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多変数関数の最大・最小の方針の立て方

2025年度 高2解説2026年10月6日21分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 0. 全体の地図
  2. 1. 自由度を数える
  3. 2. 下ごしらえ(自由度を変えない変形)
  4. ① 等式条件で文字を消す
  5. ② 対称式は基本対称式に置き換える
  6. ③ 同次式は比に、 は極座標に置き換える
  7. 3. 本処理その1:順像法(文字を固定する)
  8. 4. 本処理その2:逆像法(存在条件に言い換える)
  9. ① 式で処理する:2次方程式を作る
  10. ② 図で処理する:計画法
  11. 5. 本処理その3:有名不等式
  12. 使いどころと注意
  13. 相加相乗
  14. コーシー・シュワルツ
  15. 凸不等式
  16. 同次化

文字が2つ以上ある式の最大・最小は、1変数のように「微分して増減表」で一気に片づくことがまれです。この頁は、そうした問題で方針を立てるときの手順を一枚の地図にまとめたものです。高3の入試演習で読み返すことを想定しているので、いますぐ全部を読まなくてかまいません。授業で扱った例題のうち、文字を固定して面積を最大にした問題などが関係するので、その補遺としています。

0. 全体の地図

多変数の最大・最小の進め方

第1段 自由度を数える(文字の個数から、独立な等式条件の本数を引く)

第2段 下ごしらえ(自由度は変わらないが、式を扱いやすくする)

  • ① 等式条件で文字を消す(消した文字の変域を残りの文字へ移す)
  • ② 対称式は基本対称式に置き換える(実数条件を移す)
  • ③ 同次式は比に、x2+y2x^2+y^2 のかたまりは極座標に置き換える

第3段 本処理(ここで初めて最大・最小が求まる)

  • ④ 順像法:1変数なら微分・平方完成、多変数なら文字を固定して1文字ずつ処理
  • ⑤ 逆像法:値 kk をとる ⇔\Leftrightarrow 条件と f=kf=k を同時に満たす実数が存在する、と言い換える(解の配置・図示)
  • ⑥ 有名不等式:相加相乗・コーシー・シュワルツ・凸不等式

第2段と第3段を分けて考えることが、この地図でいちばん大事な点です。置き換えをして式がきれいになっても、変数の個数が減っていなければ最大・最小はまだ求まっていません。何かの変形をしたら、「いまの操作で自由度は減ったか」を自分に問いましょう。減っていなければ下ごしらえの段階にいて、そのあと第3段のどれかを使う必要があります。

1. 自由度を数える

自由度とは、その式の値を決めるのに自由に選べる量の個数のことです。文字が nn 個あり、互いに独立な等式条件が mm 本あれば、自由度は n−mn-m になります。不等式の条件は変域を狭めるだけで、自由度は減らしません。

例で確かめる

  • 実数 x,y,zx,y,z が x+2y+3z=6x+2y+3z=6 を満たすとき、自由度は 3−1=23-1=2 です。条件を使って x=6−2y−3zx=6-2y-3z と消しても、残る文字は y,zy,z の2つで、自由度は2のままです。
  • u=x+y, v=xyu=x+y,\ v=xy と置き換えると、文字は x,yx,y から u,vu,v に替わりますが、2つであることは変わりません。
  • x2+y2x2+xy+y2\dfrac{x^2+y^2}{x^2+xy+y^2} は分子・分母がともに2次なので、x,yx,y を同じ数倍しても値が変わりません。値は比 yx\dfrac yx だけで決まり、自由度は1です。一方、分数になっていない x2+xy+y2x^2+xy+y^2 は、(1,1)(1,1) と (2,2)(2,2) で値が 33 と 1212 のように異なり、比のほかに大きさの分の自由度がもう1つ残ります。

式を見たら、自由度と並べて次の2点も確かめておくと、第2段・第3段で何を使うかの見当がつきます。

方針を決める前に見ること

⑴ 条件:等式条件は何本あり、文字どうしは独立に動くのか。不等式の条件で変域はどう制限されるか。

⑵ 式の形:対称式か(対称性を保って基本対称式へ進むか、崩して1文字を固定するか)。同次式か(比に置き換える)。対称で同次なら、有名不等式が使えないかを最初に疑う。

2. 下ごしらえ(自由度を変えない変形)

