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時間順序と Dyson 級数

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第3部 第1章 相互作用描像と Dyson 級数

AI 生成・木下が未勉強

場の量子論入門 第3部 第1章 §3.1.3 ★★★ 摂動展開の閉じた表式。以降の全計算の出発点。

状態の時間発展を担う演算子を

U(t,t0)≡eiH0(t−t0) e−iH(t−t0)U(t,t_0)\equiv \mathrm{e}^{\mathrm{i} H_0(t-t_0)}\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i} H(t-t_0)}

と定義する。U(t0,t0)=1U(t_0,t_0)=1 であり、tt で微分すると

i ∂tU(t,t0)=eiH0(t−t0)(H−H0)e−iH(t−t0)=eiH0(t−t0)Hinte−iH0(t−t0)⏟≡HI(t) U(t,t0)\mathrm{i}\,\partial_t U(t,t_0)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} H_0(t-t_0)}(H-H_0)\mathrm{e}^{-\mathrm{i} H(t-t_0)} =\underbrace{\mathrm{e}^{\mathrm{i} H_0(t-t_0)}H_{\rm int}\mathrm{e}^{-\mathrm{i} H_0(t-t_0)}}_{\displaystyle \equiv H_I(t)}\,U(t,t_0)

となる(途中で 1=e−iH0(t−t0)eiH0(t−t0)1=\mathrm{e}^{-\mathrm{i} H_0(t-t_0)}\mathrm{e}^{\mathrm{i} H_0(t-t_0)} を挟んだ)。HI(t)H_I(t) は相互作用描像の場だけで書かれた相互作用 Hamiltonian で、ϕ4\phi^4 理論なら

HI(t)=∫ ⁣d3x λ4! ϕI(t,x)4H_I(t)=\int\!\mathrm{d}^3x\,\frac{\lambda}{4!}\,\phi_I(t,\bm{x})^4

である。求めるべき方程式は

i ∂tU(t,t0)=HI(t) U(t,t0),U(t0,t0)=1.(3.1.1)\mathrm{i}\,\partial_t U(t,t_0)=H_I(t)\,U(t,t_0),\qquad U(t_0,t_0)=1 .\tag{3.1.1}

もし HIH_I が数(cc 数)なら答えは exp⁡(−i∫t0tHIdt′)\exp\bigl(-\mathrm{i}\int_{t_0}^tH_I\mathrm{d} t'\bigr) である。しかし HI(t)H_I(t) は演算子であり、異なる時刻の HIH_I どうしは一般に交換しない。実際 HIH_I は ϕI\phi_I の4次式で、自由場の交換子は [ϕI(x), ϕI(y)]≠0\left[\phi_I(x),\,\phi_I(y)\right]\neq0(時間的に離れた2点で)だから [HI(t1), HI(t2)]≠0\left[H_I(t_1),\,H_I(t_2)\right]\neq0 である。素朴な指数関数の微分 ∂teA(t)\partial_t\mathrm{e}^{A(t)} は A˙ eA\dot A\,\mathrm{e}^{A} にならないので、上の推測は式(3.1.1)を満たさない。ここで時間順序が要る。

(3.1.1)を積分方程式に直し、逐次代入する。

U(t,t0)=1−i∫t0t ⁣dt1 HI(t1)U(t1,t0)U(t,t_0)=1-\mathrm{i}\int_{t_0}^{t}\!\mathrm{d} t_1\,H_I(t_1)U(t_1,t_0)

に UU を繰り返し代入すると

U(t,t0)=1+(−i) ⁣∫t0t ⁣ ⁣dt1HI(t1)+(−i)2 ⁣∫t0t ⁣ ⁣dt1 ⁣∫t0t1 ⁣ ⁣dt2 HI(t1)HI(t2)+⋯(3.1.2)U(t,t_0)=1+(-\mathrm{i})\!\int_{t_0}^{t}\!\!\mathrm{d} t_1H_I(t_1)+(-\mathrm{i})^2\!\int_{t_0}^{t}\!\!\mathrm{d} t_1\!\int_{t_0}^{t_1}\!\!\mathrm{d} t_2\,H_I(t_1)H_I(t_2)+\cdots\tag{3.1.2}

