場の量子論入門 第1部 第2章 §1.2.3 ★★ 変換則:何が不変量で、何がどう混ざるか
慣性系の取り替えは、時空座標の線形変換
x′μ=Λ νμxν
で書ける。不変間隔が保たれるという要求 ημνx′μx′ν=ηρσxρxσ は、x が任意であることから
ημνΛ ρμΛ σν=ηρσ(1.2.1)
という条件になる。行列で書けば ΛTηΛ=η である。これを満たす Λ の全体が Lorentz 群で、独立なパラメータは6個ある(3方向の回転と3方向のブースト)。両辺の行列式を取ると (detΛ)2=1、ρ=σ=0 と置くと (Λ 00)2≥1 が出る。detΛ=+1 かつ Λ 00≥1 の連結成分を固有直交時間的 Lorentz 変換と呼び、通常「Lorentz 変換」と言えばこれを指す。空間反転と時間反転は別成分にあり、離散対称性として別途扱う(第4部 第5章)。
変換則によって場を分類する。座標変換 x→x′=Λx に対して
スカラー場:ベクトル場:2階テンソル場:ϕ′(x′)=ϕ(x),V′μ(x′)=Λ νμVν(x),T′μν(x′)=Λ ρμΛ σνTρσ(x)
と変換するものを、それぞれスカラー場・ベクトル場・テンソル場と呼ぶ。スピノル場(Dirac 場)はこのいずれでもない4つ目の変換則に従い、第4部で扱う。
添字がすべて縮約された量が不変量になることは、条件 (1.2.1) から直ちに従う。実際 a′⋅b′=ημνΛ ρμaρΛ σνbσ=ηρσaρbσ=a⋅b である。これが添字記法の実用上の価値で、上下の添字がすべてペアで潰れている式は、見ただけで不変だと分かる。場の理論で作用を組み立てるとき、この判定を毎回使う。また d4x′=∣detΛ∣d4x=d4x なので4次元体積要素も不変であり、被積分関数がスカラーなら ∫d4x(スカラー) は不変量になる。作用を ∫d4xL の形に書く理由がここにある(第3.2節)。
例題 2.2(ブーストの行列とラピディティ)
オリジナルx 方向へ速度 β(自然単位で c=1 なので β=v)でブーストする変換は
t′=γ(t−βx),x′=γ(x−βt),y′=y,z′=z,γ=1−β21
である。
- (1) この Λ が条件 (1.2.1) を満たすことを、0–0 成分・0–1 成分・1–1 成分について確認せよ。
- (2) γ=coshη、γβ=sinhη でラピディティ η を定義できることを示し、同じ向きのブーストの合成が η の足し算になることを示せ。
- (3) 4元運動量 pμ=(E,px,0,0) を変換し、p2 が不変であることを確認せよ。
解答
(1) 行列成分は Λ 00=Λ 11=γ、Λ 10=Λ 01=−γβ、残りは単位行列である。条件の左辺 ημνΛ ρμΛ σν を計算すると、(ρ,σ)=(0,0) では γ2−(γβ)2=γ2(1−β2)=1=η00、(0,1) では γ(−γβ)−(−γβ)γ=0=η01、(1,1) では (−γβ)2−γ2=−1=η11 となり、いずれも η の対応する成分に一致する。
(2) γ2−(γβ)2=γ2(1−β2)=1 が恒等的に成り立つので、双曲線関数の恒等式 cosh2η−sinh2η=1 と同じ形であり、γ=coshη、γβ=sinhη と置ける(このとき β=tanhη)。変換行列の t–x 部分は (coshη−sinhη−sinhηcoshη) となり、双曲線関数の加法定理から Λ(η1)Λ(η2)=Λ(η1+η2) が従う。速度 β=tanhη は単純に足せないが、ラピディティは足せる。これが速度の合成則 β=(β1+β2)/(1+β1β2) の正体で、tanh の加法定理そのものである。
(3) 座標と同じ変換則に従うので E′=γ(E−βpx)、px′=γ(px−βE) であり、
(p′)2=γ2[(E−βpx)2−(px−βE)2]=γ2(1−β2)(E2−px2)=p2.
E と px は個別には観測者に依存するが、組み合わせ p2=m2 は依存しない。散乱の振幅を s=(p1+p2)2 のような不変量で書く習慣は、この性質を利用している。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com