① 等式条件で文字を消す

等式条件が1本あれば、1文字を消せます。このとき見落としやすいのが消した文字が持っていた制約です。消した文字は式から見えなくなりますが、その文字が実数であることや、その文字の変域は、残った文字の側の条件として書き直しておかないと失われます。

文字を消したら、その変域を残りの文字へ移す

とくに y2=( x の式 )y^2=(\,x\text{ の式}\,) の形で yy を消すときは、「yy が実数 ⇔\Leftrightarrow 右辺 ≧0\geqq0」を xx の条件として加える。

例として、実数 x,yx,y が x2+y2=4x^2+y^2=4 を満たすときの y2−2xy^2-2x の値の範囲を求めます。y2=4−x2y^2=4-x^2 を代入すると

y2−2x=4−x2−2x=5−(x+1)2y^2-2x=4-x^2-2x=5-(x+1)^2

となり、xx だけの2次関数になります。ここで yy が実数であることから 4−x2≧04-x^2\geqq0、つまり −2≦x≦2-2\leqq x\leqq2 です。この範囲では x=−1x=-1 で最大値 55、x=2x=2 で最小値 5−9=−45-9=-4 をとるので、求める範囲は −4≦y2−2x≦5-4\leqq y^2-2x\leqq5 です。xx の変域を書き忘れると xx をいくらでも大きくできてしまい、最小値が出てきません。

授業では、7個の文字の値がどれも 1,2,31,2,3 のいずれかで、その和が 1313 になるという設定で、3乗の和などの最大を考える問題も扱いました1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ。文字の値そのものを追うかわりに、値が 1,2,31,2,3 の文字の個数を α,β,γ\alpha,\beta,\gamma とおくと、条件は α+β+γ=7\alpha+\beta+\gamma=7 と α+2β+3γ=13\alpha+2\beta+3\gamma=13 の2本になります。これを解くと α=γ+1, β=6−2γ\alpha=\gamma+1,\ \beta=6-2\gamma となり、自由度は γ\gamma の1つだけです。3乗の和は α+8β+27γ=12γ+49\alpha+8\beta+27\gamma=12\gamma+49 と γ\gamma の1次式になります。ここでも個数が 00 以上の整数であることを γ\gamma に移すと、β≧0\beta\geqq0 から γ≦3\gamma\leqq3 なので γ=0,1,2,3\gamma=0,1,2,3 に限られ、3乗の和の最大は γ=3\gamma=3 のときの 8585 です。

② 対称式は基本対称式に置き換える

x,yx,y を入れ替えても変わらない式(対称式)は、u=x+y, v=xyu=x+y,\ v=xy(基本対称式)だけで表せます。たとえば x2+y2=u2−2vx^2+y^2=u^2-2v、x3+y3=u3−3uvx^3+y^3=u^3-3uv です。置き換えると次数が下がったり、u,vu,v の式として図示しやすくなったりします。ただし①と同じく、文字の個数は2のままです。

この置き換えでは、「x,yx,y が実数」という条件を u,vu,v の言葉に直す必要があります。x,yx,y は2次方程式 t2−ut+v=0t^2-ut+v=0 の2解なので、

基本対称式に置き換えたときの実数条件

x,yx,y が実数 ⇔\Leftrightarrow t2−ut+v=0t^2-ut+v=0 の判別式について u2−4v≧0u^2-4v\geqq0

となります。

例として、実数 x,yx,y が x2+y2=2x^2+y^2=2 を満たすときの xy+x+yxy+x+y の範囲を求めます。条件は u2−2v=2u^2-2v=2 なので v=u2−22v=\dfrac{u^2-2}{2} です。実数条件 u2−4v≧0u^2-4v\geqq0 に代入すると u2−2(u2−2)≧0u^2-2(u^2-2)\geqq0、すなわち −2≦u≦2-2\leqq u\leqq2 を得ます。式のほうは

xy+x+y=v+u=u2−22+u=12(u+1)2−32xy+x+y=v+u=\frac{u^2-2}{2}+u=\frac12(u+1)^2-\frac32

なので、−2≦u≦2-2\leqq u\leqq2 では u=−1u=-1 で最小値 −32-\dfrac32、u=2u=2 で最大値 33 をとります(u=2u=2 のとき v=1v=1 で、x=y=1x=y=1)。実数条件を付け忘れると uu がいくらでも大きくなり、最大値がないという誤った結論になります。

