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2次式が因数分解できる条件

2024年度 中1解説2026年10月6日13分で読めます塾講師木下因数分解

定理1(2次式が因数分解が可能な条件)

px2+qx+r(p≠0)px^2 +qx +r\quad (p \neq 0)は、q2−4prq^2 -4prが平方数なら因数分解可能である。

【証明】(※天下り的です)

px2+qx+r=p[(x+q2p)2−(q2−4pr4p2)]⋯①\begin{aligned}&px^2 +qx +r = p\left[ \left( x+\dfrac{q}{2p} \right)^2 -\left( \dfrac{q^2 -4pr}{4p^2} \right) \right]\quad \quad \cdots\text{①}\end{aligned}

である。(これを『平方完成』と言います。後述。)

ここで、q2−4prq^2 -4prは平方数なのでq2−4pr=m2q^2 -4pr =m^2となるmmがある。このmmを用いて、

①=p[(x+q2p)2−(m24p2)]=p[(x+q2p)2−(m2p)2]⋯②\begin{aligned}\text{①}&=p\left[ \left( x+\dfrac{q}{2p} \right)^2 -\left( \dfrac{m^2}{4p^2} \right) \right]\\&=p\left[ \left( x+\dfrac{q}{2p} \right)^2 -\left( \dfrac{m}{2p} \right)^2 \right]\quad \quad \quad \cdots\text{②}\end{aligned}

となる。ここで、x+q2p=:Ax+\dfrac{q}{2p} =:Aとすれば、

②=p[A2−(m2p)2]=p(A+m2p)(A−m2p)=p(x+q2p+m2p)(x+q2p−m2p)=p(x+q+m2p)(x+q−m2p)⋯③\begin{aligned}\text{②}&=p\left[ A^2 -\left( \dfrac{m}{2p} \right)^2 \right]\\&=p\left( A+\dfrac{m}{2p} \right)\left( A-\dfrac{m}{2p} \right)\\&=p\left( x+\dfrac{q}{2p}+\dfrac{m}{2p} \right)\left( x+\dfrac{q}{2p}-\dfrac{m}{2p} \right)\\&=p\left( x+\dfrac{q+m}{2p} \right)\left( x+\dfrac{q-m}{2p} \right)\quad \quad \quad \cdots\text{③}\end{aligned}

となり、因数分解できる。□

※p,q,rp,q,rが整数のときは、これは裏も成立する。つまりq2−4prq^2 -4prが平方数でない時、px2+qx+rpx^2 +qx +rは(有理数係数範囲では)因数分解不可能となる。実際、有理数s,t,u,vs,t,u,vを用いてpx2+qx+r=(sx+t)(ux+v)px^2 +qx +r=(sx+t)(ux+v)と分解できたとすると、係数を比べてp=su, q=sv+tu, r=tvp=su,\ q=sv+tu,\ r=tvなので、q2−4pr=(sv+tu)2−4sutv=(sv−tu)2q^2-4pr=(sv+tu)^2-4sutv=(sv-tu)^2となり、q2−4prq^2-4prは有理数の2乗になってしまう。整数で有理数の2乗になるものは平方数しかないので、q2−4prq^2-4prが平方数でなければこのような分解はできない。

この定理は、判別法としても有能ですが、何よりも③ の式に代入するだけで因数分解できる2次式ならどんなものでも何も考えずに因数分解できるのがやばすぎるんです!!

試しに、5x2+13x+65x^2 +13x+6の因数分解を、③ の式を用いてやってみましょう1塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。下の脚注へ:

問題

5x2+13x+65x^2 +13x+6の因数分解を、③ の式を用いてやってみよう!

【解答】

③ において、p=5,q=13,r=6p=5,q=13,r=6。また、q2−4pr=132−4×5×6=49q^2 -4pr=13^2-4\times 5\times 6 =49より、m=7m=7としてよい。

よって、

③=p(x+q+m2p)(x+q−m2p)=5(x+13+72×5)(x+13−72×5)=5(x+2010)(x+610)=(x+2)(5x+3)⋯(答)\begin{aligned}\text{③}&=p\left( x+\dfrac{q+m}{2p} \right)\left( x+\dfrac{q-m}{2p} \right)\\&=5\left( x+\dfrac{13+7}{2\times 5} \right)\left( x+\dfrac{13-7}{2\times 5}\right)\\&=5\left( x+\dfrac{20}{10} \right)\left( x+\dfrac{6}{10}\right)\\&=(x+2)(5x+3)\quad \quad\cdots\text{(答)}\end{aligned}

