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極座標の弧長と伸開線

2025年度 高2発展2026年10月6日21分で読めます塾講師木下積分
目次
  1. 1. 扇形の弧を足すと、長さを少なく見積もる
  2. 2. 微小な三角形で誤差の大きさを測る
  3. 3. 座標に直して導く
  4. 4. 伸開線:巻きつけた糸をほどく
  5. 5. 伸開線の例
  6. 円の伸開線
  7. サイクロイドの伸開線
  8. カージオイドの伸開線(複素数で計算する)
  9. アステロイドの伸開線
  10. 一般のエピサイクロイド・ハイポサイクロイド
  11. 相似にならない例:カテナリーとトラクトリクス
  12. 6. 縮閉線

前半(§1〜§3)では、極座標 r=f(θ)r=f(\theta) で表された曲線の長さを扱います。面積を求めるときに使った「細い扇形に切って足す」方法が、長さには通用しません。その理由を図で突き止め、正しい公式を導きます。後半(§4〜§6)では、曲線に巻きつけた糸をほどいたとき、糸の先端が描く曲線(伸開線)を調べます。授業で、この曲線を求める問題を扱いました。

1. 扇形の弧を足すと、長さを少なく見積もる

極座標の曲線が囲む面積は、原点を頂点とする細い扇形に切って足し合わせることで求めました。半径 rr、中心角 Δθ\varDelta\theta の扇形の面積は 12r2Δθ\dfrac12r^2\varDelta\theta なので、面積は 12∫r2 dθ\displaystyle\frac12\int r^2\,d\theta です。

同じ発想を長さに持ち込むと、扇形の弧の長さ rΔθr\varDelta\theta を足して ∫r dθ\displaystyle\int r\,d\theta が曲線の長さになりそうに見えます。ところが、この式は一般には正しい長さを与えません。答えを知っている曲線で試してみます。

r=2cos⁡θ (−π2≦θ≦π2)r=2\cos\theta\ \left(-\dfrac\pi2\leqq\theta\leqq\dfrac\pi2\right) の両辺に rr を掛けると x2+y2=2xx^2+y^2=2x、すなわち (x−1)2+y2=1(x-1)^2+y^2=1 なので、この曲線は中心 (1, 0)(1,\,0)、半径 11 の円です。周の長さは 2π2\pi、面積は π\pi と分かっています。

図1図1 円 r=2cos⁡θr=2\cos\theta を、原点を頂点とする中心角 30∘30^\circ の扇形6つで覆った図。扇形の弧は円から外れている

扇形で面積を計算すると

12∫−π/2π/2(2cos⁡θ)2 dθ=∫−π/2π/2(1+cos⁡2θ) dθ=π\frac12\int_{-\pi/2}^{\pi/2}(2\cos\theta)^2\,d\theta=\int_{-\pi/2}^{\pi/2}(1+\cos2\theta)\,d\theta=\pi

となり、正しい値が出ます。一方、扇形の弧を足すと

∫−π/2π/22cos⁡θ dθ=[2sin⁡θ]−π/2π/2=4\int_{-\pi/2}^{\pi/2}2\cos\theta\,d\theta=\Bigl[2\sin\theta\Bigr]_{-\pi/2}^{\pi/2}=4

となり、本当の長さ 2π≒6.282\pi\fallingdotseq6.28 よりかなり小さくなります。図1を見ると、原点の近くでは円がほぼ半径の方向に走っているのに、扇形の弧は半径に垂直な方向にしか進めません。分割を細かくしても、この向きの食い違いは残ります。

授業で扱った問題1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へのカージオイド r=a(1+cos⁡θ) (a>0)r=a(1+\cos\theta)\ (a>0) でも同じことが起きます。全長は媒介変数の積分で 8a8a と求めましたが、xx 軸についての対称性を使って扇形の弧を足すと

2∫0πa(1+cos⁡θ) dθ=2a[θ+sin⁡θ]0π=2πa≒6.28a2\int_0^\pi a(1+\cos\theta)\,d\theta=2a\Bigl[\theta+\sin\theta\Bigr]_0^\pi=2\pi a\fallingdotseq6.28a

となり、やはり足りません。

2. 微小な三角形で誤差の大きさを測る

曲線上に、偏角 θ\theta の点 P と偏角 θ+Δθ\theta+\varDelta\theta の点 Q をとります。P から直線 OQ に下ろした垂線の足を H とします。