③ 同次式は比に、x2+y2x^2+y^2 は極座標に置き換える

すべての項の次数が等しい多項式を同次式といいます。x,yx,y の nn 次同次式を xnx^n で割ると、t=yxt=\dfrac yx だけの式になります。分子・分母が同じ次数の分数式なら、値は tt だけで決まり、1変数の問題になります。

同じことを図形的に行うのが極座標への置き換えです。

極座標への置き換え

x=rcos⁡θ, y=rsin⁡θ (r≧0)x=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta\ (r\geqq0) とおく。点 (x,y)(x,y) の原点からの距離が r=x2+y2r=\sqrt{x^2+y^2}、向きが θ\theta である。

x,yx,y の nn 次同次式は rn×(θ の式)r^n\times(\theta\text{ の式}) の形になる。

θ\theta が「比」の役を、rr が「大きさ」の役を受け持つので、x2+y2x^2+y^2 が一定という条件や、x2+y2x^2+y^2 のかたまりを含む式に向いています。条件のない2変数の式を極座標に直しても、文字が r,θr,\theta に替わるだけで自由度は2のままです。

たとえば正の実数 x,yx,y に対して

x2+y2x2+xy+y2=r2r2(1+sin⁡θcos⁡θ)=22+sin⁡2θ(0<θ<π2)\begin{aligned}\frac{x^2+y^2}{x^2+xy+y^2}&=\frac{r^2}{r^2(1+\sin\theta\cos\theta)}\\&=\frac{2}{2+\sin2\theta}\qquad \left(0<\theta<\frac\pi2\right)\end{aligned}

となり、rr が消えて θ\theta だけの式になります。0<sin⁡2θ≦10<\sin2\theta\leqq1 なので値の範囲は 23≦x2+y2x2+xy+y2<1\dfrac23\leqq\dfrac{x^2+y^2}{x^2+xy+y^2}<1 です(23\dfrac23 は x=yx=y のとき)。

また、実数 x,yx,y が x2+y2=1x^2+y^2=1 を満たすとき、2次同次式 3x2+2xy+3y23x^2+2xy+3y^2 は

3x2+2xy+3y2=r2(3+2sin⁡θcos⁡θ)=r2(3+sin⁡2θ)\begin{aligned}3x^2+2xy+3y^2&=r^2(3+2\sin\theta\cos\theta)\\&=r^2(3+\sin2\theta)\end{aligned}

と書け、条件から r=1r=1 なので値の範囲は 2≦3x2+2xy+3y2≦42\leqq3x^2+2xy+3y^2\leqq4 です。条件が rr を固定するので、残るのは θ\theta の1変数になります。

3. 本処理その1:順像法(文字を固定する)

ここからは、実際に最大・最小を求める処理です。「動く文字を動かしたとき、式の値がどこまで動くか」を直接追うやり方を順像法、「この値をとれるか」を条件の側から判定するやり方を逆像法と呼びます。

1変数になっていれば、微分して増減を調べるか、2次式なら平方完成をすれば最大・最小が求まります。

多変数のまま残ったときは、文字を固定します。いくつかの文字を定数とみなして残りの1文字で最大・最小を求め(この段階の答えは固定した文字の式になる)、次に固定を1つ外してその式の最大・最小を求める、という手順を繰り返します。手間はかかりますが、ほかの方法が見つからない問題でも最後まで進められます2入試問題では、文字の固定がもっとも手早い解法になることも少なくありません。下の脚注へ。

どの文字を固定するか

扱いにくい文字を先に固定すると、残った1文字の式が簡単になる。目安は次の3つ。

  1. 次数の高い文字
  2. 何度も出てくる文字
  3. 変域の制約が強い文字

固定したときの変域に注意

文字どうしが独立でないと、1文字を固定したときに残りの文字の変域がその値に応じて変わる。2文字の条件は図示して、固定したときの切り口を見る。

例として、x≧0, y≧0, x+y≦3x\geqq0,\ y\geqq0,\ x+y\leqq3 のときの xy2xy^2 の最大値を求めます。yy のほうが次数が高いので、yy を固定します。yy を 0≦y≦30\leqq y\leqq3 の定数とみなすと、xx の変域は 0≦x≦3−y0\leqq x\leqq3-y に制限されます(図1の横の線分)。この範囲で xy2xy^2 は xx の1次式で、y2≧0y^2\geqq0 なので x=3−yx=3-y のとき最大値 (3−y)y2(3-y)y^2 をとります。

