場の量子論入門 第5部 第1章 §5.1.5 ★★ ゲージ不変性が質量項を禁じる。長距離力であることの理論的な根拠
ゲージ場 Aμ に質量を与える項は 21mγ2AμAμ である。この項はゲージ変換のもとで
21mγ2AμAμ ⟶ 21mγ2(Aμ+e1∂μα)(Aμ+e1∂μα)=21mγ2AμAμ+emγ2Aμ∂μα+2e2mγ2∂μα∂μα
と変化し、mγ=0 ならば余分な項が残る。Fμν と違って Aμ 自身はゲージ不変でないから、Aμ を2つ掛けた量も不変にならない。したがって局所ゲージ不変性を要求する限り、ゲージ場は質量を持てない。光子が厳密に質量ゼロであること、そこから Coulomb 力が1/r の長距離力であることは、U(1) ゲージ不変性の直接の帰結である。
質量項を無理に入れた理論(Proca 理論)がどうなるかは例題 5.1.4 で見る。要点は、質量項はゲージ自由度を消してしまい、物理的な自由度が2から3に増えることである。自然界の弱い相互作用は短距離力であり、その媒介粒子 W と Z は質量を持つ。ゲージ不変性を保ちながら質量を与える仕組み(Higgs 機構)が必要になるのはこのためであるが、本書では扱わない。
例題 1.4(Proca 理論の自由度 ★)
オリジナルL=−41FμνFμν+21mγ2AμAμ の運動方程式を導き、mγ=0 ならば ∂μAμ=0 が運動方程式の帰結として強制されること、その結果、独立な成分が3つになることを示せ。
解答
Aν についての Euler–Lagrange 方程式は
∂μFμν+mγ2Aν=0
である。両辺に ∂ν を掛けて縮約する。Fμν が μν について反対称であるのに対し∂μ∂ν は対称なので、第1項は恒等的に消える。したがって
mγ2∂νAν=0.
mγ=0 ならば ∂νAν=0 が従う。これはゲージ条件としてこちらが選んだものではなく、運動方程式が要求する拘束である。この拘束を使うと運動方程式は(□+mγ2)Aν=0 となり、4成分それぞれが Klein–Gordon 方程式に従いつつ、∂νAν=0 で1本結ばれる。独立な成分は 4−1=3 であり、質量を持つスピン1粒子の偏極状態数(横2+縦1)と一致する。
mγ→0 の極限では自由度が3から2へ不連続に落ちる。質量ゼロの理論は、質量ありの理論のなめらかな極限ではない。この不連続性の根源が、mγ=0 でのみ現れるゲージ自由度である。■
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