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パソコンで描きにくいグラフ

2025年度 高2読み物2026年10月6日6分で読めます塾講師木下微分
目次
  1. 1. :山が急に小さくなる
  2. 2. :右側がほとんど平らに見える

数学Ⅲでグラフを描く目的は、増減・極値・凹凸・漸近の様子といった「形の特徴」を一目で伝えることです。ところが、正確な縮尺で描くとその特徴がかえって見えなくなる関数があります。ここでは授業に出てきた2つの関数を例に、何が起きているのかと、見本の図を描くときの工夫を説明します。

1. y=e−xsin⁡xy=e^{-x}\sin x:山が急に小さくなる

授業の例題の最後に y=e−x(sin⁡x+cos⁡x)y=e^{-x}(\sin x+\cos x) が出てきました1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ。三角関数の合成で

e−x(sin⁡x+cos⁡x)=2 e−xsin⁡(x+π4)e^{-x}(\sin x+\cos x)=\sqrt2\,e^{-x}\sin\left(x+\dfrac{\pi}{4}\right)

と書けるので、このグラフは y=e−xsin⁡xy=e^{-x}\sin x のグラフを xx 軸方向に −π4-\dfrac\pi4 だけ平行移動し、縦に 2 eπ/4\sqrt2\,e^{\pi/4} 倍したものです(平行移動すると e−xe^{-x} の部分にも e−π/4e^{-\pi/4} が掛かるので、その分を割り戻しています)。形の問題は共通なので、以下では y=e−xsin⁡xy=e^{-x}\sin x で考えます。

このグラフで伝えたい特徴は、次のようなものです。

ところが縦横を同じ縮尺にして描くと、次のようになります(破線は y=±e−xy=\pm e^{-x})。

図1図1 y=e−xsin⁡xy=e^{-x}\sin x を縦横同じ縮尺で描いた図。最初の山のあとはほとんど xx 軸に重なる

最初の山のあとは、ほとんど xx 軸と見分けがつきません。原因は山の高さの減り方にあります。xx が π\pi 増えると sin⁡x\sin x は符号が変わるだけで大きさは同じですが、e−xe^{-x} は e−πe^{-\pi} 倍になります。隣り合う山(谷)の高さの比は

e−π≈0.043≈123e^{-\pi}\approx0.043\approx\dfrac{1}{23}

で、2つ先では約 1535\dfrac{1}{535} です。

それなら縦に引き伸ばせばよい、と考えたくなりますが、これはうまくいきません。縦を何倍にしても、どの山も同じ倍率で大きくなるので、隣の山との比 123\dfrac1{23} は変わらないからです。1つ目の山が紙に収まるように倍率を決めると、2つ目以降はやはり潰れます。

そこで、見本の図を描くときは指数の底 e≈2.7e\approx2.7 を 1.21.2〜1.31.3 程度の小さい数に替えます。たとえば底を 1.251.25 にすると、隣の山との比は

1.25−π≈0.501.25^{-\pi}\approx0.50

になり、山が半分ずつ小さくなる様子を何回分も描けます。下の図は y=1.25−xsin⁡xy=1.25^{-x}\sin x を、縦を横の3倍に伸ばして描いたものです(破線は y=±1.25−xy=\pm1.25^{-x})。

図2図2 y=1.25−xsin⁡xy=1.25^{-x}\sin x を縦3倍で描いた図。山が何回も見える

xx 軸を横切る点(x=kπx=k\pi)と、破線に接する点(sin⁡x=±1\sin x=\pm1 の点)は元の関数と同じです。一方、極値の位置は tan⁡x=1log⁡1.25\tan x=\dfrac{1}{\log1.25} を満たす点に移るので、元の x=π4+kπx=\dfrac\pi4+k\pi とは少しずれます2log⁡\log は自然対数、つまり底が ee の対数です。下の脚注へ。あくまで「振動しながら減衰する」という形を見せるための図で、極値の座標は元の関数で計算します。

2. y=log⁡xxy=\dfrac{\log x}{x}:右側がほとんど平らに見える

もう1つの例は y=log⁡xxy=\dfrac{\log x}{x} です。微分すると

y′=1−log⁡xx2,y′′=2log⁡x−3x3y'=\dfrac{1-\log x}{x^2},\qquad y''=\dfrac{2\log x-3}{x^3}

なので、x=ex=e で極大値 1e\dfrac1e をとり、x=e32x=e^{\frac32} が変曲点です。極値・変曲点を求める問題によく出るほか、log⁡xx=log⁡x⋅(log⁡x)′\dfrac{\log x}{x}=\log x\cdot(\log x)' という形をしているので

∫log⁡xx dx=(log⁡x)22+C\int\dfrac{\log x}{x}\,dx=\dfrac{(\log x)^2}{2}+C

とすぐに積分でき、積分の問題でも頻繁に見かけます。

縦横同じ縮尺で描くと次のようになります。

図3図3 y=log⁡xxy=\frac{\log x}{x} を縦横同じ縮尺で描いた図。x>1x>1 ではほぼ平ら

x>1x>1 では yy の値が 00 と 1e≈0.37\dfrac1e\approx0.37 の間に収まっているうえ、極大のあとの減り方もゆっくりです(x=20x=20 でもまだ 0.150.15 ほど)。そのため極大も変曲点もほぼ平らな線の上に埋もれ、どこで向きや曲がり方が変わるのか読み取れません。

この場合は、分母の xx の指数を上げて右側を速く 00 に近づけ、全体に定数を掛けて山を高くした関数で形の見本を描きます。たとえば y=12log⁡xx2y=\dfrac{12\log x}{x^2} にすると、次のように山がはっきりします。

図4図4 形の見本 y=12log⁡xx2y=\frac{12\log x}{x^2} を縦横同じ縮尺で描いた図。山がはっきり見える

ただし、これは別の関数なので、特徴的な点の位置も変わります。

(12log⁡xx2)′=12(1−2log⁡x)x3(12log⁡xx2)′′=12(6log⁡x−5)x4\begin{aligned}\left(\dfrac{12\log x}{x^2}\right)'&=\dfrac{12(1-2\log x)}{x^3}\\\left(\dfrac{12\log x}{x^2}\right)''&=\dfrac{12(6\log x-5)}{x^4}\end{aligned}

より、極大は x=ex=\sqrt e、変曲点は x=e56x=e^{\frac56} です。答案に描くときは、この図を「増えて、極大を迎え、変曲点を経てゆっくり 00 に近づく」という形の参考にとどめ、目盛りに書き込む極大・変曲点の座標は元の関数 log⁡xx\dfrac{\log x}{x} の計算(x=e, e32x=e,\ e^{\frac32})で決めてください。

1・2 に共通するのは、正確な縮尺の図と、特徴を伝える図は別物だということです。答案のグラフは縮尺が正確である必要はなく、増減・極値・凹凸・漸近線・軸との交点が正しく読み取れれば十分です。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

2 log⁡\log は自然対数、つまり底が ee の対数です。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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