図1図1 x≧0, y≧0, x+y≦3x\geqq0,\ y\geqq0,\ x+y\leqq3 の三角形の領域。yy を固定すると、xx は 00 から 3−y3-y までの横の線分を動く

次に固定を外し、g(y)=(3−y)y2=3y2−y3 (0≦y≦3)g(y)=(3-y)y^2=3y^2-y^3\ (0\leqq y\leqq3) の最大値を求めます。g′(y)=6y−3y2=3y(2−y)g'(y)=6y-3y^2=3y(2-y) より、gg は 0≦y≦20\leqq y\leqq2 で増加し 2≦y≦32\leqq y\leqq3 で減少するので、最大値は g(2)=4g(2)=4 です(x=1, y=2x=1,\ y=2 のとき)。xx の変域が yy によって変わることを考えずに 0≦x≦30\leqq x\leqq3 としてしまうと、3y23y^2 を最大にしようとして誤った値になります。

授業の問題では、3つの文字が互いに独立にそれぞれの区間を動くときの2次式の最小値を、1文字ずつ固定を外す方法で求めました。そこでは文字どうしが独立なので、固定しても他の文字の変域は変わりませんでした。

4. 本処理その2:逆像法(存在条件に言い換える)

順像法で値の動きを追うのが難しいときは、見方を逆にします。

値 kk がとれる ⇔\Leftrightarrow 条件と「式 =k=k」をともに満たす実数の組が存在する

こう言い換えると、値域を求める問題が「残りの文字が実数として存在する条件」を求める問題になります。たとえば、f(x,y)=0f(x,y)=0 のもとでの xx の範囲は「yy が存在する条件」、f(x,y,z)=0f(x,y,z)=0 のもとでの zz の範囲は「(x,y)(x,y) が存在する条件」として求めます。存在条件の処理は次のどれかになります。

存在条件の処理の仕方

⑴ 1文字ずつ順に消し、そのたびに存在条件を調べる(その文字の2次方程式になれば、判別式 ≧0\geqq0)

⑵ 2文字の存在を一度に扱う

  • (a) 2文字について対称なら、その2文字を解にもつ2次方程式を作り、判別式 ≧0\geqq0(第2段②と同じ考え方)
  • (b) 「(x,y)(x,y) が存在する」を「xyxy 平面上にそういう点がある」と読み替えて図示する(計画法)

① 式で処理する:2次方程式を作る

実数 x,y,zx,y,z が x+y+z=4, xyz=2x+y+z=4,\ xyz=2 を満たすとき、zz のとりうる値の範囲を求めます。zz の値を1つ決めたとき、条件は

x+y=4−z,xy=2z(z≠0)x+y=4-z,\qquad xy=\frac2z\quad(z\neq0)

となるので、x,yx,y は t2−(4−z)t+2z=0t^2-(4-z)t+\dfrac2z=0 の2解です。zz がとれるかどうかは、この2次方程式が実数解をもつかどうか、すなわち

(4−z)2−8z≧0(4-z)^2-\frac8z\geqq0

かどうかだけで決まります。x,yx,y の実数性のほかに zz を制限する条件はありません。

具体的な値で試すと、z=1z=1 なら t2−3t+2=0t^2-3t+2=0 で t=1,2t=1,2 となり、(x,y,z)=(1,2,1)(x,y,z)=(1,2,1) が実際に条件を満たします。z=3z=3 なら t2−t+23=0t^2-t+\dfrac23=0 の判別式が 1−83<01-\dfrac83<0 で、x,yx,y は実数になれないので z=3z=3 はとれません。

一般の zz について解きます。z<0z<0 のときは −8z>0-\dfrac8z>0 なので、不等式はつねに成り立ちます。z>0z>0 のときは両辺に zz をかけて z(4−z)2≧8z(4-z)^2\geqq8 と同値です。左辺を w=z(4−z)2w=z(4-z)^2 とおいてグラフを描くと、図2のようになります。

図2図2 w=z(4−z)2w=z(4-z)^2 のグラフと直線 w=8w=8。z>0z>0 でグラフが直線以上になるのは 3−5≦z≦23-\sqrt5\leqq z\leqq2 と z≧3+5z\geqq3+\sqrt5
0 でグラフが直線以上になるのは 3−√5≦z≦2 と z≧3+√5">