図2図2 曲線上の2点 P, Q と原点 O。P から OQ に下ろした垂線の足が H、弦 PQ と PH のなす角が α\alpha。破線は扇形の弧

直角三角形 PHQ の各辺を Δθ\varDelta\theta で表します。OP=r=f(θ)\mathrm{OP}=r=f(\theta) と書きます。

曲線の微小な長さ Δl\varDelta l は弦 PQ でよく近似されるので、Δl≒r2+(r′)2 Δθ\varDelta l\fallingdotseq\sqrt{r^2+(r')^2}\,\varDelta\theta です。これを足し集めると、次の公式が得られます。

l=∫θ1θ2r2+(r′)2 dθl=\int_{\theta_1}^{\theta_2}\sqrt{r^2+(r')^2}\,d\theta

扇形の弧 rΔθr\varDelta\theta と本当の長さの比は、弦 PQ と PH のなす角を α\alpha として

PHPQ=cos⁡α ⟶ rr2+(r′)2(Δθ→0)\begin{aligned}\frac{\mathrm{PH}}{\mathrm{PQ}}&=\cos\alpha\ \longrightarrow\ \frac{r}{\sqrt{r^2+(r')^2}}\qquad (\varDelta\theta\to0)\end{aligned}

です。Δθ\varDelta\theta を小さくしても角 α\alpha は 00 に近づかず、曲線の向きと半径に垂直な向きとのずれに近づきます。したがって r′=0r'=0 となる点(そこで曲線は半径に垂直に進む)以外では比が 11 にならず、どの小片も一定の割合で短く見積もられます。§1 の円では r2+(r′)2=4cos⁡2θ+4sin⁡2θ=4r^2+(r')^2=4\cos^2\theta+4\sin^2\theta=4 なので比は cos⁡θ\cos\theta で、扇形の弧の和 44 は、正しい被積分関数 22 に cos⁡θ\cos\theta を掛けた ∫−π/2π/22cos⁡θ dθ\displaystyle\int_{-\pi/2}^{\pi/2}2\cos\theta\,d\theta そのものです。

面積では誤差が消える理由

扇形 OPH と、曲線と2本の半径で囲まれた本当の細片の差は、だいたい直角三角形 PHQ の分です。その面積は 12 PH⋅HQ≒12r∣r′∣(Δθ)2\dfrac12\,\mathrm{PH}\cdot\mathrm{HQ}\fallingdotseq\dfrac12r|r'|(\varDelta\theta)^2 で、扇形の面積 12r2Δθ\dfrac12r^2\varDelta\theta に比べて Δθ\varDelta\theta をもう一つ余分に含みます。比は ∣r′∣rΔθ\dfrac{|r'|}{r}\varDelta\theta 程度で、Δθ→0\varDelta\theta\to0 で 00 に近づくので、足し合わせても誤差は消えます。長さでは、捨てた辺 HQ が PH と同じく Δθ\varDelta\theta に比例する大きさをもつので、誤差が割合として残ります。

公式を確かめます。§1 の円では ∫−π/2π/24 dθ=2π\displaystyle\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\sqrt4\,d\theta=2\pi で、周の長さに一致します。カージオイド r=a(1+cos⁡θ)r=a(1+\cos\theta) では r′=−asin⁡θr'=-a\sin\theta なので

r2+(r′)2=a2{(1+cos⁡θ)2+sin⁡2θ}=2a2(1+cos⁡θ)=4a2cos⁡2θ2\begin{aligned}r^2+(r')^2&=a^2\bigl\{(1+\cos\theta)^2+\sin^2\theta\bigr\}\\&=2a^2(1+\cos\theta)\\&=4a^2\cos^2\frac\theta2\end{aligned}

です。0≦θ≦π0\leqq\theta\leqq\pi では cos⁡θ2≧0\cos\dfrac\theta2\geqq0 なので根号はそのまま外れて、上下の対称性から

l=2∫0π2acos⁡θ2 dθ=8a[sin⁡θ2]0π=8al=2\int_0^\pi2a\cos\frac\theta2\,d\theta=8a\Bigl[\sin\frac\theta2\Bigr]_0^\pi=8a

となり、媒介変数の積分で求めた長さと一致します。

3. 座標に直して導く

§2 は図による説明でした。同じ公式は、媒介変数表示の弧長の公式 l=∫(x′)2+(y′)2 dθ\displaystyle l=\int\sqrt{(x')^2+(y')^2}\,d\theta からも出ます。こちらは近似を使わないので、証明としてはこちらが確実です。

