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円に内接する nn 角形の面積の最大値

2025年度 高2発展2026年10月6日10分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. 凸不等式
  2. 2. 面積を中心角で表す
  3. 3. 中心が外にある 角形は先に片づける
  4. 4. 凸不等式で仕上げる

授業の例題のテーマは、楕円に内接する三角形のうち面積が最も大きいものを見つけることでした1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。類題は、楕円 x29+y24=1\dfrac{x^2}{9}+\dfrac{y^2}{4}=1 上の点 A(3, 0)\mathrm A(3,\,0) と、この楕円上を動く2点 B, C を頂点とする三角形 ABC の面積の最大値を求めよ、というものです。楕円を yy 軸方向に 32\dfrac32 倍すると半径 33 の円になり、面積は 32\dfrac32 倍になります。半径 33 の円に内接する正三角形の面積は 2734\dfrac{27\sqrt3}{4} なので、23\dfrac23 倍して答えは 932\dfrac{9\sqrt3}{2} です。下の脚注へ。楕円を一つの軸の方向に縮めて円に直すと、どの図形の面積も同じ比率で変わるので、問題は円に内接する三角形の場合に帰着し、最大になるのは正三角形のときでした。例題には「頂点の一つは定点」という条件がありましたが、円を中心のまわりに回せばどの内接三角形もその位置に持ってこられるので、この固定は答えを狭めていません。

三角形を nn 角形に変えても、同じ形の結論が成り立ちます。この頁の目標は次の事実です。

半径 11 の円に内接する nn 角形の面積は n2sin⁡2πn\dfrac n2\sin\dfrac{2\pi}{n} 以下で、等号が成り立つのは正 nn 角形のときに限る

たとえば n=4n=4 なら上限は 2sin⁡π2=22\sin\dfrac\pi2=2 で、これは対角線が直径の正方形の面積です。証明の道具は凸不等式です。

1. 凸不等式

関数 f(x)f(x) が区間 II で上に凸であるとは、グラフ上のどの2点を結ぶ線分も、グラフより下(またはグラフ上)にあることをいいます。II で f′′(x)≦0f''(x)\leqq0 なら上に凸です。

凸不等式

f(x)f(x) が区間 II で上に凸のとき、II に属する実数 x1, x2, …, xnx_1,\,x_2,\,\ldots,\,x_n について

f(x1)+f(x2)+⋯+f(xn)n≦f(x1+x2+⋯+xnn)\frac{f(x_1)+f(x_2)+\cdots+f(x_n)}{n}\leqq f\left(\frac{x_1+x_2+\cdots+x_n}{n}\right)

さらに II の内部で f′′(x)<0f''(x)<0 ならば、等号が成り立つのは x1=x2=⋯=xnx_1=x_2=\cdots=x_n のときに限る。

左辺は「関数の値の平均」、右辺は「平均した位置での関数の値」です。上に凸な関数では、前者が後者を超えません。

なぜそうなるかを、f(x)=sin⁡xf(x)=\sin x(0≦x≦π0\leqq x\leqq\pi)、n=3n=3 の場合に図で見ます。グラフ上に3点 Pk(xk, sin⁡xk)\mathrm P_k\bigl(x_k,\,\sin x_k\bigr) をとると、三角形 P1P2P3\mathrm P_1\mathrm P_2\mathrm P_3 の重心 G の座標は

G(m, sin⁡x1+sin⁡x2+sin⁡x33),m=x1+x2+x33\begin{aligned}&\mathrm G\left(m,\ \frac{\sin x_1+\sin x_2+\sin x_3}{3}\right),\\m&=\frac{x_1+x_2+x_3}{3}\end{aligned}

です。G の yy 座標が凸不等式の左辺で、同じ xx 座標 mm のグラフ上の点 M(m, sin⁡m)\mathrm M(m,\,\sin m) の yy 座標が右辺です。

図1図1 y=sin⁡xy=\sin x のグラフ上の3点を頂点とする三角形と、その重心 G。G の真上のグラフ上の点 M は G より高い

sin⁡x\sin x は上に凸なので、三角形の3辺はどれもグラフより下にあり、三角形全体がグラフより下の部分に収まります。2図形 DD の中のどの2点についても、その2点を結ぶ線分がまた DD に含まれるとき、DD を凸図形といいます。上に凸な関数のグラフより下の部分は凸図形で、凸不等式はこの性質から出てきます。下の脚注へ重心 G は三角形の内部にあるので、G もグラフより下にあり、これが「G の yy 座標 ≦\leqq M の yy 座標」、すなわち凸不等式です。nn 個の点でも、座標を平均した点はそれらを頂点とする凸多角形の内部か周上にあるので、同じ理由で成り立ちます。グラフに直線の部分が無い(f′′<0f''<0)なら、点が全部一致しない限り G はグラフより真に下にあるので、等号は x1=⋯=xnx_1=\cdots=x_n のときだけです。

