対数微分法と、対数を取る場面
目次
- 1. xx はなぜ公式で微分できないのか
- 積と商でできた式にも使える
- 2. 微分以外で対数を取る場面
- 方程式の連立
- ab と ba の大小
- 限りなく続く積
授業で扱った問題は、自然数 n のうち (20n)20n がいちばん小さくなるものを求める問題でした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。。x=20n とおけば、関数 f(x)=xx (x>0) の増減の問題になります。その f(x) を微分するときに使ったのが、この頁で扱う対数微分法です。
1. xx はなぜ公式で微分できないのか
これまでに学んだ微分の公式のうち、累乗の形をしたものは2つあります。
- (xn)′=nxn−1:底が変数で、指数 n は定数
- (ax)′=axloga:底 a は定数で、指数が変数2この頁の log は自然対数、つまり底が e の対数です。
xx は底も指数も変数なので、どちらの公式にも当てはまりません。たとえば (xx)′=x⋅xx−1=xx とする計算は、指数を定数とみなした誤りです。
そこで対数を取ります。y=xx の両辺の自然対数を取ると、対数の性質 logap=ploga により指数が前に出て
logy=xlogx
となります。右辺は x と logx の積なので、積の微分で扱えます。左辺の logy は、y が x の関数であることに注意して合成関数の微分をすると dxdlogy=y1⋅dxdy です。したがって
y1⋅dxdydxdy=logx+1より=y(logx+1)=xx(logx+1)
が得られます。
対数微分法の手順
⑴ y=f(x) の両辺が正であることを確かめてから、両辺の自然対数を取る。
⑵ 右辺の logf(x) を対数の性質(積は和に、商は差に、指数は係数に)で、微分しやすい形に整理する。
⑶ 両辺を x で微分する。左辺は dxdlogy=y1⋅dxdy となる。
⑷ 両辺に y をかけて dxdy を求め、最後に y を f(x) に戻す。
⑶の右辺は、計算の結果としては f(x)f′(x) に等しくなります。ただし、f′(x) が直接求めにくいので対数を取っているのですから、⑶では⑵で整理した式のほうを微分します。
別の見方:e の累乗に書き直す
x=elogx なので、xx=(elogx)x=exlogx と書き直せます。これを合成関数として微分すると
(exlogx)′=exlogx⋅(xlogx)′=xx(logx+1)
となり、同じ答えになります。一般に {f(x)}g(x)=eg(x)logf(x) と書けるので、対数微分法の計算とこの書き直しの計算は中身が同じです。
授業で扱った問題に戻ると、f′(x)=xx(logx+1) で xx>0 なので、f′(x) の符号は logx+1 の符号と一致します。logx+1=0 となるのは x=e1 のときだけで、0<x<e1 では f′(x)<0、x>e1 では f′(x)>0 です。したがって f(x) は x=e1 で最小になります。
図1 y=xx のグラフ。x=e1 で最小になり、その両側に x=0.35 と x=0.4 の点がある2.7<e<2.8 より 2.81<e1<2.71 で、0.35<2.81、2.71<0.4 なので 0.35<e1<0.4 です。x=20n は 0.05 刻みなので、自然数 n の候補は e1 をはさむ n=7 と n=8 の2つに絞られます。
両者を比べるには、それぞれを 20 乗すると (207)7=20777、(208)8=(52)8=5828 となり、前者を後者で割ると
20777⋅2858=214⋅57⋅2877⋅58=2225⋅77=41943044117715<1
です。前者のほうが小さいので、答えは n=7 です。
積と商でできた式にも使える
対数微分法は、xx のような式だけでなく、因数がいくつもかけ合わされた式の微分にも使えます。たとえば x>−1 で
y=(x+3)3(x+1)2x+2
を微分するとき、商の微分と積の微分を重ねると式が長くなります。y>0 を確かめて対数を取ると
logy=2log(x+1)+21log(x+2)−3log(x+3)
と和と差に分かれ、各項は1つずつ微分できます。
yy′y′=x+12+2(x+2)1−x+33より=(x+3)3(x+1)2x+2(x+12+2(x+2)1−x+33)
増減を調べるだけなら、y>0 なので y′ の符号はかっこの中の符号と一致し、かっこの中を通分して符号を調べれば済みます。
