場の量子論入門 第2部 第5章 §2.5.2 ★★★ Q=Na−Nb を導く。反粒子の定義がここで決まる。
複素場の Lagrangian は、位相の一斉変換
ϕ→e−iαϕ,ϕ†→e+iαϕ†(α: 定数)
のもとで不変である(ϕ†ϕ も ∂μϕ†∂μϕ も位相が打ち消し合う)。これを大域的 U(1) 対称性と呼ぶ。実場ではこの対称性がない(実数に位相を掛けたら実数でなくなる)ことに注意する。
第1部 第4章の Noether の定理を適用する。δϕ=−iαϕ、δϕ†=+iαϕ† なので保存カレントは
jμ=∂(∂μϕ)∂Lαδϕ+∂(∂μϕ†)∂Lαδϕ†=i(ϕ†∂μϕ−(∂μϕ†)ϕ),
保存電荷は
Q=∫d3x j0=i∫d3x (ϕ†ϕ˙−ϕ˙†ϕ).(2.5.4)
これを展開(2.5.1)(2.5.2) で書き直す。ϕ˙ は a の項に −iEp、b† の項に +iEp を掛けたものである。空間積分は第1章と同じく δ3(p−q) 型(a†a、bb† の項)とδ3(p+q) 型(a†b†、ba の項)を生む。整理すると
∫d3x ϕ†ϕ˙=∫(2π)3d3p [−2iap†ap+2ibpbp†]+(e±2iEpt の項),
∫d3x ϕ˙†ϕ=∫(2π)3d3p [+2iap†ap−2ibpbp†]+(e±2iEpt の項)
となり、振動する項は2つの式で完全に同じ形なので差を取ると消える。よって
Q=i∫(2π)3d3p (−iap†ap+ibpbp†)=∫(2π)3d3p (ap†ap−bpbp†).
最後に bpbp†=bp†bp+(2π)3δ3(0) で正規順序に直し、発散した c 数を捨てると
Q=∫(2π)3d3p (ap†ap−bp†bp)=Na−Nb.(2.5.5)
a 型の量子は Q=+1、b 型の量子は Q=−1 を持つ。質量は式(2.5.3) のとおり同じ m である。すなわち、質量が等しく電荷が逆符号の2種類の粒子が1つの複素場から必然的に出てくる。これが粒子と反粒子である。
保存すること([Q,H]=0)は Noether の定理から保証されている。実際に測れるのは Q であって Na や Nb ではない。相互作用を入れるとNa も Nb も個別には保存せず、対生成 Na,Nb がそろって 1 増える過程や対消滅がおきる。そのとき Q=Na−Nb だけが変わらない。
例題 5.1(場が電荷を1単位下げること)
オリジナル[Q,ϕ(x)]=−ϕ(x)、[Q,ϕ†(x)]=+ϕ†(x) を示し、その物理的な意味を述べよ。
解答
式(2.5.5) と [ap†ap,aq]=−(2π)3δ3(p−q)ap、[bp†bp,bq†]=+(2π)3δ3(p−q)bp† より
[Q,aq]=−aq,[Q,bq†]=−bq†.
ϕ は ap と bp† だけで構成されている(式(2.5.1))ので、線形性から [Q,ϕ(x)]=−ϕ(x)。Hermite 共役を取れば[Q,ϕ†(x)]=+ϕ†(x) である。
意味は次のとおり。Q の固有値 q を持つ状態 ∣q⟩ に ϕ を作用させるとQϕ∣q⟩=ϕQ∣q⟩+[Q,ϕ]∣q⟩=(q−1)ϕ∣q⟩ となり、電荷がちょうど1単位下がる。ϕ は「粒子を1個消す」か「反粒子を1個作る」かのどちらかを行うが、電荷の変化はどちらでも −1 で共通である。この一様性のおかげで、ϕ と ϕ† を同数だけ含む相互作用項(λ(ϕ†ϕ)2 など)は自動的に電荷を保存する。電荷保存則が相互作用の形を制限する、という論法の原型である。
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