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パップス・ギュルダンの定理

2025年度 高2発展2026年10月6日8分で読めます塾講師木下積分
目次
  1. 1. 定理の内容
  2. 2. 例:トーラスの体積
  3. 3. 逆に使って重心の位置を求める
  4. 4. 傘型近似の帯を定理で見直す

平面図形を直線のまわりに1回転させた立体の体積は、ふつうは断面積を積分して求めます。ところが図形の面積と重心の位置が分かっていれば、積分をせずに掛け算1回で体積が出ます。そのことを保証するのがパップス・ギュルダンの定理です。

この定理は高校の教科書の範囲外で、答案の中で使うと証明していない結果を引用したことになります。答案では積分で体積を計算し、定理のほうは見当づけや検算に使いましょう。

1. 定理の内容

パップス・ギュルダンの定理

平面上に直線 ll と図形 AA があり、AA は ll の片側にある(ll に接していてもよいが、ll をまたがない)とする。AA の面積を SS、AA の重心 G と ll との距離を rr とすると、AA を ll のまわりに1回転させてできる立体の体積 VV は

V=S×2πrV=S\times2\pi r

である。2πr2\pi r は、重心 G が1回転するときに描く円の周の長さである。

図1図1 図形 AA を直線 ll のまわりに回す。体積に関係するのは AA の面積と、重心 G から ll までの距離 rr だけである

ここで「重心」とは、図形 AA を厚さと密度がどこも同じ薄い板とみなしたときに、その板がつり合う点のことです。三角形なら3頂点の座標の平均がこの点になります。一般の図形では、ll を xx 軸にとって AA を y≧0y\geqq0 の側に置くと、G と ll の距離は

r=1S∬Ay dx dyr=\frac1S\iint_A y\,dx\,dy

で定めます。右辺は「AA の各点の高さ yy を、面積の重みで平均したもの」です。

なぜ成り立つのか

AA を、面積 ΔS\Delta S の小さなかけらに細かく分けます。ll から高さ yy の所にあるかけらを ll のまわりに回すと、半径 yy の円に沿った細い輪ができます。輪の断面積は ΔS\Delta S、輪の周の長さは 2πy2\pi y なので、輪の体積はおよそ 2πy ΔS2\pi y\,\Delta S です(バウムクーヘン法では薄い筒を切り開いて薄い板とみなしました。それと同じ考え方です)。

AA が ll の片側にあれば、違うかけらから生まれた輪どうしは重なりません。立体はこれらの輪ですき間なく埋まるので、輪の体積を全部足すと

V=∬A2πy dx dy=2π⋅∬Ay dx dy=2π⋅rS\begin{aligned}V&=\iint_A 2\pi y\,dx\,dy\\&=2\pi\cdot\iint_A y\,dx\,dy=2\pi\cdot rS\end{aligned}

となります。最後の等号で、上の rr の定義を使いました。

AA が ll をまたぐと、ll の上側のかけらと下側のかけらが同じ場所に輪を作ることがあり、その部分は立体としては1回しか数えないのに、上の和では2回数えてしまいます。片側という条件はこのために必要です。

定理の式には図形の形そのものが入っていません。したがって、面積と重心の高さが同じなら、図形を平面の中でどう回したりずらしたりしても(ll の片側にある限り)回転体の体積は同じになります。

2. 例:トーラスの体積

円を、その円と交わらない直線のまわりに回してできるドーナツ形の立体をトーラスといいます。

例

xyxy 平面で、中心 C(0, R)(0,\,R)、半径 ρ\rho の円(内部も含む)を xx 軸のまわりに1回転させる。R>ρR>\rho なので、円は xx 軸と交わらない。

図2図2 xx 軸を回転軸とし、中心 C(0, R)(0,\,R)、半径 ρ\rho の円を回す。点線の円は、半回転したときの位置

円の面積は πρ2\pi\rho^2、円の重心は中心 C なので、重心と回転軸の距離は RR である。定理より

V=πρ2×2πR=2π2Rρ2V=\pi\rho^2\times2\pi R=\boldsymbol{2\pi^2R\rho^2}

この値を積分でも確かめておきます。xx 軸に垂直な平面 x=tx=t(−ρ≦t≦ρ-\rho\leqq t\leqq\rho)で立体を切ると、断面は内側の半径 R−ρ2−t2R-\sqrt{\rho^2-t^2}、外側の半径 R+ρ2−t2R+\sqrt{\rho^2-t^2} の円環で、その面積は

π{(R+ρ2−t2)2−(R−ρ2−t2)2}=4πRρ2−t2\pi\Bigl\{\bigl(R+\sqrt{\rho^2-t^2}\bigr)^2-\bigl(R-\sqrt{\rho^2-t^2}\bigr)^2\Bigr\}=4\pi R\sqrt{\rho^2-t^2}

です。∫−ρρρ2−t2 dt\displaystyle\int_{-\rho}^{\rho}\sqrt{\rho^2-t^2}\,dt は半径 ρ\rho の半円の面積 πρ22\dfrac{\pi\rho^2}{2} なので、V=4πR⋅πρ22=2π2Rρ2V=4\pi R\cdot\dfrac{\pi\rho^2}{2}=2\pi^2R\rho^2 となり、定理の値と一致します。

