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質量項が左右を混ぜること

2026年10月15日5分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第4部 第6章 カイラリティとヘリシティ

AI 生成・木下が未勉強

場の量子論入門 第4部 第6章 §4.6.2 ★★ 構造:運動項は左右に分かれ、質量項だけがつなぐ

ψˉL\bar\psi _L を計算するときに注意が要る。γ5\gamma^5 は Hermite(γ5†=γ5\gamma^{5\dagger}=\gamma^5)でγ0\gamma^0 と反交換するので、PLγ0=γ0PRP_L\gamma^0=\gamma^0P_R となり

ψˉL=(PLψ)†γ0=ψ†PLγ0=ψ†γ0PR=ψˉPR\bar\psi _L=(P_L\psi)^\dagger\gamma^0=\psi^\dagger P_L\gamma^0=\psi^\dagger\gamma^0P_R=\bar\psi P_R

である。左巻きスピノルの Dirac 共役には、右巻きの射影が付く。この事実を使うと、Lagrangian の各項が次のように分解する。運動項では γμ\gamma^\mu が γ5\gamma^5 と反交換するのでPRγμ=γμPLP_R\gamma^\mu=\gamma^\mu P_L となり、

ψˉ i∂̸ ψ=ψˉL i∂̸ ψL+ψˉR i∂̸ ψR\bar\psi \,\mathrm{i}\not{\partial}\,\psi =\bar\psi _L\,\mathrm{i}\not{\partial}\,\psi_L+\bar\psi _R\,\mathrm{i}\not{\partial}\,\psi_R

と、左と右がきれいに分離する。ところが質量項では γ\gamma 行列が挟まらないのでPRPR=PRP_RP_R=P_R、PRPL=0P_RP_L=0 の組み合わせから

 −mψˉψ=−m(ψˉLψR+ψˉRψL) \boxed{\ -m\bar\psi \psi=-m\bigl(\bar\psi _L\psi_R+\bar\psi _R\psi_L\bigr)\ }

となり、左と右を混ぜる項になる。

この構造は物理的に重い意味をもつ。理論に左巻き成分しか存在しなければ質量項が書けない、つまりカイラリティが片方しかない粒子は質量ゼロでなければならない。標準模型でニュートリノが当初質量ゼロとされたのは、右巻きニュートリノが観測されていなかったからである。また質量があるとカイラリティは保存せず、ψL\psi_L から出発しても質量項を通じて ψR\psi_R が混ざる。カイラリティは Lorentz 不変だが保存しない量であり、ヘリシティは保存するが Lorentz 不変でない量である。この双対が、質量ゼロ極限で解消される。

例題 6.1(カイラル分解の確認)

オリジナルPL=(1−γ5)/2P_L=(1-\gamma^5)/2、PR=(1+γ5)/2P_R=(1+\gamma^5)/2 について次を示せ。

  1. PL+PR=1P_L+P_R=1、PLPR=PRPL=0P_LP_R=P_RP_L=0、PL,R2=PL,RP_{L,R}^2=P_{L,R}
  2. ψˉγμψ=ψˉLγμψL+ψˉRγμψR\bar\psi \gamma^\mu\psi=\bar\psi _L\gamma^\mu\psi_L+\bar\psi _R\gamma^\mu\psi_R
  3. ψˉψ=ψˉLψR+ψˉRψL\bar\psi \psi=\bar\psi _L\psi_R+\bar\psi _R\psi_L
解答

(1) は (γ5)2=1(\gamma^5)^2=1 の直接の帰結である。PL+PR=12(1−γ5)+12(1+γ5)=1P_L+P_R=\tfrac12(1-\gamma^5)+\tfrac12(1+\gamma^5)=1。PLPR=14(1−γ5)(1+γ5)=14(1−(γ5)2)=0P_LP_R=\tfrac14(1-\gamma^5)(1+\gamma^5)=\tfrac14(1-(\gamma^5)^2)=0。PL2=14(1−2γ5+1)=12(1−γ5)=PLP_L^2=\tfrac14(1-2\gamma^5+1)=\tfrac12(1-\gamma^5)=P_L、PRP_R も同様。