y が負の値もとる関数のときは、∣y∣ の対数を取ります。y<0 のところでも dxdlog∣y∣=yy′ が成り立つので、同じ手順で y′ が求まります。
もう1つ例を挙げると、y=xsinx (x>0) は logy=sinx⋅logx より
yy′y′=cosxlogx+xsinx,=xsinx(cosxlogx+xsinx)
です。底と指数の両方に変数がある式({f(x)}g(x) の形)は、累乗と指数関数の公式では微分できないので、対数微分法か、上の e の累乗への書き直しで微分します。
2. 微分以外で対数を取る場面
対数を取ると、累乗は積に、積は和に変わります。この性質は微分以外の場面でも使えますが、微分のとき以外は思いつきにくいようです。次の形を見たら対数を取ることを考えましょう。
対数を取ることを考える形
- 底と指数の両方に変数がある:対数を取ると指数が log の係数になる
- 積・商・累乗だけでできている(和や差を含まない):対数を取ると和と差になる
- 項が限りなく続く積:対数を取ると和の極限になる
log(a+b) は loga と logb で表せないので、2つめでは和や差を含まないことを条件にしています。
方程式の連立
指数・対数関数の授業では、底と指数の両方に文字が入った式を3本連立する問題を2題扱いました。1題目は、正の数 x,y,z が
xxyz=y3,yxyz=z3,zxyz=x3
を満たすとき、x,y,z を求める問題です。どちらの問題でも、各式の両辺の対数を取ると、指数が log の係数として前に出て、logx, logy, logz についての式になります。1題目は t=xyz とおくと
tlogx=3logy,tlogy=3logz,tlogz=3logx
となります。logx,logy,logz のどれか1つが 0 なら、3式を順にたどると3つとも 0 になり、x=y=z=1 です(t=1 となり、元の3式も満たします)。どれも 0 でないときは、3式を辺々かけて logxlogylogz で割ると t3=27、つまり t=3 です。このとき logy=logx、logz=logy なので x=y=z で、xyz=x3=3 から x=y=z=33 となります。
2題目は、logax, logby, logcz を未知数とする連立1次方程式として解きました。
ab と ba の大小
3π と π3 のどちらが大きいかを考えます。どちらも正なので、自然対数を取って比べることができます(log は増加関数なので、対数の大小と元の数の大小は一致します)。
log3π=πlog3,logπ3=3logπ
両者を正の数 3π で割ると、比べるものは 3log3 と πlogπ になり、同じ関数 g(x)=xlogx の x=3 と x=π での値の比較になります。
g′(x)=x21−logx
なので、g(x) は 0<x≦e で増加し、x≧e で減少します。e<3<π なので g(3)>g(π)、すなわち πlog3>3logπ となり、3π>π3 がわかります。
図2 y=xlogx のグラフ。x=e で最大となり、x>e では減少する。x=3 と x=π での値を比べる一般に、正の数 a,b について
ab>ba⟺ bloga>alogb⟺ aloga>blogb
が成り立ちます(2つめの同値は両辺を正の数 ab で割っただけです)。底と指数を入れ替えた2数の比較は、関数 xlogx の値の比較に言い換えられます。
限りなく続く積
3つめの形は、積分の単元で学ぶ区分求積法と組み合わせて使います3区分求積法とは、n→∞limn1k=1∑nh(nk)=∫01h(x)dx という関係を使って、和の極限を積分で求める方法のことです。。たとえば nnnn! の極限は、対数を取ると
lognnnn!=n1k=1∑nlognk
という和になり、n→∞ でこの和は ∫01logxdx=−1 に近づきます。したがって元の式は e−1=e1 に近づきます。
1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。
2 この頁の log は自然対数、つまり底が e の対数です。
3 区分求積法とは、n→∞limn1k=1∑nh(nk)=∫01h(x)dx という関係を使って、和の極限を積分で求める方法のことです。
塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。
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