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無限に足すとどうなる? 等比級数とアキレスと亀

2026年度 中3発展2026年10月6日8分で読めます塾講師木下数列
目次
  1. 1. まず有限個の和(等比数列の和)
  2. 2. 無限に足す=「近づく先」を値と呼ぶ
  3. 3. は「ほぼ」ではなく「厳密に」
  4. 4. アキレスと亀:無限個の区間を有限時間で

12+14+18+116+⋯\dfrac12+\dfrac14+\dfrac18+\dfrac1{16}+\cdots を無限に足すと、いくつになるだろうか。項を限りなく加えていくのに、和はちょうど 11 という有限の値になる。無限個の和がなぜ有限にとどまるのかは、等比数列の和の公式から説明できる。これは極限を使う考え方の、もっともやさしい例でもある。

1. まず有限個の和(等比数列の和)

公比 rr の等比数列を nn 個足した和 Sn=a+ar+ar2+⋯+ar n−1S_n=a+ar+ar^2+\cdots+ar^{\,n-1} を求めよう。定石はrr 倍してずらして引く。

Sn=a+ar+⋯+ar n−1,rSn=    ar+⋯+ar n−1+ar n\begin{aligned}S_n&=a+ar+\cdots+ar^{\,n-1},\\rS_n&=\ \ \ \ ar+\cdots+ar^{\,n-1}+ar^{\,n}\end{aligned}

上から下を引くと途中が全部消えて Sn−rSn=a−ar nS_n-rS_n=a-ar^{\,n}、よって

Sn=a+ar+⋯+ar n−1=a (1−r n)1−r(r≠1)\begin{aligned}S_n&=a+ar+\cdots+ar^{\,n-1}=\frac{a\,(1-r^{\,n})}{1-r}\qquad (r\neq1)\end{aligned}

2. 無限に足す=「近づく先」を値と呼ぶ

いま ∣r∣<1|r|<1(すなわち −1<r<1-1<r<1)とする。nn を大きくすると r nr^{\,n} は 00 に近づく。実際、絶対値をとると∣r n∣=∣r∣ n|r^{\,n}|=|r|^{\,n} で、00 以上 11 未満の数 ∣r∣|r| を何度もかけていくのだから限りなく小さくなる(例:∣r∣=12|r|=\tfrac12 なら(12)10=11024(\tfrac12)^{10}=\tfrac1{1024})。この、nn を限りなく大きくしたときに SnS_n が近づく先を、記号 lim⁡\lim(limit の略)を用いて lim⁡n→∞Sn\displaystyle\lim_{n\to\infty}S_n と書き、これを「無限に足した値」と定義する。§1 の公式で n→∞n\to\infty とすると、r n→0r^{\,n}\to0 の部分だけが消えて

lim⁡n→∞Sn=lim⁡n→∞a(1−r n)1−r=a(1−r n⏟→ 0)1−r=a1−r\begin{aligned}\lim_{n\to\infty}S_n&=\lim_{n\to\infty}\frac{a\bigl(1-r^{\,n}\bigr)}{1-r}\\&=\frac{a\bigl(1-\underbrace{r^{\,n}}_{\to\,0}\bigr)}{1-r}=\frac{a}{1-r}\end{aligned}

となる。まとめると

a+ar+ar2+⋯=a1−r(∣r∣<1)a+ar+ar^2+\cdots=\frac{a}{1-r}\qquad(|r|<1)

つまり「無限に足す」とは、結局有限個の和がどこへ近づくかを見ることにすぎない。これが極限の考え方である。a=12, r=12a=\tfrac12,\ r=\tfrac12 なら 1/21−1/2=1\dfrac{1/2}{1-1/2}=1 で、冒頭の答えと一致する。なお、このように数列の項を次々に足し合わせたものを級数、とくに無限に足していくものを無限級数といい、等比数列から作った級数を等比級数という。

図1図1 右の正方形(面積 11)が 12+14+18+⋯\frac12+\frac14+\frac18+\cdots でちょうど埋まる(=11)。左の正方形 11 つ分を足せば 1+12+14+⋯=21+\frac12+\frac14+\cdots=2。

3. 0.999⋯=10.999\cdots=1 は「ほぼ」ではなく「厳密に」

小数 0.999⋯0.999\cdots は、各位の 99 を足し合わせたもので、

0.999⋯=0.9+0.09+0.009+⋯=0.9⋅(110)0+0.9⋅(110)1+0.9⋅(110)2+⋯\begin{aligned}0.999\cdots&=0.9+0.09+0.009+\cdots\\&=0.9\cdot\Big(\tfrac1{10}\Big)^{0}+0.9\cdot\Big(\tfrac1{10}\Big)^{1}+0.9\cdot\Big(\tfrac1{10}\Big)^{2}+\cdots\end{aligned}

と書ける。これは初項 a=0.9a=0.9、公比 r=110r=\tfrac1{10} の等比級数だから、同じ公式で

0.999⋯=lim⁡n→∞0.9(1−(110)n⏟→ 0)1−110=0.91−0.1=0.90.9=1.\begin{aligned}0.999\cdots&=\lim_{n\to\infty}\frac{0.9\bigl(1-\underbrace{(\tfrac1{10})^{n}}_{\to\,0}\bigr)}{1-\tfrac1{10}}\\&=\frac{0.9}{1-0.1}\\&=\frac{0.9}{0.9}=1.\end{aligned}

