z と zˉ が同居する方程式
目次
- 1. 未知数は2つあると数える
- 2. 共役をとって引き算したあとの注意
- 3. 絶対値を見たときの3つの読み方
- 4. 複素数平面の直線の方程式
- 4-1. 通る1点と方向ベクトル
- 4-2. 通る2点
- 4-3. 通る1点と法線ベクトル
- 4-4. 垂直二等分線
- まとめ
- 5. 絶対値が 1 の複素数
複素数平面の方程式には、z だけでなく共役複素数 zˉ や絶対値 ∣z∣ を含むものが多く現れます。以下では、こうした方程式を解く手順、その途中で起こりやすい論理の抜け、そして式を平面上の図形として読み取る方法を、例を1つずつ解きながら説明します。
1. 未知数は2つあると数える
z=x+yi と書けば zˉ=x−yi、∣z∣=x2+y2 なので、zˉ も ∣z∣ も z から決まる量です。それでも式変形をするときは、z と zˉ を別々の未知数と見なすと方針が立てやすくなります。未知数を2つと数えた以上、方程式も2本そろえる必要があります。手持ちの式から2本目を作る手段は、次の3つです。
z と zˉ の両方を含む式から、もう1本の式を作る
- 方程式の両辺の共役複素数をとる(z と zˉ の役割が入れ替わった式が得られる)
- zzˉ=∣z∣2 を使い、zˉ を z と ∣z∣ で書き表す
- 方程式の両辺の絶対値をとる
例1 (2−i)z+(2+i)zˉ=10 と ∣z∣=5 を同時に満たす z を求めます。
2本目の式から zzˉ=25 で、z=0 なので zˉ=z25 です。これを1本目に入れて両辺に z を掛けると、zˉ が消えて
(2−i)z2−10z+25(2+i)=0
という z の2次方程式になります。解の公式から
zつまり z=2−i5±25−25(2−i)(2+i)=2−i5±10i,=5i, 4−3i
です(−100 は 10i とし、分母は 2+i を掛けて実数にしました)。
同じ連立方程式を z=x+yi で書き直すと、1本目の左辺は (2−i)z とその共役の和なので 2Re{(2−i)z}=2(2x+y) となり、1本目は直線 2x+y=5、2本目は円 x2+y2=25 を表します。2つの解は、この直線と円の2つの交点 (0,5)、(4,−3) に対応しています。
図1 原点中心・半径 5 の円と、直線 2x+y=5。交点は 5i と 4−3i例2 z2=zˉ を満たす z を求めます。
ここでは3つ目の手段を使います。両辺の絶対値をとると ∣z∣2=∣z∣、つまり ∣z∣(∣z∣−1)=0 なので、∣z∣=0 か ∣z∣=1 です。∣z∣=0 なら z=0 で、これは元の式を満たします。∣z∣=1 のときは zˉ=z1 と書けるので、元の式は z2=z1、すなわち z3=1 になります。逆に z3=1 なら ∣z∣3=1 から ∣z∣=1 で、z2=z1=zˉ が成り立ちます。したがって解は
z=0,1,2−1+3i,2−1−3i
の4つです。
2. 共役をとって引き算したあとの注意
1本の式 ① から共役をとって ② を作り、① と ② を足したり引いたりして z を求める、という操作は頻繁に行います。このとき押さえておくべき事実は次のとおりです。
「①かつ②」と「①かつ(①−②)」は同値である。しかし「①かつ②」と「①−②」だけとは、一般に同値でない。
引き算の結果だけを手元に残し、① を捨ててしまうと、条件がゆるくなります。極端な例として「z=2 かつ zˉ=2」を考えると、解は z=2 だけです。ところが2式の差 z−zˉ=0 は「z が実数」という条件にすぎず、すべての実数がこれを満たします。
例3 c を複素数の定数とし、z+izˉ=c(①)を満たす z を調べます。
① の両辺の共役をとると zˉ−iz=cˉ で、これに i を掛けると z+izˉ=icˉ となります。左辺が ① と同じなので、① との差をとると z が消えて
0=c−icˉ
という定数だけの式が残ります。この式は「① を満たす z があるなら成り立つ」という必要条件です。
- c=1 のときは c−icˉ=1−i=0 なので、① を満たす z はありません。
- c=2+2i のときは icˉ=i(2−2i)=2+2i=c で、差の式は 0=0 となり、何の情報も持ちません。この場合は ① に戻る必要があります。z=x+yi を代入すると z+izˉ=(x+y)(1+i) なので、① は x+y=2 と同じで、解は直線 x+y=2 上の点全体になります。
授業では、次のような問題を扱いました1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。。
問題
α を ∣α∣=1 を満たす複素数、β を複素数とする。z−αzˉ=β を満たす複素数 z が存在するための、α, β の条件を求めよ。