2. 面積を中心角で表す

半径 11 の円(中心 O)に内接する nn 角形の頂点を、円周に沿って反時計回りに A1, A2, …, An\mathrm A_1,\,\mathrm A_2,\,\ldots,\,\mathrm A_n とし、An+1=A1\mathrm A_{n+1}=\mathrm A_1 と約束します。Ak\mathrm A_k から Ak+1\mathrm A_{k+1} まで反時計回りに回る中心角を θk\theta_k とすると、

θk>0,θ1+θ2+⋯+θn=2π\theta_k>0,\qquad \theta_1+\theta_2+\cdots+\theta_n=2\pi

です(図2)。

図2図2 半径 11 の円に内接する五角形 A1∼A5\mathrm A_1\sim\mathrm A_5 と、隣り合う頂点の間の中心角 θ1∼θ5\theta_1\sim\theta_5

O が nn 角形の内部か周上にあるとき、nn 角形は nn 個の三角形 OAkAk+1\mathrm{OA}_k\mathrm A_{k+1} に分かれ、このとき各 θk\theta_k は π\pi 以下です。二辺が 11 で間の角が θk\theta_k の三角形の面積は 12sin⁡θk\dfrac12\sin\theta_k なので、nn 角形の面積 SS は

S=12(sin⁡θ1+sin⁡θ2+⋯+sin⁡θn)S=\frac12\left(\sin\theta_1+\sin\theta_2+\cdots+\sin\theta_n\right)

と書けます(θk=π\theta_k=\pi の三角形はつぶれて面積 00 ですが、sin⁡π=0\sin\pi=0 なので式はそのまま使えます)。たとえば中心角が π3, 2π3, π3, 2π3\dfrac\pi3,\,\dfrac{2\pi}3,\,\dfrac\pi3,\,\dfrac{2\pi}3 の長方形では S=12⋅4⋅32=3≒1.73S=\dfrac12\cdot4\cdot\dfrac{\sqrt3}{2}=\sqrt3\fallingdotseq1.73 で、正方形の 22 より小さくなっています。

3. 中心が外にある nn 角形は先に片づける

O が nn 角形の外にあると、頂点の無い弧が半円より長くなり、その弧に対応する θk\theta_k が π\pi を超えます。すると三角形への分け方が使えないうえ、sin⁡x\sin x が上に凸なのは 0≦x≦π0\leqq x\leqq\pi の範囲なので、凸不等式も当てはめられません。そこでこの場合は、面積がもっと大きく、しかも O を内部に含む nn 角形が作れることを先に示します。

番号を付け直して、π\pi を超えるのが θn\theta_n(An\mathrm A_n から A1\mathrm A_1 までの弧)だとします。An\mathrm A_n から A1\mathrm A_1 を通って A2\mathrm A_2 へ行く弧の中点を A1′\mathrm A_1' とし、頂点 A1\mathrm A_1 を A1′\mathrm A_1' に取り替えます(図3)。

図3図3 中心 O が外にある四角形 A1A2A3A4\mathrm A_1\mathrm A_2\mathrm A_3\mathrm A_4。A1\mathrm A_1 を、A4\mathrm A_4 から A1\mathrm A_1 を通って A2\mathrm A_2 へ行く弧の中点 A1′\mathrm A_1' へ動かすと、O を含む四角形になる

nn 角形は対角線 AnA2\mathrm A_n\mathrm A_2 で、三角形 AnA1A2\mathrm A_n\mathrm A_1\mathrm A_2 と残りの多角形 A2A3⋯An\mathrm A_2\mathrm A_3\cdots\mathrm A_n に分かれ、取り替えで変わるのは三角形の方だけです。底辺 AnA2\mathrm A_n\mathrm A_2 は動かず、高さは弧の上の点と弦 AnA2\mathrm A_n\mathrm A_2 の距離なので、弧の中点 A1′\mathrm A_1' で最大になります。θn>π\theta_n>\pi と θ1<π\theta_1<\pi から A1\mathrm A_1 は中点ではないので、面積は真に増えます。

取り替えた後の中心角を確かめます。AnA1′\mathrm A_n\mathrm A_1' と A1′A2\mathrm A_1'\mathrm A_2 の中心角はどちらも θn+θ12\dfrac{\theta_n+\theta_1}{2} で、θn+θ1<2π\theta_n+\theta_1<2\pi なので π\pi 未満です。残りの θ2, …, θn−1\theta_2,\,\ldots,\,\theta_{n-1} は合計しても 2π−θn<π2\pi-\theta_n<\pi なので、どれも π\pi 未満です。したがって新しい nn 角形の中心角はすべて π\pi 未満で、O を内部に含みます。

