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1の nn 乗根と原始 nn 乗根

2025年度 高2発展2026年10月6日13分で読めます塾講師木下複素数平面
目次
  1. 1. の解は正 角形の頂点に並ぶ
  2. 2. はじめて に戻る回数と原始 乗根
  3. 3. 原始 乗根のべきは 乗根をすべて出す
  4. 4. 同じ論法を整数の余りに使う
  5. 5. 積について閉じた有限集合

絶対値が 11 の複素数をかけると、複素数平面の点は原点のまわりにその偏角だけ回ります。この頁ではこの見方を足場にして、方程式 zn=1z^n=1 の解を調べます。§1〜§3 は授業で扱った問題の背景にあたる内容で、§4 は同じ論法を整数の余りに当てはめた話、§5 は入試に出たことのある発展的な話題です。

1. zn=1z^n=1 の解は正 nn 角形の頂点に並ぶ

z=r(cos⁡θ+isin⁡θ) (r>0)z=r(\cos\theta+i\sin\theta)\ (r>0) とおくと、ド・モアブルの定理から zn=rn(cos⁡nθ+isin⁡nθ)z^n=r^n(\cos n\theta+i\sin n\theta) です。これが 11 に等しくなるのは、rn=1r^n=1 で、しかも nθn\theta が 2π2\pi の整数倍のときです。よって r=1r=1、θ=2πkn\theta=\dfrac{2\pi k}{n}(kk は整数)となります。kk を nn だけ増やすと偏角が 2π2\pi 増えて同じ点に戻るので、異なる解は

ξk=cos⁡2πkn+isin⁡2πkn(k=0, 1, …, n−1)\begin{aligned}\xi_k&=\cos\frac{2\pi k}{n}+i\sin\frac{2\pi k}{n}\qquad (k=0,\,1,\,\ldots,\,n-1)\end{aligned}

の nn 個です。これらを 11 の nn 乗根と呼びます。偏角が 2πn\dfrac{2\pi}{n} ずつ増えるので、nn 個の点は単位円を nn 等分し、11 を頂点の一つとする正 nn 角形の頂点になります。なお ξn=ξ0=1\xi_n=\xi_0=1 なので、番号を 11 から nn まで振っても同じ nn 個を表します(§2 ではそちらを使います)。

一つの 11 の nn 乗根 zz をとって 1, z, z2, …1,\,z,\,z^2,\,\ldots と並べるとき、隣の頂点へ一つずつ進むとは限りません。zz をかけるたびに点は zz の偏角だけ回るので、zz の偏角が大きければ一度に何個も頂点を飛ばします。図1は n=7n=7、z=ξ3z=\xi_3(偏角は 37⋅2π\dfrac37\cdot2\pi)の場合で、1→z→z2→⋯→z7=11\to z\to z^2\to\cdots\to z^7=1 と結ぶと、星形を描きながら単位円を 33 周して、77 個の頂点をちょうど 11 回ずつ通ります。

図1図1 11 の 77 乗根と、zz の偏角が 37\frac37 周のときの 1, z, z2, …, z61,\ z,\ z^2,\ \ldots,\ z^6 の位置。順に結ぶと星形になる

授業で扱った問題のように「1, z, z2, …, zn−11,\,z,\,z^2,\,\ldots,\,z^{n-1} が正 nn 角形の頂点をなす」という場面でも、この順に隣り合っているかどうかは別に確かめる必要があります。

2. はじめて 11 に戻る回数と原始 nn 乗根

図1の zz は 77 回かけてはじめて 11 に戻りました。ところが、どの 11 の nn 乗根でも nn 回かかるわけではありません。n=12n=12 で偏角 812⋅2π=4π3\dfrac{8}{12}\cdot2\pi=\dfrac{4\pi}{3} の点 α\alpha をとると、α3\alpha^3 の偏角は 4π4\pi なので α3=1\alpha^3=1 となり、α\alpha のべきは 1212 個の頂点のうち 33 個しか通りません(図2の右)。この違いを言葉にするために、次の用語を使います。