この問題も例3と同じ構造をしています。両辺の共役をとると zˉ−αˉz=βˉ で、これに −α を掛けると ααˉ=1 により z−αzˉ=−αβˉ となります。左辺が元の式と同じなので、元の式との差から 0=β+αβˉ が出ます。これは必要条件にすぎないので、逆に β+αβˉ=0 のときに元の式を満たす z を1つ示して十分性を確かめます。z=2β を代入すると、左辺は 2β−αβˉ=2β+β=β となり、元の式を満たします。したがって求める条件は β+αβˉ=0 です。例3は α=−i、β=c の場合にあたります。
差をとって z が消えたら
残った式は必要条件にすぎない。元の式に戻るか、条件を満たす z を実際に1つ挙げて、十分性を確かめる。2つの式を何倍かして引き、z の値が出た場合も、その値を元の式に代入して確かめる。
3. 絶対値を見たときの3つの読み方
∣w∣ という形の式に出会ったら、次の3通りの扱い方を候補に挙げます。
∣w∣ を見たときの3通りの扱い
- 2乗して ∣w∣2=wwˉ と書き、展開して計算する
- ∣z−a∣ を「点 z と点 a の距離」と読み、図形で考える
- 三角不等式 ∣u+v∣≤∣u∣+∣v∣ を使う
例4 ∣z+1∣=3∣z−1∣ を満たす点 z が描く図形を求め、その図形上で ∣z∣ の最大値と最小値を求めます。
両辺とも 0 以上なので、2乗しても同値です。1つ目の方法で展開すると
zzˉ+z+zˉ+1⟺ zzˉ−45(z+zˉ)+1⟺ z−452=9(zzˉ−z−zˉ+1)=0=169
となるので、z は中心 45、半径 43 の円周上を動きます。2点 −1、1 からの距離の比が 3:1 で一定の点の集まりなので、これはアポロニウスの円です。
∣z∣ は原点 O と点 z の距離です(2つ目の読み方)。O は円の中心から 45 離れていて、半径 43 より遠いので円の外にあります。O と中心を通る直線が円と交わる2点で距離は最大・最小になり、最大値は 45+43=2(z=2)、最小値は 45−43=21(z=21)です。最大値は3つ目の読み方でも確かめられ、∣z∣≤z−45+45=2 となります。
図2 中心 45・半径 43 の円。円上の点 z から点 −1 と点 1 までの距離の比は 3:1。円と実軸の交点は 21 と 24. 複素数平面の直線の方程式
平面上の直線は、次の4通りの情報のどれかで決まります。
直線を決める情報
- 通る1点と、直線の向き(方向ベクトル)
- 通る2点
- 通る1点と、直線に垂直な向き(法線ベクトル)
- 2点から等距離にあること(垂直二等分線)
それぞれを z と zˉ の式に直します。どの場合も直線上を動く点を P(z) とします。
4-1. 通る1点と方向ベクトル
点 A(α) を通り、OB(B(β)、β=0)と平行な直線を考えます。
図3 点 A を通り、原点から B へのベクトルと平行な直線。A から P へのベクトルも同じ向きAP が OB と平行(または P=A)であることは、z−α が β の実数倍であること、つまり比 βz−α が実数であることと同じです。実数とは共役をとっても変わらない数なので、
βz−α∈R⟺βz−α=βˉzˉ−αˉ⟺βˉz−βzˉ−αβˉ+αˉβ=0
となります(2行目は両辺に ββˉ を掛けて移項しました)。βˉz と βzˉ は互いに共役な2数で、それを引いています。定数項 −αβˉ+αˉβ も、αˉβ からその共役を引いた形なので、純虚数か 0 です。
4-2. 通る2点
異なる2点 z1、z2 を通る直線は、「点 z1 を通り、方向ベクトルが z2−z1」の直線なので、4-1 で α=z1、β=z2−z1 とすれば得られます。
4-3. 通る1点と法線ベクトル
点 A(α) を通り、OB(β=0)に垂直な直線を考えます。
図4 点 A を通り、原点から B へのベクトルに垂直な直線今度は AP が OB を ±2π 回した向きなので、比 βz−α は純虚数(P=A なら 0)です。純虚数または 0 とは、共役をとると符号が反転する数、つまり共役との和が 0 になる数なので、
βz−α+βˉzˉ−αˉ⟺ βˉz+βzˉ−αβˉ−αˉβ=0=0
です。こちらは βˉz と βzˉ を足しており、定数項 −(αβˉ+αˉβ) は共役な2数の和なので実数です。
4-4. 垂直二等分線
異なる2点 A(α)、B(β) から等距離にある点の集まりが、線分 AB の垂直二等分線です。
図5 線分 AB の垂直二等分線上の点 P は、A と B から等距離距離は 0 以上なので2乗しても同値で、
∣z−α∣=∣z−β∣⟺(z−α)(zˉ−αˉ)=(z−β)(zˉ−βˉ)⟺(βˉ−αˉ)z+(β−α)zˉ+∣α∣2−∣β∣2=0
となります(展開すると両辺の zzˉ が打ち消し合います)。z と zˉ の係数は互いに共役で、定数項は実数です。4-3 と同じ形で、A=β−α と見れば一致します。
まとめ
4つの導出で出てきた式は、すべて次の2つの型のどちらかです。
直線を表す z, zˉ の1次式(2つの型)
A=0 として、
- Aˉz−Azˉ+B=0 (B は純虚数または 0)
- Aˉz+Azˉ+B=0 (B は実数)