しかしながら、流石に③ の式は複雑すぎて覚えにくいので、実用的ではありませんよね……

ということで、定理1の証明の流れを、もう少しわかりやすくすることで、その流れに沿って答えを導けるようにしてみましょう。そこで使うのが、『平方完成』という変形です。

補題2(平方完成)

x2+ax+b=(x+a2)2−[(a2)2−b]x^2 +ax +b =\left( x+\dfrac{a}{2}\right) ^2 - \left[\left(\dfrac{a}{2}\right)^2 -b\right]

【証明とお気持ち】

まず、x2+axx^2 +axの部分を変形したいと考える。2乗公式:(x+s)2=x2+2sx+s2(x+s)^2 =x^2 +2sx+s^2において、s=a/2s=a/2とすれば、

(x+a2)2=x2+ax+(a2)2\begin{aligned}&\left(x+\dfrac{a}{2}\right)^2 =x^2 +ax+\left(\dfrac{a}{2}\right)^2\end{aligned}

なので、

x2+ax=x2+ax+(a2)2−(a2)2=(x+a2)2−(a2)2\begin{aligned}x^2 +ax&=x^2 +ax+\left(\dfrac{a}{2}\right)^2 -\left(\dfrac{a}{2}\right)^2\\&=\left(x+\dfrac{a}{2}\right)^2 -\left(\dfrac{a}{2}\right)^2\end{aligned}

よって、

x2+ax+b=(x+a2)2−(a2)2+b=(x+a2)2−[(a2)2−b]\begin{aligned}x^2 +ax +b&=\left(x+\dfrac{a}{2}\right)^2 -\left(\dfrac{a}{2}\right)^2 +b\\&=\left( x+\dfrac{a}{2}\right) ^2 - \left[\left(\dfrac{a}{2}\right)^2 -b\right]\end{aligned}

□

ここで、定理1の① の変形を、この平方完成を用いて丁寧に追ってみましょう。

px2+qx+r=p(x2+qpx+rp)\begin{aligned}&px^2 +qx +r =p\left(x^2 +\dfrac{q}{p} x+\dfrac{r}{p}\right)\end{aligned}

であるので、この括弧の中身について、補題2において

{a=qpb=rp\begin{aligned}&\begin{cases} a=\dfrac{q}{p}\\ \\ b=\dfrac{r}{p} \end{cases}\end{aligned}

とおけば、

px2+qx+r=p(x2+qpx+rp)=p[(x+q2p)2−{(q2p)2−rp}]=p[(x+q2p)2−(q24p2−rp)]=p[(x+q2p)2−(q24p2−4pr4p2)]=p[(x+q2p)2−(q2−4pr4p2)]⋯①\begin{aligned}px^2 +qx +r&=p\left(x^2 +\dfrac{q}{p} x+\dfrac{r}{p}\right)\\&=p\left[ \left( x+\dfrac{q}{2p} \right)^2 -\left\{ \left(\dfrac{q}{2p}\right)^2 - \dfrac{r}{p}\right\} \right]\\&=p\left[ \left( x+\dfrac{q}{2p} \right)^2 -\left(\dfrac{q^2}{4p^2} -\dfrac{r}{p}\right) \right]\\&=p\left[ \left( x+\dfrac{q}{2p} \right)^2 -\left(\dfrac{q^2}{4p^2} -\dfrac{4pr}{4p^2}\right) \right]\\&=p\left[ \left( x+\dfrac{q}{2p} \right)^2 -\left( \dfrac{q^2 -4pr}{4p^2} \right) \right]\quad \quad \quad \cdots\text{①}\end{aligned}

を得る。

今は文字だらけで難しそうに見えますが、このように平方完成の手法を用いてしまえば、具体的な問題を解くときには全然難しくないんです。5x2+13x+65x^2 +13x+6の因数分解を、この流れを使ってもう一回やってみましょう:

問題

5x2+13x+65x^2 +13x+6の因数分解を、平方完成を用いた変形でやってみよう!