位数と原始 nn 乗根

複素数 zz について、zk=1z^k=1 を満たす最小の正の整数 kk を zz の位数という。

11 の nn 乗根のうち、位数がちょうど nn であるもの(nn 乗してはじめて 11 になるもの)を 11 の原始 nn 乗根という。

図2図2 11 の 1212 乗根。左は偏角 512\frac5{12} 周の α\alpha のべきが 1212 個すべてを通る様子、右は偏角 812\frac8{12} 周の α\alpha のべきが 33 個だけを通る様子

n=12n=12 について、ξm\xi_m(偏角 m12⋅2π\dfrac{m}{12}\cdot2\pi)の位数を m=1, …, 12m=1,\,\ldots,\,12 で全部書き出すと次の表になります。

mm 位数 mm 位数
1 12 7 12
2 6 8 3
3 4 9 4
4 3 10 6
5 12 11 12
6 2 12 1

表の位数は、分数 m12\dfrac{m}{12} を約分しきったときの分母になっています。たとえば 812=23\dfrac{8}{12}=\dfrac23 なので位数は 33、912=34\dfrac{9}{12}=\dfrac34 なので位数は 44 です。約分できない m=1, 5, 7, 11m=1,\,5,\,7,\,11 だけが位数 1212、すなわち原始 1212 乗根です。一般に次が成り立ちます。

ξm\xi_m の位数と、原始 nn 乗根になる条件

ξm=cos⁡2πmn+isin⁡2πmn (m=1, 2, …, n)\xi_m=\cos\dfrac{2\pi m}{n}+i\sin\dfrac{2\pi m}{n}\ (m=1,\,2,\,\ldots,\,n) について、mm と nn の最大公約数を dd とすると

ξm の位数=nd\xi_m\ \text{の位数}=\frac nd

特に、ξm\xi_m が 11 の原始 nn 乗根であるのは、mm と nn が互いに素のとき、かつそのときに限る。

証明

正の整数 kk について、ξm k=cos⁡2πmkn+isin⁡2πmkn\xi_m^{\,k}=\cos\dfrac{2\pi mk}{n}+i\sin\dfrac{2\pi mk}{n} が 11 になるのは、mkn\dfrac{mk}{n} が整数のとき、つまり nn が mkmk を割り切るときである。m=dm′m=dm'、n=dn′n=dn' とおくと m′m' と n′n' は互いに素で、「nn が mkmk を割り切る」は「n′n' が m′km'k を割り切る」と同じである。n′n' は m′m' と共通の素因数を持たないので、これは「n′n' が kk を割り切る」と同値になる。そのような正の整数 kk のうち最小のものは k=n′=ndk=n'=\dfrac nd である。□

11 の原始 nn 乗根の個数は、11 以上 nn 以下で nn と互いに素な整数の個数に等しくなります。n=12n=12 なら 44 個、nn が素数 pp なら 11 以外の p−1p-1 個すべてです。

3. 原始 nn 乗根のべきは nn 乗根をすべて出す

図2の左では、原始 1212 乗根 α\alpha のべき α, α2, …, α12\alpha,\,\alpha^2,\,\ldots,\,\alpha^{12} が 1212 個の頂点を 11 回ずつ通っていました。これは偶然ではありません。

原始 nn 乗根のべき

α\alpha を 11 の原始 nn 乗根とすると、α, α2, …, αn\alpha,\ \alpha^2,\ \ldots,\ \alpha^n は互いに異なり、この nn 個で 11 の nn 乗根がすべて出そろう。

証明

各 αk\alpha^k は (αk)n=(αn)k=1(\alpha^k)^n=(\alpha^n)^k=1 を満たすので 11 の nn 乗根である。11 の nn 乗根は全部で nn 個しかないから、α, …, αn\alpha,\,\ldots,\,\alpha^n が互いに異なることさえ言えれば、nn 個すべてが現れる。

αk=αl (1≦k<l≦n)\alpha^k=\alpha^l\ (1\leqq k<l\leqq n) となる組があったとする。α≠0\alpha\neq0 なので両辺を αk\alpha^k で割れて、αl−k=1\alpha^{l-k}=1 となる。ところが 1≦l−k≦n−11\leqq l-k\leqq n-1 であり、これは α\alpha の位数が nn であることに反する。よって α, …, αn\alpha,\,\ldots,\,\alpha^n は互いに異なる。□

逆に、α\alpha の位数 ee が nn より小さいと、αk+e=αk\alpha^{k+e}=\alpha^k なので同じ点が ee 個ごとにくり返し現れ、べきが通る点は ee 個だけです(図2の右は e=3e=3)。

証明の中身は「二つが重なったと仮定すると、その差の回数だけかけて 11 に戻ることになり、位数より少ない回数で戻るので矛盾」という一行です。次の §4 と §5 でも、この形の議論をもう一度使います。

4. 同じ論法を整数の余りに使う

11 の nn 乗根の世界の「α\alpha をかけて回る」を、整数の世界の「aa を足して bb で割った余りを見る」に置き換えると、ほとんど同じ議論が通ります。a=5a=5、b=7b=7 で 5, 10, 15, 20, 25, 305,\,10,\,15,\,20,\,25,\,30 を 77 で割った余りを並べると 5, 3, 1, 6, 4, 25,\,3,\,1,\,6,\,4,\,2 となり、11 から 66 までが 11 回ずつ現れます。77 目盛りの時計を 55 目盛りずつ進むと考えると、図3のように星形を描いてすべての目盛りを通ります。