θ\theta を媒介変数として x=rcos⁡θ, y=rsin⁡θx=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta(r=f(θ)r=f(\theta))と見ると、積の微分から

x′=r′cos⁡θ−rsin⁡θ,y′=r′sin⁡θ+rcos⁡θ\begin{aligned}x'&=r'\cos\theta-r\sin\theta,\\y'&=r'\sin\theta+r\cos\theta\end{aligned}

です。2乗して足すと、rr′rr' を含む項は −2rr′sin⁡θcos⁡θ-2rr'\sin\theta\cos\theta と +2rr′sin⁡θcos⁡θ+2rr'\sin\theta\cos\theta で打ち消し合い、

(x′)2+(y′)2=(r′)2(cos⁡2θ+sin⁡2θ)+r2(sin⁡2θ+cos⁡2θ)=r2+(r′)2\begin{aligned}(x')^2+(y')^2&=(r')^2(\cos^2\theta+\sin^2\theta)+r^2(\sin^2\theta+\cos^2\theta)\\&=r^2+(r')^2\end{aligned}

が残ります。これを弧長の公式に入れれば l=∫θ1θ2r2+(r′)2 dθ\displaystyle l=\int_{\theta_1}^{\theta_2}\sqrt{r^2+(r')^2}\,d\theta です。

4. 伸開線:巻きつけた糸をほどく

平面上の曲線 CC に糸を沿わせて巻きつけておき、糸の端を持って、たるませずに引きはがしていきます。このとき糸の端が描く曲線を、CC の伸開線と呼びます。授業で扱った別の問題(接線の上で、弧の長さと同じ距離だけ接点から離した点の軌跡を求める問題)で求めた曲線は、まさにこの伸開線です。

図3図3 放物線 CC に原点 A から巻いた糸を点 P までほどいた図。PQ は接線で、Q の描く曲線(破線)が伸開線

図3は、放物線 y=x22y=\dfrac{x^2}2 の x≧0x\geqq0 の部分に、原点 A を端として巻いた糸を、点 P までほどいたところです。太い青が糸で、P から先はまだ曲線に沿っています。破線が、ここまでに端 Q が通った跡です。

座標で書きます。曲線 CC を P(t)=(x(t), y(t))\mathrm{P}(t)=(x(t),\,y(t)) と表し、糸の端ははじめ A=P(t0)\mathrm{A}=\mathrm{P}(t_0) にあり、糸は t≧t0t\geqq t_0 の側に巻かれているとします。接点が P(t)\mathrm{P}(t) まで来たときの端を Q とします。Q の位置は次の2つの事実で決まります。

  1. 糸はぴんと張っているので、ほどけた部分 PQ は線分で、P での CC の接線の上にあります。Q は P から見て A の側、つまり速度ベクトル v=(x′(t), y′(t))\boldsymbol v=(x'(t),\,y'(t)) と逆の向きにあります。
  2. 糸は伸び縮みしないので、PQ の長さは、ほどけた弧 AP の長さ s(t)=∫t0t∣v(u)∣ du\displaystyle s(t)=\int_{t_0}^t|\boldsymbol v(u)|\,du に等しくなります。

速度方向の単位ベクトルを T=v∣v∣\boldsymbol T=\dfrac{\boldsymbol v}{|\boldsymbol v|} と書くと、OQ→=OP→−s(t) T\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\overrightarrow{\mathrm{OP}}-s(t)\,\boldsymbol T、成分で書けば次の式です。

(X(t)Y(t))=(x(t)y(t))−∫t0tx′(u)2+y′(u)2 dux′(t)2+y′(t)2(x′(t)y′(t))(∗)\begin{pmatrix}X(t)\\Y(t)\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}x(t)\\y(t)\end{pmatrix}-\frac{\displaystyle\int_{t_0}^t\sqrt{x'(u)^2+y'(u)^2}\,du}{\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}}\begin{pmatrix}x'(t)\\y'(t)\end{pmatrix}\qquad(\ast)