【解答】

5x2+13x+65x^2 +13x+6を平方完成して因数分解してみよう。変形していくと、

5x2+13x+6=5(x2+135x+65)=5[(x+1310)2−{(1310)2−65}]=5[(x+1310)2−(49100)]=5[(x+1310)2−(710)2]=5[(x+1310)+710][(x+1310)−710]=5(x+2)(x+35)=(x+2)(5x+3)⋯(答)\begin{aligned}5x^2 +13x+6&=5\left(x^2 +\dfrac{13}{5} x+\dfrac{6}{5} \right)\\&=5\left[ \left( x + \dfrac{13}{10} \right)^2 - \left\{\left(\dfrac{13}{10}\right)^2 -\dfrac{6}{5}\right\}\right]\\&=5\left[ \left( x + \dfrac{13}{10} \right)^2 - \left(\dfrac{49}{100}\right)\right]\\&=5\left[ \left( x + \dfrac{13}{10} \right)^2 - \left(\dfrac{7}{10}\right)^2 \right]\\&=5\left[\left(x + \dfrac{13}{10}\right) +\dfrac{7}{10}\right]\left[\left(x + \dfrac{13}{10}\right) -\dfrac{7}{10}\right]\\&=5\left( x+2 \right)\left( x+\dfrac{3}{5}\right)\\&=(x+2)(5x+3)\quad \quad\cdots\text{(答)}\end{aligned}

このように、2次式の因数分解は、たすきがけを用いずともシステマティックに解くことができちゃうんです!!!!!しかしながらこの方法は、汎用性はある一方で、慣れるまで時間がかかるのと、たすきがけに慣れてくると簡単な2次式についてはたすきがけでやった方が早い場合が多いです。ただ、たすきがけの性質上、2次の項の係数や定数項の数が多くの約数を持ってしまうと試さないといけない回数が途方もないことになってしまうので、そういう時にこの方法を知っておくと非常に強力です。

ちなみに、なんで平方完成すると因数分解できるのかとかいった話は、いずれやるであろう二次関数の性質やグラフの平行移動などと密接に関わってるんですが、この話をするとめちゃ長くなっちゃうのでやめておきます。

発展

実は、定理1は、もう少しカッコよくできることに気づきました:

定理3(2次式が因数分解が可能な条件2.0)

p,q,rp,q,rは全て整数であるとする。このとき、q2−4prq^2 -4prが平方数なら、px2+qx+r(p≠0)px^2 +qx +r\quad (p \neq 0)は整数係数の一次式同士の積に因数分解可能である。

そう、分解した先の因数の式が整数係数であるということを言えるんです!これを証明してみましょう。

【証明】

r=0r=0の時にはpx2+qx=x(px+q)px^2 +qx=x(px+q)となり自明。r≠0r\neq 0の場合を考える。

定理1と同様に考えて、q2−4prq^2 -4prは平方数でかつr≠0r\neq 0なのでq2−4pr=m2q^2 -4pr =m^2となる∣m∣≠∣q∣⋯④|m|\neq |q|\cdots\text{④}を満たす整数mmが存在して、このmmを用いて、

px2+qx+r=p(x+q+m2p)(x+q−m2p)⋯③\begin{aligned}&px^2 +qx +r=p\left( x+\dfrac{q+m}{2p} \right)\left( x+\dfrac{q-m}{2p} \right)\quad \quad \cdots\text{③}\end{aligned}

である。よってこの右辺を変形すれば因数をどちらも整数係数にできることを言えばいい。ここで、

{a:=q−mb:=q+m\begin{aligned}&\begin{cases} a:=q-m\\ b:=q+m \end{cases}\end{aligned}

とする。今、q,mq,mともに整数であるから、これと④より、a,ba,bともに00でない整数である⋯⑤\cdots\text{⑤}

この時、ab=(q−m)(q+m)=q2−m2ab =(q-m)(q+m)=q^2-m^2であって、m2=q2−4prm^2=q^2 -4prであったから、ab=4prab=4prで、これは偶数である。⋯⑥\cdots\text{⑥}

b−a=(q+m)−(q−m)=2mb-a=(q+m)-(q-m)=2mより、aaとbbの偶奇は一致する。これと⑥ より、a,ba,bはともに偶数。⋯⑦\cdots\text{⑦}よって、

{c:=a/2d:=b/2\begin{aligned}&\begin{cases} c:=a/2\\ d:=b/2 \end{cases}\end{aligned}

