場の量子論入門 第3部 第2章 §3.2.3 ★★★ 本章の主定理。n 個の場に対する完全な展開公式。
定理 (Wick の定理)
自由場 ϕ1≡ϕ(x1),…,ϕn≡ϕ(xn) に対して
T{ϕ1ϕ2⋯ϕn}=:ϕ1ϕ2⋯ϕn:+1組の縮約∑:⋯[0.5pt][2pt]ϕi ϕj⋯:+2組の縮約∑:⋯:+⋯
すなわち「あらゆる縮約の入れ方(縮約しない場合も含む)について、縮約した対を DF に置き換え、残りを正規順序に並べた項」の総和になる。
証明は n についての帰納法による。まず補題を用意する。
命題 (補題:正規順序積に、最も早い時刻の場を右から掛ける)
ϕ≡ϕ(x) の時刻 x0 が x10,…,xm0 のどれよりも早いとする。このとき
:ϕ1⋯ϕm:ϕ=:ϕ1⋯ϕmϕ:+i=1∑m:ϕ1⋯ϕi⋯ϕm:[0.5pt][2pt]ϕiϕ
(ϕi は ϕi を除くという意味)。
証明
ϕ=ϕ++ϕ− と分けて、二つの部分を別々に処理する。正規順序積 :ϕ1⋯ϕm: は、定義により「生成部分 ϕi− をすべて左に、消滅部分 ϕi+ をすべて右に集めた」形の項の和である。
(a) 消滅部分 ϕ+ を右から掛ける場合. 右端はもともと消滅演算子が並ぶ場所なので、ϕ+ を右端に置いたままで正規順序の条件を満たしている。よって c 数を拾うことなく
:ϕ1⋯ϕm:ϕ+=:ϕ1⋯ϕmϕ+:.
(b) 生成部分 ϕ− を右から掛ける場合. 生成演算子が右端に来てしまうので、正規順序に直すには ϕ− を、正規順序積の中の消滅部分 ϕi+ たちの左まで動かさなければならない。1個通すたびに交換子が c 数として外へ出る:
ϕi+ϕ−=ϕ−ϕi++[ϕi+,ϕ−].
m 個すべてについてこれを行うと
:ϕ1⋯ϕm:ϕ−=:ϕ1⋯ϕmϕ−:+i=1∑m:ϕ1⋯ϕi⋯ϕm:[ϕi+(xi),ϕ−(x)]
を得る。第1項は交換子を拾わずに並べ替えた項、第2項は i 番目の場と交換子を拾って場が2個減った項である。
(a)(b) を合わせる. 出てきた c 数は、生成消滅演算子の交換関係から
[ϕi+(xi),ϕ−(x)]=⟨0∣ϕ(xi)ϕ(x)∣0⟩
と書ける(右辺で生き残るのは ⟨0∣ϕi+ϕ−∣0⟩ の項だけで、それが左辺の交換子に等しい)。いま x0 が xi0 より早いと仮定したので、T{ϕ(xi)ϕ(x)}=ϕ(xi)ϕ(x) であり、右辺は [0.5pt][2pt]ϕiϕ に等しい。よって補題の式を得る。仮定「ϕ の時刻が最も早い」は、この最後の書き換えのためだけに使った。
Wick の定理の証明
n=2 は前節で示した。n 個で成り立つと仮定し、n+1 個の場合を示す。時間順序積は場を並べ替えてよい(T{ } は引数の順序に依らない)ので、ϕn+1 が最も早い時刻をもつように番号を付け替えておく。すると
T{ϕ1⋯ϕnϕn+1}=T{ϕ1⋯ϕn}ϕn+1
と、ϕn+1 を右へ括り出せる。帰納法の仮定で T{ϕ1⋯ϕn} を「縮約の入れ方の総和」に展開し、各項に右から ϕn+1 を掛ける。各項は :残った場:×(既に取った縮約) の形で、ϕn+1 が掛かるのは正規順序積の部分だから、補題が使える。補題は「ϕn+1 を正規順序積の中へ入れる項」と「ϕn+1 を残った場のどれか1つと縮約する項」を生む。
これで生成される項の集合を見ると、もとの n 個に対する縮約の入れ方それぞれに対し、ϕn+1 を(a)縮約しないか、(b)まだ縮約されていないどの場と縮約するか、の選択肢が付いたものになっている。これはちょうど n+1 個の場に対する「あらゆる縮約の入れ方」の全体と一対一に対応する。よって n+1 個でも定理が成り立つ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com