となる。kk 次の項では積分領域が t≥t1≥t2≥⋯≥tk≥t0t\ge t_1\ge t_2\ge\cdots\ge t_k\ge t_0 という単体(simplex)で、被積分演算子は遅い時刻ほど左に並んでいる。この並びは因果の順序そのものである。系は先に tkt_k で蹴られ、最後に t1t_1 で蹴られる。左から右へ読むと時間を遡ることになる。

定義 (時間順序積)

演算子 A(t1),…,A(tk)A(t_1),\dots,A(t_k) に対し、時間順序積 T ⁣{A(t1)⋯A(tk)}\mathrm{T}\!\left\{A(t_1)\cdots A(t_k)\right\} を「引数の時刻が遅いものほど左になるように並べ替えた積」と定義する。2個なら

T ⁣{A(t1)A(t2)}={A(t1)A(t2)(t1≥t2)A(t2)A(t1)(t2>t1).\mathrm{T}\!\left\{A(t_1)A(t_2)\right\}=\begin{cases}A(t_1)A(t_2)&(t_1\ge t_2)\\ A(t_2)A(t_1)&(t_2>t_1).\end{cases}

(フェルミオン場については並べ替えの符号が付く。第4部で扱う。)

時間順序積を使うと、単体上の積分を立方体 [t0,t]k[t_0,t]^k 全体の積分に書き換えられる。立方体は kk 個の時刻の大小関係で k!k! 個の単体に分割でき、T ⁣{⋯ }\mathrm{T}\!\left\{\cdots\right\} の中身はどの単体でも同じ値を与えるから、立方体の積分は単体の積分の k!k! 倍になる。したがって(3.1.2)は

Dyson 級数

U(t,t0)=∑k=0∞(−i)kk!∫t0t ⁣ ⁣dt1⋯ ⁣∫t0t ⁣ ⁣dtk  T ⁣{HI(t1)⋯HI(tk)}=T ⁣{exp⁡(−i∫t0tHI(t′) dt′)}U(t,t_0)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-\mathrm{i})^k}{k!}\int_{t_0}^{t}\!\!\mathrm{d} t_1\cdots\!\int_{t_0}^{t}\!\!\mathrm{d} t_k\;\mathrm{T}\!\left\{H_I(t_1)\cdots H_I(t_k)\right\} =\mathrm{T}\!\left\{\exp\Bigl(-\mathrm{i}\int_{t_0}^{t}H_I(t')\,\mathrm{d} t'\Bigr)\right\}

右端の記号は左辺の級数の略記である(指数関数を展開し、各項の中を時間順序に並べ替えよ、という意味)。HIH_I が異なる時刻どうしで可換なときに限り T ⁣{ }\mathrm{T}\!\left\{\ \right\} は外れ、通常の指数関数に退化する。

ϕ4\phi^4 理論では HI(t)=∫d3x λ4!ϕI4H_I(t)=\int\mathrm{d}^3x\,\frac{\lambda}{4!}\phi_I^4 だから、時間積分と空間積分が合わさって4次元積分になり、

U(∞,−∞)=T ⁣{exp⁡(−iλ4!∫ ⁣d4x  ϕI(x)4)}U(\infty,-\infty)=\mathrm{T}\!\left\{\exp\Bigl(-\mathrm{i}\frac{\lambda}{4!}\int\!\mathrm{d}^4x\;\phi_I(x)^4\Bigr)\right\}