同じことは 13=0.333⋯\dfrac13=0.333\cdots からも確かめられる。両辺を 33 倍すると、左辺は 13×3=1\dfrac13\times3=1、右辺は0.333⋯×3=0.999⋯0.333\cdots\times3=0.999\cdots となるので、0.999⋯=10.999\cdots=1。したがって 0.999⋯0.999\cdots は 11 に限りなく近い別の数ではなく、11 と等しい。

4. アキレスと亀:無限個の区間を有限時間で

足の速いアキレスが、前を行く亀を追う。「アキレスが亀のいた地点に着くころ、亀は少し先へ進む。そこへ着くとまた少し先へ…を無限にくり返すから、永遠に追いつけない」という古代のパラドックスだ。具体的に、アキレスは亀の 1010 倍速く、亀ははじめ 100 m100\,\mathrm{m} 先にいるとしよう。アキレスが亀のいた100 m100\,\mathrm{m} 地点に着くまでに、亀は(アキレスの 110\tfrac1{10} の速さだから)100×110=10 m100\times\tfrac1{10}=10\,\mathrm{m}先へ進む。次にアキレスがその 10 m10\,\mathrm{m} を追うあいだに、亀はさらに 10×110=1 m10\times\tfrac1{10}=1\,\mathrm{m} 先へ。これをくり返すと、アキレスが追う距離は毎回 110\tfrac1{10} 倍ずつ縮んで 100, 10, 1, 0.1,…100,\ 10,\ 1,\ 0.1,\dots となる。その合計は、初項 100100・公比 110\tfrac1{10} の等比級数として

100+10+1+0.1+⋯=100(110)0+100(110)1+100(110)2+⋯=lim⁡n→∞100(1−(110)n⏟→ 0)1−110=1001−110=1000.9=111.1⋯ m\begin{aligned}100+10+1+0.1+\cdots&=100\Big(\tfrac1{10}\Big)^{0}+100\Big(\tfrac1{10}\Big)^{1}+100\Big(\tfrac1{10}\Big)^{2}+\cdots\\&=\lim_{n\to\infty}\frac{100\bigl(1-\underbrace{(\tfrac1{10})^{n}}_{\to\,0}\bigr)}{1-\tfrac1{10}}\\&=\frac{100}{1-\tfrac1{10}}\\&=\frac{100}{0.9}\\&=111.1\cdots\,\mathrm{m}\end{aligned}

と有限になる。区間は無限個でも、その長さの和は有限である。各区間を走るのにかかる時間も、距離と同じく110\tfrac1{10} 倍ずつ縮んでいくから、その合計もやはり有限にとどまる。ゆえにアキレスは有限の距離・有限の時間で追いつく。「無限個に分けられる」ことと「追いつけない」ことは、まったく別である。級数の和が有限なら、ちゃんと追いつく。

図2図2 アキレスが亀のいた地点に着くたび、亀はその 110\tfrac1{10} だけ先へ進む。追う距離 100,10,1,0.1,…100,10,1,0.1,\dots は等比的に縮み、無限個あっても和は 111.1⋯111.1\cdots m にとどまる(横方向の縮みは模式的に描いた)。

まとめ:無限級数と極限

  1. 有限和は Sn=a(1−rn)1−rS_n=\dfrac{a(1-r^n)}{1-r}(rr 倍してずらして引く)。
  2. ∣r∣<1|r|<1 なら rn→0r^n\to0(記号 →\to は「限りなく近づく」の意味)で、無限和 =a1−r=\dfrac{a}{1-r}。「無限に足す」=「有限和の近づく先」。
  3. 12+14+⋯=1\frac12+\frac14+\cdots=1、0.999⋯=10.999\cdots=1(厳密)。アキレスは 111.1⋯ m111.1\cdots\,\mathrm{m} で追いつく。
  4. a≠0a\neq0 で ∣r∣≥1|r|\ge1 なら SnS_n は一つの値に近づかない(発散。r≥1r\ge1 なら SnS_n の絶対値が限りなく大きくなり、r≤−1r\le-1 なら振動する)。近づく先があるのは縮む級数だけ。

確かめてみよう

  • 電卓で部分和:12\frac12 を足し、+14+\frac14、+18+\frac18…と続けると、和は 11 を超えて増え続けるのではなく0.5,0.75,0.875,0.9375,…0.5,0.75,0.875,0.9375,\dots と 11 に迫るのを見る(1+12+14+⋯1+\frac12+\frac14+\cdots なら 22 に迫る)。
  • Desmos で近づく様子:desmos.com/calculator にS(n)=(1-0.5^n)/(1-0.5) を入れ、n を大きくすると 22 に張りつくのが見える(a=1,r=12a=1,r=\frac12 の場合。12\frac12 始まりなら 11)。

塾の授業で配った補足資料をもとに書き直しました。

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