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屈折の法則と最短時間

2025年度 高2発展2026年10月6日9分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. 設定と結論
  2. 2. 微分による証明
  3. 3. 光がこの法則に従う理由(ホイヘンスの原理)
  4. 4. フェルマーの原理と授業で扱った問題

授業では、沖の地点から船で岸へ向かい、上陸してからは岸沿いに歩いて目的地へ行くときに、かかる時間をもっとも短くする上陸地点を求めました1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。ここでは、海岸線から沖へ aa だけ離れた地点 A から海岸上の地点 C へ行く問題で、A から海岸に下ろした垂線の足を H として HC=b\mathrm{HC}=b、海上の速さを vv、岸沿いの速さを 2 v\sqrt2\,v とします。下の脚注へ。答えは「岸に立てた垂線と船の進路のなす角が π4\dfrac\pi4 になる地点」でした。この角の条件は、光の屈折について知られている屈折の法則(スネルの法則)の特別な場合にあたります。以下では、進む速さが場所によって2通りに変わるときの最短時間の経路を微分で求め、その答えが光の屈折の法則と同じ式になることを確かめます。

1. 設定と結論

座標平面の xx 軸を境界とし、y>0y>0 の側では速さ v1v_1、y<0y<0 の側では速さ v2v_2 で進めるとします。点 A(0, a)\mathrm A(0,\,a) から点 B(c, −b)\mathrm B(c,\,-b)(a, b, c>0a,\,b,\,c>0)へ行くのに、境界上の点 X(x, 0)\mathrm X(x,\,0) まで直進し、そこから B まで直進します。どちらの側でも直進が最短なので、選べるのは境界を横切る点 X の位置 xx だけです。

X で境界に垂直に立てた直線(法線)と、線分 XA のなす角を α\alpha、線分 XB のなす角を β\beta とします。

図1図1 xx 軸の上側は速さ v1v_1、下側は速さ v2v_2。A から X を経て B へ進む。X の法線と XA のなす角が α\alpha、XB のなす角が β\beta

屈折の法則

所要時間が最小になるのは、

sin⁡αv1=sin⁡βv2\frac{\sin\alpha}{v_1}=\frac{\sin\beta}{v_2}

が成り立つように X をとったときである。

光の場合、屈折率 nn の物質の中を進む光の速さは c0n\dfrac{c_0}{n}(c0c_0 は真空中の光の速さ)なので、上の式は n1sin⁡α=n2sin⁡βn_1\sin\alpha=n_2\sin\beta、あるいは sin⁡αsin⁡β=v1v2=n2n1\dfrac{\sin\alpha}{\sin\beta}=\dfrac{v_1}{v_2}=\dfrac{n_2}{n_1} と書けます。たとえば屈折率をほぼ 11 とみなせる空気から、屈折率が約 1.331.33 の水へ α=60∘\alpha=60^\circ で光が入ると、sin⁡β=sin⁡60∘1.33≒0.651\sin\beta=\dfrac{\sin60^\circ}{1.33}\fallingdotseq0.651 より β≒40.6∘\beta\fallingdotseq40.6^\circ で、光は法線に近づく向きに曲がります。図1は v1:v2=3:2v_1:v_2=3:2、α=60∘\alpha=60^\circ の場合を描いたものです。

2. 微分による証明

所要時間は X の座標 xx の関数で、

T(x)=x2+a2v1+(c−x)2+b2v2T(x)=\frac{\sqrt{x^2+a^2}}{v_1}+\frac{\sqrt{(c-x)^2+b^2}}{v_2}

です。xx で微分すると

T′(x)=xv1x2+a2−c−xv2(c−x)2+b2T'(x)=\frac{x}{v_1\sqrt{x^2+a^2}}-\frac{c-x}{v_2\sqrt{(c-x)^2+b^2}}