式で確かめると、z(4−z)2−8=(z−2)(z2−6z+4)z(4-z)^2-8=(z-2)(z^2-6z+4) と因数分解でき、z2−6z+4=0z^2-6z+4=0 の解は z=3±5z=3\pm\sqrt5 です。0<3−5<2<3+50<3-\sqrt5<2<3+\sqrt5 なので、z>0z>0 で不等式が成り立つのは 3−5≦z≦23-\sqrt5\leqq z\leqq2 または z≧3+5z\geqq3+\sqrt5 のときです。以上から

z<0,3−5≦z≦2,3+5≦zz<0,\quad 3-\sqrt5\leqq z\leqq2,\quad 3+\sqrt5\leqq z

が求める範囲です。x,yx,y をそれぞれ1文字ずつ扱うかわりに、x,yx,y を2解にもつ2次方程式を1本作ったことで、2文字の存在を判別式1つで判定できました。

授業でも、3文字の和と2乗の和が与えられたときの1文字の範囲や積の範囲を、3文字を解にもつ3次方程式のグラフを使って求めました。

② 図で処理する:計画法

2文字 x,yx,y の条件が xyxy 平面上の領域 DD で表せるときは、次の言い換えを使います。

点 (x,y)(x,y) が DD を動くときの f(x,y)f(x,y) の値の範囲 == 曲線 f(x,y)=kf(x,y)=k と DD に共通する点があるような kk の値全体

例として、x≧0, y≧0, x+2y≦4, 3x+y≦6x\geqq0,\ y\geqq0,\ x+2y\leqq4,\ 3x+y\leqq6 のときの x+yx+y の最大値を求めます。x+y=kx+y=k は傾き −1-1 の直線で、kk が大きいほど右上にあります。この直線が領域と共有点をもつ範囲で kk を大きくしていくと、最後に触れるのは2直線 x+2y=4x+2y=4 と 3x+y=63x+y=6 の交点 (85,65)\left(\dfrac85,\dfrac65\right) です(領域の境界の傾きが −12-\dfrac12 と −3-3 で、−1-1 はその間にあるため)。よって最大値は 85+65=145\dfrac85+\dfrac65=\dfrac{14}5 です。

図3図3 4本の不等式で囲まれた四角形の領域と直線 x+y=kx+y=k。k=145k=\frac{14}5 のとき点 (85,65)\left(\frac85,\frac65\right) で領域に触れる

授業では、1次不等式で囲まれた領域での1次式の最大値や、対数の不等式から決まる領域での1次式の最大値を、この方法で求めました。

この言い換えがなぜ正しいのかは「f(x,y)=k とおいて動かすと、なぜ最大・最小が求まるのか」に、等高線と勾配から見直す続きは「等高線とラグランジュの未定乗数法」に書いてあります。

5. 本処理その3:有名不等式

使いどころと注意

最大・最小の処理に使える有名不等式は、主に次の3つです。

これらの不等式は両辺の次数がそろっています。たとえば a+b≧2aba+b\geqq2\sqrt{ab} は両辺とも1次、(ax+by)2≦(a2+b2)(x2+y2)(ax+by)^2\leqq(a^2+b^2)(x^2+y^2) は両辺とも4次です。そのため、対称性のある式や、同じ次数のものどうしを比べる場面で使えることが多くなります。

最大・最小に使うときは、次の3点を守ります。

有名不等式で最大・最小を出すときの約束

  1. 片側が定数になるように不等式を作る
  2. 不等式から分かるのは最大か最小の片方だけで、値の範囲全体は分からない
  3. 等号が成り立つ文字の値が実際にあることを確かめる

1つめの約束を破ると、次のような誤りになります。x>0x>0 のときの x33+1x\dfrac{x^3}{3}+\dfrac1x の最小値を求めたいとします。

×誤った答案×

相加平均・相乗平均の関係より

x33+1x≧2x33⋅1x=23x\frac{x^3}{3}+\frac1x\geqq2\sqrt{\frac{x^3}{3}\cdot\frac1x}=\frac{2}{\sqrt3}x

等号は x33=1x\dfrac{x^3}{3}=\dfrac1x、つまり x=34x=\sqrt[4]3 のときで、最小値は 2334=234\dfrac{2}{\sqrt3}\sqrt[4]3=\dfrac{2}{\sqrt[4]3}