図3図3 00 から 66 の目盛りを持つ円で、00 から 55 目盛りずつ進むと 0, 5, 3, 1, 6, 4, 20,\,5,\,3,\,1,\,6,\,4,\,2 の順にすべての目盛りを通る

倍数を bb で割った余りは重ならない

自然数 a, ba,\ b は互いに素で、b≧2b\geqq2 とする。a, 2a, …, (b−1)aa,\ 2a,\ \ldots,\ (b-1)a を bb で割った余りは互いに異なり、どれも 00 でない。したがって、余りには 1, 2, …, b−11,\,2,\,\ldots,\,b-1 がちょうど 11 回ずつ現れる。

証明

1≦k≦b−11\leqq k\leqq b-1 とする。kaka が bb で割り切れたとすると、aa と bb は互いに素なので kk が bb で割り切れることになるが、0<k<b0<k<b なのでありえない。よって余りに 00 は無い。

次に、kaka と la (1≦k<l≦b−1)la\ (1\leqq k<l\leqq b-1) の余りが等しいとすると、差 (l−k)a(l-k)a が bb で割り切れる。同じ理由で l−kl-k が bb で割り切れることになるが、1≦l−k≦b−21\leqq l-k\leqq b-2 なので矛盾する。よって余りは互いに異なる。

11 以上 b−1b-1 以下の値をとる b−1b-1 個の余りが互いに異なるので、11 から b−1b-1 までがちょうど 11 回ずつ現れる。□

この性質を「中国剰余定理」と呼ぶ資料がありますが、それは別の定理です。1中国剰余定理は「m, nm,\ n が互いに素なら、x≡a(modm)x\equiv a\pmod m と x≡b(modn)x\equiv b\pmod n を同時に満たす整数 xx が、mnmn で割った余りとしてただ一つに定まる」という連立合同式の定理です。この節の性質は、その証明に使われる補題にあたります。下の脚注へここから、整数の重要な性質が二つ導けます。

ax+by=1ax+by=1 の整数解

a, ba,\ b が互いに素な整数ならば、ax+by=1ax+by=1 を満たす整数の組 (x, y)(x,\,y) が存在する。

証明

まず a, ba,\ b が自然数の場合を示す。b=1b=1 なら (x, y)=(0, 1)(x,\,y)=(0,\,1) でよい。b≧2b\geqq2 なら、上の性質から a, 2a, …, (b−1)aa,\,2a,\,\ldots,\,(b-1)a の中に bb で割った余りが 11 になるもの xaxa がある。xa−1xa-1 は bb の倍数なので、xa−1=−ybxa-1=-yb となる整数 yy がとれ、ax+by=1ax+by=1 が成り立つ。

aa や bb が負のときは、∣a∣, ∣b∣|a|,\ |b| について得た解の xx や yy の符号を変えればよい。一方が 00 のときは、互いに素であることから他方は ±1\pm1 なので、解はすぐに見つかる。□

a=5, b=7a=5,\ b=7 なら、余りが 11 になるのは 3⋅5=15=2⋅7+13\cdot5=15=2\cdot7+1 なので、5⋅3+7⋅(−2)=15\cdot3+7\cdot(-2)=1 が一つの解です。

フェルマーの小定理

pp を素数、aa を pp で割り切れない整数とすると、

ap−1≡1(modp)a^{p-1}\equiv1\pmod p

証明

aa を pp で割った余りを考えれば、aa は 1≦a≦p−11\leqq a\leqq p-1 としてよい(aa を余りに置き換えても ap−1a^{p-1} の余りは変わらない)。pp は素数で aa を割り切らないので、aa と pp は互いに素である。上の性質から a, 2a, …, (p−1)aa,\,2a,\,\ldots,\,(p-1)a を pp で割った余りは 1, …, p−11,\,\ldots,\,p-1 を並べかえたものなので、全部かけると

a⋅2a⋯(p−1)a≡1⋅2⋯(p−1)(modp)a\cdot2a\cdots(p-1)a\equiv1\cdot2\cdots(p-1)\pmod p

左辺は ap−1 (p−1)!a^{p-1}\,(p-1)! なので、pp は (p−1)! (ap−1−1)(p-1)!\,(a^{p-1}-1) を割り切る。素数 pp は 1, 2, …, p−11,\,2,\,\ldots,\,p-1 のどれも割り切らないから (p−1)!(p-1)! も割り切らず、したがって pp は ap−1−1a^{p-1}-1 を割り切る。□