まとめると、O が外にある nn 角形の面積は、O を内部に含むある nn 角形の面積より真に小さくなります。よって残りは O が内部か周上にある場合だけを調べれば足ります。

4. 凸不等式で仕上げる

O が内部か周上にあるとき、θ1, …, θn\theta_1,\,\ldots,\,\theta_n はすべて 0<θk≦π0<\theta_k\leqq\pi を満たします。f(x)=sin⁡xf(x)=\sin x は 0≦x≦π0\leqq x\leqq\pi で f′′(x)=−sin⁡x≦0f''(x)=-\sin x\leqq0 なので上に凸で、内部 0<x<π0<x<\pi では f′′(x)<0f''(x)<0 です。凸不等式から

sin⁡θ1+⋯+sin⁡θnn≦sin⁡θ1+⋯+θnn=sin⁡2πn\frac{\sin\theta_1+\cdots+\sin\theta_n}{n}\leqq\sin\frac{\theta_1+\cdots+\theta_n}{n}=\sin\frac{2\pi}{n}

両辺に n2\dfrac n2 をかけて

S≦n2sin⁡2πnS\leqq\frac n2\sin\frac{2\pi}{n}

等号は θ1=⋯=θn=2πn\theta_1=\cdots=\theta_n=\dfrac{2\pi}{n}、つまり頂点が円周を nn 等分するとき、すなわち正 nn 角形のときに限ります。§3 で O が外にある場合の面積はこれより真に小さいと分かっているので、冒頭の事実が示されました。

n=3n=3 なら上限は 32⋅32=334\dfrac32\cdot\dfrac{\sqrt3}{2}=\dfrac{3\sqrt3}{4} で、半径 33 の円ではその 99 倍の 2734\dfrac{27\sqrt3}{4} です。これが脚注1の類題で使う正三角形の面積です。また nn を大きくすると n2sin⁡2πn=π⋅sin⁡(2π/n)2π/n\dfrac n2\sin\dfrac{2\pi}{n}=\pi\cdot\dfrac{\sin(2\pi/n)}{2\pi/n} は円の面積 π\pi に近づきます。

外接する場合 半径 11 の円に外接する nn 角形では逆向きの結論、「面積は ntan⁡πnn\tan\dfrac\pi n 以上で、最小になるのは正 nn 角形のとき」が成り立ちます。各辺と円の接点を T1, …, Tn\mathrm T_1,\,\ldots,\,\mathrm T_n とし、隣り合う接点 Tk, Tk+1\mathrm T_k,\,\mathrm T_{k+1} がつくる中心角を 2φk2\varphi_k とします。その間にある頂点 Vk\mathrm V_k と O を結ぶと、直角三角形 OTkVk\mathrm{OT}_k\mathrm V_k と OTk+1Vk\mathrm{OT}_{k+1}\mathrm V_k はどちらも直角をはさむ辺が 11 と tan⁡φk\tan\varphi_k なので、二つ合わせた面積は tan⁡φk\tan\varphi_k です。したがって面積は tan⁡φ1+⋯+tan⁡φn\tan\varphi_1+\cdots+\tan\varphi_n で、φ1+⋯+φn=π\varphi_1+\cdots+\varphi_n=\pi、各 φk\varphi_k は 0<φk<π20<\varphi_k<\dfrac\pi2 です。tan⁡x\tan x は 0<x<π20<x<\dfrac\pi2 で (tan⁡x)′′=2tan⁡xcos⁡2x>0(\tan x)''=\dfrac{2\tan x}{\cos^2x}>0 なので下に凸で、凸不等式の不等号が逆向きになって、面積の下限 ntan⁡πnn\tan\dfrac\pi n が得られます。n=4n=4 なら 4tan⁡π4=44\tan\dfrac\pi4=4 で、一辺 22 の正方形の面積です。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。類題は、楕円 x29+y24=1\dfrac{x^2}{9}+\dfrac{y^2}{4}=1 上の点 A(3, 0)\mathrm A(3,\,0) と、この楕円上を動く2点 B, C を頂点とする三角形 ABC の面積の最大値を求めよ、というものです。楕円を yy 軸方向に 32\dfrac32 倍すると半径 33 の円になり、面積は 32\dfrac32 倍になります。半径 33 の円に内接する正三角形の面積は 2734\dfrac{27\sqrt3}{4} なので、23\dfrac23 倍して答えは 932\dfrac{9\sqrt3}{2} です。

2 図形 DD の中のどの2点についても、その2点を結ぶ線分がまた DD に含まれるとき、DD を凸図形といいます。上に凸な関数のグラフより下の部分は凸図形で、凸不等式はこの性質から出てきます。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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