3. 逆に使って重心の位置を求める

回転体の体積を別の方法で知っていれば、定理の式を rr について解くことで、重心と ll の距離が分かります。

まず答えの分かっている図形で確かめる 直角をはさむ2辺の長さが hh、kk の直角三角形を、長さ hh の辺を ll に重ねて置きます。ll のまわりに回すと、底面の半径 kk、高さ hh の円錐ができ、体積は 13πk2h\dfrac13\pi k^2h です。面積は 12hk\dfrac12hk なので

r=V2πS=13πk2h2π⋅12hk=k3r=\frac{V}{2\pi S}=\frac{\frac13\pi k^2h}{2\pi\cdot\frac12hk}=\frac k3

となります。3頂点の高さは 0, 0, k0,\,0,\,k で、その平均 k3\dfrac k3 と一致しています。

例:半円の重心

半径 rr の半円の重心 G は、対称性から、直径の中点 O を通り直径に垂直な直線の上にある。O から G までの距離 dd を求める。

図3図3 直線 ll 上に直径を置いた半径 rr の半円。直径の中点 O から距離 dd の所に重心 G がある

直径を ll に重ねて半円を ll のまわりに回すと、半径 rr の球になる。球の体積は 43πr3\dfrac43\pi r^3、半円の面積は 12πr2\dfrac12\pi r^2 なので、定理より

43πr3=12πr2×2πd∴ d=4r3π\frac43\pi r^3=\frac12\pi r^2\times2\pi d\qquad\therefore\ d=\frac{4r}{3\pi}

43π≒0.42\dfrac{4}{3\pi}\fallingdotseq0.42 なので、G は O から半径の4割ほど弧の側にあります。半円は直径の近くほど幅が広いので、重心は半径の半分より直径に近い側に来ます。

練習 同じ方法で、次の図形の重心を求めてみましょう。回転軸を2通りにとると、重心の座標が1つずつ求まります。

  1. 不等式 0≦x≦10\leqq x\leqq1、0≦y≦x20\leqq y\leqq x^2 が表す領域(xx 軸のまわりと yy 軸のまわりに回す)
  2. 半径 rr の円を4等分した扇形(中心角 π2\dfrac\pi2)。片方の半径を軸にして回すと半球になることを使う
  3. 半径 rr、中心角 θ\theta(0<θ≦π0<\theta\leqq\pi)の扇形。半径の片方を ll に重ねて回してできる立体は、球の一部から円錐を取り除いた形で、体積は 23πr3(1−cos⁡θ)\dfrac23\pi r^3(1-\cos\theta)
図4図4 左が練習1の領域、右が練習3の扇形

扇形の答えが出たら、θ=π\theta=\pi で半円の結果に戻ること、θ\theta を 00 に近づけると扇形は頂角のとても小さい二等辺三角形に近くなり、O から重心までの距離が 23r\dfrac23r に近づくことも確かめてみましょう。

練習の答え(自分で求めてから開く)
  • 練習1:面積 13\dfrac13。xx 軸のまわりの体積 π5\dfrac\pi5、yy 軸のまわりの体積 π2\dfrac\pi2 から、重心は (34, 310)\left(\dfrac34,\ \dfrac3{10}\right)。
  • 練習2:扇形の2本の半径それぞれからの距離が 4r3π\dfrac{4r}{3\pi}。片方の半径を ll に重ねて回すと半球(体積 23πr3\dfrac23\pi r^3)になり、面積 14πr2\dfrac14\pi r^2 から距離 4r3π\dfrac{4r}{3\pi} が出る。対称性から、もう1本の半径からの距離も同じ。
  • 練習3:ll に重ねた半径からの距離は 2r(1−cos⁡θ)3θ\dfrac{2r(1-\cos\theta)}{3\theta}。重心は中心角の二等分線上にあり、中心 O からの距離は 4rsin⁡θ23θ\dfrac{4r\sin\frac\theta2}{3\theta}。

4. 傘型近似の帯を定理で見直す

授業では、斜めの直線を回転軸にして、その直線と曲線で囲まれた部分を回す問題を扱いました(斜回転体の頁)。そこで使った「傘型近似」は、xx 軸に垂直に切った幅 Δx\Delta x、長さ hh の細い帯を1本ずつ回し、その体積を πcos⁡θ h2 Δx\pi\cos\theta\,h^2\,\Delta x(θ\theta は回転軸と xx 軸のなす角)とするものでした。

この式は、パップス・ギュルダンの定理からも出せます。帯は一端が回転軸に接していて、軸の片側にあります。帯の面積は h Δxh\,\Delta x です。帯の上で軸から縦方向に ss 離れた点と、回転軸との距離は scos⁡θs\cos\theta です。帯の重心は縦方向に h2\dfrac h2 の所にあるので、重心と回転軸との距離は h2cos⁡θ\dfrac h2\cos\theta になります。定理より、帯を回してできる立体の体積は

h Δx×2π⋅h2cos⁡θ=πcos⁡θ h2 Δxh\,\Delta x\times2\pi\cdot\frac h2\cos\theta=\pi\cos\theta\,h^2\,\Delta x

となり、等積変形で出した式と同じになります。

塾の授業で配った補足資料をもとに書き直しました。

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