場の量子論入門 第1部 第3章 §1.3.1 ★★ 直観:場は無限個の自由度を持つ力学系である
場を量子化する前に、古典的な場の力学を解析力学の形式で整理する。質点系の解析力学(座標 qi、Lagrangian L(q,q˙)、Euler–Lagrange 方程式、共役運動量 pi、Hamiltonian)と1対1に対応する構造を作るのが目標で、これができれば正準量子化(第2部 第1章)は[q,p]=i を [ϕ,π]=iδ3 に置き換えるだけの作業になる。
場という対象を天下りに導入する代わりに、見慣れた力学系の極限として作ってみる。1次元に等間隔 a で並んだ N 個の質点(質量 m)を、バネ定数 k のバネでつなぐ。i 番目の質点の平衡位置からのずれを qi(t) とすると、Lagrangian は
L=i∑[2mq˙i2−2k(qi+1−qi)2]
である。ここで a→0 の極限を取る。質点の番号 i を連続の座標 x=ia に置き換え、qi(t)→ϕ(x,t) と書く。差分は微分になる。
qi+1−qi→a∂x∂ϕ,i∑→a1∫dx.
これらを代入して a を整理すると
L=∫dx[2m/aϕ˙2−2ka(∂x∂ϕ)2]≡∫dx[2μϕ˙2−2Y(∂xϕ)2]
となる。μ=m/a は線密度、Y=ka は弾性率で、どちらも極限で有限にとどまる量である。被積分関数をLagrangian 密度 L と呼ぶ。
この極限操作から読み取るべきことが2つある。1つは、場 ϕ(x,t) が「各 x ごとに1つずつ用意された力学変数」であること、つまり場とは自由度が連続無限個ある力学系だということである。番号 i が連続変数 x になっただけで、x 自体は力学変数ではない。もう1つは、Lagrangian が ∫dxL の形になり、L が ϕ とその1階微分だけで書けていることである。場の理論ではこの形(局所性)を要請として採用する。
例題 3.1(連成振動子の連続極限と音速)
オリジナル上の Lagrangian 密度 L=2μϕ˙2−2Y(∂xϕ)2 について答えよ。
- (1) Euler–Lagrange 方程式(次節で導く形)を用いずに、離散系の運動方程式 mq¨i=k(qi+1−2qi+qi−1) の連続極限を取って波動方程式を導け。
- (2) 波の伝播速度を μ,Y で表せ。
- (3) 元の離散系のパラメータ m,k,a で速度を書き、a→0 で有限に残る条件を述べよ。
解答
(1) 右辺の2階差分は qi+1−2qi+qi−1→a2∂x2ϕ である。左辺は m∂t2ϕ なので
m∂t2ϕ=ka2∂x2ϕ.
両辺を a で割って μ=m/a、Y=ka を使うと
μ∂t2ϕ−Y∂x2ϕ=0.
(2) ∂t2ϕ=(Y/μ)∂x2ϕ は速度 v=Y/μ の波動方程式である。実際 ϕ=f(x−vt) を代入すると v2f′′=(Y/μ)f′′ となり、v2=Y/μ が要る。
(3) v=Y/μ=ka/(m/a)=ak/m である。a→0 で v が有限に残るには、k/m が 1/a のように発散していなければならない。連続極限とは、単に a→0 とすることではなく、巨視的な量(線密度 μ、弾性率 Y)を固定しながら取る極限である。なお、v を光速 c に読み替え、ϕ に質量項を足したものが Klein–Gordon 場である。
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