伸開線は糸と直角に交わる

式 (∗)(\ast) を tt で微分します。s′(t)=∣v∣s'(t)=|\boldsymbol v| なので (sT)′=∣v∣T+sT′=v+sT′(s\boldsymbol T)'=|\boldsymbol v|\boldsymbol T+s\boldsymbol T'=\boldsymbol v+s\boldsymbol T' となり、

ddtOQ→=v−(v+sT′)=−s T′\frac{d}{dt}\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\boldsymbol v-(\boldsymbol v+s\boldsymbol T')=-s\,\boldsymbol T'

です。∣T∣2=1|\boldsymbol T|^2=1 を微分すると 2T⋅T′=02\boldsymbol T\cdot\boldsymbol T'=0 なので、T′\boldsymbol T' は T\boldsymbol T に垂直です。よって Q の速度は糸 PQ の向き T\boldsymbol T に垂直で、伸開線の Q での法線は、糸 PQ を含む直線になります。§6 でこの事実を使います。

5. 伸開線の例

円の伸開線

単位円 (x, y)=(cos⁡t, sin⁡t)(x,\,y)=(\cos t,\,\sin t) を点 A(1, 0)\mathrm{A}(1,\,0)(t0=0t_0=0)からほどきます。v=(−sin⁡t, cos⁡t)\boldsymbol v=(-\sin t,\,\cos t) で ∣v∣=1|\boldsymbol v|=1、s=ts=t なので、式 (∗)(\ast) から

(X, Y)=(cos⁡t+tsin⁡t, sin⁡t−tcos⁡t)(X,\,Y)=(\cos t+t\sin t,\ \sin t-t\cos t)

です。原点からの距離の2乗は X2+Y2=1+t2X^2+Y^2=1+t^2 で、ほどくほど円から遠ざかる渦巻きになります。円の伸開線は円ではありません。

図4図4 単位円(黒)と、点 A からほどいた伸開線(青)。t=π2, π, 3π2t=\frac\pi2,\ \pi,\ \frac{3\pi}2 のときの糸を細線で示す

サイクロイドの伸開線

半径 11 の円を xx 軸に沿って滑らせずに転がすとき、円周に固定した1点の描く曲線が、サイクロイドです。円が角 tt だけ回転した時点で、最初に原点に接していた点は

(x, y)=(t−sin⁡t, 1−cos⁡t)(x,\,y)=(t-\sin t,\ 1-\cos t)

にあります。山の頂点 A(π, 2)\mathrm{A}(\pi,\,2)(t0=πt_0=\pi)から右半分 π≦t≦2π\pi\leqq t\leqq2\pi をほどきます。半角の公式で

v=(1−cos⁡t, sin⁡t)=2sin⁡t2(sin⁡t2, cos⁡t2)\boldsymbol v=(1-\cos t,\ \sin t)=2\sin\frac t2\left(\sin\frac t2,\ \cos\frac t2\right)

と書けて、この範囲では sin⁡t2≧0\sin\dfrac t2\geqq0 なので ∣v∣=2sin⁡t2|\boldsymbol v|=2\sin\dfrac t2、T=(sin⁡t2, cos⁡t2)\boldsymbol T=\left(\sin\dfrac t2,\ \cos\dfrac t2\right) です。ほどいた長さは

s=∫πt2sin⁡u2 du=−4cos⁡t2s=\int_\pi^t2\sin\frac u2\,du=-4\cos\frac t2

なので、

sT=−4cos⁡t2(sin⁡t2, cos⁡t2)=(−2sin⁡t, −2−2cos⁡t)\begin{aligned}s\boldsymbol T&=-4\cos\frac t2\left(\sin\frac t2,\ \cos\frac t2\right)\\&=(-2\sin t,\ -2-2\cos t)\end{aligned}

となり、

(X, Y)=(t−sin⁡t+2sin⁡t, 1−cos⁡t+2+2cos⁡t)=(t+sin⁡t, 3+cos⁡t)\begin{aligned}(X,\,Y)&=(t-\sin t+2\sin t,\ 1-\cos t+2+2\cos t)\\&=(t+\sin t,\ 3+\cos t)\end{aligned}

を得ます。t=u+πt=u+\pi(0≦u≦π0\leqq u\leqq\pi)と置き直すと

(X, Y)=(u−sin⁡u, 1−cos⁡u)+(π, 2)(X,\,Y)=(u-\sin u,\ 1-\cos u)+(\pi,\,2)