不等式そのものは正しく、等号もたしかに x=34x=\sqrt[4]3 で成り立ちます。しかし右辺が定数でなく xx の式なので、この不等式は「曲線 y=x33+1xy=\dfrac{x^3}3+\dfrac1x が直線 y=23xy=\dfrac{2}{\sqrt3}x より下に来ない」と言っているだけです。図4のように、2つのグラフは x=34x=\sqrt[4]3 で接していますが、曲線の一番低い点は別の場所(x=1x=1)にあります。

図4図4 曲線 y=x33+1xy=\frac{x^3}3+\frac1x と直線 y=23xy=\frac2{\sqrt3}x。x=34x=\sqrt[4]3 で接するが、曲線の最小は x=1x=1 の 43\frac43

正しくは、右辺に xx が残らないように 1x\dfrac1x を3つに等分してから4項の相加相乗を使います。

x33+13x+13x+13x≧4x33⋅13x⋅13x⋅13x4=41814=43\begin{aligned}\frac{x^3}{3}+\frac1{3x}+\frac1{3x}+\frac1{3x}&\geqq4\sqrt[4]{\frac{x^3}{3}\cdot\frac1{3x}\cdot\frac1{3x}\cdot\frac1{3x}}\\&=4\sqrt[4]{\frac1{81}}=\frac43\end{aligned}

等号は4項が等しいとき、すなわち x33=13x\dfrac{x^3}3=\dfrac1{3x}、x=1x=1 のときに成り立つので、最小値は 43\dfrac43 です31x\dfrac1x を等分するのは、等号が成り立つ xx が実際にあるようにするためです。たとえば 1x=12x+14x+14x\dfrac1x=\dfrac1{2x}+\dfrac1{4x}+\dfrac1{4x} と分けると、積 x33⋅12x⋅14x⋅14x=196\dfrac{x^3}3\cdot\dfrac1{2x}\cdot\dfrac1{4x}\cdot\dfrac1{4x}=\dfrac1{96} は定数になりますが、等号の条件 x33=12x=14x\dfrac{x^3}3=\dfrac1{2x}=\dfrac1{4x} を満たす xx は存在しません。下の脚注へ。微分しても (x33+1x)′=x2−1x2\left(\dfrac{x^3}3+\dfrac1x\right)'=x^2-\dfrac1{x^2} から同じ結果が出ます。

相加相乗

nn 個の数の相加平均と相乗平均

a1,a2,⋯ ,ana_1,a_2,\cdots,a_n が 00 以上の実数(n≧2n\geqq2)のとき

a1+a2+⋯+ann≧a1a2⋯ann\frac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n}\geqq\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n}

等号は a1=a2=⋯=ana_1=a_2=\cdots=a_n のときに限り成り立つ。

「積が一定の正の数の和の最小値」と「和が一定の正の数の積の最大値」は、この不等式の典型的な使い道です。上の例のように項を等分して積を定数にしたり、3文字の不等式を2文字の相加相乗3本の和で示したりする工夫もよく使います。

コーシー・シュワルツ

定理(コーシー・シュワルツ)

実数 a1,⋯ ,an, b1,⋯ ,bna_1,\cdots,a_n,\ b_1,\cdots,b_n(n≧2n\geqq2)に対して

(a1 2+⋯+an 2)(b1 2+⋯+bn 2)≧(a1b1+⋯+anbn)2\left(a_1^{\,2}+\cdots+a_n^{\,2}\right)\left(b_1^{\,2}+\cdots+b_n^{\,2}\right)\geqq\left(a_1b_1+\cdots+a_nb_n\right)^2

等号は、一方の組が他方の組の実数倍になっているとき(すべて 00 でなければ a1:⋯:an=b1:⋯:bna_1:\cdots:a_n=b_1:\cdots:b_n のとき)に成り立つ。

ベクトル a⃗=(a1,⋯ ,an), b⃗=(b1,⋯ ,bn)\vec a=(a_1,\cdots,a_n),\ \vec b=(b_1,\cdots,b_n) で書くと ∣a⃗∣2∣b⃗∣2≧(a⃗⋅b⃗)2|\vec a|^2|\vec b|^2\geqq(\vec a\cdot\vec b)^2 で、内積が大きさの積を超えないことを言っています。使うときは、式の中から2つのベクトルを見つけることを目標にします。大きいほうの辺が大きさの2乗の積、小さいほうの辺が内積の2乗になるように読み取ると、ベクトルが決まります。