とすると、⑤と⑦よりc,dc,dはともに00でない整数であり、cd=ab/4=prcd=ab/4=prなので、d=pr/cd=pr/c。このもとで、

{q−m2p=a2p=cpq+m2p=b2p=dp=pr/cp=rc\begin{aligned}&\begin{cases} \dfrac{q-m}{2p}=\dfrac{a}{2p}=\dfrac{c}{p}\\ \\ \dfrac{q+m}{2p}=\dfrac{b}{2p}=\dfrac{d}{p}=\dfrac{pr/c}{p}=\dfrac{r}{c} \end{cases}\end{aligned}

である。⋯⑧\cdots\text{⑧}

ppとccの最大公約数をggとおき、

{c=gCp=gP\begin{aligned}&\begin{cases} c=gC\\ p=gP \end{cases}\end{aligned}

とすると、もちろんC,PC,Pは互いに素な整数である。今、

{cp×P=gCgP×P=CP×P=Crc×g=rgC×g=rC\begin{aligned}&\begin{cases} \dfrac{c}{p}\times P=\dfrac{gC}{gP}\times P=\dfrac{C}{P}\times P=C\\ \\ \dfrac{r}{c}\times g=\dfrac{r}{gC}\times g=\dfrac{r}{C} \end{cases}\end{aligned}

であって、よって、この結果と⑧を用いると、

③=p(x+cp)(x+rc)=gP(x+cp)(x+rc)={P(x+cp)}{g(x+rc)}=(Px+cp×P)(gx+rc×g)=(Px+C)(gx+rC)⋯⑨=Pgx2+(gC+PrC)x+C×rC=px2+(c+PrC)x+r⋯⑩\begin{aligned}\text{③}&=p\left(x+\dfrac{c}{p}\right)\left(x+\dfrac{r}{c}\right)\\&=gP\left(x+\dfrac{c}{p}\right)\left(x+\dfrac{r}{c}\right)\\&=\left\{P\left(x+\dfrac{c}{p}\right)\right\}\left\{g\left(x+\dfrac{r}{c}\right)\right\}\\&=\left(Px+\dfrac{c}{p}\times P\right)\left(gx+\dfrac{r}{c}\times g\right)\\&=\left(Px+C\right)\left(gx+\dfrac{r}{C}\right)\quad \quad \quad \cdots\text{⑨}\\&=Pgx^2+\left(gC+\dfrac{Pr}{C}\right)x +C\times\dfrac{r}{C}\\&=px^2+\left(c+\dfrac{Pr}{C}\right)x +r\quad \quad \quad \cdots\text{⑩}\end{aligned}

となる。ところで、③=px2+qx+r\text{③}=px^2 +qx +rであったので、⑩=px2+qx+r\text{⑩}=px^2 +qx +rとなり、係数を比較してc+PrC=qc+\dfrac{Pr}{C}=qよりPrC=q−c\dfrac{Pr}{C}=q-cとなり、qqもccも整数よりPrC\dfrac{Pr}{C}も整数となる。さらに、PPとCCは互いに素なので、PrC\dfrac{Pr}{C}が整数のときrrはCCの倍数でなければならず、よってrC\dfrac{r}{C}は整数となる。よって、⑨式において、rC\dfrac{r}{C}が整数となり、P,C,gP,C,gはすでに整数であることがわかっているので、⑨式は整数係数の一次式同士の積となっている。⑨=③=px2+qx+r\text{⑨}=\text{③}=px^2 +qx +rであったので、px2+qx+rpx^2 +qx +rは整数係数の一次式同士の積に因数分解できる。よって示された。□

こういう、文字がいっぱい出てくるのに最後に綺麗になる証明を書いてる時が一番ワクワクしますね!!!(多少煩雑でそこまで綺麗じゃないので、論証ミスに気づいたとか、上手い証明方法思いついたとかいった人いたら教えてください。)

ちなみに、より高次の式の因数分解可能性の判定については、『アイゼンシュタインの既約判定定理』というものがあります。詳細はここでは書きませんが、カッコいい定理なので気になる人は調べてみると良いでしょう。

1 塾の授業で扱った問題は塾の教材なので、数値を変えた類題に差し替えています。

塾の授業で配った補足資料をもとに、問題を類題に差し替えて書き直しました。

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