場の量子論入門 第1部 第2章 §1.2.4 ★★★ 実務:ℏ=c=1 で全部が質量のべきになる、戻し方を手順化する
場の量子論では ℏ と c を式から消し、ℏ=c=1 と置く。これは単位の選び方の問題であって、物理を変えるものではない。c=1 とすると長さと時間が同じ次元になり、ℏ=1 とするとエネルギーと時間の逆数が同じ次元になる。結果として、あらゆる物理量の次元が質量(=エネルギー)のべき1つで表される。慣例として質量の次元を [⋅] で書き、
[質量]=[エネルギー]=[運動量]=1,[長さ]=[時間]=−1
とする。エネルギーの単位には GeV(109eV)を使うことが多い。
自然単位から SI へ戻す手順
自然単位で書かれた量 X を SI の単位に戻すには、次の順で機械的に処理する。
- 1. X の質量次元 d を数える([X]=d)。
- 2. X を「GeV の d 乗」の形の数値にする。
- 3. d が負なら、長さに直すために ℏc=0.1973GeV⋅fm を ∣d∣ 個掛ける。d が正なら ℏc で割る。時間が欲しければ最後に光速で割って長さを時間に直す。
覚えておく換算はこの1つだけでよい。1fm=10−15m である。
具体的には、質量 m の逆数 1/m は長さの次元 −1 を持つので、ℏc/(mc2) が対応する SI の長さになる。これが換算 Compton 波長で、第1.4節で見たとおり、その粒子を局在させられる限界を与える。
断面積は面積なので次元 −2 である。自然単位で GeV−2 と出た数値をcm2 に直すには (ℏc)2 を掛ければよい。
1GeV−2×(ℏc)2=(0.1973fm)2=0.03893fm2=3.893×10−28cm2.
崩壊率は次元 +1(時間の逆数)なので、GeV で出た値を ℏ で割れば s−1 になる。微細構造定数 α=e2/4π=1/137.036 は、自然単位では e が無次元なので無次元である(Heaviside–Lorentz 単位系を使っている)。無次元量は単位系の選び方に依存しないので、理論と実験を比べるときの共通言語になる。
例題 2.3(自然単位の復元を3つの量で練習する)
オリジナルℏc=0.1973GeV⋅fm、me=0.511MeV、α=1/137.036 を使って次を求めよ。
- (1) 電子の換算 Compton 波長 1/me(単位 fm)。
- (2) 古典電子半径 re=α/me(単位 fm)。
- (3) Thomson 散乱の断面積 σ=3me28πα2(単位 cm2)。
解答
(1) 次元は −1 なので ℏc を1つ掛ける。
me1→mec2ℏc=5.11×10−4GeV0.1973GeV⋅fm=386.1fm.
すなわち 3.861×10−13m であり、受け入れられている値 3.862×10−13m と一致する。
(2) α は無次元なので、(1) の結果を 137.036 で割ってre=386.1/137.036=2.818fm となり、古典電子半径の受け入れ値に一致する。名前に反して電子の大きさではなく、e2/(4πr)=mec2 を満たす長さ、つまり静電エネルギーが静止エネルギーに等しくなる長さである。
(3) まず自然単位のまま数値を出す。α2=5.325×10−5、me2=(5.11×10−4GeV)2=2.611×10−7GeV2 なので
σ=38π⋅2.611×10−7GeV25.325×10−5=1.709×103GeV−2.
次元は −2 なので (ℏc)2 を掛けて cm2 に直す。上で求めた 1GeV−2=3.893×10−28cm2 を使うと
σ=1.709×103×3.893×10−28cm2=6.65×10−25cm2.
Thomson 断面積の受け入れ値 6.652×10−25cm2 に一致する(この一致は検算スクリプトでも確認済みである)。σ≃38πre2 とも書けることに注意すると、断面積のスケールが古典電子半径の2乗で決まっていることが見て取れる。なお、この公式の導出は第5部 第5章で Klein–Nishina 公式の低エネルギー極限として行う。
第2章のまとめ
計量は η=diag(+1,−1,−1,−1)、内積は a⋅b=a0b0−a⋅b。添字は計量で上げ下げし、∂μ=(∂t,∇) は下付きが自然、□=∂μ∂μ=∂t2−∇2。質量殻は p2=m2、平面波は e−ip⋅x で ∂μ→−ipμ。Lorentz 変換は ΛTηΛ=η を満たす6パラメータの変換で、添字が全部ペアで潰れた式は不変。d4x も不変なので、作用は ∫d4xL と書く。自然単位 ℏ=c=1 ではすべての量が質量のべきで、戻すときは ℏc=0.1973GeV⋅fm を必要な個数掛ける。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com