となります。0<x<c0<x<c のとき、図1の直角三角形から xx2+a2=sin⁡α\dfrac{x}{\sqrt{x^2+a^2}}=\sin\alpha、c−x(c−x)2+b2=sin⁡β\dfrac{c-x}{\sqrt{(c-x)^2+b^2}}=\sin\beta なので、

T′(x)=sin⁡αv1−sin⁡βv2T'(x)=\frac{\sin\alpha}{v_1}-\frac{\sin\beta}{v_2}

です。つまり T′(x)=0T'(x)=0 はちょうど屈折の法則の式です。残っているのは、この xx が本当に最小を与えることと、そのような xx が1つしかないことの確認です。

もう一度微分すると

T′′(x)=a2v1(x2+a2)3/2+b2v2{(c−x)2+b2}3/2>0T''(x)=\frac{a^2}{v_1\left(x^2+a^2\right)^{3/2}}+\frac{b^2}{v_2\left\{(c-x)^2+b^2\right\}^{3/2}}>0

なので、T′(x)T'(x) はすべての実数 xx で単調に増加します。さらに

T′(0)=−cv2c2+b2<0,T′(c)=cv1c2+a2>0\begin{aligned}T'(0)&=-\frac{c}{v_2\sqrt{c^2+b^2}}<0,\\T'(c)&=\frac{c}{v_1\sqrt{c^2+a^2}}>0\end{aligned}

なので、T′(x)=0T'(x)=0 となる xx は 0<x<c0<x<c にただ1つあります。それを x0x_0 とすると、増減は次のとおりです。

xx⋯\cdotsx0x_0⋯\cdots
T′(x)T'(x)−-00++
T(x)T(x)↘\searrow最小↗\nearrow

よって TT は x=x0x=x_0 で最小になり、そのとき sin⁡αv1=sin⁡βv2\dfrac{\sin\alpha}{v_1}=\dfrac{\sin\beta}{v_2} が成り立ちます。∎

変数を xx でなく角 α\alpha にとることもできます。その場合は atan⁡α+btan⁡β=ca\tan\alpha+b\tan\beta=c という関係の両辺を α\alpha で微分して dβdα\dfrac{d\beta}{d\alpha} を消去すると、同じ結論が得られます。

3. 光がこの法則に従う理由(ホイヘンスの原理)

§2 は「最短時間の経路はどこを通るか」という数学の問題でした。光が実際にこの経路を通ることは、波の性質から説明できます。ホイヘンスの原理とは、波面の各点から小さな球面状の波(素元波)が広がり、それらすべてに接する面が少し後の波面になる、という考え方です。

図2図2 平行な2本の光線が境界上の K と L に斜めに入る。K に届いた瞬間の波面(破線)から L までの残りは dsin⁡αd\sin\alpha。その間に K から広がる素元波の半径は dsin⁡βd\sin\beta で、L からこの円に引いた接線が新しい波面

平行な光線の束が、境界に斜めに入ってくる場面を考えます。光線と波面は垂直で、境界と法線も垂直なので、波面と境界のなす角は入射角 α\alpha に等しくなります。図の点 K に一方の端が届いた瞬間、波面は K を通る破線の位置にあり、もう一方の端は境界上の点 L(KL=d\mathrm{KL}=d)までまだ dsin⁡αd\sin\alpha 残っています。この残りを進むのにかかる時間は t=dsin⁡αv1t=\dfrac{d\sin\alpha}{v_1} です。

その間に、K から下の側へ素元波が速さ v2v_2 で広がり、半径 v2tv_2t の円になります。端が L に届いた瞬間の新しい波面は、L からこの円に引いた接線です。屈折した光線はこの接線に垂直なので、K から接点へ向かう向きに進み、法線とのなす角が屈折角 β\beta になります。接線と境界のなす角も β\beta なので、円の半径は dsin⁡βd\sin\beta と書けます。したがって

v2⋅dsin⁡αv1=dsin⁡βつまり sin⁡αv1=sin⁡βv2\begin{aligned}v_2\cdot\frac{d\sin\alpha}{v_1}&=d\sin\beta\\\text{つまり}\ \frac{\sin\alpha}{v_1}&=\frac{\sin\beta}{v_2}\end{aligned}