たとえば実数 x,y,zx,y,z が x2+y2+z2=1x^2+y^2+z^2=1 を満たすとき、a⃗=(1,2,2), b⃗=(x,y,z)\vec a=(1,2,2),\ \vec b=(x,y,z) とすると

(x+2y+2z)2≦(12+22+22)(x2+y2+z2)=9(x+2y+2z)^2\leqq(1^2+2^2+2^2)(x^2+y^2+z^2)=9

なので x+2y+2z≦3x+2y+2z\leqq3 です。等号は (x,y,z)=(13,23,23)(x,y,z)=\left(\dfrac13,\dfrac23,\dfrac23\right) のときに成り立ち、最大値は 33 です。

凸不等式

凸不等式(重みつき)

f(x)f(x) がある区間で上に凸であるとし、x1,⋯ ,xnx_1,\cdots,x_n をその区間の実数、p1,⋯ ,pnp_1,\cdots,p_n を p1+⋯+pn=1p_1+\cdots+p_n=1 を満たす 00 以上の実数とする。このとき

p1f(x1)+⋯+pnf(xn)≦f(p1x1+⋯+pnxn)p_1f(x_1)+\cdots+p_nf(x_n)\leqq f(p_1x_1+\cdots+p_nx_n)

が成り立つ。下に凸な f(x)f(x) については、逆向きの不等式になる。

左辺はグラフ上の点 (xi,f(xi))(x_i,f(x_i)) を重み pip_i で平均した点の高さ、右辺はその平均の位置での曲線の高さです。上に凸な曲線は、曲線上の点を結んでできる図形より上にあるので、この不等式が成り立ちます。登場する場面は多くありませんが、3文字までなら答案で使ってよいでしょう。

同次化

有名不等式は両辺の次数がそろっているので、条件と求めたい式の次数が違うときは、等式条件を使って次数をそろえると使えるようになります。

例として、正の実数 x,y,zx,y,z が x+y+z=1x+y+z=1 を満たすときの x2+y2+z2x^2+y^2+z^2 の最小値を考えます。条件は1次、求めたい式は2次なので、条件の両辺を2乗した (x+y+z)2=1(x+y+z)^2=1 と比べます。

3(x2+y2+z2)−(x+y+z)2=(x−y)2+(y−z)2+(z−x)2≧03(x^2+y^2+z^2)-(x+y+z)^2=(x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2\geqq0

より x2+y2+z2≧13(x+y+z)2=13x^2+y^2+z^2\geqq\dfrac13(x+y+z)^2=\dfrac13 で、等号は x=y=z=13x=y=z=\dfrac13 のときです。係数の 13\dfrac13 は、等号が成り立つはずの x=y=zx=y=z のときに両辺が等しくなるように決めています。

授業の問題では逆に、xy+yz+zx=12xy+yz+zx=12(2次)のもとで x+y+zx+y+z(1次)の最小値を求めました。同じように x+y+zx+y+z を2乗して次数をそろえると、(x+y+z)2−3(xy+yz+zx)=12{(x−y)2+(y−z)2+(z−x)2}≧0(x+y+z)^2-3(xy+yz+zx)=\dfrac12\left\{(x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2\right\}\geqq0 から (x+y+z)2≧36(x+y+z)^2\geqq36 となり、x+y+z>0x+y+z>0 なので x+y+z≧6x+y+z\geqq6(等号は x=y=z=2x=y=z=2)が出ます。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

2 入試問題では、文字の固定がもっとも手早い解法になることも少なくありません。

3 1x\dfrac1x を等分するのは、等号が成り立つ xx が実際にあるようにするためです。たとえば 1x=12x+14x+14x\dfrac1x=\dfrac1{2x}+\dfrac1{4x}+\dfrac1{4x} と分けると、積 x33⋅12x⋅14x⋅14x=196\dfrac{x^3}3\cdot\dfrac1{2x}\cdot\dfrac1{4x}\cdot\dfrac1{4x}=\dfrac1{96} は定数になりますが、等号の条件 x33=12x=14x\dfrac{x^3}3=\dfrac1{2x}=\dfrac1{4x} を満たす xx は存在しません。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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