最後の段で (p−1)!(p-1)! を両辺から消すときに、pp が素数であることを使いました。合同式の両辺を同じ数で割ることは一般にはできません(2⋅3≡2⋅0(mod6)2\cdot3\equiv2\cdot0\pmod 6 ですが 3≢0(mod6)3\not\equiv0\pmod 6)。p=7, a=5p=7,\ a=5 で確かめると、56=15625=7⋅2232+15^6=15625=7\cdot2232+1 です。

5. 積について閉じた有限集合

集合 GG のどの二つの要素(同じ要素を二度選んでもよい)の積も GG の要素になるとき、GG は積について閉じているといいます。11 の nn 乗根全体は積について閉じています。αn=βn=1\alpha^n=\beta^n=1 なら (αβ)n=αnβn=1(\alpha\beta)^n=\alpha^n\beta^n=1 だからです。これに 00 を加えた集合も閉じています。反対に、{1, −1, i}\{1,\,-1,\,i\} は i⋅(−1)=−ii\cdot(-1)=-i が入っていないので閉じていません。

では、有限個の複素数からなり積について閉じた集合は、ほかにもあるのでしょうか。答えは「これだけ」です。

積について閉じた有限集合

① 00 を含まない nn 個の複素数からなり、積について閉じた集合は、11 の nn 乗根全体に限る。

② 00 を含む n+1n+1 個の複素数からなり、積について閉じた集合は、11 の nn 乗根全体に 00 を加えたものに限る。

①は、2001年の京都府立医科大学の入試で証明させる形で出題されています。

①の証明

集合を G={z1, z2, …, zn}G=\{z_1,\,z_2,\,\ldots,\,z_n\} とし、GG から要素 zz を一つ選ぶ。nn 個の積 zz1, zz2, …, zznzz_1,\,zz_2,\,\ldots,\,zz_n は、閉じていることからどれも GG の要素である。また z≠0z\neq0 なので、zzj=zzkzz_j=zz_k なら zj=zkz_j=z_k となり、この nn 個は互いに異なる。GG の要素はちょうど nn 個なので、zz1, …, zznzz_1,\,\ldots,\,zz_n は z1, …, znz_1,\,\ldots,\,z_n を並べかえたものにほかならない。

そこで両方の nn 個をそれぞれ全部かけると、積の値は等しく

zn z1z2⋯zn=z1z2⋯znz^n\,z_1z_2\cdots z_n=z_1z_2\cdots z_n

z1z2⋯zn≠0z_1z_2\cdots z_n\neq0 で割って zn=1z^n=1 を得る。zz は GG のどの要素でもよかったので、GG の要素はすべて 11 の nn 乗根である。11 の nn 乗根はちょうど nn 個で、GG も nn 個の要素からなるので、GG は 11 の nn 乗根全体に一致する。□

②は①に帰着できます。GG から 00 を除いた nn 個の集合を G′G' とすると、G′G' の二つの要素の積は GG の要素で、しかも 00 でない数どうしの積なので 00 ではありません。よって積は G′G' の要素であり、G′G' は 00 を含まない nn 個の、積について閉じた集合です。①から G′G' は 11 の nn 乗根全体です。

この種の問題は、知っている発想が無いと手が止まりやすいので、二つの着眼をまとめておきます。

  1. 要素 zz を全要素にかけても、結果は互いに重ならない(§3・§4 と同じ「重なれば割って矛盾」の議論)。
  2. 全要素の積を「かける前」と「かけた後」の二通りに書き、等しいとおいて znz^n を取り出す。

①の結論からもう一つ分かることがあります。要素が NN 個の、00 を含まず積について閉じた集合は 11 の NN 乗根全体なので、各要素は §2 の ξm\xi_m(n=Nn=N)のどれかで、その位数は Nd\dfrac{N}{d} の形です。つまり

各要素の位数は、要素の個数 NN の約数である

ということです。N=12N=12 なら §2 の表のとおり、位数は 1, 2, 3, 4, 6, 121,\,2,\,3,\,4,\,6,\,12 のどれかで、1212 の約数でない 55 や 88 は現れません。

1 中国剰余定理は「m, nm,\ n が互いに素なら、x≡a(modm)x\equiv a\pmod m と x≡b(modn)x\equiv b\pmod n を同時に満たす整数 xx が、mnmn で割った余りとしてただ一つに定まる」という連立合同式の定理です。この節の性質は、その証明に使われる補題にあたります。

塾の授業で配った補足資料をもとに書き直しました。

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