から − に変わる場合を示す。上の δ をとる。
左側 a−δ<p<a を満たす p をとる。区間 [p, a] で平均値の定理を使うと
f(a)−f(p)p=f′(c)(a−p),<c<a
を満たす c がある。c は a−δ<c<a の範囲にあるので f′(c)>0 であり、a−p>0 と合わせて f(a)−f(p)>0、すなわち f(p)<f(a) である。
右側 a<q<a+δ を満たす q をとる。区間 [a, q] で平均値の定理を使うと
f(q)−f(a)a=f′(d)(q−a),<d<q
を満たす d がある。f′(d)<0、q−a>0 より f(q)−f(a)<0、すなわち f(q)<f(a) である。
左右を合わせると、0<∣x−a∣<δ のすべての x で f(x)<f(a) となるので、f(x) は x=a で極大になる。
− から + に変わる場合は、−f(x) の導関数 −f′(x) の符号が + から − に変わるので、いま示したことから −f(x) が x=a で極大、つまり f(x) が x=a で極小になる。□
2. 逆は成り立たない
§1 で示したのは
f′(x) の符号が x=a の前後で変わる ⟹ f(x) は x=a で極値をとる
という一方向だけです。矢印を逆にした「極値をとるならば、その前後で f′(x) の符号が変わる」は、微分可能な関数に限っても正しくありません。(「符号が変わる」は + から −、− から + のどちらかを指します。)
逆が成り立たないことを示すには、極値をとるのに導関数の符号が前後で定まらない関数を一つ見せれば足ります。ここでは
g(x)=⎩⎨⎧x4(2+sinx1)0(x=0)(x=0)
を使います。
x=0 で極小になること −1≦sinx1≦1 なので、x=0 では
x4≦g(x)≦3x4
です。とくに x=0 なら g(x)>0=g(0) なので、g(x) は x=0 で極小になります(最小でもあります)。
図2 y=g(x) は y=x4 と y=3x4 の間にはさまれ、原点で最小の値 0 をとるどこでも微分可能であること x=0 では積と合成関数の微分により
g′(x)=4x3(2+sinx1)−x2cosx1
です。x=0 では定義に戻って
x−0g(x)−g(0)=x3(2+sinx1)
を調べます。0≦2+sinx1≦3 より 0≦x3(2+sinx1)≦3∣x∣3 で、右端は x→0 で 0 に収束するので、はさみうちの原理から g′(0)=0 です。
x=0 の前後で g′(x) の符号が定まらないこと x=0 では g′(x)=x2h(x)、ただし
h(x)=4x(2+sinx1)−cosx1
と書けて、x2>0 なので g′(x) の符号は h(x) の符号と同じです。k を自然数として二種類の点を見ます。
⑴ x=±2kπ1 では sinx1=0、cosx1=1 なので h(x)=8x−1
⑵ x=±(2k+1)π1 では sinx1=0、cosx1=−1 なので h(x)=8x+1
∣x∣<81 であれば⑴の値は負、⑵の値は正です。k を大きくすればどちらの点もいくらでも 0 に近づけられ、しかも 0 の左にも右にもあります。したがって、0 の左側のどんなに短い区間 (−δ, 0) にも g′(x)<0 の点と g′(x)>0 の点が両方あり、右側の (0, δ) でも同じです。
図3 y=x2g′(x)=h(x) のグラフ。原点に近づくほど細かく上下に振れ、y=1 と y=−1 の付近を行き来して正と負を無限に繰り返すcosx1 は x→0 で 1 と −1 の間を無限回往復し、4x(2+sinx1) のほうは 0 に縮んでいくので、h(x) は図3のように正と負を果てしなく行き来します。g′(x) の符号は 0 の左でも右でも一定にならず、「− から + に変わる」とも「+ から − に変わる」とも言えません。それでも g(x) は x=0 で極小になります。
逆が成り立たないのは、この例のように f′(x)=0 となる点が a のまわりに無限に集まっている場合です。f′(x) が連続で、a の近くに f′(x)=0 となる点が a のほかに無ければ、a の左右それぞれで f′(x) の符号は一定になります。左右が同じ符号なら f(x) は a をまたいで増加し続ける(または減少し続ける)ので極値になりません。したがって、このような関数では「極値をとる」と「前後で符号が変わる」は同じことになり、授業の例題のような数え方で問題ありません。
1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。
2 平均値の定理は「f(x) が区間 [p, q] で微分可能なら、q−pf(q)−f(p)=f′(c) を満たす c が p<c<q の範囲にある」という定理で、2点を結ぶ弦と平行な接線が、その間のどこかで引けることを言っています。
塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。
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