となり、§2 で求めた最短時間の条件と同じ式が出てきます。∎

4. フェルマーの原理と授業で扱った問題

§2 と §3 の結果が一致するのは偶然ではありません。光は2点を結ぶ経路のうち所要時間が最小になるものを通る、というフェルマーの原理が知られています(正確には「所要時間が停留する経路」ですが、ここで扱う場面では最小です)。

授業で扱った問題をこの見方で読み直します。島 A から岸に下ろした垂線の足を H、AH=a\mathrm{AH}=a、H から目的地 C までを HC=b\mathrm{HC}=b とし、海上の速さを vv、岸沿いを歩く速さを 2 v\sqrt2\,v とします。上陸点を X、HX=x\mathrm{HX}=x(0≦x≦b0\leqq x\leqq b)とすると、所要時間は

T(x)=x2+a2v+b−x2 v,T′(x)=1v(xx2+a2−12)=1v(sin⁡α−12)\begin{aligned}T(x)&=\frac{\sqrt{x^2+a^2}}{v}+\frac{b-x}{\sqrt2\,v},\\T'(x)&=\frac1v\left(\frac{x}{\sqrt{x^2+a^2}}-\frac1{\sqrt2}\right)\\&=\frac1v\left(\sin\alpha-\frac1{\sqrt2}\right)\end{aligned}

です(α\alpha は X の法線と XA のなす角)。§2 と同じく T′(x)T'(x) は単調に増加し、T′(x)=0T'(x)=0 となるのは sin⁡α=12\sin\alpha=\dfrac1{\sqrt2}、すなわち α=π4\alpha=\dfrac\pi4、x=atan⁡π4=ax=a\tan\dfrac\pi4=a のときです。この点が 0≦x≦b0\leqq x\leqq b に入る条件は a≦ba\leqq b です。a>ba>b のときは区間全体で T′(x)<0T'(x)<0 なので、x=bx=b(船で C へ直行する)が最小になります。

図3図3 沖の地点 A から岸へ。H は A から岸に下ろした垂線の足。上陸点 X では法線と XA のなす角が π4\frac\pi4。X から C までは岸沿いに速さ 2 v\sqrt2\,v で進む

屈折の法則の側から見ると、岸沿いに歩く部分は「速さ 2 v\sqrt2\,v の側を、境界に沿って進む」経路なので、屈折角が β=π2\beta=\dfrac\pi2 の場合にあたります。法則の式に入れると

sin⁡αv=sin⁡π22 vよりsin⁡α=12,α=π4\begin{aligned}&\frac{\sin\alpha}{v}=\frac{\sin\dfrac\pi2}{\sqrt2\,v}\quad \text{より}\quad \sin\alpha=\frac1{\sqrt2},\quad \alpha=\frac\pi4\end{aligned}

となり、微分で求めた答えと一致します。

光が遅い側から速い側へ入るとき、sin⁡β=v2v1sin⁡α\sin\beta=\dfrac{v_2}{v_1}\sin\alpha は sin⁡α\sin\alpha より大きいので、入射角 α\alpha を大きくしていくと、ある角で β=π2\beta=\dfrac\pi2 に達します。この角を臨界角といい、入射角がこれより大きいと屈折した光が無くなり、光はすべて反射します(全反射)。授業で扱った問題の α=π4\alpha=\dfrac\pi4 は、v1=vv_1=v、v2=2 vv_2=\sqrt2\,v のときの臨界角にあたります。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。ここでは、海岸線から沖へ aa だけ離れた地点 A から海岸上の地点 C へ行く問題で、A から海岸に下ろした垂線の足を H として HC=b\mathrm{HC}=b、海上の速さを vv、岸沿いの速さを 2 v\sqrt2\,v とします。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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