場の量子論入門 第1部 第2章 §1.2.2 ★★★ 道具:計量で添字を動かす、4元運動量と質量殻
計量を使うと、反変ベクトル aμ から共変ベクトル
aμ=ημνaν
が作れる。成分で書くと a0=a0、ai=−ai であり、空間成分の符号だけが反転する。逆向きの操作は aμ=ημνaν で、ημν は ημν の逆行列である(この計量では成分が同じになる)。両者を続けて掛けると
ημρηρν=δ νμ
(クロネッカーのデルタ)になる。内積は a⋅b=aμbμ=aμbμ とも書ける。
物理でもっとも使う4元ベクトルは、4元運動量
pμ=(E,p),p2=p⋅p=E2−∣p∣2=m2
である。最後の等式が相対論的分散関係で、質量殻の条件と呼ぶ。質量ゼロの粒子(光子)では p2=0 となり、E=∣p∣ である。
微分演算子の添字の位置には注意が要る。xμ による偏微分を
∂μ≡∂xμ∂=(∂t∂, ∇)
と定義すると、これは下付きで自然な形になる。理由は ∂μxν=δ μν が添字の上下について整合するからで、xμ が分母にあるぶん添字が下がると覚えればよい。上付きは
∂μ=ημν∂ν=(∂t∂, −∇)
となる。空間成分に負号が付くのは ∂i=∂/∂xi=(∇)i と定義したためである。これらからダランベルシアン
□≡∂μ∂μ=∂t2∂2−∇2
が作れる。Klein–Gordon 方程式は (□+m2)ϕ=0 と1行で書ける。
平面波の位相も確認しておく。p⋅x=Et−p⋅x なので、正エネルギーの平面波は e−ip⋅x と書ける。∂μ を作用させると ∂μe−ip⋅x=−ipμe−ip⋅x であり、運動量空間では ∂μ→−ipμ、□→−p2 という置き換えが使える。
例題 2.1(添字操作の基本練習)
オリジナル自然単位で次を示せ。ϕ はスカラー場、aμ は定数の4元ベクトルとする。
- (1) ∂μxν=δ μν、および ∂μxμ=4。
- (2) ∂μ(a⋅x)=aμ。
- (3) ϕ(x)=e−ip⋅x に対して (□+m2)ϕ=(−p2+m2)ϕ。したがって Klein–Gordon 方程式の平面波解は質量殻 p2=m2 上にある。
解答
(1) xν の4つの成分は互いに独立な変数なので、∂xν/∂xμ は μ=ν のとき 1、それ以外は 0 であり、δ μν に等しい。ν=μ と置いて和を取ると δ μμ=4(時空の次元)で、3次元の ∇⋅x=3 の4次元版である。
(2) a⋅x=aνηνρxρ で aν は定数なので、(1) を使って∂μ(a⋅x)=aνηνρδ μρ=aμ となる。
(3) ∂μe−ip⋅x=−ipμe−ip⋅x を2回使うと
□e−ip⋅x=∂μ∂μe−ip⋅x=(−ipμ)(−ipμ)e−ip⋅x=−p2e−ip⋅x.
よって (□+m2)ϕ=(−p2+m2)ϕ である。これがゼロになる条件が p2=m2、すなわち E2=∣p∣2+m2 である。Klein–Gordon 方程式は、質量殻の条件を波動方程式の形に翻訳したものにほかならない。
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