A=0 の条件は、4-1・4-3 の β=0、4-4 の α=β にあたります。A=0 だと z が式から消え、直線を表しません。この形の式を見て直線だと分かること、必要なら上の導出を自分で再現できることの2つが目標です。
2の型は、∣z∣2 を補うと平方の形にまとめられることがあります。Aˉz+Azˉ に zzˉ+AAˉ を足すと (z+A)(zˉ+Aˉ)=∣z+A∣2 になるからです。
Aˉz+Azˉ の形を見たら
∣z∣2 を補って、∣z+A∣2 の形を作れないか試す
たとえば (1−2i)z+(1+2i)zˉ+5=0 は A=1+2i の2の型で、定数項 5 が ∣A∣2 に等しくなっています。両辺に zzˉ を足すと ∣z+(1+2i)∣2=∣z∣2、つまり ∣z−(−1−2i)∣=∣z−0∣ となり、原点と点 −1−2i を結ぶ線分の垂直二等分線だと分かります。この直線は中点 −21+2i を通ります。§2 の問題でも同じ形が現れます。β=0 のとき、条件 β+αβˉ=0 は α=−βˉβ と書けます。これを z−αzˉ=β に代入して βˉ を掛けると βˉz+βzˉ−∣β∣2=0 となり、両辺に −1 を掛ければ A=−β、定数項 ∣A∣2 の2の型です。両辺に zzˉ を足すと ∣z−β∣2=∣z∣2 となるので、この式は原点と点 β の垂直二等分線を表します。この直線が中点 2β を通ることから、解 z=2β が見つかります。
5. 絶対値が 1 の複素数
単位円周上の点 z については、次の言い換えが基本になります。
∣z∣=1 の言い換え
∣z∣=1⟺zzˉ=1⟺zˉ=z1
zˉ を z1 に置き換えると、式に残るのは z だけになります。
例5 ∣z∣=1、z=±i のとき、w=1+z2z が実数であることを示します。
zˉ=z1 を使うと
wˉ=1+zˉ2zˉ=1+z21z1=z2+1z=w
なので、w は共役をとっても変わらず、実数です。極形式 z=cosθ+isinθ を使っても示せます。分母分子を z で割ると w=z1+z1=zˉ+z1=2cosθ1 で、z=±i より cosθ=0 です。
例5のように、絶対値が 1 と分かっている複素数には3通りの表し方があり、問題に合わせて選びます。極形式が使いやすいのは、絶対値がすでに 1 と分かっていて、残る未知の情報が偏角 θ だけになるからです。
絶対値 1 の複素数の表し方
- z のまま:zˉ=z1 を使う
- 極形式:z=cosθ+isinθ とおく
- 直交形式:z=x+yi、x2+y2=1 とおく
極形式は積と商の計算には向いていますが、和の計算には向きません。絶対値の等しい2数の和なら、和積の公式で
(cosa+isina)+(cosb+isinb)=2cos2a−b(cos2a+b+isin2a+b)
と「実数×(絶対値 1 の複素数)」の形にまとまります。一方 (cosa+isina)+r(cosb+isinb)(r=1)のように絶対値が違うと、この公式は使えず、偏角の見える形にはまとまりません。
上の和積の式で a=θ、b=0 とした場合は、とくによく使われます。
1±(絶対値 1 の複素数)
1+(cosθ+isinθ)1−(cosθ+isinθ)=2cos22θ+2isin2θcos2θ=2cos2θ(cos2θ+isin2θ)=2sin22θ−2isin2θcos2θ=−2isin2θ(cos2θ+isin2θ)
計算としては、実部に 1+cosθ=2cos22θ、1−cosθ=2sin22θ を、虚部に sinθ=2sin2θcos2θ を使っただけです。この結果は図でも説明できます。
図6 0, 1, 1+z, z を頂点とするひし形。対角線 1+z は偏角 2θ の向き、もう1本の対角線 1−z はそれに垂直z=cosθ+isinθ(0<θ<2π)とし、単位円周上で偏角 2θ の点を M とします。M が表す複素数は cos2θ+isin2θ です。4点 0、1、1+z、z は、辺の長さがすべて 1 のひし形の頂点で、1+z と 1−z はその2本の対角線にあたります(1−z は点 z から点 1 へ向かう対角線)。
- ひし形の対角線は頂角を2等分するので、1+z は角 θ を2等分する方向、つまり M の方向(π<θ<2π なら逆向き)を向きます。長さは 2cos2θ の絶対値です。
- ひし形の2本の対角線は直交するので、1−z は M の方向を −2π 回した向きを向きます。長さは、中心角 θ の弦の長さ 2sin2θ です。−2π の回転は −i を掛けることなので、1−z=−i⋅2sin2θ(cos2θ+isin2θ) となり、上の式と一致します。
1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。
塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。
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