場の量子論入門 第2部 第1章 §2.1.1 ★★★ 量子化の出発点。δ3 が出る理由まで含めて理解する。
第1部では、実スカラー場の古典論を組み立てた。Lagrangian 密度
L=21(∂μϕ)(∂μϕ)−21m2ϕ2=21ϕ˙2−21(∇ϕ)2−21m2ϕ2
から Euler–Lagrange 方程式として Klein–Gordon 方程式 (□+m2)ϕ=0 が出て、ϕ に共役な運動量密度は
π(x)=∂ϕ˙∂L=ϕ˙(x),H=∫d3x H=∫d3x 21[π2+(∇ϕ)2+m2ϕ2]
であった。本章では、この古典系を量子力学の作法どおりに量子化する。やることは解析力学の教科書に書いてある通りで、正準変数の組 (ϕ,π) に交換関係を課すだけである。そこから「粒子」という言葉が自動的に出てくるところが、この章の眼目になる。
有限自由度の量子力学では、正準変数 qi と共役運動量 pj に[q^i,p^j]=iδij、[q^i,q^j]=[p^i,p^j]=0を課した。場の理論では、自由度のラベル i が連続変数 x(空間の各点)に置き換わる。そこで対応する要請は、同時刻での交換関係
[ϕ(x),π(y)]=iδ3(x−y),[ϕ(x),ϕ(y)]=[π(x),π(y)]=0(2.1.1)
となる。ここで ϕ と π は演算子であり、x は演算子ではなく単なるラベル(どの自由度の話かを指定する添字)である点に注意する。量子力学で x^ が演算子だったのとは役割がまったく違う。
なぜ Kronecker のデルタでなく Dirac のデルタになるのか
δij が δ3(x−y) に化ける理由は、連続極限の取り方を追えば分かる。空間を一辺 ℓ の立方体セルに区切り、セルの体積を ΔV=ℓ3、n 番目のセルの中心を xn と書く。各セルの中の場の値を1つの自由度とみなして
qn≡ϕ(xn),pn≡ΔVπ(xn)
と定める。pn に体積を掛けたのは、離散系の Lagrangian
L=∑nΔVL(xn) を q˙n で微分するとpn=∂L/∂q˙n=ΔVπ(xn) となるからで、恣意的な操作ではない。この (qn,pn) に通常の量子化 [qn,pm]=iδnm を課すと
[ϕ(xn),π(xm)]=iΔVδnm.
右辺の δnm/ΔV は、n=m のセルで 1/ΔV、他でゼロという量であり、セル全体で体積積分すると 1 になる。ℓ→0 でこれが Dirac の δ3(x−y) になる。式(2.1.1) の δ3 は、このように「単位体積あたり」という次元を背負っているのである。
式(2.1.1) は同じ時刻の2点についての要請なので、時間と空間を対等に扱っておらず、Lorentz 不変性が見た目には壊れている。しかし第4章で計算するように、任意の2点の交換子[ϕ(x),ϕ(y)] は Lorentz 不変な形にまとまり、空間的分離では厳密にゼロになる。正準形式は時間を特別扱いする代わりに量子化の手続きが明快で、不変性は結果として回復する、という分業になっている(時間と空間を最初から対等に扱う定式化が経路積分で、第7部 第2章で扱う)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com