で、これはサイクロイドの左半分を (π, 2)(\pi,\,2) だけ平行移動した曲線です。サイクロイドの伸開線は、合同なサイクロイドになります。

図5図5 サイクロイド(黒)と、頂点 A から右半分をほどいた伸開線(青)。伸開線は (π, 2)(\pi,\,2) から (2π, 4)(2\pi,\,4) までの合同なサイクロイドの弧

カージオイドの伸開線(複素数で計算する)

カージオイドやアステロイドは、複素数平面で eit=cos⁡t+isin⁡te^{it}=\cos t+i\sin t を使うと計算が短くなります。eiaeib=ei(a+b)e^{ia}e^{ib}=e^{i(a+b)} と、tt で微分すると (eikt)′=ikeikt(e^{ikt})'=ike^{ikt} になること(実部と虚部をそれぞれ微分すれば確かめられます)だけを使います。

カージオイドは、単位円に外から接する半径 11 の円を滑らせずに転がしたとき、その円周に固定した1点の描く曲線です。動く円の中心の偏角が tt のとき、はじめ (1, 0)(1,\,0) にあった点は

z(t)=2eit−e2it((x, y)=(2cos⁡t−cos⁡2t, 2sin⁡t−sin⁡2t))\begin{aligned}z(t)&=2e^{it}-e^{2it}\qquad \bigl((x,\,y)=(2\cos t-\cos2t,\ 2\sin t-\sin2t)\bigr)\end{aligned}

にあります。A=z(π)=−3\mathrm{A}=z(\pi)=-3 から下半分 π≦t≦2π\pi\leqq t\leqq2\pi をほどきます。

z′(t)=2ieit−2ie2it=2ieit(1−eit)z'(t)=2ie^{it}-2ie^{2it}=2ie^{it}\bigl(1-e^{it}\bigr)

で、1−eit=eit/2(e−it/2−eit/2)=−2isin⁡t2 eit/21-e^{it}=e^{it/2}\bigl(e^{-it/2}-e^{it/2}\bigr)=-2i\sin\dfrac t2\,e^{it/2} なので

z′(t)=4sin⁡t2 e3it/2z'(t)=4\sin\frac t2\,e^{3it/2}

です。この範囲では sin⁡t2≧0\sin\dfrac t2\geqq0 なので、∣z′∣=4sin⁡t2|z'|=4\sin\dfrac t2、単位ベクトルは e3it/2e^{3it/2} です。ほどいた長さは s=∫πt4sin⁡u2 du=−8cos⁡t2\displaystyle s=\int_\pi^t4\sin\frac u2\,du=-8\cos\frac t2 で、式 (∗)(\ast) は複素数で Z=z−s e3it/2Z=z-s\,e^{3it/2} と書けるので

Z=2eit−e2it+8cos⁡t2 e3it/2=2eit−e2it+4(eit/2+e−it/2)e3it/2=6eit+3e2it\begin{aligned}Z&=2e^{it}-e^{2it}+8\cos\frac t2\,e^{3it/2}\\&=2e^{it}-e^{2it}+4\bigl(e^{it/2}+e^{-it/2}\bigr)e^{3it/2}\\&=6e^{it}+3e^{2it}\end{aligned}

となります。成分では (X, Y)=(6cos⁡t+3cos⁡2t, 6sin⁡t+3sin⁡2t)(X,\,Y)=(6\cos t+3\cos2t,\ 6\sin t+3\sin2t) です。t=u+πt=u+\pi(0≦u≦π0\leqq u\leqq\pi)と置くと eit=−eiue^{it}=-e^{iu}、e2it=e2iue^{2it}=e^{2iu} なので

Z=−6eiu+3e2iu=−3(2eiu−e2iu)=−3 z(u)\begin{aligned}Z&=-6e^{iu}+3e^{2iu}\\&=-3\bigl(2e^{iu}-e^{2iu}\bigr)\\&=-3\,z(u)\end{aligned}

です。伸開線は、カージオイドの上半分を原点を中心に −3-3 倍(33 倍に拡大して原点について対称移動)した曲線で、やはりカージオイドの一部です。

図6図6 カージオイド(黒)と、A(−3, 0)\mathrm{A}(-3,\,0) から下半分をほどいた伸開線(青)。伸開線は3倍の大きさの逆向きのカージオイドの弧で、(9, 0)(9,\,0) で終わる

