場の量子論入門 第3部 第4章 §3.4.4 ★★ 2体散乱の運動学。振幅を書くための共通語彙。
2→2 の散乱 p1+p2→p3+p4 を考える。4つの運動量は運動量保存と殻上条件で縛られるので、独立な不変量は2つしかない。慣用的には次の3つを定義し、そのうち2つを独立変数として使う。
定義 (Mandelstam 変数)
s=(p1+p2)2=(p3+p4)2,t=(p1−p3)2=(p2−p4)2,u=(p1−p4)2=(p2−p3)2.
s は始状態の全4元運動量の2乗なので、重心系では全エネルギーの2乗 s=Ecm2 である。t は粒子1が粒子3になるときの運動量移行の2乗で、散乱角と直結する。3つは独立ではなく、次の関係で結ばれる。
定理 (Mandelstam 変数の和)
s+t+u=m12+m22+m32+m42
この関係と s=Ecm2 は、乱数で作った運動量配位に対する数値計算で確認してある(検算 検算スクリプト)。

図 同じ次数に現れる3つのチャネル。中間の内線(波線)が運んだ4元運動量の2乗が、それぞれ s、t、u に等しい。s チャネルでは2粒子がいったん1つの中間状態に合体し、t・u チャネルでは粒子間で運動量が受け渡される。t と u の違いは、どちらの終状態粒子をどちらの始状態粒子の「相手」とみなすかである。
内線の運動量の2乗がどの変数になるかで図を分類し、s チャネル・t チャネル・u チャネルと呼ぶ。同じ結合定数から出る3つの図は同一の関数の変数を入れ替えたものになっており(交叉対称性)、これは粒子と反粒子が同じ場の別の姿であることの帰結である。具体的な過程への適用は第5部で行う。
例題 4.1(Mandelstam 変数の和を示す)
オリジナルs+t+u=∑i=14mi2 を示せ。
解答
定義を展開する。pi2=mi2 を使うと
stu=(p1+p2)2=m12+m22+2p1⋅p2,=(p1−p3)2=m12+m32−2p1⋅p3,=(p1−p4)2=m12+m42−2p1⋅p4.
辺々加えると
s+t+u=3m12+m22+m32+m42+2p1⋅(p2−p3−p4).
ここで運動量保存 p1+p2=p3+p4 より p2−p3−p4=−p1 だから、最後の項は −2p12=−2m12 である。よって
s+t+u=3m12+m22+m32+m42−2m12=m12+m22+m32+m42.
3つのうち2つを決めれば残りが決まる、というのがこの関係の実用的な意味である。
例題 4.2(重心系での運動学(等質量の場合))
オリジナル4粒子の質量がすべて m の 2→2 散乱を重心系で考える。入射粒子の運動量の大きさを ∣p∣、散乱角を θ とするとき、s、t、u を ∣p∣ と θ で表し、和の関係を確かめよ。
解答
重心系では p1=−p2、p3=−p4 で、質量が等しいのでエネルギーはすべて E=∣p∣2+m2、出射の運動量の大きさも ∣p∣ に等しい。したがって s=(2E,0)2=4E2=4(∣p∣2+m2) である。t は p1⋅p3=∣p∣2cosθ と E2−m2=∣p∣2 を使って
t=(p1−p3)2=2m2−2(E2−p1⋅p3)=−2∣p∣2(1−cosθ),
u は p4=−p3 なので cosθ→−cosθ と置き換えて u=−2∣p∣2(1+cosθ)。和を取ると
s+t+u=4∣p∣2+4m2−2∣p∣2(1−cosθ)−2∣p∣2(1+cosθ)=4m2
となり、確かに ∑mi2=4m2 に一致する。t≤0、u≤0(物理領域では運動量移行は空間的)、s≥4m2 という不等式も読み取れ、運動量移行が最大になるのは θ=π の t=−4∣p∣2 である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com