場の量子論入門 第3部 第2章 §3.2.2 ★★★ 道具その2。時間順序積と正規順序積の差が伝播関数になる。
定義 (縮約)
2つの自由場の縮約を
[0.5pt][2pt]ϕ(x)ϕ(y)≡T{ϕ(x)ϕ(y)}−:ϕ(x)ϕ(y):
と定義する(上括弧は縮約する2つの場を結ぶ記号)。
この量が c 数(演算子でない数)であり、しかも Feynman 伝播関数に等しいことを示す。x0>y0 とすると T{ϕ(x)ϕ(y)}=ϕ(x)ϕ(y) で、これを ± 成分に分けると
ϕ(x)ϕ(y)=(ϕ+(x)+ϕ−(x))(ϕ+(y)+ϕ−(y))=:ϕ(x)ϕ(y):ϕ−ϕ−+ϕ−(x)ϕ+(y)+ϕ−(y)ϕ+(x)+ϕ+ϕ++[ϕ+(x),ϕ−(y)].
4項のうち順序が正規でないのは ϕ+(x)ϕ−(y) だけで、これを ϕ−(y)ϕ+(x)+[ϕ+(x),ϕ−(y)] と書き直したのが上の式である。交換子は生成消滅演算子の交換関係から c 数になる:
[ϕ+(x),ϕ−(y)]=∫(2π)3d3p∫(2π)3d3q2Ep2Eqeip⋅xe−iq⋅y[ap,aq†]=∫(2π)3d3p2Ep1eip⋅(x−y).
y0>x0 の場合は x と y の役割が入れ替わる。両者をまとめると
定理 (2場の縮約は Feynman 伝播関数)
[0.5pt][2pt]ϕ(x)ϕ(y)=⟨0∣T{ϕ(x)ϕ(y)}∣0⟩=DF(x−y)=∫(2π)4d4pp2−m2+iεie−ip⋅(x−y)
すなわち縮約は演算子ではなく数であり、その値は第2部 第4章で構成した Feynman 伝播関数に等しい。
真ん中の等号は、: : の真空期待値がゼロであることから直ちに従う。右端の等号(4次元積分表示)は第2部で複素 p0 平面の極を iε 処方で避けて示したものである。
指数の符号について
DF(x−y) は引数の符号反転で不変(p→−p と積分変数を置換すればよい)なので、上の指数を e+ip⋅(x−y) と書いても同じ関数である。本書のモード展開は apeip⋅x の符号規約を採っているが、伝播関数が偶関数であるおかげで、第3章で作る運動量空間の Feynman 則はどちらの規約でも同じ形になる。運動量の向きの取り方(内線にどちら向きの矢印を描くか)も同じ理由で結果に影響しない。
例題 2.1(2場の Wick 分解を両方の時間順序で確かめる)
オリジナルT{ϕ(x)ϕ(y)}=:ϕ(x)ϕ(y):+[0.5pt][2pt]ϕ(x)ϕ(y) を、x0>y0 と y0>x0 の両方の場合について確かめよ。また [0.5pt][2pt]ϕϕ が空間的に離れた2点でどう振る舞うかを述べよ。
解答
(i) x0>y0 の場合. 本文で示したとおり、
T{ϕ(x)ϕ(y)}[ϕ+(x),ϕ−(y)]=ϕ(x)ϕ(y)=:ϕ(x)ϕ(y):+[ϕ+(x),ϕ−(y)],=∫(2π)3d3p2Epeip⋅(x−y).
(ii) y0>x0 の場合. 定義より T{ϕ(x)ϕ(y)}=ϕ(y)ϕ(x) である。同じ分解を ϕ(y)ϕ(x) に対して行うと、順序が正規でないのは ϕ+(y)ϕ−(x) で、
ϕ(y)ϕ(x)=:ϕ(y)ϕ(x):+[ϕ+(y),ϕ−(x)]=:ϕ(x)ϕ(y):+∫(2π)3d3p2Epeip⋅(y−x)
となる(正規順序積は中身の順序に依らないので :ϕ(y)ϕ(x):=:ϕ(x)ϕ(y):)。したがって二つの場合をまとめると
[0.5pt][2pt]ϕ(x)ϕ(y)=θ(x0−y0)∫(2π)3d3p2Epeip⋅(x−y)+θ(y0−x0)∫(2π)3d3p2Epeip⋅(y−x)
であり、これは第2部で DF(x−y) として構成したものと一致する。どちらの場合も右辺は演算子を含まない数である。
空間的分離での振る舞い. (x−y)2<0 のとき、DF はゼロにならず e−m−(x−y)2 で指数的に減衰しながら有限に残る。ただし交換子 [ϕ(x),ϕ(y)] は空間的分離で厳密にゼロで、因果律はそちらが保証する。測定可能なのは交換子であって伝播関数ではないので、DF=0 は因果律の破れを意味しない(第2部 第4章)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com