アステロイドの伸開線

アステロイドは、半径 11 の円に内側から接する半径 14\dfrac14 の円を滑らせずに転がしたとき、その円周に固定した1点の描く曲線です。動く円の中心の偏角が tt のとき、はじめ (1, 0)(1,\,0) にあった点は

z(t)=14(3eit+e−3it)((x, y)=(cos⁡3t, sin⁡3t))\begin{aligned}z(t)&=\frac14\bigl(3e^{it}+e^{-3it}\bigr)\qquad \bigl((x,\,y)=(\cos^3t,\ \sin^3t)\bigr)\end{aligned}

にあります(3倍角の公式 cos⁡3t=4cos⁡3t−3cos⁡t\cos3t=4\cos^3t-3\cos t、sin⁡3t=3sin⁡t−4sin⁡3t\sin3t=3\sin t-4\sin^3t で実部と虚部を確かめられます)。第1象限の弧の真ん中 A=z ⁣(π4)\mathrm{A}=z\!\left(\dfrac\pi4\right) から、π4≦t≦π2\dfrac\pi4\leqq t\leqq\dfrac\pi2 の部分をほどきます。

z′(t)=3i4(eit−e−3it)=3i4e−it(e2it−e−2it)=−32sin⁡2t e−it\begin{aligned}z'(t)&=\frac{3i}4\bigl(e^{it}-e^{-3it}\bigr)\\&=\frac{3i}4e^{-it}\bigl(e^{2it}-e^{-2it}\bigr)\\&=-\frac32\sin2t\,e^{-it}\end{aligned}

で、この範囲では sin⁡2t≧0\sin2t\geqq0 なので、∣z′∣=32sin⁡2t|z'|=\dfrac32\sin2t、単位ベクトルは −e−it-e^{-it} です。ほどいた長さは s=∫π/4t32sin⁡2u du=−34cos⁡2t\displaystyle s=\int_{\pi/4}^t\frac32\sin2u\,du=-\frac34\cos2t なので

Z=z−s(−e−it)=z−34cos⁡2t e−it=34eit+14e−3it−38(eit+e−3it)=18(3eit−e−3it)\begin{aligned}Z&=z-s\bigl(-e^{-it}\bigr)\\&=z-\frac34\cos2t\,e^{-it}\\&=\frac34e^{it}+\frac14e^{-3it}-\frac38\bigl(e^{it}+e^{-3it}\bigr)\\&=\frac18\bigl(3e^{it}-e^{-3it}\bigr)\end{aligned}

です。成分では

(X, Y)=(18(3cos⁡t−cos⁡3t), 18(3sin⁡t+sin⁡3t))(X,\,Y)=\left(\frac18(3\cos t-\cos3t),\ \frac18(3\sin t+\sin3t)\right)

となります。t=u+π4t=u+\dfrac\pi4(0≦u≦π40\leqq u\leqq\dfrac\pi4)と置くと e−3it=e−3iue−3πi/4=−eπi/4e−3iue^{-3it}=e^{-3iu}e^{-3\pi i/4}=-e^{\pi i/4}e^{-3iu} なので

Z=18eπi/4(3eiu+e−3iu)=12eπi/4 z(u)Z=\frac18e^{\pi i/4}\bigl(3e^{iu}+e^{-3iu}\bigr)=\frac12e^{\pi i/4}\,z(u)

です。伸開線は、アステロイドの 0≦u≦π40\leqq u\leqq\dfrac\pi4 の部分を、原点のまわりに π4\dfrac\pi4 回し、さらに 12\dfrac12 倍に縮めた曲線です。4本の弧をそれぞれ真ん中からほどくと、全体として、回転して半分に縮めたアステロイドが現れます。

図7図7 アステロイド(黒)と、4本の弧をそれぞれ真ん中からほどいた伸開線(青)。青は黒を π4\frac\pi4 回して 12\frac12 倍にしたアステロイド。点 P から点 Q への糸を1本示す

一般のエピサイクロイド・ハイポサイクロイド

固定した円の外側を円が転がるときの軌跡をエピサイクロイド、内側を転がるときの軌跡をハイポサイクロイドと呼びます。固定した円の半径が転がる円の nn 倍のとき(nn は正の整数。ハイポサイクロイドでは n≧3n\geqq3)、どちらも尖った点(尖点)を nn 個もちます。n=1n=1 のエピサイクロイドがカージオイド、n=4n=4 のハイポサイクロイドがアステロイドです。