(2) ψ=PLψ+PRψ\psi=P_L\psi+P_R\psi を両側に入れる。ψˉγμψ=ψˉ(PL+PR)γμ(PL+PR)ψ\bar\psi \gamma^\mu\psi=\bar\psi (P_L+P_R)\gamma^\mu(P_L+P_R)\psi で、γμ\gamma^\mu と γ5\gamma^5 が反交換するので γμPL=PRγμ\gamma^\mu P_L=P_R\gamma^\mu。したがってPLγμPL=PLPRγμ=0P_L\gamma^\mu P_L=P_LP_R\gamma^\mu=0、PRγμPR=0P_R\gamma^\mu P_R=0 となり、交差する2項 PLγμPRP_L\gamma^\mu P_R と PRγμPLP_R\gamma^\mu P_L だけが残る。ψˉPR=ψˉL\bar\psi P_R=\bar\psi _L、ψˉPL=ψˉR\bar\psi P_L=\bar\psi _R を使うと主張の形になる。

(3) 質量項には γ\gamma が挟まらないので、PLPL=PLP_LP_L=P_L、PLPR=0P_LP_R=0 から対角成分 ψˉPRPRψ=ψˉLψR\bar\psi P_RP_R\psi=\bar\psi _L\psi_R と ψˉPLPLψ=ψˉRψL\bar\psi P_LP_L\psi=\bar\psi _R\psi_L だけが残る。(2) と (3) で生き残る組み合わせが逆になるのが要点で、その違いを作っているのは γμ\gamma^\mu が γ5\gamma^5 と反交換することだけである。

例題 6.2(軸性流が質量で保存しなくなること)

オリジナル軸性流を j5μ=ψˉγμγ5ψj^\mu_5=\bar\psi \gamma^\mu\gamma^5\psi と定義する。Dirac 方程式を使って ∂μj5μ\partial_{\mu} j^\mu_5 を計算し、m=0m=0 のときだけ保存することを示せ。

解答

Dirac 方程式 (i∂̸−m)ψ=0(\mathrm{i}\not{\partial}-m)\psi=0 は γμ∂μψ=−imψ\gamma^\mu\partial_{\mu}\psi=-\mathrm{i} m\psi と書ける。ψˉ\bar\psi の方程式 i∂μψˉγμ+mψˉ=0\mathrm{i}\partial_{\mu}\bar\psi \gamma^\mu+m\bar\psi =0 は∂μψˉ γμ=imψˉ\partial_{\mu}\bar\psi \,\gamma^\mu=\mathrm{i} m\bar\psi である。積の微分から

∂μj5μ=(∂μψˉ γμ)γ5ψ+ψˉγμγ5(∂μψ).\partial_{\mu} j^\mu_5=\bigl(\partial_{\mu}\bar\psi \,\gamma^\mu\bigr)\gamma^5\psi +\bar\psi \gamma^\mu\gamma^5\bigl(\partial_{\mu}\psi\bigr).

第1項は im ψˉγ5ψ\mathrm{i} m\,\bar\psi \gamma^5\psi。第2項は {γ5, γμ}=0\left\{\gamma^5,\,\gamma^\mu\right\}=0 で γ5\gamma^5 を左へ抜き、γμ∂μψ=−imψ\gamma^\mu\partial_{\mu}\psi=-\mathrm{i} m\psi を入れると−ψˉγ5γμ∂μψ=−ψˉγ5(−imψ)=im ψˉγ5ψ-\bar\psi \gamma^5\gamma^\mu\partial_{\mu}\psi=-\bar\psi \gamma^5(-\mathrm{i} m\psi)=\mathrm{i} m\,\bar\psi \gamma^5\psi。合わせて

∂μj5μ=2im ψˉγ5ψ.\partial_{\mu} j^\mu_5=2\mathrm{i} m\,\bar\psi \gamma^5\psi .

m=0m=0 のときに限り右辺が消え、軸性流が保存する。ベクトル流jμ=ψˉγμψj^\mu=\bar\psi \gamma^\mu\psi は質量があっても保存した(§1.1)ことと対照的である。違いは γ5\gamma^5 が γμ\gamma^\mu と反交換する(したがって左右が入れ替わる)ことから来ており、「質量項だけが左右を混ぜる」という本節の結論を、保存則の言葉で言い直したものになっている。

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