という Lorentz 不変な形が現れる。時間順序積を導入した御利益がここに出る。単体積分の形では時間が特別扱いされていて共変性が見えないが、時間順序積の中では4次元積分が独立に走り、T ⁣{ }\mathrm{T}\!\left\{\ \right\} 自体も(空間的に離れた2点での場は交換するので)Lorentz 不変な操作になる。

例題 1.2(時間順序積による書き換え(2次の項))

オリジナル2次の項について

∫t0t ⁣dt1∫t0t1 ⁣dt2 HI(t1)HI(t2)=12!∫t0t ⁣dt1∫t0t ⁣dt2 T ⁣{HI(t1)HI(t2)}\int_{t_0}^{t}\!\mathrm{d} t_1\int_{t_0}^{t_1}\!\mathrm{d} t_2\,H_I(t_1)H_I(t_2) =\frac{1}{2!}\int_{t_0}^{t}\!\mathrm{d} t_1\int_{t_0}^{t}\!\mathrm{d} t_2\,\mathrm{T}\!\left\{H_I(t_1)H_I(t_2)\right\}

が成り立つことを示せ。また kk 次で因子が 1/k!1/k! になる理由を述べよ。

解答

右辺の積分領域(正方形)を、対角線 t1=t2t_1=t_2 で二つの三角形に分ける。

(i) t1>t2t_1>t_2 の三角形:時間順序積の定義より T ⁣{HI(t1)HI(t2)}=HI(t1)HI(t2)\mathrm{T}\!\left\{H_I(t_1)H_I(t_2)\right\}=H_I(t_1)H_I(t_2) だから、この部分の寄与は

∫t0t ⁣dt1∫t0t1 ⁣dt2 HI(t1)HI(t2)\int_{t_0}^{t}\!\mathrm{d} t_1\int_{t_0}^{t_1}\!\mathrm{d} t_2\,H_I(t_1)H_I(t_2)

であり、左辺そのものである。

(ii) t2>t1t_2>t_1 の三角形:ここでは T ⁣{HI(t1)HI(t2)}=HI(t2)HI(t1)\mathrm{T}\!\left\{H_I(t_1)H_I(t_2)\right\}=H_I(t_2)H_I(t_1)。積分変数の名前を入れ替える(t1↔t2t_1\leftrightarrow t_2)と、この寄与も

∫t0t ⁣dt2∫t0t2 ⁣dt1 HI(t2)HI(t1)  → 変数名の入替   ∫t0t ⁣dt1∫t0t1 ⁣dt2 HI(t1)HI(t2)\int_{t_0}^{t}\!\mathrm{d} t_2\int_{t_0}^{t_2}\!\mathrm{d} t_1\,H_I(t_2)H_I(t_1) \;\xrightarrow{\ \text{変数名の入替}\ }\; \int_{t_0}^{t}\!\mathrm{d} t_1\int_{t_0}^{t_1}\!\mathrm{d} t_2\,H_I(t_1)H_I(t_2)

と、やはり左辺に等しい。対角線 t1=t2t_1=t_2 は測度ゼロなので寄与しない。よって右辺の正方形上の積分は左辺の 2 倍であり、1/2!1/2! を掛ければ等しくなる。

kk 次では、kk 個の時刻の大小関係の付け方が k!k! 通りあり、立方体 [t0,t]k[t_0,t]^k はそれぞれに対応する k!k! 個の単体に分割される。上と同じ変数名の入れ替えにより、どの単体上の積分も同じ値(時間順序に並んだ積の単体積分)に等しい。したがって立方体上の積分は単体上の積分の k!k! 倍で、1/k!1/k! が必要になる。

念のため注意しておくと、1/k!1/k! は「同じものが k!k! 回数えられたから割る」のであって、指数関数の Taylor 展開の 1/k!1/k! と偶然一致しているわけではない。両者が一致するからこそ、級数全体が T ⁣{exp⁡(⋅)}\mathrm{T}\!\left\{\exp(\cdot)\right\} という閉じた形に書ける。

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