上の2つと同じ計算をすると、尖点と尖点の間の弧をその真ん中からほどいた伸開線は、どちらも元と相似な曲線の一部になります。

回転角倍率例
エピサイクロイドπn\dfrac\pi nn+2n\dfrac{n+2}nカージオイド(n=1n=1):π\pi 回して 33 倍=−3-3 倍
ハイポサイクロイドπn\dfrac\pi nn−2n\dfrac{n-2}nアステロイド(n=4n=4):π4\dfrac\pi4 回して 12\dfrac12 倍

相似にならない例:カテナリーとトラクトリクス

ここまでの3つは元の曲線と相似な伸開線をもちましたが、これは特別な性質です。円の伸開線が渦巻きになったように、一般には形が変わります。もう一つの例として、ロープの両端を持って垂らしたときの形であるカテナリー(懸垂線)

y=cosh⁡x=ex+e−x2y=\cosh x=\frac{e^x+e^{-x}}2

を、頂点 A(0, 1)\mathrm{A}(0,\,1) から左右へほどきます。sinh⁡x=ex−e−x2\sinh x=\dfrac{e^x-e^{-x}}2、tanh⁡x=sinh⁡xcosh⁡x\tanh x=\dfrac{\sinh x}{\cosh x} と書くと、(cosh⁡x)′=sinh⁡x(\cosh x)'=\sinh x、1+sinh⁡2x=cosh⁡2x1+\sinh^2x=\cosh^2x なので、xx を媒介変数として ∣v∣=1+sinh⁡2x=cosh⁡x|\boldsymbol v|=\sqrt{1+\sinh^2x}=\cosh x、ほどいた長さは s=∫0xcosh⁡u du=sinh⁡x\displaystyle s=\int_0^x\cosh u\,du=\sinh x です。式 (∗)(\ast) に入れると

(X, Y)=(x, cosh⁡x)−sinh⁡xcosh⁡x(1, sinh⁡x)=(x−tanh⁡x, 1cosh⁡x)\begin{aligned}(X,\,Y)&=(x,\ \cosh x)-\frac{\sinh x}{\cosh x}(1,\ \sinh x)\\&=\left(x-\tanh x,\ \frac1{\cosh x}\right)\end{aligned}

となります(cosh⁡x−sinh⁡2xcosh⁡x=1cosh⁡x\cosh x-\dfrac{\sinh^2x}{\cosh x}=\dfrac1{\cosh x})。この曲線はトラクトリクス(追跡線)と呼ばれ、「各点で接線を xx 軸まで延ばすと、その線分の長さがいつも 11」という性質をもちます。長さ 11 の綱で、xx 軸の上を進む人に引きずられていく物の跡がこの形です。

図8図8 カテナリー y=cosh⁡xy=\cosh x(黒)と、頂点 A から左右へほどいた伸開線であるトラクトリクス(青)。x=1.2x=1.2 と x=−1.6x=-1.6 のときの糸を細線で示す

6. 縮閉線

曲線 DD が曲線 CC の伸開線であるとき、CC を DD の縮閉線と呼びます。たとえば円は、その伸開線(§5 の渦巻き)の縮閉線です。縮閉線には次の2つの性質があります。

  1. CC は、DD の法線をすべて集めたときに、それらに接する曲線(法線の包絡線)である。
  2. CC は、DD の各点での曲率円の中心が描く軌跡である。

1 は §4 の結果から直接分かります。DD の点 Q での法線は糸 PQ を含む直線で、この直線は P で CC に接しています。

2 は、曲率円の中心が「法線上で、曲率半径だけ離れた点」であることから分かります。曲率半径は、曲線の向きが単位長さあたりにどれだけ回るかの逆数です。Q が ∣−sT′∣ dt=s∣T′∣ dt|{-s\boldsymbol T'}|\,dt=s|\boldsymbol T'|\,dt だけ進む間に、Q での進む向き(T\boldsymbol T に垂直)は T\boldsymbol T と同じ角 ∣T′∣ dt|\boldsymbol T'|\,dt だけ回ります。したがって DD の Q での曲率半径は s∣T′∣∣T′∣=s=PQ\dfrac{s|\boldsymbol T'|}{|\boldsymbol T'|}=s=\mathrm{PQ} で、曲率円の中心は法線 PQ 上で Q から ss だけ離れた点、すなわち P です。曲率円と曲率半径の詳しい扱いは、曲率円の記事を見てください。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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