無限に足すとどうなる? 等比級数とアキレスと亀
目次
- 1. まず有限個の和(等比数列の和)
- 2. 無限に足す=「近づく先」を値と呼ぶ
- 3. 0.999⋯=1 は「ほぼ」ではなく「厳密に」
- 4. アキレスと亀:無限個の区間を有限時間で
21+41+81+161+⋯ を無限に足すと、いくつになるだろうか。項を限りなく加えていくのに、和はちょうど 1 という有限の値になる。無限個の和がなぜ有限にとどまるのかは、等比数列の和の公式から説明できる。これは極限を使う考え方の、もっともやさしい例でもある。
1. まず有限個の和(等比数列の和)
公比 r の等比数列を n 個足した和 Sn=a+ar+ar2+⋯+arn−1 を求めよう。定石はr 倍してずらして引く。
SnrSn=a+ar+⋯+arn−1,= ar+⋯+arn−1+arn
上から下を引くと途中が全部消えて Sn−rSn=a−arn、よって
Sn=a+ar+⋯+arn−1=1−ra(1−rn)(r=1)
2. 無限に足す=「近づく先」を値と呼ぶ
いま ∣r∣<1(すなわち −1<r<1)とする。n を大きくすると rn は 0 に近づく。実際、絶対値をとると∣rn∣=∣r∣n で、0 以上 1 未満の数 ∣r∣ を何度もかけていくのだから限りなく小さくなる(例:∣r∣=21 なら(21)10=10241)。この、n を限りなく大きくしたときに Sn が近づく先を、記号 lim(limit の略)を用いて n→∞limSn と書き、これを「無限に足した値」と定義する。§1 の公式で n→∞ とすると、rn→0 の部分だけが消えて
n→∞limSn=n→∞lim1−ra(1−rn)=1−ra(1−→0rn)=1−ra
となる。まとめると
a+ar+ar2+⋯=1−ra(∣r∣<1)
つまり「無限に足す」とは、結局有限個の和がどこへ近づくかを見ることにすぎない。これが極限の考え方である。a=21, r=21 なら 1−1/21/2=1 で、冒頭の答えと一致する。なお、このように数列の項を次々に足し合わせたものを級数、とくに無限に足していくものを無限級数といい、等比数列から作った級数を等比級数という。
図1 右の正方形(面積 1)が 21+41+81+⋯ でちょうど埋まる(=1)。左の正方形 1 つ分を足せば 1+21+41+⋯=2。3. 0.999⋯=1 は「ほぼ」ではなく「厳密に」
小数 0.999⋯ は、各位の 9 を足し合わせたもので、
0.999⋯=0.9+0.09+0.009+⋯=0.9⋅(101)0+0.9⋅(101)1+0.9⋅(101)2+⋯
と書ける。これは初項 a=0.9、公比 r=101 の等比級数だから、同じ公式で
0.999⋯=n→∞lim1−1010.9(1−→0(101)n)=1−0.10.9=0.90.9=1.
同じことは 31=0.333⋯ からも確かめられる。両辺を 3 倍すると、左辺は 31×3=1、右辺は0.333⋯×3=0.999⋯ となるので、0.999⋯=1。したがって 0.999⋯ は 1 に限りなく近い別の数ではなく、1 と等しい。
4. アキレスと亀:無限個の区間を有限時間で
足の速いアキレスが、前を行く亀を追う。「アキレスが亀のいた地点に着くころ、亀は少し先へ進む。そこへ着くとまた少し先へ…を無限にくり返すから、永遠に追いつけない」という古代のパラドックスだ。具体的に、アキレスは亀の 10 倍速く、亀ははじめ 100m 先にいるとしよう。アキレスが亀のいた100m 地点に着くまでに、亀は(アキレスの 101 の速さだから)100×101=10m先へ進む。次にアキレスがその 10m を追うあいだに、亀はさらに 10×101=1m 先へ。これをくり返すと、アキレスが追う距離は毎回 101 倍ずつ縮んで 100, 10, 1, 0.1,… となる。その合計は、初項 100・公比 101 の等比級数として
100+10+1+0.1+⋯=100(101)0+100(101)1+100(101)2+⋯=n→∞lim1−101100(1−→0(101)n)=1−101100=0.9100=111.1⋯m
と有限になる。区間は無限個でも、その長さの和は有限である。各区間を走るのにかかる時間も、距離と同じく101 倍ずつ縮んでいくから、その合計もやはり有限にとどまる。ゆえにアキレスは有限の距離・有限の時間で追いつく。「無限個に分けられる」ことと「追いつけない」ことは、まったく別である。級数の和が有限なら、ちゃんと追いつく。
図2 アキレスが亀のいた地点に着くたび、亀はその 101 だけ先へ進む。追う距離 100,10,1,0.1,… は等比的に縮み、無限個あっても和は 111.1⋯ m にとどまる(横方向の縮みは模式的に描いた)。まとめ:無限級数と極限
- 有限和は Sn=1−ra(1−rn)(r 倍してずらして引く)。
- ∣r∣<1 なら rn→0(記号 → は「限りなく近づく」の意味)で、無限和 =1−ra。「無限に足す」=「有限和の近づく先」。
- 21+41+⋯=1、0.999⋯=1(厳密)。アキレスは 111.1⋯m で追いつく。
- a=0 で ∣r∣≥1 なら Sn は一つの値に近づかない(発散。r≥1 なら Sn の絶対値が限りなく大きくなり、r≤−1 なら振動する)。近づく先があるのは縮む級数だけ。
確かめてみよう
- 電卓で部分和:21 を足し、+41、+81…と続けると、和は 1 を超えて増え続けるのではなく0.5,0.75,0.875,0.9375,… と 1 に迫るのを見る(1+21+41+⋯ なら 2 に迫る)。
- Desmos で近づく様子:desmos.com/calculator に
S(n)=(1-0.5^n)/(1-0.5) を入れ、n を大きくすると 2 に張りつくのが見える(a=1,r=21 の場合。21 始まりなら 1)。
塾の授業で配った補足資料をもとに書き直しました。
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